日常へ
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その日の夜。俺は一人、帰路についていた。
写真を撮ってからは大慌てだった。あの場所にいる誰もが集合時間の存在を忘れていたんだ。結局、集合時間には間に合わなくて、先生に叱られた。
でもそれだっていい思い出になった。そう言えるくらい俺は前向きだった。
「よかったなぁ……」
俺は空を見て立ち止まる。今日は星が綺麗に見える。いいことがあった日の夜は――
「お前星とか見上げるタイプだったっけ?」
「……エモかったのに邪魔すんなよ!」
優馬の声に邪魔をされた俺は住宅街に響くくらいの声量で叫んでしまった。
「エモとは無縁の人生だろ」
「そんなことねえわ」
こんな日でもやっぱり優馬と会うと普段の俺に戻ってしまう。
ていうかこいつなんでここにいるんだ……?
「あははっ、それで……どうでした?」
優馬はあからさまにニヤニヤして俺に問う。
「いろいろありすぎた。何から言えばいいか分かんねえよ」
「全部聞くけど?」
「今日は疲れたからまた今度な」
「え〜?もったいぶんなよ!」
そう言って優馬は俺の前に立ちはだかる。
「……あ。でもお前のアドバイス。あれ結構役に立ったぞ」
「まじで!?やっぱりな?」
優馬は自慢げに笑って俺を見た。
「お前のことは俺が一番分かってるからな」
いつもの冗談混じりの一言なのに今の俺にはどこか思うことがあった。
俺にとっての木南や水瀬は優馬なのかな。そんな恥ずかしいことを考えてしまう。
「なに?」
俺の視線に気づいた優馬が首を傾げる。
「なんでもねえよ……」
「なんだよ〜!」
優馬が無理矢理肩を組んできて、横腹を軽く突く。
「やめろって……!」
優馬を引き剥がしながら、俺は友達がいる幸せを噛み締めていた。
⭐︎
遠足が終わり、土日を挟むとまたいつも通りの学校生活が始まった。
俺はいつも通りの時間に一人で登校していた。この時間は廊下を歩く足音がよく響く。
「……いるかな」
莉子ちゃんに会えると思うと足取りが軽くなる。もう挨拶すらできなかった頃の俺ではない。
莉子ちゃんと話すなんて余裕。俺はその次のステージへと足を踏み込んでいるのだ。
教室の前までやってきた。緊張してるわけではないが、深呼吸をひとつする。ドアに手をかけると頭の中にイメージが駆け巡る。
まずは挨拶してから……遠足の話、そっから土日の話して……
「ふふっ……」
妄想しただけでニヤけてしまう。いかんいかん。俺は今から実物を目の前にするんだぞ。
俺は自分にそう言い聞かせると、勢いよくドアを開けた。
まずは挨拶……莉子ちゃんが後ろの席に座っている――
「遅かったじゃないか。浅倉くん」
「え?古川?」
ドアを開けるとそこには莉子ちゃんじゃなくて古川が立っていた。口調も変だし、妙に笑顔でなんか気持ち悪い。
「……こっちに来てください」
笑顔で俺を待ち受ける古川。
「えぇ……」
超怖いんだけど……!なんで敬語なの!?
「座ってください」
そう言って古川は椅子を持ってきた。
「なにこれ!?なぁ古川!」
「座ってください」
「NPCかよ……!」
俺はビビりながら座る。
「一つだけ質問をします。浅倉さんはそれに答えてください」
「質問……?」
なんだ?何がくるんだ?
「あなたは有栖ちゃん、鈴香ちゃんと一緒に写真を撮りましたか?」
「え」
古川の声は座っていた。顔には笑みを浮かべながら俺の答えを待っている。
「……えっとぉ」
めちゃくちゃ撮ってる……!やばいやばい。今、古川ブチギレてるんだ。ブチギレが半周してるから冷静なんだ。
どうする?めちゃくちゃ撮ってるぞ。嘘ついてみるか?でもこんなこと聞くってことはもう証拠を掴んでるんじゃないのか……?
……詰み?
「……撮りました」
俺は観念して自白した。
「そうですか。そっかそっか。うんうん……浅倉を殺せぇ!!」
古川は豹変し、俺を拘束した。古川の合図で教室にゾロゾロとクラスメイトの男子が入ってくる。
「浅倉ぁぁあ!!」
「やばいやばいやばい……!」
必死に抵抗するも古川の力が強すぎて動けない。
「拷問だ!一時間くすぐりコース!」
「くすぐり……!?」
それだけは勘弁してくれ……!俺は昔からくすぐりに弱いんだ!
「いけお前ら!!」
古川の合図でブチギレ中の男たちが俺に襲いかかってきた。
「やめろ!ひゃははっ、やめろって……ひゃっ……!」
我ながら気持ち悪い声が出てしまう。
「手を止めるな!次は陸也を連れて来い!」
「ひゃはっ……やめろ!離せって……!」
俺そんな重罪犯した……!?
くすぐりにもがき続けていると教室のドアが開いた。
ガラガラガラ。
「陸也かぁ!?」
古川が顔を上げるとそこには――
「えっ。何してんの?」
「鈴香ちゃん……!」
「おはよ〜ってえぇ!?浅倉くん何したの!」
「有栖ちゃん!?」
「どうしたの二人とも……え?」
「莉子ちゃん……」
三人が集結してやってきていた。水瀬と莉子ちゃんは引いていて、木南は俺を疑っている。
「違っ……!これはひゃはっ……!違くて……!」
なんでこいつらくすぐり止めないの!?バカなの!?
莉子ちゃんもこっち見てるし……!
「離せよ……!」
俺は一瞬の隙をついて抜け出した。危ない……感覚がなくなるところだった。
「おはよう」
「……おはよ」
引いてんじゃん。普通に挨拶したらいけるかな?って思った俺がバカみたいじゃん。
「何今の。古川がやったの?」
水瀬が古川に尋ねる。
「あっ……えーと」
目線を外して慌てる古川に水瀬が詰め寄る。
「古川さぁ……金曜、うちら結構浅倉に助けてもらったんだわ。ねぇ。教えて?古川がやったの?」
水瀬が俺のためにキレてるのがなんか嬉しい。
「す…………………したっ」
すごい早口。中間何も聞こえなかった。
「はーい分かりました。みんな〜次は古川だよ〜」
水瀬がそう言うとくすぐり部隊はすぐに古川を囲んだ。
「え?お前ら?」
唐突な裏切りに唖然とする。
「浅倉の倍でやってね。れっつごー」
水瀬の一言でくすぐり部隊は古川に襲いかかった。
「ぐわぁぁあ!!」
古川の叫び声が教室に響く。
「えぇ……」
やられてた俺が可哀想に思えてしまうくらいエグいくすぐりが始まった。
首、脇、横腹、足の裏、全部攻撃されている。
「……莉子、見ちゃダメだよ」
「そうだね……」
木南と莉子ちゃんは自分の手で古川の姿を隠していた。
「よし。これでおっけー。浅倉大丈夫?」
「だ、大丈夫……」
助けてくれた恩人が怖いなんてことあるのか?
「助けてぇぇ!!」
遠足が終わって、初めての学校は古川の叫び声から始まった。
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