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Let's game!

続きです!読んでください!

ゲームセンターの中に足を踏み入れた瞬間、まぶしいライトと電子音の洪水に思わず目を細めた。


「懐かし〜!あんま変わってないね!」

姉ちゃんが胸の前でぎゅっと手を握りしめて大興奮している。兄ちゃんは鼻で笑って腕を組んだ。


「昔はここ来るだけでお前ら二人のテンション異常だったよな。帰りは喧嘩でぐちゃぐちゃになるのに」

「今日はならないよ!」

姉ちゃんが抗議しつつも、すでに視線はクレーンゲームのあたりに吸い寄せられている。


「ほら北斗、滑るから気をつけてよ」

姉ちゃんがさりげなく腕を伸ばして松葉杖が引っかからないか確認してくる。一瞬だけ俺の足元を確認すると、すぐに顔を上げてニッと笑った。 


「よし!行くよ!」 

そう言った途端、まるで子どもみたいな速さでクレーンゲームへ突撃していく。


「テンション高えな……」

兄ちゃんが呆れ半分でつぶやき、俺も思わず苦笑した。姉ちゃんは振り返りもせず、狙ったぬいぐるみの前で立ち止まると、俺たちに向かって大きく手招きする。


「ほら早く!このネコ、絶対取りたいの!」

兄ちゃんがため息をつく。 


「はいはい。じゃあサッと取ってサッと行くぞ」

俺たちは並んでクレーンゲームに向かった。


「よーし……」

姉ちゃんは100円を投入しながらちらっと俺を見て言う。


「北斗は横見てて!」

「まあいいけど……」

そう言って俺はクレーンゲームの横側に移動する。


横から覗き込むと、姉ちゃんはもう完全に真剣モードに入っていた。

さっきまで子どもみたいにはしゃいでたのに、こういう時の集中力だけは昔から異常だ。


「……ここ……いやもうちょい右……」

小声でつぶやきながらレバーを微調整している。兄ちゃんは腕を組んだまま、その様子を見て苦笑した。


「昔からこうだったよな。UFOキャッチャーになると人格変わる」

「うるさいってば。静かに。動揺するから!」

姉ちゃんがピシッと言い放つ。兄ちゃんは「はいはい」と肩をすくめた。


「北斗いけてる!?」

「横はいーよ。いけてる」

俺はそう返すと姉ちゃんは「ここだ!」といいながらボタンを押した。クレーンがゆっくり降りていく。爪がぬいぐるみに触れた瞬間、姉ちゃんの体がぴくっと反応した。


「よしっ。掴んだ!」

わずかに持ち上がる。けれど途中でふわっと落下した。


「え、なんでっ!?今の絶対いけたでしょ!!」

姉ちゃんが両手をべったりつけて抗議し、兄ちゃんは呆れたようにため息を吐く。


「やっぱクレーンゲームは厳しくね?」

「厳しくてもこれは意地で取る!!」

姉ちゃんは財布から即追加の100円を取り出した。その顔は若干怒ってるけど、楽しそうでもある。


「ほら北斗、もう一回横お願い!」

「はいはい……」

姉ちゃんはレバーに手を置いたまま、ちらっと俺を見てくる。


「縦はここでいいでしょ。北斗、横は?」

「もうちょい前かな」

俺がそう言うと、姉ちゃんはすぐにレバーを微調整した。


「おっけ。横揃った」

「よーし!今度こそ!」

クレーンがまたゆっくり動き出す。さっきより爪がぬいぐるみの首の横にちょうどいい角度で入り込んだ。


「いける……いける……!」

姉ちゃんの足元が微妙に前後して、気付けば身を乗り出していた。


「いいよ……!」

爪がぬいぐるみをガチッと掴んだ。今度はぐらつきがほとんどない。


持ち上がって、運ばれて、落ち口の上でしばらく止まってから――


ストンッ。


「……」

一瞬の静寂。


「取ったぁああ!!」

姉ちゃんの叫びが爆音の店内に響く。

兄ちゃんは耳を押さえて「うるせえ……」と文句を言い、俺は思わず笑った。


「北斗!とれた!」

姉ちゃんはぬいぐるみを抱きしめて、くるっと俺の方に身体を向ける。


「知ってるよ」

そう返したのに姉ちゃんはまだ笑ってる。めちゃくちゃ嬉しそうな笑顔。


「北斗!見て見て!めっちゃかわいい!!」

姉ちゃんはぬいぐるみの顔を俺の目の前までドンッと突き出してくる。俺は思わずのけぞった。


「近いって……」

「ほら触って!ふわふわ!」

松葉杖でバランス崩したら困るから、仕方なく片手で軽く触る。


「……ふわふわだな」

「でしょ?やっぱこの子取ってよかった!」

姉ちゃんは上機嫌のままふにゃっと顔を綻ばせて、ずっと抱きしめて離さない。


「はいはい。満足したなら次行くぞ。長居するとまたテンション暴走するからな」

兄ちゃんが呆れ気味に言う。


「暴走しないよ!今日はちゃんと大人だから!」

と言いながらも、ウキウキな足取りは隠せていない。


「北斗も行こっ!」

姉ちゃんに手招きされるまま歩き出すと、兄ちゃんが先に指差していた。


「あそこでいいだろ。ほら、格ゲー空いてる」

派手なエフェクトをまき散らしながらキャラ同士が殴り合っているゲーム機が4台並んでいた。

昔よく三人でやったやつの新作っぽい。


「懐かしい!まだあるんだこれ!」

姉ちゃんはぬいぐるみを抱いたまま、目をまた輝かせる。


兄ちゃんは「よし」と短く言い、ポケットから100円玉を取り出した。


「まずはウォーミングアップだな。北斗、お前が相手しろ」

「俺?」

「虹華は弱いし、負けたら拗ねるからな」


「聞こえてるよ!?」

姉ちゃんがぬいぐるみの頭をポフッと叩いて抗議した。


「まあいいけど……」

俺は松葉杖を立てかけてから椅子に座った。


「も〜!」

姉ちゃんはむすっとしながらもぬいぐるみをぎゅっと抱える。兄ちゃんはさっさと筐体にコインを入れて、俺の方を顎で示した。


「行くぞ」

「はいはい」

画面がキャラセレに切り替わる。兄ちゃんは昔と同じ、でっかい斧を振り回すキャラを選んだ。


「まだそれ使ってんの?」

「俺の相棒だからな」

俺も迷った末に、昔はよく使ってたスピード型のキャラを選ぶ。


「北斗頑張って!」

横から姉ちゃんが身を乗り出してきた。ぬいぐるみを抱えて実況者の顔になっている。俺は「よし」と息をついた。


「負けても泣くなよ?」

「泣かないし、負けないから」

俺たちはお互い、画面に集中した。


“READY… FIGHT!!”


斧を担いだ兄ちゃんのキャラが開始と同時に地響きみたいなステップで近づいてくる。


「来る……」

俺はスピード型の軽いステップで間合いを取る。


「いいよ!避けて避けて……」

姉ちゃんが横で実況してくる。兄ちゃんはほんのり口角を上げた。


「スタイル変わんないな。逃げてちゃ勝てないぞ!」

言いながら、兄ちゃんのキャラが急加速して斧を横薙ぎに振るう。


「っと……」

俺はギリギリでバックステップ。そして――


「見切ってたんだよ!」

俺はステップの流れそのままにスティックを倒し、指に力を込めた。


「……入る」

兄ちゃんのキャラは攻撃力が高い代わりに外した時に隙が生まれやすい。そこに俺は最速入力で突っ込んだ。俺のキャラの蹴りが兄ちゃんのキャラの腹部を正確にとらえる。


「おっしゃカウンター!!」

思わず声が出た。


「今の入るの!?すご!!」

姉ちゃんの驚きと喜びの混じった声が響く。兄ちゃんはわずかに目を見開いた。


「そこ差し込むかよ……」

悔しさよりも純粋に勝負を楽しんでいる顔。カウンターを取った俺は迷わずコンボに移行する。


「まだまだっ……!」

連続のスピード攻撃を叩き込み、最後に上段キックで空中に打ち上げる。兄ちゃんのキャラがふわっと宙に浮く。そこへさらに追撃。

空中追い打ちの小技を繋いで、斜め下に叩き落とすフィニッシュ。


ドガァッ!!

派手なエフェクトが弾け、兄ちゃんのキャラが地面に激しく転がった。

兄ちゃんのキャラの体力ゲージは半分になった。


「痛ぇな……」

兄ちゃんが歯噛みする。俺は息を整えながらちょっとだけドヤ顔で言った。 


「だから負けないって」

「マジで成長してるじゃねぇか。でも次はこっちの番だ」

兄ちゃんはニヤッと笑った。


斧を構える兄ちゃんのキャラがゆっくりと立ち上がる。空気がまた一段階、重くなる。


「北斗いけるよ!そのまま押して押して!」

姉ちゃんがぬいぐるみ抱えながら叫ぶ。


「来いよ」

「言われなくても……!」

俺はスティックを握り直し、画面をにらみつけた。

ありがとうございました!

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