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呼び出し

続きです!読んでください!

次の日の昼休み。俺は昨日のお礼として桜ちゃんにこっそり呼び出されていた。


「桜ちゃんの呼び出しか……」

バレたら後輩全員に嫌われそう……後輩だけじゃないか。そんなことを思いながら教室を出ようとすると――


「浅倉、どっか行くの?」

柴田が声をかけてきた。


「……えっ」

振り返るとそこには弁当の袋を持った柴田。ただのいつも通りの顔。昨日のことなんて何も知らない柴田だ。


柴田は尾行に気づいてない。こっちが勝手にビビってるだけだ。


「いやその……ちょっとね」

めちゃくちゃ挙動不審な声になった。自分で言ってて涙出るほど怪しい。柴田は特に疑うでもなく、首を軽く傾けただけだった。


「昼食べないのか?」

「た、食べるけど……あとで」

「ふーん。まあいいけど」

危なかった……マジで目の前でへたり込みそうだった。柴田はふっと笑って、軽く肩を叩いた。


「松葉杖なんだから、無理すんなよ。転ぶから」

「……気をつける」

純粋に心配してくれてるのが逆に刺さる。


「じゃ俺は中庭であいつらと食うわ。あとでな」

そう言って柴田は去っていく。昨日のことは何も知らないまま。

柴田の背中が完全に見えなくなった瞬間、俺は深く息を吐いた。


「……あっぶねぇ……」

そしてそのまま桜ちゃんに呼び出された場所。屋上へ向かった。


⭐︎


屋上の扉を開けると、桜ちゃんは制服のスカートをそっと整えてからにこっと柔らかく笑った。


「北斗くん。来てくれてありがとうございます」

「屋上って意外と遠いね……」

俺は肩で息をしながら返す。松葉杖で階段はきつい……!


「ごめんなさい。誰もいない場所が良くて」

桜ちゃんは小さく申し訳なさそうに頭を下げた。


「いいよ。呼ばれて来たんだし」

俺がそう言うと、桜ちゃんは胸の前で両手をぎゅっと握りしめ、そっと息を整えるように間を置いた。


「昨日……協力してくれてありがとうございました」

「いやいや。俺はそんな……」

桜ちゃんがこちらを見つめる。大きな瞳には俺が写っている。


「北斗くんが止めてくれなかったら……私はきっとお兄ちゃんの邪魔をしてました」

桜ちゃんはゆっくり屋上のフェンスの方へ歩き、空を見上げた。春の昼の光が彼女の横顔を照らす。


「ありがとうございました。北斗くんの言う通りこれからはお兄ちゃんのスマホを覗くのもやめます」

「それはそうだね……。でも昨日のことは気にしなくていいよ。正直、俺も止めながら気になって仕方なかったし」

そう言うと、桜ちゃんはふっと笑った。


「ふふっ。北斗くんらしいですね」

その笑顔は昨日の慌てた桜ちゃんとは別人みたいに大人びていて

一瞬、ドキッとした。


「でも……呼んだのってそれだけ?」

聞くと桜ちゃんは少しだけ視線を逸らし、地面に置いていたバックのようなものを漁り始めた。


「……いえ。あの……」

桜ちゃんはバッグから、そっと小さなお弁当箱を取り出した。ピンク色の手のひらサイズの包み。


「北斗くんにお礼をしたかったんです」

「えっ……」

「私、料理まだ全然下手ですけど……練習はしてて。その……昨日のお礼として作ってきました」

桜ちゃんは顔を真っ赤にして、包みを俺に差し出す。


「受け取って……くれますか?」

その姿があまりにもかわいくて、俺の顔は赤くなってしまった。


「えっ……」

なんでなんで!?なんで急に弁当なんか……桜ちゃんって急に家来たり、急に弁当作ってきたりで……意外と大胆だな……。


桜ちゃんは目を伏せたまま両手で小さなお弁当箱をそっと掲げている。受け取ってほしい。その気持ちが指先の震えですら伝えてくるみたいで。


「え……あ、うん。もちろん」

俺は戸惑いながらも手を伸ばすと、桜ちゃんの指先がほんの一瞬、俺の指に触れた。


「よかった……」

桜ちゃんは胸に手を当て安心したように小さく微笑んだ。俺は弁当を抱えながらなんとか平静を装って言う。


「でもこれ……いいの?俺なんかに」

「なんかじゃありません」

桜ちゃんはふっと頬を膨らませ、少しだけ強く言った。そして慌てて恥ずかしそうに声を落とす。


「……北斗くんに渡したかったんです」

その言葉が真っ直ぐすぎて、一瞬まじで倒れそうになった。


「じゃ、じゃあ……ありがたく」

屋上にあるベンチへ腰を下ろし、弁当箱の紐をほどいた。桜ちゃんは隣に座ってその様子を見ている。なんかすごい丁寧に結んであるな。これだけで桜ちゃんの性格が分かる。


ゆっくり蓋を開けると――


「……っ」

そこには不器用なのに一生懸命さだけはとんでもなく伝わってくるおかずたちが並んでいた。


卵焼きはちょっと形が崩れてて、ウインナーは切れ目が微妙にズレてる。ブロッコリーは……なんか多すぎるな。


でも全部、一生懸命作ったんだろうなってのが伝わってくる。


「すごいね。美味しそうだよ」

「す、すごくはないです……!でも頑張りました……!」

横で桜ちゃんは顔を赤くして身体を小さくしていた。


「食べても……いい?」

「……はいっ」

桜ちゃんはガチガチになりながら答えた。俺は箸を持ち、まずは卵焼きをひと口。ほんの少し味が薄くてでもほんのり甘い。


「……うまい」

その瞬間、桜ちゃんの肩がビクッと跳ねた。


「……ほ、ほんとですか?」

桜ちゃんは胸の前でぎゅっと手を重ね合わせながら俺を見つめている。その瞳は期待と不安で揺れていて、俺の言葉ひとつに全部が左右されるみたいだった。


「ほんと。素直にうまいよ」

俺がそう言うと桜ちゃんは小さく息を吐き、肩の力がふっと抜けた。


「よかった……北斗くんどう思うかなって朝からずっと緊張してました……」

「そんな……朝から?」

「だって……」

桜ちゃんは視線を落とし、指先でもじもじスカートの端をつまむ。


「北斗くんに食べてもらうなら……失敗はできないので」

「……そっか」

なになに何それ……!?なんか桜ちゃんが分からない!

桜ちゃんは俺の反応を伺うようにちらっと横目で見てまたすぐに視線を逸らす。


「じゃ、じゃあ次これも……」

動揺を誤魔化すようにウインナーを口に運んだ。見た目はちょっと不器用だけど、味は普通においしい。


「これも美味いよ」

「ほ、ほんとですか……?切れ目がうまく入らなくて……指切りそうになって……」

「無理しなくてよかったのに」

「む、無理はしてないです……!」

桜ちゃんはまたもじもじし始める。絶対無理してるけどなんか言わせちゃいけない気がして黙る。

しばらく俺が黙って食べていると桜ちゃんはぎゅっと膝の上で手を重ねた。


「……それでその……北斗くん」

「ん?」

桜ちゃんは一度深呼吸してから顔を上げた。

さっきまでの照れくさそうな雰囲気と違い、ほんの少しだけ覚悟を決めたような目。


「わ、私……すごく迷ったんですけど……」

言葉が震えていた俺は箸を止めてゆっくりと桜ちゃんの方を見る。


「迷ったけど……どうしても、お礼だけじゃなくて……もうひとつ……言いたいことがあって」

喉が鳴った。なんだこの空気。。 


「私、昨日のお兄ちゃんを見て……やっぱり恋っていいなって思ったんです――」

ありがとうございました!

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