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浅倉改造計画

見てください!まじで!

放課後、全員が帰った後の教室で古川は腕を組んでいた。その隣で藤本と柴田がボーッと立っている。


「いいか浅倉!まずはその辺に歩いている知らない女子に話しかけて、コミュ力を鍛えるぞ!」

「知らない女子……?」

「そうだ。全く知らない女子に話しかけて会話が続いたらそれはもう……コミュ強と言えるだろう……!」


「コミュ強……」

「別に浅倉はコミュ障じゃねえだろ」

柴田が古川にそう言った。隣で藤本も頷く。


「確かに中学までは女子と喋らなかったけど、高校からは結構いけるぞ?」

莉子ちゃん以外と話すのは結構自信がある。なぜなら俺は木南とデートを――


「じゃあそれは……自分から話しかけてるか?」

古川は目を細めて尋ねた。


「え?」

「浅倉は確かに全く女子と喋っていないわけではない。なんなら有栖ちゃん、鈴香ちゃんと喋ってるのも見たことある……!!」

古川は感情を昂らせながら言った。


「だがお前から喋りかけているところを俺は見ていない!」


「……確かに」

思い返せば確かにそうだった。俺は女子に話しかけてもらってただけ。だから話すことができたってだけで……自分から話しかけて成功したことなんか一度だってなくないか!?


「だからこの特訓だ。まずは自分から話しかけてみろ」

古川はそう言いながら俺の両肩を掴んだ。


「お手本とか……」

「お手本……?そんなんあるわけないだろ!」

「とにかく行け!次通りかかった女子だ!藤本はストップウォッチを用意しておけ!何秒喋れたか測る!」

「ちょっと待って……!展開が急すぎない!?」

俺は目線で柴田に助けを求める。


「頑張れよ〜」

「助けてよ……!」

「あっ。女子来たよ」

藤本が教室の外を指した。


「よし!行け浅倉!」

そう言って古川は俺の背中を押し始めた。


「おい待て待て待て!!」

そのまま俺は廊下に放り出され、通りかかった女子と目が合った。


「えっと……あの……」

なんか言わないと……なんでもいいから……


「今日……天気いいっすね」

「……え?」

「やっぱなんでもないっす!!」

俺はすぐさま教室に逃げた。


「逃げんなぁぁ!!」

古川の怒号が俺を突き刺す。


「5.8秒!流石に早すぎるな……」

「やっぱ無理……初対面は無理……!」

「甘えたこと言うな!これは特訓だぞ!」

古川はしがみつく俺に向かって厳しい言葉を吐く。


「次は十秒以上は話してこいよ……」

「また行くの……!?」

「当たり前だ!来たぞ!行け!」

俺は再び古川に背中を押され、廊下に放り出された。女子二人組前に出て、俺は慌てて姿勢を整える。


「あの……」

「ん?」

「えっと……今日は六月くらいあったかいらしいですよ……」

「何ですか急に……」

「あはは……おかしいですよねぇ……あはは……あはははっ!」

俺はおかしくなって逃げ出した。女子無理!やっぱり話すの無理!


「おい!逃げるなぁぁあ!!」

どたどたと足音が近づいてくる。振り向くと、古川が先頭で本気で俺を追ってきていた!


「ちょっ……やっぱりなし!やめる!」

「ダメだ!特訓はまだ終わってねぇ!!」

「次の女子までに捕まえろ〜!」

「着いてくんなよ……!」

俺は曲がり角を全力で駆け抜けた。


その瞬間――


「うわっ!」

廊下の角を曲がったところで誰かとぶつかった。

相手の抱えていた鞄が床に落ちる。


「ご、ごめん!大丈夫!?」

今日ぶつかるの二回目だ……!まさかまた桜ちゃんだったりして……

顔を上げると、そこにいたのは――


「り……天城さん!?」

――莉子ちゃんだった。


「浅倉くん……?びっくりしたぁ……」

莉子ちゃんは驚いた表情でこちらを見つめていた。


「ごめんごめん……!まじでごめん!」

慌てて鞄を拾って差し出す。莉子ちゃんは少し困ったように笑って受け取った。


「大丈夫だよ。浅倉くん……そんなに急いでどうしたの?」

「え、えっと……その……」

どうする!?知らない女子に話しかけるミッションが本命に体当たりするミッションに変わってしまったぞ……!


と、その時――


「見つけたぞ浅倉ぁぁぁ!!!」

背後から響く古川の怒号。


「やば……!」

「な、なに!?」

莉子ちゃんも俺の隣で驚く。


振り返ると、古川が廊下を爆走していた。後ろの二人はもう適当に走っている。


「やばい……!逃げなきゃ!」

「え、逃げるの!?古川くんだよ?」

「古川だから逃げないと――」

言いかけたその瞬間、焦りすぎて俺の足がズルッと滑った。


「うわあっ!!」

気づけば俺は見事に廊下に尻もちをつく。


「だ、大丈夫!?」

莉子ちゃんが慌てて手を差し伸べてくれた。けどその柔らかく白いかわいい手を取る間もなく――


「捕まえたぞ浅倉ぁぁぁ!!!」

背後から聞き慣れた怒鳴り声。次の瞬間、首をがっしり掴まれた。


「ぐえっ!?首!首しめてる!!」

「よくも逃げたな貴様ぁ!!」

「違う!逃げるっていうか、逃げざるを得なかったんだって!」

首を絞められる姿を好きな子に見られる俺。とても滑稽。


「言い訳はいい!」

「はぁはぁ……お前ら早すぎ」

柴田と藤本が後からヘトヘトになってやってきた。


「集まってきた……」

莉子ちゃんは状況が掴めず、どんどん困惑していく。


「あれ?なんで莉子ちゃんがいんの?」

「……っ!?」

莉子ちゃんって呼んだ!?俺は自然と柴田を睨んでしまう。


「……なんで天城さんがいんの?」

それで無しにならねぇぞ……莉子ちゃんも聞いてるし……


「私は浅倉くんとここでぶつかって……」

「ちょうどいい……やっぱり実践が一番だよな。浅倉」

古川がニヤけながら俺を見下ろす。こいつ……何を考えてやがる。


「じっせん……?」

「なんでもないよ。遊びの話」

莉子ちゃんが不思議がったところを藤本が軽くフォローしてくれる。


「天城さん。今、時間ある?」

古川は莉子ちゃんの方を振り返り、尋ねた。


「時間?あるけど……」

「よし来た!」

古川の目がギラッと光った。


「協力してくれませんか?」

「協力……?」

「うん!今、女子との会話トレーニングを浅倉がやってまして!ちょうど天城さんが通りかかったので、その練習相手を――」

「待て待て待て待てぇぇ!!」

俺は慌てて間に割り込んだ。


「ちょっとこっち来い!」

古川を連れて一旦、莉子ちゃんの近くを離れる。


「おい……!俺の好きな人は莉子ちゃんだぞ……!?」

「知ってるよ。だから好きってことは言わなかっただろ。言ったのは女子との会話トレーニングだ」

「それで弁えた感出すなよ……女子との会話トレーニングもだいぶキモイから……」

「大丈夫だって。むしろここで話せたら本番なんて余裕だろ?」

古川はニヤリと笑って俺の肩をぽん、と叩いた。


「相手が莉子ちゃんの時点で本番なんだよ……!」

「落ち着け浅倉。チャンスは突然やってくるもんなんだ」

「だからそれが突然すぎるって言ってんだよ!」

俺が小声で必死に抗議していると、古川は真剣な目で俺を見た。


「またそうやって逃げるのか?」

「え……?」

「莉子ちゃんを見ろ」

そう言われ、俺は莉子ちゃんの方を見た。柴田と藤本が莉子ちゃんと話して引き留めてくれていた。


「冷静になって考えろ。お前はあの莉子ちゃんをどう思ってて、これからどうなりたいんだ?」

「どうなりたい……」

胸の奥がじわっと熱くなった。

古川の言葉がやけに真っ直ぐに響いて、呼吸が浅くなる。


莉子ちゃんを遠くからじっと見つめた。

夕方の光が廊下の窓から差し込んで、髪の先が透けるように光っていた。

藤本の話に優しく笑いながらちゃんと相手の目を見て頷いている。その姿が俺にはどうしようもなく眩しかった。


好きになったきっかけは一目惚れだった。一年の六月。まだロング髪だった頃の莉子ちゃんに俺は一目惚れをした。初めて見たのはマドンナ二人を目で追いかけていたところがきっかけだった。でも俺は名前も知らないその女の子を見てから、その子以外がどうでもよくなった。


初めて見た日の夜、俺は眠れなかった。どんな子なのか気になって、答えなんか出るわけないのに考えまくった。

その日から学校に行くのがめちゃくちゃ楽しみになった。優馬にも話して、名前が分かって。俺はその時からずっと莉子ちゃんが大好きだった。


俺は……莉子ちゃんと話したい。莉子ちゃんと話して、仲良くなって、遊びに行って。それで……俺は莉子ちゃんと付き合いたい。


「……古川」

気づけば自然と口が開いていた。


「…………」

古川は黙って俺の顔を見ていた。

その目にはからかいも茶化しもなくて、ただ背中を押す覚悟みたいなものがあった。


「……逃げてごめん。俺、やっぱり莉子ちゃんと話すよ。でもトレーニングとしてじゃなくて、俺自信が莉子ちゃんと話したい」

「ふっ……いい顔になったじゃねえか」

古川は満足げに笑って、軽く俺の背中を押した。


その手の力はさっきみたいに無理やりじゃなくて、“行け”っていう信頼のこもった一押しだった。


「……ありがとう」

小さく呟いて、俺は一歩踏み出した。


足が震えてる。けどそれでも止まらない。


廊下の向こうで莉子ちゃんがこっちを見ていた。その表情は胸が締めつけられるほど綺麗だった。


俺に気づいた藤本と柴田が気を利かせて一歩下がる。莉子ちゃんだけが少し首を傾げて俺を待っていた。


逃げるな。


自分にそう言い聞かせて、俺はまっすぐ莉子ちゃんの元へと歩いていった。


その距離が今日一番長く感じたけど。それでも心の中は不思議なくらい静かだった。


「……天城さん」

呼びかけた瞬間、莉子ちゃんの瞳が柔らかく揺れた。


放課後の廊下に俺の声だけが響く。恋の特訓が本当の恋に変わる音がした。


ちょっと長くなりました!

見てくれてありがとうございます!まじでブックマークしてください!

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