隣は誰だ?
続きです!読んでください!
席替えも後半。男子が引き終わって女子のターンがやってきた。
まだ俺の隣と前は空いている。男たちは木南、水瀬が自分の隣に来ることを祈ってずっと手を組んでいる。
俺はというと――
「引くな引くな引くな引くな……」
「二七番です」
「よし……!」
莉子ちゃんが引くまで隣に誰かが来ることのない様に祈っていた。
勘違いさせな様に言っておくが莉子ちゃんがきてくれたら最高というだけでどの女性が来ても俺はもちろん平等に接する。心の中で落胆はするが、それを決して態度で見せることはない。それが礼儀であり、マナー。その辺は弁えている。
「はーい!じゃあ引きます!」
次は木南の番だ。
俺の隣は十四番。前は六番。木南はめっちゃいい人だしかわいいんだけど俺は欲深い人間。やっぱり莉子ちゃんが隣に来て欲しい。
木南がくじを手に取り、少し照れたように笑う。クラスの男子たちは息を飲んで見守る。
木南がくじを持った手を突き上げて言った。
「十九番ですっ!」
一瞬、沈黙が訪れた後、教室の隅の方で歓声が沸いた。
「俺の隣じゃぁぁああ!!」
教室の隅で勝利ポーズを掲げていたのは――古川咲斗だった。
「くそが!」
「なんでお前なんだよ!」
周りの男たちは古川に大バッシングを浴びせるが、当の本人には聞こえちゃいない。
「あいつ……?」
普段の行いとかマジ関係ないな……。
神はいないと分かったところで次にくじを引くのは――
「引きます」
「鈴香ちゃん!三十番引いてくれ!」
――水瀬鈴香だ。
クール系美少女。何考えてるか分からないところが逆にかわいい。
莉子ちゃんがいなかったら多分、俺は水瀬を好きになっていただろう。だけど莉子ちゃんがいる今……隣を引かれるのは困る!
「前でいい。前でいい……」
水瀬は無表情でくじを引く。全員が息を呑む中、水瀬は淡々と呟いた。
「十四番でした」
「……おぉっ」
俺の隣じゃねぇか……!どうするどうする?喜ばなきゃ不自然か?
「隣誰だ……?」
全員が周りを見渡し始めた。このままじゃまずいと思った俺はとりあえずリアクションしておこうと思った。
「俺じゃぁああ!」
古川のパクリだけど仕方ない。こんくらいやっとかないと不自然だ。
「ふざけんな!有栖ちゃんから鈴香ちゃんとか不正だろ!」
「変われよ!」
莉子ちゃんの隣を引いたやつは変わってやるよ……!
とは言えず、俺はただ胸を張って自慢げな表情をしていた。
「よかったね!」
戻って木南が声をかけてくる。
「お、おう……!」
水瀬の方をチラッと見ると目が合った。一瞬、ニヤッとして視線を外した。
何考えるかわかんね……ちょっと怖いな。ていうか莉子ちゃんは!?莉子ちゃんは何番――
「あっ。六番です」
前を見ると、莉子ちゃんが番号を宣告していた。
「六番……六ばんね。ろくばん……?」
俺の前じゃん!神はまだ俺を見放してなかったか……
引き終わった莉子ちゃんが戻ってくる。
「え〜。莉子と鈴香近くていいな〜」
木南が項垂れながらそう呟く。
「後ろだし運良かったね〜」
「浅倉くん七番だよね。鈴香の隣」
莉子ちゃんは俺に話しかけてきた。
「そうそう……!また前後だね」
「そうだね。またよろしくね」
「よろしく……」
いい人生すぎるな……
「じゃあ机移動させてくださーい」
全員のくじ引きが終わったところで先生の声が響く。
ざわざわと動き出す教室。木南は莉子ちゃんと別れの挨拶をしてから古川の隣へトボトボ歩いて行った。
「後ろ遠いな……」
前の席から後ろの席までは距離がある。移動する波に揉まれて俺と莉子ちゃんはなかなか後ろに進めない。
「よし……」
抜け出すと俺の隣の水瀬がすでに座っていた。
「……よろしく……お願いしまーす」
緊張しながら軽く頭を下げる。
「……よろしく」
意外と返してくれるんだな。無視されるかと思ってた。
「鈴香〜。近くだね〜」
後ろから莉子ちゃんが手を振りながら続くと――
「莉子〜近く嬉しい」
水瀬は満面の笑みを見せた。莉子ちゃんと俺でこんなに差があるとは……まぁ当たり前か。
俺が席に座ると、周りの男たちの視線を感じた。やっぱり水瀬鈴香の人気はすごいな。
木南の方を見ると、古川がめちゃくちゃ話しかけていて流石の木南の少し引いていた。近くの席の柴田が頭をしばいて収まる。近くに柴田がいてくれてよかった。
そんな様子を見ていると――
「……君が隣でよかった」
水瀬がそう呟いた。
「え……?」
どう言う意味?古川みたいにめんどくさくないからよかったって意味だよな……?
考える暇もなく先生が声を上げた。
「はい!時間余ったからやっぱり授業やるぞ!」
生徒たちの落胆の声が上がるけど、先生はそんなのお構いなしに板書を始めた。水瀬と莉子ちゃんもノート、教科書を出して授業の準備をし始めた。
今日からまた別の布陣での学校生活が始まる。
⭐︎
国語が終わり、次の六時間目の授業中。
数学の時間になり、俺たちは静かに問題を解いていた。
「…………」
問題を黙って解く。数学は得意だ。数学で受かったみたいなもんだからな。
早く終わった俺は前の席の莉子ちゃんを眺めていた。髪の毛がツヤツヤすぎて光の反射がすごい。やっぱりボブって正義だな。一年の頃はロングだったけどどっちもかわいすぎてやばいわ。
まぁかわいいのはもちろんとして、俺にはミッションがある。相互フォローになりたいんだ俺は!
二年生が始まって約二週間。木南とデートまでした俺なのに、まだ莉子ちゃんとの距離は遠いままだ。何かグッと近づく様なことを――
ガンッ!
「うわっ!」
横を見ると水瀬が俺の机と自分の机を思いっきりくっつけて、近づいて来ていた。
びっくりしたんだけど!?
「教えて」
水瀬は俺の目を見てそう言った。どうやら今やっている問題が分からないみたいだ。
「え……あぁ……うん」
水瀬ってちょっと不思議ちゃんなのかな……?
「えっとここは――」
動揺を隠しつつ俺は水瀬のノートを覗き込んだ。水瀬も同じノートを覗き込んでいる。
とても近い。おでことおでこが触れてしまいそうな距離。水瀬は何も気にしてなさそうだ。
「ここのxを移項して……どっちも割れば答え出るよ」
「……なるほど」
説明を受けて水瀬はペンを走らせる。真剣な横顔。目でかいし、鼻筋も通ってる。あと肌がとんでもなく綺麗だな。こんな距離で見ても毛穴一つ見えない白い肌だ。
「ありがと」
水瀬は顔を上げてふっと笑った。その一瞬だけ表情が柔らかくてドキッとした。
いつものクールな感じとのギャップ……これは沼るやつが大量に出るわ。
「……浅倉って数学得意なんだ」
「まぁちょっとだけ」
初っ端呼び捨て……?そっちの距離も近いな。
「ちょっとのレベルじゃないと思うけど」
さらりと褒めてくる水瀬。え、なにその自然な褒め方?イケメンなんですけど。
その時、前の席の莉子ちゃんがくるっと振り返った。
「浅倉くん。これ合ってる?」
ノートを少し持ち上げて俺に見せてくる。
「えっ……!」
「あっ、ごめん。話聞こえて来て得意だって言ってたから見てもらおうと思ったんだけど……」
「見る見る!全然見るよ」
俺は姿勢を正して莉子ちゃんのノートを受け取った。こんな神イベントがあるとは……水瀬のおかげだ……ナイス!
俺は莉子ちゃんのノートを覗き込む。字が綺麗……字まで愛おしく感じてしまう。
「うん。合ってると思う」
俺はそう言って莉子ちゃんにノートを返した。
「ありがと〜」
莉子は微笑みながらそのノートを受けとった。
「…………」
俺は見惚れてしまって何も言えなかった。莉子ちゃんは前を向いて次の問題を解き始める。
「……やっぱりそっか」
俺は放心していて水瀬が何か呟いたのを聞き逃していた。
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