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謎のイケメン

続きです!読んでください!

「みーつけた」

耳元に落ちてきたその声に背中がビクッと跳ねた。


「……は?」

ちょ待って。俺?なんかした?いやしてないよな?


頭の中で高速で反省会が始まる。でも何も思い当たらない。このイケメンと関わった覚えなんてない。目の前のイケメンは俺の肩に手を置いたまま、微笑んでいる。


「……浅倉知り合い?」

真横から柴田の声。完全に「お前何やらかしたんだよ」っていう目をしている。


「は?なんだこいつ……」

古川はイケメンを露骨に睨みつけていた。イケメンだからだろう。


「…………」

イケメンは俺の顔をまじまじと見て黙っている。クラスの視線は俺たちに集まり、ざわめきが広がっていく。その状況が耐えれなくなって、俺は口を開いた。


「えーと……俺に何か用ですか?」

俺は言葉を絞り出した。


「僕は分かってるんだ!」

急にバカでかい声を出したイケメンに教室中が一瞬で静まり返った。

声デカ……こいつまじでなんなの!?


「……な、何を……?」

恐る恐る聞き返すと、イケメンは俺の肩をぎゅっと掴んだ。距離感がバグってる。顔がいいから余計に圧がすごい。

イケメンは俺の肩を掴んだまま息を吸い、探偵みたいな顔で言い放った。


「君は……木南有栖と付き合っているのか?」


………………え?


教室の空気がピキッ……と音を立てて固まった気がした。


一秒。二秒。


そして――


「「「はあああああああああ!?!?」」」

爆発したみたいな大声量。


「は?は?は?え?浅倉!?」

「なんて言ったこいつ!?」

「浅倉と有栖ちゃん!?」

ざわめきを通り越してもう阿鼻叫喚。


「な、何言ってんの!?」

俺は足の痛みも忘れて立ち上がる。


「ちょ、ちょっと待て!俺と木南が付き合ってるって……なんの冗談だよ!」

俺が否定しても教室の反応は止まらない。


「イケメンが言ってんだよ!どういうことだよ!」

「説明しろ!」

今日は木南が休み。だから全部俺に飛んでくる。


「……浅倉くん?」

後ろからぼそっとした声が聞こえた。振り返ると、莉子ちゃんが何とも言えない顔で俺を見ていた。


「マジで付き合ってないから……!誤解!」

莉子ちゃんにいらん情報を入れんな……!俺はイケメンに怒りが湧いてきた。でもそんな俺より怒っている人物がいた。


「……浅倉?」

肩を掴まれる。手の方向を見ると、古川が笑いながら俺を見ていた。


「古川……?誤解だぞ?」

「誤解……?誤解って何だ……?」

「え?」

ヤバいヤバい……!古川がブチギレすぎて語彙を失ってる……


「頼む柴田……古川を抑えて!」

「言われなくても……!」

柴田が暴れ出す寸前の古川を抑える。古川は完全に理性を失っており、笑顔で俺に襲い掛かろうとしている。


「浅倉ぁ……お前有栖ちゃんじゃなくてり……」

「それだけは言うな……!!」

柴田が必死に古川の口を抑える。教室はもうパニック寸前。そんな中すっと前に出てきたのは水瀬だった。


長い黒髪を揺らしながらイケメンへと冷たく視線を向ける。


「……どういうこと?」

イケメンの肩を軽く叩き、無言の圧をかける。


「えっ……」

「佐藤……あー……シュガーって呼んだ方がいいんだっけ?」

水瀬がそう言った瞬間、イケメンの眉がピクッと動いた。


「水瀬知り合いなの……?」

水瀬はため息をつき、腕を組んだ。


「一年の頃同じクラスだった。佐藤悠人さとうゆうと。名前が普通だから佐藤→砂糖でシュガーって呼べとか言う痛いやつだよ」

「鈴香ちゃん……!?そんなこと思ってたのか……!?」

イケメン――佐藤改め、シュガーは胸を押さえてショックを受けていた。


「え。痛」

「痛すぎだろ」

「イケメンでもしっかり痛いんだな」

「このクラスはうるさいな……!」

イケメンは焦った表情で言い放つ。化けの皮がどんどん剥がれていく。


「で?まじでどういうことか説明して。佐藤」

水瀬がそう言うと、佐藤は拗ねるように呟いた。


「僕はシュガーだ」

「イタすぎだろ……」

佐藤のイタさに古川も我を取り戻していた。


「シュガーだから!僕は佐藤じゃないから!」

「佐藤ではあるだろ……」

「シュガー!シュガー!」

駄々を捏ね始めた佐藤。まじでなんなのこいつ。もうイケメンに見えなくなってきた。


「はいはい。シュガくん。どう言うことか説明してくださーい」

「シュガ……?」

水瀬が適当に尋ねると――


「……まあいいだろう!」

「……いいのかよ」

俺たちが総じて引いていると、シュガ男はポケットからスマホを取り出し、一枚の写真を俺たちに向けた。


「これが証拠だ!」

「あ……」「あ〜……」

差し出してきたのはいつかのスタマデートのストーリー。俺と莉子ちゃんが息を飲んだ。


「……有栖ちゃんのストーリーじゃん」

古川が即答する。流石だ。


「そう。これは約一ヶ月前に大騒ぎになった有栖ちゃんが男とスタマに行っているストーリー!俺はこの一ヶ月この男が誰なのかをずっと研究していた!」

余計なことしやがって……!暇なのか!?


「その結果……この男は浅倉北斗ということが判明したんだ!」

シュガ男はデカい声でそう言い放った。シュガ男の宣言にクラスが再び沸騰する――と思いきやそうでもなかった。


「嘘つけ〜」

「腕しか写ってねーぞ!」

「有栖ちゃんが浅倉とスタマに行くわけねーだろ!」

悪口も含まれているような気がしたが、クラスのみんなは信じていないようだ。


「……そーだそーだ!」

俺もそれに乗っかることにした。腕しか写ってない。これは俺じゃないで乗り越えられるはず……!


事情を知ってるのは俺と木南と莉子ちゃんしかいない。口を滑らせそうな木南がいないならいけるはず……!

俺は一瞬、莉子ちゃんと目を合わせた。莉子ちゃんも「分かってるよ……!」みたいな表情で俺を見ていた。


「流石に無理。証拠じゃなくてみんな知ってる写真をもう一回出しただけじゃん。出直してきな」

水瀬が冷たく言い放つと、シュガ男は笑った。


「ははは!!これだけなわけないだろう!!」

「何……!?」

額から汗が流れ落ちる。あの写真以外に証拠なんでないはず……!


「第二の証拠にして確信的な証拠がここにある!」

そう言ってシュガ男はもう一度俺たちにスマホを向けてきた。


「動画……?」

第二の証拠は動画だった。シュガ男のスマホをみんな囲んだ。


動画が再生される。

そこにはモザイクをかけられているが、どこか見覚えのあるやつがインタビューみたいにド真面目な顔で座っていた。


『あの日、あなたは有栖ちゃんと浅倉北斗がスタマに行ってるのを目撃したと?』

記者みたいなシュガ男の声が聞こえてくる。


『見ました。イチャイチャしてましたね』


「これ優馬だろ!?」

モザイクとボイスチェンジャーなのにどう聞いても優馬。スタマデートを知っているもう一人の存在を俺は忘れていた。


「個人名は控えて!」

「うるせえ!どう見たってあいつだ!」

俺はそこでスマホの電源を切った。絶対あいつノリで適当なこと言ってるだろ……!!


「消さないで!最後に重大発表があるから!」

シュガ男がもう一度電源をつけ、動画を最後の方まで飛ばした。何でこの動画4分あるんだよ。


そして最後の20秒を再生する。


『これを見てください!』

画面の中の優馬が自分のスマホの画面を見せている。そこには――俺と木南が二人で並んでいる写真。顔付き。


「盗撮じゃねえか!!」

俺はそう叫んだが、クラスの奴らは俺と木南が二人でいることの方に釘付けだった。


「マジで二人じゃん……」

「顔写ってる!これガチだぞ!」

「浅倉……お前まじなのか?」

クラスの男子が怖い顔で迫ってくる。


「いやいやいや待て!これは違う!」

俺は必死に否定したがシュガ男は勝者の顔で仁王立ちしている。


「まだ否定するつもりか!」

「事情があるんだよ!」

俺が叫んでも状況は悪化する一方。


そして――


「……浅倉」

ガシッ。また肩を掴まれた。振り返ると古川がさっき以上に笑っていた。


「いや古川!?誤解だって……」

「誤解?二人で並んで歩いてる時点で誤解とかないけど???」

「待て待て……落ち着けって。な?深呼吸しよ?はい吸ってー……」

俺は古川の肩を掴んで何とか抑えようとする。でもそうしていると――


「さぁ早く認めろ!有栖ちゃんと浅倉くんは付き合っているんだろ!」

シュガ男の一声でまたクラス中のボルテージが上がる。


「どうなんだよ!」

「隠すなよ!」

「なんなんだよこれ……!?」

松葉杖から解放されたっていうのに……!

マジで誰か助けてくれ……そう思った瞬間、俺の背後にいる人物が立ち上がった。


「浅倉くんと有栖は付き合ってません!」

莉子ちゃんの一言で教室は静まり返った。



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