有栖とデート
続きです!読んでください!
「ありがとうございました!」
帰りの挨拶を済ませると、教室の中の人々はどんどん外へと向かっていく。
でも俺はその場を動けずにいた。今から木南有栖との"デート"が始まるからだ。
隣では木南が鼻歌を歌いながらカバンの中に教科書を詰めている。
莉子ちゃんは挨拶と同時に教室を去っていき、もうその姿はなかった。
「……俺、トイレ行ってからそのまま校門まで行ってていい?」
木南との放課後デート。問題は他の男子に見られることだ。そのリスクはなるべく減らしておきたい。
「え?なんで〜?一緒に行こうよ」
自分のモテ方知らんのか……?男と二人なんてやばいことになるぞ。
「いや……!でも多分そっちの方がいい気がする!それじゃ校門でまた会おう!」
俺は無理矢理、木南を振り切って走った。木南は後ろで声を上げていたが、聞こえてないふりをしてそのまま走った。
「はぁはぁ……」
教室から逃げ、俺は下駄箱までやってきた。するとそこには――
「……浅倉くん?」
莉子ちゃんが立っていた。靴を履き替えるところだった。俺たちの約束を知っている莉子ちゃんは不思議そうに俺を見ていた。
「あれ?有栖は?」
「あっ……えーっと……事情があって俺が先に校門で待つことになって……」
ここで莉子ちゃんはやばい……!ていうか英語の時もそうだけど普通に話しかけてくれるの熱すぎるんだけど!?
「……有栖と一緒にいるところ見つかっちゃうとまずいから?」
「えっ……何で」
莉子ちゃんの見透かしたような声に俺は呆然とした。まさかの莉子ちゃんにバレた。
「だよね〜。私も視線感じるからなぁ」
莉子ちゃんは苦笑を浮かべながらそう言った。
「そうなんだ……」
「うん。有栖と鈴香はやっぱりすごいからさ」
「それは……そうだね」
莉子ちゃんの方が――とは今の俺には言えなかった。
「じゃあ有栖をよろしくね。またね」
そう言って莉子ちゃんは俺に手を振って去って行った。
「あぁ……うん」
俺も軽く手を振り返す。
「一番かわいいのはあんただよ……」
莉子ちゃんが昇降口を出て曲がったところで、俺は一番近くにあった壁にもたれかかった。
「はぁ……」
有栖と鈴香かぁ……当たり前だけどその二人の人気を莉子ちゃんも分かってるんだなぁ。どういう気持ちなんだろ。俺には想像できないな。
「あっ!いた!」
壁にもたれかかっていると木南がやってきた。
「あっ……」
校門で会う予定が……!
「何で飛び出して行っちゃったの?」
「それは……何でもないよ!走りたかったから……かな?」
「まぁそれでいいや!それより早く行こう!」
木南はそう言って明るく笑うと靴を取り出して履き替え始めた。俺もそれに続けて靴を履き替えた。
そして二人並んで昇降口を出る。なるべく木南とは関係ありません。みたいな顔をしながらギリギリ怪しまれないくらいの距離を保ちながら俺は歩いていた。
「うわっ……!やば!」
「有栖ちゃんだ!」
帰る途中の男子生徒、部活途中の男子生徒が足を止めて木南のことを見る。木南は元気よく手を振ったりして、愛想よく返していた。幸い、みんな木南に釘付けで俺のことなんて何にも見えていなかった。木南もそっちの対応していたため、俺に話しかけてくることはなく、校門を出るまではなんとか耐えることができた。
「ふぅ……よし!」
校門を出たところで一息つく。
「どうした?」
「何でもない!」
ここからはまぁいけるはず。安全とは言い切れないが、気をつけていれば大丈夫なはず……?
俺は周りをキョロキョロしながら先導する木南の後ろをついて行った。
「浅倉くんはスタマ行ったことある?」
少し歩いていると、ふいに木南が声をかけてきた。
「……二回くらいあるかな。新作とかは気にしたことないよ」
うまいのはうまい。気分も上がるし。だけどそこまで惹かれるものではないとも思う。
「そっかぁ。前の新作がめちゃおいしかったから今回も楽しみなんだよね〜。金欠だったから浅倉くんがいてくれてよかったよ〜!」
「あはは……」
木南じゃなかったらほぼカツアゲ。俺は悪いことをしたんです!
「前のも飲んだんだね」
「そう!飲んだの〜見る?」
「えっ?」
俺の返答も聞かずに木南はスマホの写真を見せてきた。
「じゃーん!これ!持ってるやつ!」
そこに写っていたのは木南、水瀬、そして莉子ちゃんの三人組がおしゃれな飲み物を持っている自撮りだった。
「……っ」
かわいい……莉子ちゃんにしか目がいかない!
こうして写真で見ると改めて莉子ちゃんも負けてないよな。俺の好みの話じゃなくて普通に莉子ちゃんも二人に並ぶくらいかわいいと思う。
「……天城さん、興味ないって言ってたのに前の新作は飲んだんだね」
さりげなく莉子ちゃんの話を聞こうとする。
「莉子にも飲んで欲しかったからめちゃくちゃ誘ったんだよ〜!莉子は飲んでもハマらなかったみたいだけど!鈴香も!」
木南はそう言って笑った。
「仲良いんだね。ずっと一緒にいるよね」
「いるよ〜!でも高校から同じなの私だけなんだよね!莉子と鈴香は同じ中学でさ!一年生の頃に莉子と仲良くなって、そこから鈴香ともって感じで三人一緒いることが多くなってってわけ!」
「そうなんだ……」
三人組の結成秘話を聞いてちょっと嬉しくなる俺。この話を知ってる奴が他に何人いるのだろうか。
「莉子もくればよかったのに〜。浅倉くんが奢ってくれるって言ってたのにねぇ?」
「まぁ……興味ないもの奢られてもって感じじゃない?あと俺に奢られたくなかったのかもしれないし」
「あははっ!それはないでしょ〜?おもしろいこと言うなぁ」
木南は隣で笑った。自分で言うのもなんだが側から見れば俺たちはカップルだ。
そんなふうな他愛のない話をしながら歩いていると目的地に着いた。
やっぱり俺は女子を克服したらしい。全然話せたぞ。あとはバレないように新作とやらを飲めば終わり……大丈夫。バレずに乗り切れるぞ。
「じゃーん!これこれ!」
木南は店の前に立つと、ポスターを指さした。そこにはクリームが山のように盛られた飲み物の写真がでかでかと載っている。
「“焦がしキャラメルチーズホイップラテ”!」
長くて甘そうな名前だ。
「浅倉くんも同じのにしよ〜」
「え、俺も?」
本当は味を知ってる定番メニューで済ませたいけどここで渋いのを選んだら“つまんない人”認定されそうだ。
「じゃ……同じので」
「やった!」
木南は嬉しそうに笑ってスマホを取り出した。
「買ったらストーリー載せよ〜!」
「えっ」
「せっかくだし!浅倉くんの顔は写さないよ。安心して」
「……なら大丈夫か?」
俺は心臓の鼓動を落ち着けるように深呼吸した。
店内に入り、周りを見渡す。同じ学校の生徒はいないようだ。これで一安心。俺たちは注文するためにカウンターへと向かった。
「私が注文するね〜」
「任せた。お金の準備はしとくよ」
「ありがとうございますっ!」
もし相手が莉子ちゃんだったら……とか考えるのは流石に木南に失礼か。
木南は慣れた様子で注文をしていた。店員にも相変わらずの愛嬌でそれはモテるわって感じだった。俺は後ろでモジモジしてただけ。思ってたより高くてビビったが、まあこの経験を買わせてもらってると思って受け入れた。
二人で席に座ると、木南はすぐにストローを刺して目を輝かせた。
「うっまっ……!」
木南は目をキラキラさせて俺を見つめてきた。普通にめちゃくちゃかわいいな。
「そんなに?」
「飲んでみなって!」
俺も言われるまま一口飲む。
「……あまっ」
「でしょ!おいしいでしょ!」
「あま……おいしいけどすごいね。これは」
「こういうのたまに飲むのがいいんだよね〜。毎日だったら太っちゃうし」
木南は笑いながら頷いて机に肘をついた。
「全然太ってないよ……」
「そう?優しいなぁ浅倉くん。奢ってもくれたし」
「それは俺のせいだから……」
「あははっ。そっかそっか」
木南はそう笑いながら立ち上がった。
「行くの?」
「あとは帰りながら飲も。混んできたし、座りたい人もいるだろうし」
「あぁ……そうだね」
俺も同調して立ち上がった。手招きする木南のところまで歩くと、目の前の自動ドアが開いた。
「……やば」
「おぉ!北斗じゃん!何してんのこんなところで!」
そこに立っていたのは優馬だった。
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