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兄弟ドライブ

あけましておめでとうございます!今年もどんどん投稿していくのでぜひ読んでください!よろしくお願いします!

玄関まで松葉杖でゆっくり移動していくと、ちょうど姉ちゃんが部屋から出てきた。


「お待たせ!!」

その姿に俺は思わず固まった。


「……誰?」

「何その反応!ひどっ!!」

いや違う。悪い意味で言ったんじゃない。


姉ちゃんの格好はめちゃくちゃ気合い入ってた。お出かけします!っていう格好と顔をしてる。


「張り切りすぎだろ……」

思わず口から漏れた。姉ちゃんは「えへへ」と笑いながらくるっと一回転する。


「だって久しぶりの三人なんだよ?ちゃんとするでしょ!」

いつもよりちょっとだけきれいめで、でも気取りすぎてなくて。

日常の延長だけど、特別感はちゃんとあるみたいな格好だった。


兄ちゃんが玄関に現れて、姉ちゃんをじろっと見てにやっと笑う。


「お前、その服……デートでも行くの?」

「ちがうし!!」

姉ちゃんは頬を染めて兄ちゃんの肩をばんっと叩いた。


「ほら北斗、靴履ける?手伝おうか?」

「いや大丈夫……片足ずつならいけるし」

「じゃあ転ばないように壁持って……はい……そこっ!」

横でちょいちょいサポートを入れてくるのが過保護で、でもなんかありがたかった。


俺が靴を履き終えた瞬間、姉ちゃんはぱぁっと嬉しそうな顔になって言う。


「よしっ!じゃあ出発しよ!」

兄ちゃんが鍵を手に持ちながら言う。


「車出すから先乗っとけ。虹華はテンション抑えろよ。怪我人ついてけねぇぞ」

玄関を出てそのまま兄ちゃんの車へ向かう。

松葉杖でトントン進む俺の横で、姉ちゃんは相変わらずテンション高め。


「よし北斗、先に乗って!」

姉ちゃんが後部ドアを開けてくれる。


「……ありがと」

シートに座り込むと同時に、姉ちゃんも反対側のドアからすっと乗り込んでくる。


兄ちゃんが運転席に乗り込んでシートベルトを締める音がして、車内にふわっと静けさが落ちた。エンジンがかかると同時に姉ちゃんは俺の足元をちらっと見て心配そうに眉を寄せる。


「痛くない?大丈夫?」

「大丈夫だって。家出る前にも同じこと聞かれたし、誘ったの姉ちゃんだから」

「遊びたいけど心配なんだもん!」

むくれたみたいに言うけど表情は優しくて。それを見た兄ちゃんがバックミラー越しにニヤニヤしてくる。


「虹華、過保護スイッチ入ってんぞ」

「うるさい!放っといて!!」

姉ちゃんは兄ちゃんに言い返しつつ、俺のほうにはそっとブランケットをかけてくれた。車に常備してるやつだ。


「それ兄ちゃんのやつだろ……」

「いいの!北斗が寒いかなって思って!」

兄ちゃんは呆れたように笑いながら車をゆっくりと発進させた。


車が大通りに出て一定のリズムでタイヤがアスファルトを踏む音だけが車内に広がる。姉ちゃんは窓の外を見ながら鼻歌なんか歌っていて、兄ちゃんは運転に集中している。でもミラー越しにたまに俺らの様子を見てる。


少し間があいて、なんとなく気になって俺は口を開いた。


「……で、どこ行ってんの?これ」

俺がそう言うと、姉ちゃんがぱっとこっちを向いた。


「言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ。誘われた時もお出かけする!しか言われてないし」

「えへへ。サプライズってやつ?」

微妙に語尾が上がってて完全に怪しい。

そう思って兄ちゃんの方を見たら、窓の外に目を向けたまま苦笑していた。


「こいつが全部決めた。俺は運転手」

「私だけのせいにしないで!?」

姉ちゃんはむーっと頬を膨らませて、でもすぐに俺に向き直る。


「三人といったら見たいな場所だよね〜」

「三人といったら……?」

そんな場所あったか?


「大丈夫。楽しい場所だよっ」

そう言って、姉ちゃんは満足げに胸を張った。


「何で姉ちゃんが誇らしげなんだよ……」

俺は呆れながら呟く。


「まあもうすぐ分かるよ。そろそろ見えてくるぞ」

兄ちゃんがそう言って交差点を曲がった。


「ここら辺?まじで何だ……?」

「も〜。小さい頃三人でよく行ったじゃん」

「三人で……?」

頭の中でぐるぐる考えを巡らせる。動物園?デパート?祭り?公園?

いや。姉ちゃんのこのテンションとここの近く……


該当しそうな場所がいくつかあったけど、どれもしっくりこない。


「分かんね〜」

正直に言うと、姉ちゃんはぷくっと頬を膨らませた。


「思い出してよー!あんなに行ったのに!」

「ヒントちょうだい」

「ヒントはね……」

姉ちゃんは貯めてから言った。


「三人で行くと絶対に喧嘩する場所……かな?」

「ヒントっていうか答えじゃね?」

兄ちゃんが即ツッコミを入れ、俺の脳内にもようやくピースがはまる。


喧嘩……三人でよく行った。ここからすぐ?


「……分かったかも」

俺が呟いた瞬間、姉ちゃんが満面の笑みになった。


「見えたよ!北斗!」

姉ちゃんが勢いよく指さした先、大通りの向こうに派手なネオンの看板が見えてきた。


赤と黄色のロゴ。入口の脇に並ぶUFOキャッチャーのライト。

ゲーム音が外にまで漏れてるあの雰囲気。


「……やっぱり」

思わず声が漏れる。


姉ちゃんはドヤ顔で胸を張った。

「そう!ゲームセンターです!三人で行くって言ったらまずここでしょ!」


「昔はここ来るたびに俺が虹華と北斗倒しまくって二人とも泣いてたよな〜」

兄ちゃんがハンドルを切りながら苦笑する。


「「そんなことないよ!」」

俺と姉ちゃんの声がハモる。そんな反抗を気にも止めず、兄ちゃんは昔を思い返していた。


「お前らの協力プレイしても俺に勝てなくて、帰りの車でめっちゃ不機嫌になるっていう恒例行事あったな〜」

「そんな昔の話いいの!はいはい着いた着いた!」

姉ちゃんが強引に話を打ち切るみたいにシートベルトを外す。


車がゆっくりと駐車場に入っていく。俺は窓越しに見えるゲームセンターを眺めながら妙な懐かしさに胸がくすぐられた。


確かに三人でくると絶対ケンカになった。

特に姉ちゃんは負けず嫌いだから、兄ちゃんにボコられて本気で泣いたこともあったな。


車が音を立てて停まった。同時にエンジンがふっと落ちて、車内に静けさが戻る。


「よーし。着いたぞ」

兄ちゃんがシートベルトを外しながら言う。それと同時に姉ちゃんはドアを開けて外に出た。


「早……」

本当に楽しみだったんだな……。

俺はドアを開けて、松葉杖を準備する。


「北斗、降りるのゆっくりね!足ぶつけないでよ?」

「分かってるって……」

先に降りた兄ちゃんが外から松葉杖を受け取ってくれて、姉ちゃんはドアを押さえてくれている。


「よいしょっと……」

俺は左足を庇いながら外に出た。やっぱりこの生活クソめんどくさい。


「よーし!じゃあ行こ!」

俺が外に出ると、姉ちゃんが両手を腰に当ててやる気満々で宣言する。


兄ちゃんは車の鍵を閉めながらうっすら笑った。

「虹華、走るなよ。北斗が追いつけないから」

「走らないし!今日はちゃんと見守るって決めたんだもん」


ゲームセンターの入口に向かって歩き出すと、自動ドアの隙間からピコピコ音が漏れてくる。


「うわ……この音懐かしいな」

俺が呟くと、姉ちゃんが嬉しそうに振り返った。


「それ!蘇ってくる……」


テンションを上げながら入り口へ。

松葉杖のカツ、カツという音に合わせ、姉ちゃんが歩幅を合わせる。

普段なら絶対前に飛び出していくタイプなのに今日はちゃんと待ってくれる。


入り口の前で、兄ちゃんがふと立ち止まって言った。


「最初、どれやる?」

「UFOキャッチャー!!!」

姉ちゃんが間髪入れず叫ぶ。


「あ、俺金持ってないけど」

正直に言ったら、兄ちゃんと姉ちゃんが一拍置いて――


「奢ってやるよ」「奢るよ〜!」

二人の声が同時に響いた。


「大学生頼もし……」

兄ちゃんはドヤ顔して、姉ちゃんは得意げに頷いてくる。


そのまま三人で自動ドアに向かって歩いていくと、センサーが反応してドアが開く。


ピコピコとゲーム音が一気に押し寄せてくる。うるさいくらいの光と音。


「よしっ!入るよ北斗!」

「ついて来いよ怪我人」

「はいはい……」

姉ちゃんの弾んだ足取りと兄ちゃんの頼もしい背中。それを松葉杖で追いかけながら、俺は思わず笑ってしまった。


なんか……本当に久しぶりだな。この感じ。

懐かしさを感じながら三人でゲームセンターの中へと踏み入れた。

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