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英語の時間

続きです!読んでください!

「ダメだ……」

莉子ちゃんと少し会話が続いたあの日から三日経った。この三日間俺と莉子ちゃんの会話は――ゼロだった。


話したい……一度話してしまったことで昂りを知ってしまった俺は話したい欲が日に日に強くなっていた。


どうしたら話せるか。安定は本だけど……前がうまくいっただけで次もうまく行くとは限らないしな。どうしたものか……


「……くん。浅倉くんっ!」


莉子ちゃんと話そう作戦を頭の中で組み立てていると隣の席から俺の名前を呼ぶ声が響いた。


「あっ……木南さん?どうした?」

俺を呼んでいたのは木南有栖だ。俺が隣を向くと、木南は頬を膨らませてこちらをムッと睨んでいる。


「も〜。どうしたじゃないよ!ペアワークの時間ですっ!」

木南はそう言うと自分の机をガンッと俺の机に繋げてきた。


「ペアワーク……」

英語の時間だったっけ……もう時間割とか気にしてなかったな。


「ごめんごめん。やろっか……」

そう言ったはいいものの周りからの視線をすごく感じる。男からの視線が痛いくらいに突き刺さってる。俺なんかがすみませんね……申し訳ないけど俺だって本当は莉子ちゃんと――


「……っ!?」

莉子ちゃんは俺の目の前で他の男とペアワークをしていた。


許せん……!話したことないけどお前は嫌いだ!木南をチラチラ見て莉子ちゃんに興味なさそうなのが逆にムカつく!ふざけんな!堪能しろや!


「も〜。またぼーっとしてる。持ってきたからやろうよ!」

木南が机をトントンと叩き、一枚のプリントを俺と木南の間に置いた。ペアワークの内容は英語のクロスワードゲームだった。ペアで考えて全て埋めろって感じのゆるいやつだ。


「ごめん。やろやろ」

俺も木南に集中しなくては。莉子ちゃんに引っ張られちゃダメだ。莉子ちゃんがかわいすぎるってだけで木南ももちろんかわいい。普通にこれとない機会だぞ。


「じゃあ私は縦攻めるから、浅倉くんは横攻めて」


「OK。任せて」

そう言ってグッドポーズを作って見せたが、俺は英語が苦手。一年の時も大体、英語が一番点数が低かった。進学校と呼ばれるこの高校で著しく俺は英語能力を欠いているのだ!


「……」

何も分からないが……?

分かるのは英単語の頭文字と文字数。そしてその単語のヒントの英文。でもヒントの意味が八割分からないから実質分かってるのは頭文字と文字数のみ。


「……あっ」

木南は「うーん」と考えては書いて、考えては書いてを繰り返している。大体合ってそうで困る。木南は抜けてそうなところがあるけど頭がいいってのは本当だったんだ。


「進んでないよ〜!真面目に考えてる?」

ペンが進んでいない俺を見かねて木南は声をかけてきた。


「考えてる。考えて考えて……何も分かんないんだよ」


「あははっ。浅倉くん見た目頭良さそうなのにちょっと意外」

見た目頭良さそうはちょっと悪口でもあるよなと思いながら俺は笑い返す。迷惑をかけているのは俺の方だ。


「ごめん。一緒に横も一緒に考えてくれる?」

「もうっ。仕方ないなぁ」

「頼りになります……」

俺は情けなく頭を下げてから、再びプリントを見渡した。そこであることに気づく。


俺、普通に女の子と話せてないか?


中学の頃までは女の子と話すってのがめちゃくちゃ怖かった。それは俺が女子の世界を知らないからだ。話していて少しでも変なこと言ったり、仕草がキモかったりしたらすぐに女子のコミュニティに広がって終わる。ずっとそう思っていた。


高校に入ってからは自然と女の子を避けていた。苦手なイメージがあったし、莉子ちゃんが居たから。


でも話してみたら案外大丈夫だった。相手がめちゃくちゃ明るくてとっつき易い木南ってのもあるし、少しだけど莉子ちゃんと話して自信がついたってのもある。古川を見てて、そんなの気にするのもバカみたいだなって思ったのもある。


いろんな理由が重なって俺は女子と平気で話せるようになっているのかもしれない。莉子ちゃんを除いてはだけど。それが問題なんだよなぁ……逆に莉子ちゃん以外と話せなくていいから莉子ちゃんと話したいんだけど。


「出来た」

「えっ……もう?」

あまりの速さに驚いてプリントを見ると――


"stupid"、"idiot"と書かれていた。


「出来てる……すごいね」

俺は感心して木南の方を向くと


「む……」

なぜか木南はぷいっとそっぽを向いた。


「え?」

「ふふっ。有栖、これ間違ってるよ」

俺が困惑していると莉子ちゃんが振り返ってプリントを覗いていた。

やば。かわいい。


「分かってるよ!浅倉くんに言ってるの……!」

「えぇ?普通に正解してるんじゃ……」

文字数も頭文字も合ってるし……


「浅倉くん。この二つはね、簡単に言ったらバカって意味だよ」

莉子ちゃんは笑いながら俺に答えを教えてくれた。


「え?」

そんなことが書いてあったんですか?


「浅倉くんずっとぼーっとしてるんだもん。ばーかばーか」

木南はそっぽ向いたままそう言った。


「ごめん。まじでごめん!」

俺は必死に謝った。これは嫌われてしまう!


「……無理」

終わった〜!木南に嫌われるならもう全員に嫌われるわ!


「有栖。許してあげなよ。ボーってしてたのかもしれないけど浅倉くんにはきっと理由があるんだと思うよ?」

莉子ちゃんが俺を庇ってくれる。ピンチなはずなのにそれがめちゃくちゃ嬉しくてニヤけそうになる。


「なんか奢ってくれるなら許す」

「も〜ダメだよ。有栖?」

「いいよいいよ。俺が悪いのはそうだし……ここは奢らせてもらいます」

俺は莉子ちゃんを遮って、木南の要求を受けた。俺のせいでこの二人の関係に傷をつけるわけにはいかない!ここは素直を受けるべきだし、普通に俺が悪いので謝罪をさせてください!


「ほんと?」

木南はやっと振り返ってくれた。


「ほんとほんと。購買でもコンビニでも……カフェとかでも何でもいいよ」

とにかく満足させなくては……!


「えっ!じゃあ昨日から始まったスタマの新作飲みたい!」

「じゃあそれ奢るよ」

背に腹は変えられん。


「なら許す!めちゃくちゃ許すよ〜!」

木南はいつもの笑顔に戻ってくれた。笑いながら間違った単語を直して正しいものにしていく。


「……本当にいいの?結構するよ?」

莉子ちゃんが俺の顔を心配そうに見つめた。


「よ、余裕だよ!なんなら天城さんの分も奢ろうか……?」

「私は大丈夫。あんまり興味ないから」

調子乗って失敗した。余裕のある感じを見せたかったんだけど……


「じゃあ今日の放課後に行こ〜!」

木南はプリントを書き終わると、そう言いながら右手を突き上げた。


「ん?」

「え?」


「行こ〜って、もしかして……俺も行くの?」

「当たり前でしょ?奢ってくれるんじゃないの?」

「後から支払いするとかじゃ……」

「そんなめんどくさいことしないよ〜!一緒に行こうよ。予定とかあった?」

木南はめちゃくちゃ普通に言った。俺たち友達だったっけ?


「いや……ないけど」

自分の立ち位置ってのを理解してないのか!?木南と放課後にでも二人でカフェなんて……多分殺されるんじゃないかな。


「じゃあ行こう!」

「……分かった」

やばすぎる約束を取り付けてしまった。学校外で遊ぶ初めての女子が木南有栖なんて……どうなってんだ。莉子ちゃんのことが一番好きな俺だからまだ耐えられているが、本命が木南のやつだったら多分ここでぶっ倒れているだろうな。


俺はこの約束と莉子ちゃんのことでここからの授業が全く入ってこなかった。


ありがとうございました!

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