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鉢合わせ

続きです!

「確かめに行くって……どういうこと?」

思わず聞き返すと、桜ちゃんは少しだけ声を潜めて言った。


「明日の放課後。お兄ちゃんの待ち合わせを見に行くんですよ」

「え……?」

流石にそれは……と思ったが、桜ちゃんの目は本気だった。


「ちょ、ちょっと待って。いろいろ言いたいことあるんだけど」

俺はその真剣な眼差しから目を逸らし、整理する。


「その……あんまりよくないんじゃないかな?桜ちゃんは柴田の妹だけど柴田にもプライベートはあるしさ」

桜ちゃんを責めるような言い方にならないように。


「見に行くのは待ち合わせまでです。そこから先は追いかけません。これなら大丈夫じゃないですか?」

桜ちゃんは引かなかった。よっぽど気になってるんだな。


「えっ……でも」

俺がたじろいでいると桜ちゃんは言った。


「一番心配なのは北斗くんが松葉杖なことです」

「え。俺も行くの……?」

「当たり前です。共犯ですよ?」

勝手に共犯にされてるんだけど……?桜ちゃんはもう覚悟を決めた目をしていた。


「でも……俺が行ったら余計に目立つでしょ?」

「目立ちます。だからいいんですよ」

即答した。


「北斗くんが目立てば私は隠れられます」

「まさかの囮……?」

ひどい理屈だ。でもその顔は真剣そのものだった。


「北斗くんがバレても何の問題もありません。たまたまで済みます」

「済むかな……」

「でも私がバレたらたまたまじゃ済まないんですよ」

「それはそうだけど……」

桜ちゃんに押され気味な俺。あんまり強く言えないし……でもよくない気がするんだよなぁ。


「あと……北斗くんがいると安心します」

「え?」

ちょっと待って……!?そっちで攻めるのやめて?


「お願いします。北斗くんしか頼める人いないんです。本当に待ち合わせだけ見て、彼女かもしれない人がどんな人か見るだけです」

桜ちゃんの目が俺を貫いた。このまま俺が否定しても桜ちゃんは多分一人で行く。なら俺がいた方が……


「……分かったよ。でも本当に待ち合わせまでだからね」

そう言うと、桜ちゃんはぱっと表情を明るくした。


「はい!約束します」

その笑顔がずるい。後輩にそんなかわいい顔で「はい!」とか言われて断れるやつなんていない。


「でも本当に足手纏いだよ?俺」

「大丈夫ですよ。いざとなったら私がおんぶします」

自慢げに胸を張る桜ちゃん。


「無理でしょ。桜ちゃん華奢だし」

姉ちゃんよりだいぶ小さいから……150センチくらいか?


「できます。こう見えて力はあります」

桜ちゃんは腕を軽くまくって力こぶを作ってみせた。細い腕にそんな力があるようにはどうしても見えない。


「絶対無理だって」

「試します?」

「試して転んだら折れちゃうよ」

真顔で言うと、桜ちゃんは小さく笑った。それで俺も少し笑ってしまう。二人の空間にはふわふわした空気が漂っていた。


「でも……北斗くんが来てくれるなら大丈夫です」

「そんな信用して大丈夫?」

「北斗くんなら大丈夫です」

なんでそんなに信頼してくるんだよ。まあ嫌な気持ちはしないけど。


「じゃあ今日はこれで終わりです」

「終わりって?」

桜ちゃんは立ち上がると、スカートの裾を軽く整えた。


「作戦会議は解散です。明日放課後、校門前に集合にしましょう」

「え。もう帰るの?」

別にいて欲しいとかじゃない。ただ暇つぶしできる相手がせっかくいるのに帰ってしまうのが勿体無いと思っただけだ。


「……帰ってほしくないですか?」

桜ちゃんが立ったまま言う。


「なんかずるいなそれ……」

「うん」って言ったら俺がいてほしいみたいになるじゃん。


「ふふっ。ごめんなさい。でも流石に迷惑になると思うので失礼します」

「そう?」

俺が言うと、桜ちゃんはほんの一瞬だけ迷うように視線を揺らした。


「はい。……でも」

そこで言葉が止まった。


「でも?」

桜ちゃんは少しだけ目を細めて笑った。


「明日は一緒にいれるんですもんね」

「……まあ約束したし」

その答えに満足したのか、桜ちゃんは「やった」と小さく呟いた。


「じゃあ、また明日」

桜ちゃんは軽く手を振って、玄関へと向かった。


「玄関まで送るよ」

俺は立てかけた松葉杖を手に取り桜ちゃんを追った。


「すみません。松葉杖なのに」

「いーよ。怪我したのは俺が悪いし」

玄関で軽く会話する。桜ちゃんは靴を履くと、こちらを振り返って頭を下げた。


「お邪魔しました。また連絡しますね」

「うん。気をつけて帰ってね」

俺はそう言って手を振った。桜ちゃんはドアに手をかけて玄関を開く。


桜ちゃんがドアノブを回し、そっと玄関の扉を開けた。


ガチャッ。


「北斗ー!ラストに遊びに来たぞ!」

同時に外側から勢いよくドアが押し開けられた。完全にタイミングが一致してしまった。


「えっ」

「は?」

「……ん?」

三人とも固まった。ドアを開けた先にいたのは優馬だった。そして視界に入った桜ちゃんを見て、優馬の表情が固まる。


「……え、だれ?」

優馬が言った。


「この方は……」

桜ちゃんも目をぱちぱちさせている。


待て待て待て待て……俺は混乱する。

桜ちゃんは優馬を知らない。優馬も桜ちゃんを知らない。これは……やばいか?


「な、なにこの状況!?」

沈黙を破ったのは優馬の大きな声だった。


「お前、こんなかわいい子と遊んでたのか!?」

「ち、違っ……!」

説明するより早く、優馬が俺の胸倉を掴んで引き寄せてきた。俺、松葉杖なのに。


「なんだよ!聞いてねぇぞ!?彼女できたのか!?」

「誤解だ!待って……!痛いから!」

俺たちの様子を見て桜ちゃんは呆然としている。


「お前……莉子ちゃんは――」

「その話はやめよ……!?」

俺は優馬の口を塞ぐ。別にしてもいいんだけどなんか隠してしまった。無意識にやましく感じてしまっているのだろうか。付き合ってもないのに。


「りこちゃん……?」

桜ちゃんは考えるように目を伏せた。


「とにかく優馬落ち着けって。桜ちゃんも怖がってるし……」

「桜ちゃん!?何だその呼び方は!?」

やらかした。今の優馬はセンサービンビンだ。


「とにかく……!本当に何もないから。ね?」

俺は桜ちゃんとアイコンタクトを取る。


「はい。私が勝手に北斗くんの家に来たんです」

「北斗くんだと……!?ちょっ……え?はぁ?もう……え?」

語彙を失った優馬。木南とのスタマデートぶりに見たな。


「逆に落ち着いたな……」

大量の情報で脳がパンパンになってる。


「まあ……入れよ。説明するから」

俺は優馬を松葉杖と共に支える。


「私は……どうしたら?」

「大丈夫。こっちでなんとかするから桜ちゃんは気をつけて帰って」

「そうですか。それでは失礼します」

桜ちゃんは改めて頭を下げた。そして今度こそ、玄関のドアを開けて俺の家から去っていくのであった。


「……さて。どうしようか」

俺は右腕に抱えた放心中の優馬を見て呟いた。

桜ちゃんをこんなキャラにする予定は無かったんですけどね。。。

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