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姫と騎士長

続きです!読んでください!

二十分後。昼飯を食べ終わった俺たち四人は一年生の教室がある北館の四階にやって来ていた。


「よーし!行くぞ!」

胸を張って先頭を歩く古川。それに続く藤本と俺。そして――


「……行きたくねぇよ」

なぜかめちゃくちゃ嫌そうな柴田。


「どーしたんだよ!行こうぜ!」

古川が柴田の背中を押す。


「嫌……行きたくない!」

柴田は思い切り拒否する。通り過ぎる一年生が怪訝な目でこちらを見ながら通り過ぎる。


「何でだよ!有栖ちゃんと鈴香ちゃん見に行く時はついて来てくれんじゃん!」


「一年は無理なんだよ……!」

「何それ。後輩が無理なの?」

俺は何となく尋ねる。


「そういうことじゃなくて……一年には俺の――」


「うおぉぉぉお!!」

柴田が何かを言いかけたところで男たちの歓声が響いた。近い。一年生の教室のどこかだ。


「ん?」

古川が止まる。


「この男たちの野蛮な声……かわいい女の子がいるぞ!」

古川は周りをキョロキョロし始めた。俺まで変なやつと思われるからやめてほしい。


「俺もそう思う!」

藤本も強く同意した。


「行くぞ!」

古川は声のする方へと走り出した。藤本もそれについて行き、俺もついて行こうとするが、柴田が動こうとしない。


「行かないの?」

「行ってもいいけどさぁ……」

「じゃあ行こうぜ〜。楽しそうだし」

莉子ちゃんへの愛を確かめるために俺は行くぜ!


「……分かったよ」

柴田は渋々、歩き出した。理由は分からないが一年生っていうのに問題があるみたいだ。


トボトボ歩く柴田の横を歩きながら、その人だかりのところまでやってきた。一年三組の教室だ。聞こえて来た通り、三組の教室は扉の周りに男たちが群がっていた。その中には古川と藤本もいる。


「おい!早く来いお前ら!」

古川は男たちに揉まれながら俺たちに声をかけて来た。だいぶ内側にいるな……


「何これ?」

俺は外側にいた藤本に尋ねた。


「三組にめちゃくちゃかわいい子がいるらしいよ。ちょっと聞いたけど有栖ちゃんと鈴香ちゃんクラスだって」


「まじか……」

莉子ちゃんクラスではないのか……残念。


「……けどな」

「ん?どうした?」

柴田が何かを呟いた気がして俺は問いかけた。


「なんでもない」

柴田は静かに首を振った。


「でもすごいな。この人だかり。本当に中にいんの?」

「いるらしいよ。古川がもう少しで辿り着くんじゃない?」

「うぉぉぉ!!」

確かに古川は既にめちゃくちゃ内側にいた。もう少しで教室に入れそうだ。


「これ何で詰まってんの?スルスル入れるもんじゃないの?」

「三組の男子が守ってるらしい。俺たちのマドンナだ!って言って」

「おもしろ。すごいなそれ」

そんなんあるんだ……木南と水瀬も一年の時はあったのかな?


「今行くぜぇ!」

古川はそう声を上げると群衆を抜けて、教室に侵入した。


「え?行ったけど」

奇跡起こしてる。これを抜けれたのか?


「行くなよ……!」

なぜか柴田が絶望した顔をする。


「よーし!来たぞ!」

教室の中から古川の声が聞こえてくる。


「藤本!俺たちもこじ開けて行こう!」

俺は藤本にそう言うと藤本は頷いてから腰を落として、群衆に突っ込んでいった。


「ちょ待って……!」

柴田が手を伸ばすけど俺と藤本は止まらない。


「かわいい子はどこだ……?」

古川の気持ち悪い台詞が聞こえてくる。俺たちが止めなくては……!


俺たちもどんどん群衆の中に進んでいた。藤本がデカくて強い。二人で力を合わせたら結構いける感じだった。


「よし……行け!」

最後に俺が合図をして力を振り絞ると俺と藤本、そして後からついて来た三人は三組の教室に転がり込んだ。


「よーし!」


「おう!来たかお前ら!」

古川は教室で注目を浴びていた。もちろん俺たちも。


「……やばいやばい」

柴田の顔が青ざめる。壁の方を向いてまるで顔を見せないようにしているみたいだった。


「あっ……かわいい」

藤本がそう呟くと、古川が反応した。


「どこ!?」


「あの子。窓側の前から三番目」

俺もそこを向いた。するとそこには怯えた様子でこちらを見ているハーフアップの女の子がいた。

その周りにはショートの女の子を筆頭にたくさんの女の子が囲むように座ってこちらを睨んでいた。


「……ナイス。正解だ!」

そう言うと古川はその女の子の元へと歩き出した。

いや待て待て!周りの子たちにめちゃくちゃ睨まれてるけど大丈夫か!?


「睨んでるけど……」

「そこの君!ちょっといいかな?」

少し近づいたところで古川は声をかけた。その様子を俺たちは教室の隅で見守る。


「…………」

その子は怯えたまま聞こえてないふりをした。代わりにショートの女の子が立ち上がる。


「何か用ですか?」

ショートの子は低い声で古川を睨む。その姿は覇気を纏っていてまるで今にも古川を殴ってしまいそうな感じだった。


「そこのハーフアップの子に惚れてしまった。そこを通してくれ!」

バカじゃん……!察しろよ!


「はぁ?先輩には申し訳ないですけど意味がわからないんで帰ってもらえますか?」

ショートの子は古川に詰め寄り、下から思いっきり睨み上げた。


これやばい。あのハーフアップの子は姫でショートの子はそれを守る騎士長。

このままじゃ古川が騎士長に殺されてしまう……!


「俺は帰らない!その子と喋るまでは!」

「ちょっと待て……!」

俺が古川を止めようと走り出すと――


「待ってくれ……!咲斗」

柴田が俺より先に手を伸ばしていた。


「ん?どうした陸也。お前のあの子に興味があるのか?」

「そんなわけねぇだろ……」

柴田は呆れたように首を振る。すると次の瞬間。


「え、陸也さん?」

騎士長は柴田の名前を呼んだ。


「……ごめん。冬華ちゃん」

柴田は気まずそうに俯いて謝った。


「え……?」

何この状況……意味分からん。


「何?知り合いなの?」「この人と知り合いなんですか!?」

古川とショートの子が同時に尋ねる。古川は嬉しそうで、ショートの子は怒っていた。


「……こいつは咲斗。俺の友達。この子は冬華ちゃん。妹の友達」

柴田は順番に説明をした。


「妹の友達?」

俺と藤本も近くまでやって来た。


「うん……」


「だから来たくなかったの?」

それにしては理由が弱い気がするけど。まぁ自分の友達がこんなことしてるの見られたら嫌か。


「冬華ちゃんもそうだけど……」

「お兄ちゃん……?」

騎士長の後ろから小さな声がした。


「「「ん?」」」

柴田以外の三人は困惑する。お兄ちゃんって聞こえたよ?


騎士長が横にズレると、そこには古川が狙っていた姫が立っていた。


「おぉ……かわいいぞ」

古川が声を漏らす。


「でもあの子、お兄ちゃんって……」

「桜……」

柴田が諦めたかのように呟いて、姫の肩に手を置き、俺らの方を向き直った。


「この子は……俺の妹の桜だよ」

「え…………」

衝撃発言に少しの沈黙が訪れた後――


「はぁぁああ!!??」

俺たち三人は腰を抜かして驚いた。


「え。待って。このかわいい子がお前の妹なの?」

古川は目を見開きながら柴田に問い返した。


「そうだよ……だから来たくなかったのに」

「お兄ちゃん……」

姫は柴田の後ろに隠れた。まだ古川に怯えているようだ。俺にもか。


「ごめん……桜。悪い奴じゃないから」

「悪い人ですよ……!桜を怖がらせて……」

騎士長はまだ古川を睨んでいる。


「本当にごめん。後は俺たちで話するから……」

そう言って柴田は古川を引っ張って教室を出ようとする。


「本当にお願いしますよ!」

「ごめんね……冬華ちゃん。桜。みんなも」

柴田は申し訳なさそうに頭を下げた。俺と藤本も申し訳なくなって頭を下げる。


「ちょっと待って!陸也の妹なら都合良しじゃん!俺に話させてよ!」

引っ張られながら抵抗する古川。


「無理だわ!早く行くぞ!」

俺たちも柴田に協力して古川を教室の外に追いやった。騎士長は最後まで俺たちを睨んでいた。


――そうして俺たちは古川を引っ張りながら再び中庭まで戻って来た。

 

「あぁ……俺の桜ちゃんが」

ベンチで項垂れる古川。


「名前で呼ぶな!」


「でもビビったな……柴田の妹だったのか」

確かに柴田はイケメンだし、あのかわいい子と血が繋がってると言われてもそんなに不思議ではない。


「そう……冬華ちゃんもずっと桜の友達でいてくれててさ」

「騎士長……」

「でも悪いことしたよな。俺たち」

結構ビビってたし、お兄ちゃんがいなかったら結構ピンチだったかもな……。


「ううん。浅倉と藤本は何も。問題なのは――」

「桜ちゃん……かわいかったなぁ」

「――お前だ咲斗!」

柴田は古川に飛びついた。頭を掴んでわしゃわしゃする。


「やめろよ!崩れるだろ!」

「お前なぁ……妹ビビらせんな。怖がりなんだよ」

そう言う柴田の表情は妹を守る兄の責任が滲んでいた。確かに姫はかわいかったから今までにも古川みたいなやつはたくさんいたんだろうな。


「それはごめん。じゃあ次は柴田の付き添いで会わせてくれ。それなら安心だろ」

「無理。まずは土下座して謝れ。その動画撮って桜と冬華ちゃんに見せる」

柴田は冷たく言い放った。まぁ古川みたいな奴もう会わせたくはないわな。


「そこまでしないといけないの……!?」

「当たり前だろ。話はそれをしてからだ!」

柴田は古川の頭を押さえて土下座をさせようとする。古川は抵抗して二人は取っ組み合いになった。


「お兄ちゃんって感じだなぁ」

藤本が二人の姿を見て感心する。


「どこがだよ……」

クラスの友達こいつらか……と少し心配になる俺だった。まぁ退屈はしなさそうだからいいか。

俺は渋々、二人の仲裁に入った。









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