欲望と葛藤
続きです!読んでください!
木南とスタマデートした日の夜。俺は悶えていた。
「かわいい……!!」
俺は布団を抱きしめ、ベット上で転がり回る。
俺のスマホには莉子ちゃんが写っていた。見つけた時は叫んだ。
木南と水瀬と莉子ちゃんの三人組で撮った写真がたくさん入っているハイライトがあったんだ。しかもプリクラの写真や祭りで浴衣を着た写真、去年の体育祭の写真とかもあってどれもが神だった。
こんなのがあったら……莉子ちゃんへの好きが止まらなくなる!
俺は今日のデートで完全に気づいた。俺はやっぱり莉子ちゃんが好きだ。だって木南と普通にデートすることができたんだ。こんなの他の男じゃあり得ない話だ。俺だからできること。莉子ちゃんにしか目がないから木南にも動揺しないんだ。
「ん……?」
そこで一つの通知が来た。木南からのDMだった。
『今日の写真あげる〜!』
そのメッセージと共に送られてきたのは今日撮ったツーショット写真。
改めて見ると木南は顔小さいし、目デカいし、髪もきちんと整えられていてめちゃくちゃかわいい。でも俺の顔を見ろ。全くニヤけたりしてない!これすごいこと!
『ありがとう!』
そう返して俺はスマホを閉じる。
ベット上で天井を見上げながら呟く。
「次は莉子ちゃんと行きたいなぁ……」
目を閉じて想像する。木南には申し訳ないが、木南を莉子ちゃんと仮定しよう。
「ふっ……ふふっ」
想像だけでニヤける。そんな最高の人生があればな〜……
「…………あっ!」
俺はあることに気づいた。
木南のフォロー欄に莉子ちゃんがいるのでは?
俺は慌ててスマホを開き直し、木南のプロフィールに飛ぶ。
フォロー欄を開いて、検索欄に名前を打ち込む。まずは"莉子"出てこなかったから次は"りこ"それでも出てこなかったからその次は"riko"
――いた。"riko"がいた!拾い画かなんかのアイコンも今は煌めいて見える。
俺はrikoのプロフィールに飛ぶ。フォロワーは俺よりちょっと多いくらいで仲間意識が湧いた。プロフィール欄を見ると同い年で同じ高校ということが分かった。九割九分莉子ちゃんだ。
「どうする……!?」
俺はベット上で正座して考えた。フォローしていいのか!?
「うわぁぁぁ……無理無理無理……!」
枕に顔を埋める。熱が一気に頬まで上がってくる。
でも押したい。フォローしたい!
せっかく見つけたんだ。今まで探しても見つからなかった莉子ちゃんのアカウントを!
フォローをしないと鍵になっていて何も見ることはできない。今もめちゃくちゃかわいい莉子ちゃんの写真がアップされているかもしれないというのに!
想像の莉子ちゃんがスマホを持って首をかしげる。
『浅倉くんなんでフォローしたの?もしかして私のこと好きなの?』
それはまずい!
「……くそっ!」
俺は枕を抱えたままベッドの上を転がりまくった。
「一旦保留だな……」
俺は冷静になってスマホを閉じた。
スマホの画面が暗くなる。
暗い天井を見つめながら胸の鼓動だけがやけにうるさく響いた。
頭の中ではもう莉子ちゃんのことしか考えられなかった。
⭐︎
次の日の朝。俺は"木南有栖とデートした男"として胸を張って登校していた。
「あ。浮気男はっけーん」
後ろから声がして振り返るとそこには優馬が立っていた。
「人聞き悪いこと言うなよ……」
あそこから家帰れたんだ。
「本当のことだし?莉子ちゃんが好きとか言いながら有栖ちゃんとデートですか……」
「説明しただろ……」
「せっかく莉子ちゃんと繋げるためのサポートをしようと思ってたのに……」
「お前のはいらねぇ……ていうかお前柴田に莉子ちゃんのこと言ったろ!」
すっかり忘れてた。飛び蹴りを喰らわせる予定だったんだ。
「陸也?」
「そうだよ!お前勝手に言ってんじゃねえよ!」
飛び蹴りを喰らわせようとしたが軽く避けられてしまった。
「いーじゃん。同じクラスに協力者がいた方がいいかなって思ったんだよ」
「だとしても許可取れ……!」
「まぁ陸也は信頼できるやつだし、他に言ったりしないっしょ」
なんでこんなに軽いの?俺の人生を賭けた大恋愛だぞ?
「もういいわ……」
こいつはやっぱり変わらない。ずっとこれだ……
俺は呆れ半分でため息をつき、優馬を気にせず歩き出した。
校門へ抜け、昇降口へ向かう通りに出る。ちょうどそのときだった。
「あっ。莉子ちゃん」
優馬がそう呟いた。
「は!?どこ?」
俺は反射的に顔を上げた。
優馬が指を刺した先には白いイヤホンを片方だけ耳につけた莉子ちゃんが立っていた。
「まじじゃん……」
登校中に見れるのは珍しい……今日はちょっと遅めの登校なんだな。
「声かけようぜ」
優馬がニヤつきながら提案してくる。
「無理だろ……」
「俺がかけてやるから」
「もっと無理だわ!」
優馬が一歩前へ出ようとした瞬間、俺は反射的に腕を掴んだ。
「なんで?せっかくのチャンスじゃん」
「チャンスとかじゃなくて……心の準備が……」
言い訳が口から勝手に出てくる。昨日の夜写真で見まくったから本物がさらに輝いて見えた。
「ったく。チキンかよ」
「うるせぇ」
そんなやりとりをしてる間に莉子ちゃんは昇降口の方へ歩いていってしまった。
白いイヤホンのコードが揺れて髪がさらっと流れた。それだけで心臓がバクンと鳴る。
「……かわいい」
思わず小声で漏れていた。
「ほら見ろ。そういうとこ。行動しなきゃ何も始まんねーぞ」
「分かってるよ……」
優馬は呆れ顔をしつつ
「はいはい。俺はもう行くわ」
と手をひらひら振って去っていった。
俺は一人で昇降口へ向かう。辿り着くと、靴箱の前でちょうど莉子ちゃんが靴を履き替えていた。
莉子ちゃん発見……!大丈夫。俺は木南有栖とデートをした男……!
「……お、おはよ!」
俺は拳を握りしめて挨拶をした。声がうわずってなんとも情けない挨拶になってしまったが、俺から挨拶できただけで上出来だ。
「おはよ。浅倉くん」
こちらを向いた莉子ちゃんは挨拶を返してくれた。
よーし!無視されなかっただけで俺の勝ち!
「有栖とスタマ行けたんだね。ストーリーに映ってたの浅倉くんだよね?」
挨拶だけで満足していた俺になんと莉子ちゃん側から話を振ってくれた。
「あっ……うん!そう」
なるべく自然な笑顔を心がける。
「本当に奢ったの?」
「うん。奢ったよ」
「ふふっ。本当に守ったんだね」
ダメだ……その笑顔は反則!
昨日ベッドの上で見た写真のどれよりも目の前の莉子ちゃんの方がずっとかわいかった。
「まぁ……約束だから」
俺も莉子ちゃんの隣に並び靴を変える。莉子ちゃんはその様子を見ていてまるで俺を待ってくれているみたいだった。
「新作ってやつおいしかった?」
嘘でしょ……?まだお話ししてくれるんですか!?教室まで一緒に行っていいやつですか!?
「う、うん。普通に美味しかったよ。めちゃくちゃ甘かったけど」
「やっぱり〜。有栖ってああいうの好きそうだもんね」
莉子ちゃんは笑いながら言う。
やばいやばい。ニヤけるな俺!抑えろ俺、平常心だ……!
「天城さんは……ああいうの苦手?」
「苦手ってわけじゃないんだけどね。好んでは飲まないかな」
「そっか……」
廊下を歩く足音が響く。俺たちは廊下に出て並んで教室へと向かっていた。
俺が幸せを噛み締めているとすぐ横を通り過ぎる男二人組の会話が耳に入った。
「昨日の有栖ちゃんのストーリー見た?」
「見た見た!スタマのやつでしょ?」
「あれ一緒に撮ってたの多分男だよ」
「……っ!?」
バレてる……!やばい。
心臓が一瞬止まった。隣を歩いていた莉子ちゃんが俺の顔をちらっと見て呟いた。
「バレてるね」
からかうように笑う莉子ちゃん。
「あはは……やばいかも」
声が裏返る。焦るな。焦るな俺。
「まぁ別に変なことしてたわけじゃないし大丈夫だよ。言わなきゃ浅倉くんだってバレることもないし」
莉子ちゃんはそう言いながら前を向く。その横顔がやけに近くて甘い香りがふわっとした。
「そうだよね……」
莉子ちゃんが隣にいることと、木南とスタマに行ったことがバレかけてる二重の焦りが重なって逆に冷静になっている俺。
「……っ」
「ん?なんか言った?」
「ううん……なんでも」
"フォローしていい?"その言葉はまだ喉の奥につっかえたままだった。
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