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恋路

続きです!読んでください!

「えぇ!?」

莉子ちゃんじゃん!?俺は慌てて顔を背ける。なぜかは分からない。でも偶然莉子ちゃんと会えた+私服+兄ちゃんと姉ちゃんがいるとかいろんなことが重なって今、莉子ちゃんを見るとなんかやばいことになる気がした。


「北斗?」

「今は静かに……!」

覗き込む姉ちゃんに必死に訴える。俺はチラッと莉子ちゃんの方を向いた。


「有栖いた〜」

小さく手を振りながら、満面の笑みで駆け寄ってくる姿はまるで太陽みたいに明るくて、周りのざわつきも全部吹き飛んでしまいそうだった。

木南が目立ちすぎててまだ俺の存在には気づいていないようだ。


「もう一人来たぞ……」

「あの子もクラスメイト?」

兄ちゃんと姉ちゃんは気軽だ。俺の状況なんてちっとも分かっちゃいない。これがどれだけのことか二人は分かっていない。


「有栖〜。どこ行ってたの?」

莉子ちゃんが到着した。俺は筐体に顔を伏せる。莉子ちゃんはまだ俺たち三人のことを木南の近くにいる他人だと思ってるみたいだ。


「ごめんごめん。ちょっと見つけちゃって」

「見つけちゃって?」

「うん。ここにあさ――」

木南がうずくまってる俺を見て言葉を止める。


「――何してるの?」

「マジで何してんの?」

「お腹痛いの?」

三人の問いかけが背中に刺さる。


「…………」

俺は無言を貫く。今になって選択を間違えたことに気づいた。


「どうしたんですかね?」

「さぁ?」

「この子ちょっと変なところあるから」

俺を囲んで不思議そうに話し合う三人。その様子を見て莉子ちゃんは木南に尋ねた。


「えっ……知り合いなの?」

「知り合いも何もこの人たちは浅倉くんのお兄さんとお姉さんだよ」

「えっ……!?」

莉子ちゃんが驚いて声を上げる。目が合うと兄ちゃんと姉ちゃんはペコリと頭を下げた。


「初めまして……浅倉くんのクラスメイトの天城莉子です」

莉子ちゃんもそれに返す。まだ俺に気づいてないのか?


「えっ……でもなんで浅倉くんのお兄さんとお姉さんと仲良くしてるの?」

「なんでって……浅倉くんもいるから」

莉子ちゃんの小声の問いに木南は純粋な目で返す。その返答に俺もビクッと肩が揺れる。


「えっ!?どこどこ!?」

莉子ちゃんはさらに大きな声を上げて周りを見渡した。視野狭くない?意外な一面発見した。


「…………」

もう無理か。俺は意を決して顔を上げた。


「……っ!」

視線が合う。莉子ちゃんの目とふわっとしたボブの髪。そしてそのかわいすぎる顔が俺を一瞬で飲み込む。息が止まったように胸がざわつく。


「あっ……浅倉くん?」

莉子ちゃんの声が近くて、まるで耳元で囁かれたみたいにドキッとする。俺は思わず手を握りしめて視線を逸らそうとしたけど、もう遅い。


「気づくの遅いよ〜……」

友達みたいなノリで話しかけてみる。トーン終わってるけど。


「ごめん!全然気づかなかった!」

莉子ちゃんは俺と目が合うと目を光らせて椅子の近くまで詰め寄ってきた。


「……っ!?」

なんか距離近くね……!?やばすぎ!

その時。近くからクスッと笑い声が二つ聞こえた。


「こっちか……」

「確かに北斗好きそう……」

莉子ちゃんを見ながら目を細める。最悪だ。バレた。


「すごい偶然だねっ」

莉子ちゃんは微笑んで、俺をじっと見つめた。


「そ、そうだね……」

「お兄さんとお姉さんと来たんだ。仲良いね」

「それ私も言った〜!」

木南が笑って空気を吹き飛ばす。ここで一呼吸。


「二人は北斗と仲良くしてくれてるの〜?」

姉ちゃんが普通に話しかける。流石コミュ強。


「はい!遠足も一緒に回りました!」

堂々と答える木南。こういうのってちょっと恥ずかしがったりするもんじゃないの……?でもなんか嬉しい。


「え〜!北斗がこんなかわいい女の子たちと遠足だって!」

姉ちゃんが兄ちゃんの肩を揺らしながら興奮する。


「遠足……北斗まじか」

兄ちゃんが俺を疑いの目で見てくる。「お前がこの二人と?」みたいな目だ。


「写真もありますよ!見ますか?」

木南がスマホをポケットから取り出す。


「ちょ……」

「絶対見る!!」

俺が止めようとしたけど姉ちゃんの声にかき消されてしまった。すっかり兄ちゃん、姉ちゃん、木南の三人の輪が出来上がる。


「はぁ……」

ゴールデンウィークはずっといじられるやつだ。俺はため息をついて俯いた。


「有栖すごいね……コミュ力が高いってやつかな……?」

莉子ちゃんも木南のコミュ強ぶりに少し引いていた。


「なんか恥ずかしいな……兄弟でゲームセンターにいるとこ見られるって」

「そうかな?兄弟の仲がいいって最高じゃない?」

その一言で心がスッと軽くなる。


「やば!もう一人かわいい子いるんだけど!」

「北斗場違いじゃね?」

「はぁ!?」

失礼な声が聞こえて来て顔を上げる。ブチギレようとしたが莉子ちゃんがいる+松葉杖で諦める。俺は盛り上がる三人を睨みながら莉子ちゃんに尋ねた。


「り……天城さんはなんでここに?」

「ここら辺で遊んでたら有栖が行きたいって言ったから」

莉子ちゃんは優しく返した。


「そっか。今日、水瀬は?」

「鈴香には「今日は一日中映画観る日だから無理」って断られたんだって」

「水瀬らしいな……」

二人の間に柔らかい空間が生まれる。莉子ちゃん特有の空気だ。


「浅倉くんは足痛いのに来たんだね」

「半ば無理矢理だよ。三人揃うのも珍しいからね……」

「へぇ……」

莉子ちゃんは俺の足元に視線を落とす。その横顔は心配そうで、それだけで胸がざわめく。俺は拳を握りしめてちょっと勇気を出してみた。


「でも来て良かった。天城さんに会えるなんて思ってなかったし……」

言った瞬間、自分でもちょっとやりすぎだと思った。莉子ちゃんは一瞬、固まって俺を見た。


「……え?」

その声がさっきまでの明るさとは違うのがわかる。戸惑ってるような、反応に困ってるような、そんな声だった。


そして目を逸らした。その頬に赤みが差したように見えた。


「あっ……いやその……」

俺は慌てて言葉を紡ごうとするけど、何を言えばいいのか分からなくなってしまう。


「……嬉しい?」

莉子ちゃんの唇が少しだけ緩む。


「うん……」

俺も顔を赤くして答えると、莉子ちゃんが小さく呟いた。


「じゃあ私も……来てよかった」

小さく呟かれたその言葉は、周りの喧騒なんて全部遮断して俺だけに届いた。


「…………」

何か言いたい。言わなきゃいけない気がする。でも声は出ない。俺はただ見つめ返すことしかできなかった。莉子ちゃんも目をそらさなかった。この距離、この空気、この静けさ。周りの賑やかな音が全部遠くに感じる。


何これ……?え?


胸がいっぱいになって、呼吸も浅くなる。ここに二人だけの世界が生まれてるみたいで。


もう少し、このままでいたかった。


「北斗!!」

バカでかい姉ちゃんの声が襲ってくる。俺と莉子ちゃんはビクッと肩を揺らした。


「ちょっと北斗!」

姉ちゃんに思いっきり腕を引っ張られて、俺は半ば強制的に向き直された。


「何して……」

「この写真の北斗めっちゃニヤけてる!」

「……やめろ!!」

スマホの画面には、遠足で莉子ちゃんと二人並んで笑って撮った写真。木南が爆笑しながら説明してる。兄ちゃんはなぜか感心してるし、姉ちゃんは大騒ぎだ。


完全に俺のペースは崩された。


「普段はこんな顔しないくせに」

「うるさいな……」

必死に否定する俺を見ながら莉子ちゃんがくすっと笑った。

さっきまでの距離とか空気とか、全部がまだ残ってる。胸の奥で跳ねている鼓動は恥ずかしいけど止められない。


偶然なんて言葉じゃ片付けられない今日がきっと俺の中で特別になっていく。

そこで一つ俺は確信した。俺の恋路は間違いなく進んでいる。と。

ありがとうございました!

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