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嘘じゃない

続きです!読んでください!

莉子ちゃんを見つけた瞬間、俺はスマホを開いて連絡を入れた。

そしてすぐに莉子ちゃんの元へ駆け寄った。莉子ちゃんはこちらに気づいたが逃げようとはしなかった。


近くまでやってくると、俺は包み込むような声で声をかけた。


「天城さん」

「……ごめんね。浅倉くん」

莉子ちゃんはこっちを向いて謝った。目の周りが少し赤くなっていて、泣いていたのが分かる。


「謝ることないよ」

「せっかくの遠足を私が潰しちゃった……」

「潰してなんかない。楽しかった思い出は証拠として残ってるよ」

そう言って俺はキーホルダーを莉子ちゃんに見せた。


「……優しいね。ほんとに」

莉子ちゃんは切なく笑ってから、自分のキーホルダーを見た。


「私……最低だよね。勝手に決めつけて被害者ぶってるだけ。鈴香たちからしたら私の行動なんて何一つ分かんないよね」

「……分かんないかもね」

俺は静かに呟いてから続けた。


「でも他人の気持ちなんて分かんなくて当然。それは親友でも恋人でもそう。だからちゃんと伝えることが大切なんだと思う」


「…………」

莉子ちゃんは黙って俺の話を聞いていた。その目は俺に縋っているような目をしていた。


「天城さんは二人のことが好きなんだよね。なら……それをちゃんと伝えようよ。きっと二人はちゃんと答えてくれる」

木南と水瀬が莉子ちゃんのことを好きなように莉子ちゃんも二人のことが好きなんだ。

俺がそう言うと莉子ちゃんはゆっくりと海を見た。夕陽が少し傾いていて、波の表面をオレンジ色に染めている。


「私は……」

莉子ちゃんは少し言葉を詰まらせてから言った。


「私は二人のことが大好きだよ。でも……怖くなっちゃったの。ずっと一緒にいたのに急に自分だけ置いていかれる気がして」

波の音がゆっくりと寄せては返す。莉子ちゃんの声はそれにかき消されそうなくらい小さかった。


「二人はずっと優しく接してくれてた。でも私が勝手に心の中で線を引いちゃったんだ……」

俺は何も言わず、ただ頷いた。

海風が莉子ちゃんの髪を揺らす。その横顔は泣き顔でもどこか穏やかだった。


「大丈夫だよ。ただ横から見てた奴の言葉なんて信じられないかもしれないけどさ……」


『友達が楽しそうに笑ってるとこをもっと見たいだけ』

水瀬の言葉が脳裏をよぎる。あの言葉は嘘なんかじゃないだろ……


俺は莉子ちゃんの目を見つめた。


「今日の三人はずっと楽しそうだったよ。その間に嘘なんてなかった」

莉子ちゃんも俺の目を見て頷いた。


「……ちゃんと話さなきゃだね。逃げててもきっと何も変わらないよね」

「うん。話せば分かってくれるよ」

「そうだよね……」

莉子ちゃんは少しだけ笑った。


「ありがとう、浅倉くん。もう整理できたよ」

「俺は何もしてないよ。ただ――」

少し言葉を探してから静かに続けた。


「天城さんは笑ってる方がかわいいからさ」


俺がそう言うと、莉子ちゃんは俯きながら笑って前を向いた。


「……ありがとう」

「よし。じゃあ後は……三人で話してみて」


「莉子……!」

夕陽を背に木南と水瀬が息を切らしながら駆けてきた。

その顔には焦りと、心配と、少しの安堵が混ざっている。


「有栖……鈴香……」

莉子ちゃんは驚いたように二人を見た。

けれど次の瞬間には逃げようとも言い訳しようともせず、その場に立ち尽くしていた。


「どこ行ったか分かんなくて……!探したんだから!」

木南が声を張り上げていった。

肩で息をしながらそれでも泣きそうな顔で莉子ちゃんを見つめている。


「……ごめん」

莉子ちゃんは俯いて、小さく呟いた。


「私たち怒ってるわけじゃないの!ただ心配で……ほんとに……」

言葉が途切れて代わりに涙が頬を伝う。


「……有栖」

莉子ちゃんの声も震えていた。


「ゆっくり話そっか。莉子」

水瀬が優しく呟いた。


「……俺らは行こう」

俺は柴田にそう言って、三人から離れるように歩き出した。

柴田も頷いてから俺の後ろをついてくる。


「……いいの?」

少し歩くと柴田が話しかけてきた。


「三人で話すべきだよ。大丈夫」

「そっか……」


「それよりさ――」

俺は柴田の肩を掴む。その手は震えていた。


「ん?」

「莉子ちゃんにかわいいって言っちゃったんだけど!!」

俺の声が砂浜に響く。


「え?」

「なんか流れで言っちゃった……今になって恥ずかしくなってきた!」

柴田は一瞬ぽかんとした顔をしたあと、口元を押さえて吹き出した。


「ははっ、このタイミングで口説くなよ」

「そんなんじゃなくて……励ましの一環だよ!」

俺は頭を抱えて砂を蹴った。

今さらになって顔が熱くなってくる。あのときの莉子ちゃんの反応を思い出すたび心臓が変な音を立てた。


「で、なんて返されたんだよ?」

柴田が笑いをこらえながら聞いてくる。


「ありがとうって……それだけ」

「おぉ〜それは効いてんな」

「効いてないだろ……」

柴田は肩を揺らしながら笑った。こっちは笑えない。


「仲直りできるといいな」

笑い終わると、柴田が前を見ていった。


「……できるよ。絶対できる」

「なんでそう思うの?」

「今日の三人見てたら分かるだろ」

「……分かんねえけど。やっぱよく見てんだな」

柴田が言うと俺は少し照れくさくて鼻をかいた。


三人の背中はもう夕陽の向こうに溶けていった。

きっと今、言葉を交わしながらまた一緒に歩き始めようとしてる。


ありがとうございました!

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