表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/52

兄と姉

他にクリスマスの短編が上がってます!これを読む前でも読んだ後でもいいのでそっちも読んでください!

「何で二人が!?」

まさかの迎えに俺は声を上げてしまう。


「大学生のゴールデンウィークは早いんだよ」

そう言って、ベットの横にドサっと座るのは兄の和斗かずと。大学四年生で三兄弟の一番上。大学に入ってから筋トレに目覚めたらしく怖いくらいゴツい。


「痛そう……どうする?私おんぶしようか!?」

この大焦りしてるのは姉の虹華にじか。大学二年生。三兄弟の真ん中。心配性で過保護な性格。後、天然ドジっ子。


「おんぶするのは兄ちゃんでしょ……」

「そっか……じゃあ私はカバン持つね!」

そう言って姉ちゃんは俺のリュックを背負う。ショートパンツにリュックって似合わないな。


「ほら。乗れよ」

ゴツい背中が目の前に現れる。なんか安心するなぁと思いながら俺は兄ちゃんに身を預けた。


「よし!行くぞ!」

そう言って兄ちゃんは歩き出した。保健室の先生にみんな「ありがとうございました」と頭を下げてから俺たちは廊下に出る。


「……やば」

しまった。もう授業終わってんじゃん……!こんなとこ見られるの恥ずかし……

ジロジロ見られる。みんなの視線は兄ちゃんの筋肉と女子大学生に釘付けだった。


「えっ!!」

その中でもいっそう響く声が聞こえた。一番聞き慣れてる声だ。


「和人さんと虹華さんじゃん!」

嬉しそうな顔を浮かべ、優馬が廊下の向こうから走ってきた。大きく手を振りながら、他の生徒を避ける。


「おぉ……優馬か!」

「優馬くん!久しぶり〜!」

二人も優馬を見て笑顔になる。毎日のように家に来ていた優馬は四人目の兄弟みたいなものだった。


「帰ってきてたんすね!」

優馬が近くまでやって来て、立ち止まった。


「正月以来か!」

「はい!そうっす!」

優馬のでかい声でより生徒たちの注目が集まる。


「虹華さんもまた綺麗になって……」

「そんなことないよ〜!もうっ、優馬くんはいつもそう言うんだから」

「だって本当ですもん!」

そう言って三人で笑う。そこには高校の廊下とは思えない光景が広がっていた。


「……あっ!北斗大丈夫か!」

「聞くの遅えよ……」

「だってびっくりしてさ!」

優馬は後頭部をかきながら笑った。


「まさか二人がそろって迎えに来るとは思わないじゃん!」

「そりゃあ。こいつが体育で派手に転んだって聞いたら黙ってられねぇよ」

兄ちゃんが笑いながら言う。その声は廊下中に響いて近くの女子がちらっとこっちを見る。


「いやいやそんな大げさに……」

俺は兄ちゃんの背中の上で縮こまる。恥ずかしいにもほどがある。


「北斗はちっちゃい頃から危なっかしいから心配……お姉ちゃんがいないとやっぱダメだね……」

姉ちゃんが心配そうに俺を見上げる。


「そんな年齢じゃねぇから」

「でも怪我してるじゃん……!」

姉ちゃんが頬をふくらませて言う。その横で優馬が笑いながら口を開いた。


「いや〜でも久しぶりに会っても全然変わんないな。この感じ」  

「はぁ!?変わってるし!」

思わず声が裏返る。背中の上で暴れると兄ちゃんが「動くなよ」って笑った。


「雰囲気とか三人が家にいた時と何も変わってねぇよ!」

優馬は懐かしそうに笑って、俺の背中をポンポンと叩く。


「やめろ……子ども扱いすんな!」

「いやいやもう兄貴におんぶされてる時点で説得力ないぞ?」

「うるせぇ!」

廊下に笑い声が響く。周りの生徒たちはまだチラチラとこっちを見てるけど、もうどうでもよくなってきた。


「そうだな。北斗は変わんないなぁ」

兄ちゃんがそう呟く。なんか優しい声だった。


「いつまでもかわいい弟だね〜」

続いて姉ちゃんも笑う。


「次会うときは成長したって思われるようにしろよ?」

「……うっせ」

照れ隠しでそう言って俺は小さくため息をついた。


「じゃあ俺部活なんでそろそろ」

優馬がそう言って軽く頭を下げた。


「おう!頑張れよ!」

「頑張ってね〜!」

兄ちゃんと姉ちゃんも笑顔で手振った。


「ありがとうございます!北斗は早く治せよ!じゃあな!」

そう言って優馬は駆けて行った。


「優馬くんも変わらないね〜」

「ガキのまんまだよ……」

優馬が去ってやっと病院に……と、その時だった。


「おいおいおいおいおい!」

廊下の向こうからでかい声が響いた。

その声を聞いた瞬間、俺は「やば」と小さく呟く。


「古川……」

「お前、何してんだよそれぇ!?」

優馬と入れ替わるように古川と柴田と藤本がやってきた。

三人とも目を見開いて兄ちゃんの背中に乗る俺と、その横を歩く姉ちゃんを見比べている。


「見ての通り……?」

「いやいや見ての通りじゃねぇって!誰だよその美人!!」

古川の視線の先にはにこやかに微笑む姉ちゃん。


「北斗の姉です。友達かな?」

にっこりと微笑みながら姉ちゃんが軽く頭を下げた。

その瞬間、三人の動きがピタッと止まる。


「あ、姉ぇ……!?マジで!?」

古川の目が今にも飛び出そうだった。


「えぇ……まじかよ」

「似てない……」

珍しく柴田と藤本も驚いている。俺は姉弟だからあんま分かんないけど姉ちゃんは相当綺麗だったようだ。


「で……浅倉をおぶってるマッチョさんは……」

古川が恐る恐る兄ちゃんを見た。何だよその言い方。


「北斗の兄です」

兄ちゃんは軽く会釈した。


「兄貴もいたぁ……」

古川は呆然としていた。


「筋肉マッチョ兄と美人姉……の弟?」

「うるせえよ!」

何の特徴もない男で悪かったな……!


「北斗のお友達?」

姉ちゃんがくすっと笑う。


「そうです!」

古川がビシッと答える。声でか……


「そっかそっか。みんな北斗と仲良くしてくれてありがとね」

姉ちゃんが丁寧に頭を下げた。その瞬間、三人とも一斉に直立した。


「い、いえっ!こちらこそですっ!!」


兄ちゃんも少し笑いながら口を開いた。

「北斗、いい友達に恵まれてるな」

その言葉に俺は少し照れくさくなって顔を背ける。


「……変な奴らだよ」

そんなやり取りをしていると気づけば周りの生徒がさらに集まってきていた。


「……兄ちゃんもう行こう。マジで視線が痛い」

「分かったよ」

兄ちゃんが笑いながら歩き出す。


「みんなまたね〜」

姉ちゃんが古川たちに手を振ると、古川は虚な目で手を振り返していた。


「浅倉お大事に!」

「そうそう!それ!」

かろうじて柴田と藤本が最後に声をかけてくれたのが聞こえて俺は後ろでに少し手を上げた。


⭐︎


あのあと兄ちゃんの車で病院に行ったら結果は捻挫だった。先生の話だと全治二ヶ月らしい。


「安静にしておいた方がいいですね」

なんて言われて俺はそのまま包帯を巻かれて、人生初の松葉杖を手渡された。

部活もないし、怪我してもまぁしょうがないかくらいに思ってたけど……松葉杖はなぁ?


「北斗、松葉杖似合ってるね」

「嬉しくねぇから!」

姉ちゃんが病院の出口でそう言った。兄ちゃんまでニヤニヤしてるし。


「まぁ二ヶ月ならあっという間だろ」

兄ちゃんは助手席に乗り込みながら軽く言うけど当事者からしたら地獄だ。

俺は後部座席に乗り込んでため息をついた。


車の中はしばらく静かだった。窓の外を流れる景色を眺めながらなんとなく思う。

こうやって三人で車に乗るのいつぶりだろう。


多分、姉ちゃんが大学に入ってからは一度もない。

二人が家を出てから、まともに三人揃うことなんてほとんどなかった。


「……懐かしいな」

ぼそっと呟いたら前の席の二人が同時に振り返った。


「なにが?」

「別に……」

そう言って目をそらす。なんか言った瞬間、急に恥ずかしくなった。


兄ちゃんが笑ってハンドルを軽く叩いた。

「まぁたまにはいいだろ。弟の送迎も」

「送迎っていうか救助だけどな……」

「ふふっ、確かに!」

姉ちゃんは楽しそうに笑う。


一緒に住んでいた頃はムカつくこともあったし、喧嘩したこともあったけどいなくなったらいなくなったで寂しいんだよな。

俺はこの空間がちょっと好きなんだなと思いながらも、それを口にはしなかった。


ありがとうございました!

感想、評価、ブックマークをぜひお願いします!

短編も読んでください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ