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恩返し

続きです!読んでください!

次の日。俺は松葉杖で登校していた。今日の朝も兄ちゃんに送ってもらった。松葉杖の間は車登校になりそうだ。


「……重てぇ」

松葉杖って思った以上に腕にくる。筋肉痛になるとか聞いてねぇし。


「おっ、浅倉〜!」

聞き慣れた声がして顔を上げると、古川たちがこっちに手を振っていた。

 

「お前来たのかよ!」

「そりゃ来るだろ。家でゴロゴロしてても暇だし。結局、明日からゴールデンウィークだしな」

俺は肩で松葉杖を支えながら答えた。


「歩くのめっちゃ大変そうじゃん」

柴田が俺の脇の下を見ながら言う。


「見ての通りだよ……腕パンパン」

「だよな。でもちょっとかっこよくね?その“怪我してるけど登校してる俺”みたいな感じ」

「どんなキャラだよ……」

呆れてため息をつくと柴田と藤本も笑っていた。


「先生とかめっちゃ優しくしてくれそう」

「女子もな」

藤本がニヤニヤしながら口を挟んできた。


「そんなことねぇだろ……」

「浅倉くん!」

その声を聞いた瞬間、反射的に顔を上げた。

少し離れた校門の方から莉子ちゃんがこっちに向かって駆けてくるのが見えた。


「……お、おぉ」

思わず変な返事が出た。


「じゃあ俺らはこのへんで」

古川がニヤつきながらそう言う。


「歩けなくなったら呼べよ」

「頑張れ〜」

柴田と藤本も小声で囁いて、三人そろってすっと別の方向へ歩いて行った。

あからさま過ぎる退場。絶対あとで冷やかされるやつだ。


「浅倉くん大丈夫……!?松葉杖じゃん……」

莉子ちゃんは俺の前で止まると、心配そうな顔をした。その目がまっすぐで思わず視線をそらしてしまう。


「あぁ……松葉杖になるとは思わなかったけど、今は痛くないから大丈夫」

「そっか……よかった……」

莉子ちゃんは胸に手を当ててほっと息をついた。


「昨日の夜、連絡しようと思ったんだけど……」

「え?」

「でも大変かなって思って……結局できなかったの」

莉子ちゃんは少しだけ目を伏せながら言った。


「連絡って……俺に?」

「うん……心配だったし」

そんなこと言われたら怪我して良かったと思ってしまう……!


「ありがとう。迷惑なんかじゃないよ」

「……そっか。じゃあ次からは迷わないで連絡するね」

「う、うん」

言葉がうまく出ない。

たったそれだけの会話なのに、なんでこんなに胸が熱くなるんだろう。


「教室まで一緒に行こっか。段差もあるし、危ないかも」

「だ、大丈夫だよ……」

「大丈夫ないよ。松葉杖してる時くらい頼ってもいいよ」

そう言って莉子ちゃんは俺のカバンをひょいっと取った。


「いいんですか……?」

「いいの。持たせて」

莉子ちゃんは強引に笑って肩にかけた。


「じゃ行こっか」

莉子ちゃんは俺の歩幅に合わせるように、少しゆっくり歩き出した。


松葉杖のリズムに合わせて”コツ、コツ”と音が鳴る。その横で、俺のカバンを抱えた莉子ちゃんがちらちらと俺の足元を気にしながら歩いている。


「そんなに見なくていいよ……転ばないから」

恥ずかしくて冗談っぽく言ったつもりだったけど、莉子ちゃんは首を横に振った。


「転んだら危ないもん……」

莉子ちゃんは小さな声でそう言った。その表情はいつもの柔らかい笑顔じゃなくてどこかぎゅっと胸の奥を掴まれるような真剣さがあった。


「……そんな心配するほどじゃないって」

「するよ。浅倉くんが怪我したって聞いたとき、すごくびっくりしたんだから……」

その言い方があまりにも素直で思わず言葉を失った。


校舎の入口に近づくにつれて、朝のざわつきがだんだん大きくなる。普段なら何とも思わないのに今日はやけに周りの視線が気になった。


俺ら一緒に歩いてるの普通に目立ってないか?


階段の前に来た瞬間、莉子ちゃんがぴたりと立ち止まった。


「階段かぁ……どうする?」

「階段……まあゆっくり上がれば大丈夫だよ」

「……肩貸そうか?」

「……え?」

思わず間抜けみたいな声が出た。でも莉子ちゃんは本気らしくそっと左肩を寄せてくる。


「か、肩は……さすがに悪いって……!」

慌てて手を振ると、莉子ちゃんはきょとんとした顔で首をかしげた。


「なんで?怪我してるときくらい頼ってよ」

「いやでも……その……」

至近距離。ちょっと肩が触れただけでも俺の心臓は終わる。


「転んだらほんと危ないよ?」

「……う、うん」

断りきれず、俺は少しだけ莉子ちゃんの肩に手を回した。怪我した左足より、心臓が痛いのは何故だろうか。


「じゃあ行くよ?」

莉子ちゃんがゆっくり一歩踏み出す。


コツ、コツ。

松葉杖の音に合わせて、二人で階段を上がっていく。


触れてる……!触れてます!!

息がかかるぐらい近い。莉子ちゃんの肩は華奢でかわいらしさがある。


「……ごめん。なんか……色々」

照れと情けなさと全部混ざった声が勝手に漏れた。


すると莉子ちゃんは俺の横顔をそっと覗き込むようにして微笑んだ。


「謝らなくていいよ。私が心配してるだけだから」

「……」

真っ直ぐな目で言われると、言い返せなくなる。


「それに……最初に助けられたのは私だから」

「え……?」

思わず聞き返してしまった。莉子ちゃんは俺の肩に添えた手を少しきゅっと強めながら続けた。


「私は浅倉くんが思ってるより、浅倉くんに感謝してるよ」

「…………」

莉子ちゃんがそんなこと……


「だから私に恩返しさせて。ほらあとちょっと」

莉子ちゃんはそう言うと、再び前を向いて歩き出した。それと同時に俺も一歩一歩進む。


「……ありがとう」

俺は莉子ちゃんの恩返しを受け取ることにした。


階段を上がりきった時、莉子ちゃんはふぅっと息をつきながら俺の方を見た。


「よかった……無事に上がれて」

「いや……助かったよ。ありがとう」


階段を上がりきったところで莉子ちゃんと向かい合っていると――


「あ、あのっ……!」

小さな声が後ろから聞こえた。


「桜ちゃん……?」

振り向くと袖を握りしめながら、桜ちゃんが不安そうな顔で立っていた。


ありがとうございました!

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