保健室トーク
クリスマス短編が上がってます!これを読む前でも読んだ後でもいいのでぜひそっちも読んでみてください!
「おい浅倉マジで大丈夫か!?」
「先生ー!浅倉が死んだー!」
「死んでねぇ!生きてるわ!」
俺は地面にうつ伏せのまま叫んだ。笑い声と足音が混ざって近づいてくる。
藤本が真っ先に駆け寄ってきて俺の肩を支える。
「どこ痛い?足首?」
「心かな……」
「そっちは治すのむずいな」
周りから小さく笑いが起こる。先生も駆けつけてきて心配そうにしゃがみ込んだ。
「浅倉、大丈夫か?立てるか?」
「ちょっと……試してみます」
そう言って立ち上がろうとした瞬間――。
「いってぇぇぇぇ!!」
「立てないじゃん」
藤本と柴田が両脇を抱えて支えてくれた。俺は片足ケンケン状態で保健室へ向かう。
「派手にやったな」
「決まってたらヒーローだったんだけどな……」
みんなにからかわれながら俺は必死に顔を隠した。笑い声と太陽の熱がやけに眩しい。
そして俺はそのまま保健室へ向かった。
⭐︎
白いカーテン越しに消毒液の匂いが漂っている。氷嚢を当てながら俺はベッドの上で天井を見つめた。
保健室の先生によると折れてはないと思うけど……って感じだったが病院に行くのは確定。俺は折れてたらダルいなとか思いながらぼーっとしていた。
「……恥ずかしすぎる」
脳内で何度もスローモーション再生される“バキッ”の瞬間。
思い出すたびに顔が熱くなる。
その時、カーテンの向こうから声がした。
「浅倉くん、大丈夫?」
莉子ちゃんの声が聞こえた気がした。
まさかなと思ってゆっくりカーテンを開けると――。
「えっ……天城さん!?」
そこには心配そうに覗き込む莉子ちゃんの顔があった。
一瞬、頭が真っ白になる。
「な、なんでここに……!?」
焦って体を起こした瞬間――。
「いってぇぇぇ!!」
「浅倉くん!?動かないで!」
莉子ちゃんが慌てて俺の肩を押さえる。その手が軽く触れただけでなんかもう心臓のほうが危険だ。
「安静にしてて。先生が新しい氷持ってくるって言ってたよ」
「……あ、うん。ありがとう」
なんかすごく近い距離で俺はまともに目を合わせられなかった。
「でもほんとにどうしたの?授業中でしょ?」
体育の時間が終わり、今は六時間目の国語の授業のはず。
「うん……砂田先生に頼まれたの。気になるから見て来いって」
「何それ……」
多分、砂田先生は俺の足バキを楽しんでいる。
「それと……ちょっと心配で。私は見てなかったけど柴田くんとかに聞いたら結構痛そうだったって言ってたから……」
その一言がやけに優しく聞こえた。俺の心臓がさっきよりも激しく脈を打つ。
「……そ、そっか。ありがとう」
情けない声しか出てこない。莉子ちゃんは小さく笑ってベッドのそばの椅子に腰を下ろした。
「やっぱりすごく痛そうだね……」
莉子ちゃんはそう言いながら少し視線を落とした。
手のひらを膝の上で軽く握っていて、その仕草がなんだか丁寧で優しい。
「ちょっとやらかしただけだよ。たいしたことないって」
強がってそう言ったけどほんとはめちゃくちゃ痛い。
「たいしたことないって言えるほどの顔じゃないけど」
「え、そんなにひどい顔してる?」
「うん……痛そう」
そう言って莉子ちゃんが小さく笑った。
その笑顔はからかう感じじゃなくて、心から心配してるようなやさしい笑顔だった。
「病院行くんでしょ?」
「うん。そろそろ家族が迎えに来るって」
「そうなんだ……早く治るといいね」
莉子ちゃんはそう言ってそっと机の上に置かれた氷嚢を軽く押さえた。その手が少しだけ俺の足に触れる。一瞬、呼吸が止まった。
「冷たすぎない?」
「だ、大丈夫。ありがとう……」
「よかった」
そのまま数秒、言葉が出てこなかった。
保健室の静けさの中で時計の秒針だけがやけに大きく響く。
「……授業戻らなくていいの?」
ようやく出てきた言葉はそんな当たり障りのないやつだった。
「うん。先生が見てこいって言ったんだし大丈夫だよ」
「そっか」
「もう少しいてほしい」と言いかけて飲み込んだ。そんなこと言ったら完全に意識してるのバレる。
「浅倉くん」
「ん?」
「無理しないでね。ほんとに」
そう言ってまっすぐな目で見つめてきた。その瞳の奥に少し不安そうな光がある。
「球技大会……出られるかなぁ?」
莉子ちゃんがぽつりとつぶやいた。
「あぁ……」
俺は天井を見ながら息をついた。
六月の初めにある球技大会。クラス対抗で盛り上がる、年に一度の行事だ。
後一ヶ月でこれが治るか……ギリギリだなぁ……
「微妙かも。病院で診てもらわないとわかんないけどね……」
「そっか……」
莉子ちゃんが少しだけ眉を下げた。その反応がなんか胸に刺さる。
「浅倉くんのサッカー見たかったなぁ……」
「え……」
「あー!えっと……その上手いって聞いたから」
珍しく焦る莉子ちゃんが愛おしく感じる。俺だって莉子ちゃんの前で活躍したかった……!
「じゃあ治す!五分だけでも出れるように頑張るよ」
「ほんと……?でも無理はしないでね」
「うん……ありがと」
そう言ったけど無理してでもやることを決めた。莉子ちゃんが俺のサッカーを待っているならやる以外の選択肢なんてない。折れてもやる。
「じゃあそろそろ行くね」
そう言って莉子ちゃんは立ち上がった。
「うん。みんなには大丈夫って言っといてよ」
「りょーかい。またね」
そう言って莉子ちゃんは手を振って保健室から去っていった。
「……なんか距離縮まったよな」
そう呟きながら手を振った右手を見つめる。
「あぁぁ……!!」
俺は布団に包まり、叫んだ。やっぱり話した後は好きが溢れ出してしまう。
「治さないと……」
俺はもう一度、寝転がって呟いた。
二十分後。
「迎えきたよ〜」
寝転がっていると、保健室の先生の声が響いた。
「ん……」
迎え来たか……母さんかな。仕事もあるのに申し訳ない……
俺は起き上がってドアの方を見た。するとそこには――
「おいおい。大丈夫か?」
「北斗大丈夫!?」
「え……」
兄と姉が立っていた。
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