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水瀬鈴香はちゃんとかわいい

続きです!読んでください!

「……桜ちゃんが浅倉のことどう想ってるか」

そう水瀬に言われた時、俺はすぐにその言葉を理解できなかった。


「えっ……?」

「桜ちゃんとは何回くらい話した?」

「何回……五回くらいだよ。でもガッツリ一緒にいたのは猫カフェが初めてで……他は全部廊下とか、柴田が一緒とかだよ」

そう言いながら桜ちゃんの様子を思い出す。


桜ちゃんが俺のことどう想ってるかは分からないけど、あの時、俺は桜ちゃんと一緒にいちゃいけないと思った。

それは何故?桜ちゃんに少し傾きそうになったからか?じゃあ傾きそうになったのは何故?桜ちゃんに期待をしてしまったから?


「桜ちゃんも浅倉のこと他とは違う目で見てるのかもね」

「……それはないでしょ」

口ではそう言いながらも心の中はモヤモヤでいっぱいだった。


「……って言いながら実は浅倉が揺れてんじゃないの?」

「そんなわけないだろ……!」

水瀬の揶揄い半分の発言に俺は反応する。思ったより大きな声が出て、少し焦ってしまう。


「ごめんって」

「違う違う……マジで怒ったとかそういうのじゃなくてさ」

慌てて否定すると水瀬は「分かってるよ」といいながら笑った。


「でも莉子の前で照れるのは良くないよねぇ」

「それは……そうですね」

確かに莉子ちゃんの前で桜ちゃんに照れるって結構まずい行為だ。


「好きだからじゃなくてかわいいから照れちゃうんだろうけど、我慢しなよ?」

「めちゃくちゃ頑張ったよ……」

でも"北斗くん"なんて呼ばれたことないからな。そう呼ばれると照れ不可避なんだよ……


「ていうか。かわいくて照れちゃうなら何で私には照れないの?」

「え?」

水瀬の純粋な問いかけに思わず間抜けな声が出る。


「まずさ、私のことかわいいって思う?」

「ちょちょ……!何の話!?話が飛びまくってるんだけど!」

慌てて俺は水瀬を遮る。会話が変な流れに傾いている。


「答えてよ。これも浅倉の成長のため。かわいいって思うんですか〜?」

水瀬にじーっと見つめられる。これが俺の成長に繋がるのかは分からないけど答えないとダメみたいだ。


「そりゃ……かわいいとは思うけど」

莉子ちゃんを認識する前は水瀬派だったし……俺がそう言うと、水瀬はスッと頷いた。


「だよね。私かわいいよね」 

「自信がすごいな……」

水瀬レベルになると当たり前になるのか……


「じゃあ私と桜ちゃんの差は何だろうなぁ。莉子に照れるのはもちろんだけど、桜ちゃんと私は同じ感じじゃなきゃおかしくない?」

「それはそうだね……」

莉子ちゃんのことが好きなのは絶対そう。でも水瀬の言う通り、木南とか水瀬には感じない何かを桜ちゃんには感じてしまったんだ。それが何なのかは分からないけど。


「……でももし本当に桜ちゃんが浅倉のこと気になってるなら私はどうすれぱいいんだろ」

水瀬は珍しく俯いた。


「一番は浅倉と莉子がくっつくこと。二人は友達だし……そんな二人がくっついてくれるならそれ以上はない」

「えっ……」

水瀬の熱すぎる言葉に喜んだのも束の間。


「……でも私は他の女の子の恋を邪魔したくはないなぁ」

水瀬はそう言って小さく息を吐いた。いつもの強気な笑顔じゃなくて、どこか本音がにじんだ横顔だった。


「水瀬……」

俺が何か言おうとすると、水瀬はぱっと顔を上げ、急に表情を明るくした。


「ま、桜ちゃんがどう想ってるかは分かんないけどね」

さっきまでの沈んだ雰囲気が嘘みたいに、冗談を仕込んだ笑みを浮かべる。


水瀬は立ち上がり、軽く伸びをしながら振り返る。


「人の気持ちとか深読みしたところで分かんないし。浅倉は浅倉で、やることちゃんとやりなよ。私は私で協力するから」

「心強いよ……ありがとう」

「莉子のためだからね〜」

そう言って、にかっと笑った水瀬の顔はさっきの影がどこにもなくて

なんかちょっとホッとしてしまった。


「じゃ、帰ろっか」

水瀬がカバンを肩にかけながら言った。

教室にはもう誰も残っていなくて、窓からの夕日が床に長い影を落としている。


「浅倉、車?」

「そう。今日は多分姉ちゃんが迎えに来る」

「あっそうだ。昨日めっちゃ美人なお姉さんが現れた!みたいな噂になってたの多分、浅倉のお姉さんだよね」

「そんなんあったのか……?」

俺は松葉杖をついて、ゆっくり立ち上がる。途中で水瀬が肩を支えてくれて形が安定した。


「ありがと」

「いえいえ。車まで一緒に行くよ。転んだら困るし」

からかい半分の声が廊下に響く。その軽さにさっきまでの重たい空気が完全に霧散していく。


「転ばないって……」

そう言いながら歩き出したけど、水瀬は俺の二歩後ろくらいで、まるで監視員のようにずっと目を離さない。

俺たちは夕焼け色の廊下を並んで歩きながら教室を後にした。


⭐︎


次の日。

ゴールデンウィーク初日がやってきた。


朝の空気は少しだけひんやりしていて、窓から差し込む光がやけに眩しかった。

松葉杖生活の俺に長期休みは正直ありがたい。学校までの移動がないだけで体力の節約になる。


「北斗〜、起きてる〜?」

姉ちゃんがドアを軽くノックして入ってきた。

寝癖をまとめたみたいな適当なお団子頭で、コンビニ袋を提げている。


「朝ごはん買ってきたよ。痛み止め飲むなら何か食べないとでしょ」

「……あぁ、ありがと」

「リビング行こ〜。お姉ちゃんがおぶってあげる」

「二人とも松葉杖になりそうだから無理」

姉ちゃんは「ちぇーっ」と口を尖らせながらも、先にリビングへ歩いていった。

俺は松葉杖をつきながらゆっくりと立ち上がる。少しだけ足首がズキっとするけど、昨日よりはましだ。


リビングに行くと、兄ちゃんがソファでストレッチしながらテレビをつけていた。


「お、怪我人おはよ」

「……呼び方やめろ」

そう言いながらテーブルを見ると、姉ちゃんが買ってきたコンビニの袋にはサンドイッチやヨーグルトがぎっしり詰まっていた。


「なんか多くね?」

「うん!北斗が選ぶの面倒くさいかなって思って!」

姉ちゃんの明るさは朝からフルスロットルだった。兄ちゃんは兄ちゃんで笑っている。


「まあありがと。いただきます」

俺はゆっくり腰を下ろして、朝食を手に取った。


朝食を食べ終わって、俺が痛み止めを飲んで一息ついた頃だった。

「よしっ!」

姉ちゃんが突然、テーブルをぱんっと叩いて立ち上がる。


「遊びに行こう!北斗!」

「……は?」

あまりにも唐突すぎて、スプーンを持ったまま固まってしまった。


「え、いやいや……俺、松葉杖なんだけど?」

「知ってる!」

「無理でしょ」

「ゴールデンウィークは遊べると思って楽しみにしてたんだよ!?松葉杖でも行こうよ〜」

姉ちゃんは口を尖らせ、ほっぺをぷくっと膨らませて完全に拗ねモードに突入した。


「流石に無理でしょ……また次の機会に」

「絶対断るじゃん!いつも行ってくれないんだから!」

姉ちゃんは両手でテーブルを掴んで揺らしながら、小学生みたいにジタバタし始めた。


「ちょ、ちょっと、テーブル壊れる壊れる!」

横で兄ちゃんがストレッチの姿勢のまま爆笑している。


「いやいや。俺、ほんとに歩くの遅いし……」

「いいよ!ゆっくりで!むしろお姉ちゃんが北斗を押すから!引っ張るから!運ぶから!!」

「いや、介護が過ぎるだろ……」

姉ちゃんはくるっとこちらに向き直ると、悲しそうに眉尻を下げて言った。


「だって……久しぶりに家族三人の休みなんだよ?お兄ちゃんも今日暇でしょ?せっかくなら三人で出かけたかったの!北斗が怪我してるの分かってても……行きたい気持ちは消えないんだもん……」

その言い方が妙に幼くて、でもちょっとだけグッときた。


「…………」

兄ちゃんがニヤニヤしながら俺を見る。


「北斗、泣かせんなよ。虹華はずっと心配してたんだぞ」

「泣いてないし!」

姉ちゃんはぎゅっと握りこぶしをつくる。


「絶対楽しいから!ね?家の近くでもいいからさ!」

そこまで言われると、さすがに心が揺れる。


怪我してるのに外に出るのは面倒だし、正直ダルい。でも姉ちゃんが本気で楽しみにしてたのは伝わってきてた。


「……分かったよ。行くだけ行く」

俺がそう言った瞬間。姉ちゃんはぱっと目を丸くした。


「……いいの?」

「近場だけならな。歩き回るのは無理だぞ……」

言った俺のほうが少し照れる。


「やったっ!ありがと北斗!」

姉ちゃんは跳ねて喜んだ。さっきまでの落ち込んだ顔もぱあっと花が咲いたみたいに顔が明るくなった。


「じゃあ準備してくる!待っててね!」

姉ちゃんはそう言うと自分の部屋に颯爽とかけて行った。


「そんな楽しみなのか……?」

俺がそう呟くと、兄ちゃんも立ち上がった。


「虹華からしたらお前はいつまでも世話の焼けるかわいい弟だよ」

「……もうそんな歳じゃねえよ」

ぼそっと返した俺の言葉に、兄ちゃんは肩をすくめて笑った。


姉ちゃんの部屋からは何を着るか迷っているらしい小さな騒ぎ声が聞こえてくる。


「……しゃーない。付き合ってやるか」

そう呟いたところで、兄ちゃんが軽く俺の背中を叩いた。


「ほら準備しとけ。すぐ連れてかれるぞ」


三人が揃うと家の中はやかましくて。でもちょっとだけあったかかった。


ありがとうございました!

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