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班行動

続きです!読んでください!

席替えを金曜日にして土日を挟んだ月曜日。早めに登校すると、すでに莉子ちゃんが来ていて読書をしていた。


この土日、フォローするかしないかで計十時間は悶えていた。結局フォローは出来なかったが、答えは出た。それはもっと仲良くなってからしようという簡単すぎる答えだった。


莉子ちゃんがいるのは狙い通り。周りにもちょこちょこ人はいるが、古川とかのうるさいやつ、木南、水瀬の莉子ちゃんの友達枠がいないならそれでOKだ。


俺は深呼吸をしてから席に向かった。


「おはよう……!」

座るタイミングで挨拶をしてみた。ここまでは行けるようになった!


「あっ。浅倉くん。おはよ」

莉子ちゃんは本から顔を上げて挨拶を返してくれた。この土日での莉子ちゃん不足の体に染み渡る。


俺は自分の席に座って、本を開く。俺の計算上これが一番いい作戦だ。


「…………」

俺は黙って本を読み始めた。


五分後。


「…………」


さらに五分後。


「…………」


さらに五分後。


「…………」

そりゃそうなるよな。

俺から話しかけずに話しかけてもらおうとか傲慢だった。すでに教室にはたくさんの人で溢れていた。


「莉子。おはよ〜」

隣の水瀬もやって来た。


「おはよ〜。鈴香遅いね〜」


「莉子が早いんだよ〜。浅倉もおはよ」

水瀬は席に座った。


「おはよ……」

さりげなく挨拶してくれたな。俺もマドンナに挨拶されるレベルまで来たか……

でもそうじゃない。やっぱり莉子ちゃんに話しかけないと。そう気合を入れ直す朝だった。


五分後。


「よーし。みんな聞けー!」

朝のホームルームが始まると同時に先生がテンション高く叫んだ。


「今週の金曜に遠足があるからそれまでに五、六人で班を作っておけよ〜!」

教室が一気にざわついた。このクラスになって初めてのイベント。

マドンナが二人所属しているこのクラスは他クラスより盛り上がりがすごそうだ。


俺も莉子ちゃんと組むチャンスだ。六人の班で水瀬、木南とは組むとしてあと三人。他の女子と組むと言ったらそれまでだが、男が入れるとなると全員が狙う激戦区になる。


どうやって入るか……一番仲がいいというのは烏滸がましいが、木南はスタマデートもしてるし、相互フォローでもある。木南に頼むのが一番の近道なんだろうが、莉子ちゃんのことが好きとバレるとめんどくさい。


「……どうしよ」


「浅倉は誰と組むの?」

考えていると、水瀬が声をかけて来た。


「え?あ、まだ考えてないかな……」

つい焦ってしまい、声が小さくなった。


「ふーん」

「……うん」

なんだ……?


「はい!じゃあ考えておけよ!ホームルーム終わり!」

先生はそう言い放つと教室から出て行った。


その瞬間、教室中にとんでもないざわめきが広がる。


「有栖ちゃん!俺と組んでくれ!」

「鈴香ちゃんは俺と……!」

男たちが二人の周りに集まる。


「えぇ……」

やっぱこうなるんだな。

俺がその様子を見ていると柴田が近づいて来た。柴田も俺と同様に木南と水瀬に群がらない珍しい男の一人だった。


「やべぇなこれ」

俺の近くまでくると柴田はポケットに手を突っ込んだまま呟く。


「争奪戦だな」

そう言いながら、俺は莉子ちゃんをチラッと見る。莉子ちゃんに詰め寄るやつはいない。安心すると同時に悔しい気持ちも湧いてくる。


「ま。とりあえず浅倉は俺と組もうぜ」

柴田がトントンと俺の肩を叩く。


「あぁ、うん。そうしよう」

柴田は強いぞ。気遣えるやつだしな――とその時。


『確かにそう言われるとかわいいな』

ふと、柴田の言葉を思い出した。


「あっ。ダメだ」

そうじゃん。柴田は莉子ちゃんのことかわいいとか言ってたじゃん。


「え?なんで?」

「ダメだからだ……」

「何それ……!」


「とにかく柴田はダメなんだよ!」

そう言い放つと俺は立ち上がり、教室から飛び出した。

とにかく柴田を入れずに莉子ちゃんを誘う作戦を考えなくては!


「うぉぉお!やるぞ俺は!」

俺は廊下を叫びながら、理由もなくただ走り続けた。今となってはなぜ教室を出たのかすら分からない。


⭐︎


「はぁはぁ……」

しばらく走っていると体力が尽きた。高校で運動をやめた奴の体力なんてこんなもんだ。


壁にもたれかかりながら荒い息を整える。頭の中はぐちゃぐちゃだった。


落ち着け北斗。まずは順番に考えよう。


俺はポケットからスマホを取り出し、"莉子ちゃんと遠足に行きたい大作戦"と名付けたのメモを開く。


「六人……水瀬と木南は確定……あと三人……」

俺を入れて四人。じゃああとはどうする?男子一人は流石に場違いだし……三人と三人が一番バランスいい。


柴田が無理となると……


「古川と藤本……?」

無理無理無理無理。藤本はいいけど古川選ぶくらいなら柴田の方がいい。


「ていうかあの三人組と組むのがそもそも無理だろ……」

だる。無理ゲーじゃねえか。


「おとなしくあの三人と組も。残りは適当でいいや……」

俺は諦めて立ち上がり、教室に向かって歩き出した。


肩を落として歩いていると曲がり角で誰かとぶつかった。


「きゃっ……」

「うわっ!」

ぶつかった時に相手はその場に倒れてしまった。かなり華奢の女の子とぶつかった感覚があった。


まずい……怪我でもさせたら……

そう思って倒れた子を見ると、その子は見たことのある顔をしていた。


「……あれ?」

「え……?」

俺がぶつかったのは柴田の妹。"姫"こと桜ちゃんだった。

珍しく一人でいて、騎士団のみんなはいなかった。


「ごめんなさい……大丈夫?」


「あっ……はい。こちらこそごめんなさい」

お淑やかな声でイメージ通り姫って感じだ。顔も姫。柴田には怒られるかもだけど超かわいい。もちろん莉子ちゃんには及ばんけど。


「……立てますか?」

「立てます……すみません」

桜ちゃんは立ち上がると、スカートについた埃を払った。

立ち上がると分かるがこの子かなり小柄だ。多分、一五〇ないくらいだな。


「ごめんね。柴田の妹だよね」

「えっ……お兄ちゃんのこと知ってるんですか?」

あの事件の時に俺がいたことを覚えてはないようだ。


「うん……ちょっと前に変なやつが教室に乗り込んできたと思うんだけど。君のお兄ちゃんが止めたやつ……」


「あぁ……はい。ありましたね……」

桜ちゃんはちょっと顔を引き攣らせた。


「実はあの時に俺もいてさ……後ろで見てた二人の中の一人なんだけど」

「あっ、そうだったんですね。失礼しました」

そう言って桜ちゃんはペコリと頭を下げた。


「いやいや。ほぼ初対面みたいなもんだし、あの時のは記憶から消したほうがいいし……大丈夫だよ」

「あはは……」

そりゃ愛想笑いしかできないよな。仕方ないよ。


「今日は友達いないの?」

「はい。一人で行きたいって頼んだんです。何も出来ないままは嫌なので」

桜ちゃんの目は座っていて覚悟を決めている様子だった。


「すごいね……」

姫なりの悩みがあるんだな……


「囲まれたりしなかった?かわいいし……なんか心配になるな」

言ってから気持ち悪いことに気づいたがもう遅かった。


「そんなこと……ないですよ」

桜ちゃんは頬を少し赤くしながら視線を逸らした。反応もかわいい。なんか守りたくなるタイプだな。


「私……もう行きますね」

桜ちゃんは俯いたまま呟いた。


「あっ、ごめんね。とにかく怪我なくてよかった。じゃあね」

「はい……ありがとうございました」

お互い軽く会釈をして、俺たち再び歩き出した。


桜ちゃんより今は莉子ちゃんだ。なんとかして同じグループにならなければ……



ありがとうございました!

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