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桜ちゃん

読んでください!よろしくお願いします!

翌朝。

空は雲ひとつなくて気持ちいいくらいの青空が広がっていた。

家を出て通学路を歩きながら、スマホを何度も確認してしまう。

通知なんてないのに画面を開いては閉じて、また開いて。完全に挙動不審だ。


ダメだ。調子乗ってる。


そう思ってポケットにスマホを突っ込む。

でも画面に並ぶフォロー中の文字を見たときのあの感覚がまだ胸の奥に残っている。


そんなことを考えていたら前方に見慣れた二人組が見えた。

柴田と桜ちゃんだ。


「おーい!」

思わず声を張って駆け寄る。


二人が振り向いた。桜ちゃんの髪が朝日を受けて光る。


「おっ。浅倉じゃん!」

柴田が手を上げて、俺を受け入れる。


「おはよう!」

「おはようございます」

桜ちゃんも頭を下げて返してくれる。礼儀正しくていい子だ。


「あれ?二人って喋ったことあったっけ?」

「ああ……昨日ばったり廊下で会ってさ。前の古川のやつの話とかしたんだよね」

俺がそう言うと桜ちゃんも頷いた。


「あはは。そういうことか」

「てか、昨日は男見せたな」

柴田は俺の肩を叩いて笑う。


「まぁな……」

「上手く行ってそうでよかった。あの後も大丈夫だった?」

「まぁなんとかね……」

「ならよかった」

柴田が安堵した表情を見せると何故か俺まで安心した。


「お兄ちゃん。何の話?」

隣の桜ちゃんが柴田に尋ねる。


「あー……えっと」

柴田はチラリと俺を見る。


「別に言ってもいいよ」

俺がそう言うと柴田は少しだけ口角を上げて、桜ちゃんに視線を戻した。


「昨日な、浅倉がちょっと頑張ったんだよ」

「頑張った?」

桜ちゃんは首を傾げる。


「まぁその……意中の女子と話したりしてな」

「えっ……!浅倉さん……好きな人がいるんですか?」

桜ちゃんの目がわずかに輝いた。好奇心とほんの少しの意外そうな色が混じっている。

俺は頭をかきながら視線を逸らした。


「いるよ……」

「え〜いいですね!私も応援してます!」

今まで聴いた桜ちゃんの声で一番大きな声だった。


「桜は目立つのは苦手だけど人の恋バナは好きなんだよ」

「そうなんだ……」

「なんか……人の頑張ってる話を聞くのが好きで」

「へぇ。なんか意外」

「意外ですか?」

「うん。そういうの興味なさそうに見えるから」

桜ちゃんはふふっと微笑んだ。


「まぁ確かに。興味ないふりはしてるかも。でも心の中ではずっといいなぁって思ってるんです」

想像しただけで震えてくる。木南と水瀬みたいに分散しない分、もっとやばそうだ。


「確かに桜ちゃんが恋愛興味ありますって感じだったらやばそうだな……」

「……さくらちゃん?」

桜ちゃんが不意に立ち止まる。


「あれ……そう呼んじゃまずかった?」

「あー浅倉。桜は桜ちゃんって呼ばれると固まるんだよ」

「でも散々呼ばれてたし……」

「それは名前も顔も知らないやつだろ?もう浅倉は違うよ」

柴田はそう言って笑う。


「えーじゃあなんて呼べばいいのかな……」

「いいです……!桜ちゃんで大丈夫です……」

桜ちゃんはそう言って少し俯いた。

真っ白い頬がほんのり赤くなっていて朝の光がそれをさらに際立たせている。


「いやでも……無理しなくていいよ?」

俺がそう言うと桜ちゃんは小さく首を振った。


「無理じゃないです。ただ……びっくりしただけで」

桜ちゃんは小さく笑った。

その笑い方がどこか上品ででも照れ隠しみたいでもあって、言葉が続かなかった。


柴田が横でにやつきながら俺の脇腹を肘でつつく。

「おーい浅倉、ダブル狙いは流石にやめろよ?」

「そ、そんなんじゃないから……!」

俺が慌てて否定していると――


「お兄ちゃんそういうのやめて」

桜ちゃんは声を低くして言った。その瞬間、柴田の笑顔がピタッと止まる。


「……やば」

「ほんとにやめてって言ったよね。この前も」

桜ちゃんは真っすぐ柴田を見ていた。怒ってるってほどじゃないけど目の奥がちょっとだけ冷たい。


「……ごめん」

柴田は素直に謝った。その姿を見て逆に俺が焦ってしまう。


「桜ちゃんごめんね……」

慌ててフォローを入れると桜ちゃんは俺に笑顔を向けた。


「浅倉さんは悪くないですよ。お兄ちゃんが変なこと言うからです」

「冗談じゃん……」

「冗談でも嫌って言った」

「……はい。すみませんでした」

その珍しく情けない姿に今度は俺と桜ちゃんが同時に笑ってしまった。


「次はないからね」

桜ちゃんは笑いまじりに呟く。


「二人は仲良いね」

「まぁな。桜は俺か冬華ちゃんがいないと無理だから」

柴田は照れ隠しのように笑いながら言う。


「どういうこと〜?」

桜ちゃんは横で柔らかく微笑んだ。朝の光の中でその笑顔がやけに綺麗に見えた。


最後のゆるやかな坂を登りきると校門が見えてきた。まだ登校時間には少し早いのか生徒の姿はまばらだ。


「じゃ。俺らこっちだから」

柴田が軽く桜ちゃんに手を振る。


「うん。またね。浅倉さんも一日頑張ってくださいっ」

「ありがとう。桜ちゃんも」

俺も軽く手を振ると、桜ちゃんは小さく会釈して別方向へ歩いていった。


「よし。俺たちも行くか〜」

桜ちゃんの背中を見送ってから俺は柴田と正門をくぐった。


そこから他愛のない話をしながら、俺たちは昇降口までやってきた。

靴を履き替える音が響く中、柴田がふいに俺の方をチラッと見てくる。


「今日もやんの?」

「やるって……?」

「莉子ちゃんだよ。いい感じだったんでしょ?」


「別に今までとは違ったってだけでそんな特別な感じは……」

なかったとも言い切れないんだよなぁ……。


俺がそんなふうに曖昧に返したその時だった。昇降口の向こうからひときわ柔らかい声が聞こえてきた。


「あっ。おはよ!浅倉くん」

振り向くとそこには莉子ちゃんが立っていた。


自然と背筋が伸びる。昨日のことがあったからかなんかとんでもなくかわいく見える。いつもとんでもなくかわいいんだけど。


「お、おはよう」

声が少し上ずった。柴田が横でニヤリとする。


「り……天城さん。おはよ」

莉子ちゃんって言いかけたな?


「柴田くんもおはよう。二人で来たの?」

莉子ちゃんは靴を変えながら俺たちに尋ねる。


「ううん。俺の妹も合わせて三人で来た」

「そうそう……」

平気な顔でいつも通り返す柴田を見てすごいなぁと思う。


「そっか〜。朝から楽しそうだね」

「まーね」

「あっ。そうだ……浅倉くん、柴田くんに言ってくれたかな?」

莉子ちゃんは俺達の隣に並ぶと、声を上げた。


「え?」

なんか言うことあったっけ……?


「俺に?」

「遠足のやつ。水族館でいいかなって……」

「あっ!そうだった!」

思い出したと同時に声が出ると、莉子ちゃんが小さく笑った。


「忘れてたでしょ?」

「忘れてた……ごめん」

莉子ちゃんになんか言われるの嬉しい……!反省できない!


「ちょちょ。水族館って何?」

「遠足のことなんだけど……班ごと自由に行っていいって話だったから、有栖と鈴香と私で水族館いいねって話になって……それを昨日、浅倉くんに伝えて、浅倉くんもいいねって感じだったから……あとは柴田くんどうかなって」

「なるほど。遠足の話ね」

「水族館でいいよな?」

流石に断らせないよ?


「もちろんもちろん。俺はどこでもいーよ」

「ほんと?じゃあ二人にも私から言っとくね」

莉子ちゃんが小さく微笑む。ほんのそれだけなのになんかキュンとした。


「遠足かぁ……楽しみだな」

柴田がそう呟くと、


「私たちのグループ入ってくれてありがとね」

「あははっ。むしろご褒美っしょ」

柴田は冗談ぽく笑った。なんかモテ男の振る舞いを見せられてる感じがしてちょっと劣等感が湧いてくる。


「浅倉くんもありがとう」

「いやいや……大丈夫だよ」

やっぱり俺は上手く返せない。


莉子ちゃんと同じ班。それだけでもう楽しみで仕方ないのに心臓が落ち着かない。

遠足というイベントで俺は何ができるだろうか。莉子ちゃんとの距離が縮まればいいな。


いや……それは俺次第か。俺は拳を握りしめた。

三日後の遠足で俺はさらに莉子ちゃんとの距離を縮めることを心に誓った。


ありがとうございました!次の回から遠足が始まるのでぜひ見てください!

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