隠れたシンデレラ
カタカナ題名が好きなんです。1話読んでみてください!
よろしくお願いします!
浅倉北斗。高校二年生。俺は今、恋をしている。
相手は前の席の天城莉子ちゃん。
ボブの髪が似合ってるまじでかわいい女の子だ。常に柔らかい表情で笑っててほんとに癒し。
死ぬほどかわいい。間違いなく過去一。
でもそんなとんでもなくかわいい莉子ちゃんはモテていなかった。
理由は分かっている。あの二人のせいだ。
莉子ちゃんの親友であり、学校中の注目を集めるマドンナ二人組。
その二人が莉子ちゃんの人気を持って行ってるのだ。
目立つのはいつも彼女たちで莉子ちゃんはその隣で静かに笑っている。
その"隠れたシンデレラ"に気づいているのは現時点で俺だけだった。
莉子ちゃんのかわいさが話題にならないのはなんか悔しいが逆に言えばこれ以上ないチャンスでもある。こんなにかわいいのに競合がいないなんてもう……やばすぎる。
そして今、莉子ちゃんは俺の前の席にいる。高校二年に進級してまだ数日。
同じクラスになっただけでもぶち沸きなのに神はさらに俺の味方をしてくれるらしい。
このチャンス逃すわけにはいかない。
今日は金曜日。月曜日に二年生になり、一週間が経とうとしている。俺は今日こそ声をかけるぞ。
「ふぅ……」
深呼吸。心臓がうるさい。背もたれ越しに莉子ちゃんの後ろ姿がある。
ボブの髪がふわっと肩に触れて揺れるたび胸の奥がざわつく。
もちろん後ろ姿までかわいい。
話しかけるだけ。たったそれだけのことなのに手が少し汗ばんでくる。
どんな風に声をかけようか。
「おはよう」……は流石に今さらすぎるか。来てから結構経ってるし。
「同じクラスよろしく」……も流石に遅いか?
こんなんになるんならもっと早い段階で話しておけばよかった!
そんな後悔が頭を駆け巡るがもう遅い。ここまで声をかけられなかったのなら、今かければいいじゃないか。
なんでもいい。まずは名前を呼んでみよう。そこからは未来の俺が何とかしてくれるさ。
莉子ちゃんは心の中で読んでるだけだから……天城さんだな。初めて話すし。
よし。行くぞ。
「あま――」
俺が莉子ちゃんの名前を呼ぼうとした瞬間、教室のドアが開いた。
「おっはよ〜!」
明るい声とともに教室の空気が一気に華やぐ。
学校中の視線を集める二人のマドンナ、その片方の木南有栖だ。
肩までのウェーブがかった髪を揺らしながら眩しいくらいの笑顔で教室に入ってくる。
元気系マドンナ。明るくて誰にでも優しい木南は万人受けするタイプだ。
木南が好きな友人によると一番の魅力は「笑った時に無くなる目」らしい。
まぁ確かにかわいいけど……俺はやっぱり天城莉子。
「おはよー!」
木南はすれ違う人たち全員に挨拶をしながらこちらへやってくる。
木南は俺の隣の席だった。
木南は俺の隣の席までやってきてカバンを自分の机に置くと、目がなくなる笑顔を見せた。理由は簡単。目の前に親友がいるから。
「莉子おはよーっ!」
教室の端まで響きそうな大きな声で莉子ちゃんに飛びつく。
莉子ちゃんはどちらかと言えばクールな方だから少し恥ずかしそうだけど、ニヤつきが隠せていないから満更でもないんだろう。
「おはよ。有栖」
莉子ちゃんが喋った!横顔も見えたし……木南ナイス!
「ねぇねぇ聞いて!昨日の帰りやばくてさ〜!」
木南はエンジン全開で喋り出して莉子ちゃんは「なにそれ?」って笑いながら相づちを打つ。二年になってからよく見る光景だ。
その姿を見てるだけでなんか幸せになる。でも俺が話しかけるタイミングは失ってしまった。
まぁいい。今は本を読むふりでもしながら時を待とう。莉子ちゃんの笑った横顔を見れるだけで十分だ。
そうして俺は本を開く。こう見えて俺は文学少年なんだ。莉子ちゃんが本好きって言う情報があったから読み始めただけなんだけど。
今日はミステリーかな……と、次の瞬間。
「あっ!浅倉くんもおはよっ!」
木南が気づいたかのように俺の方を向いてにかっと笑った。明るすぎるその笑顔に思わず背筋が伸びる。
「お、おはよ」
「ふふっ、今日も頑張ろうね!」
木南は軽く手を振ると、また莉子ちゃんの方へ向き直った。
「あはは……」
びっくりした!何、今の!?急にやめてよ……困るから。
でも……莉子ちゃんちょっとこっち見てた?
俺は女子に耐性がない。男の友達は結構いるけど、女子となると話は別。誰かと付き合うどころか遊びに行ったことすらない。
木南でこんな心臓がバクバクするなら……莉子ちゃんと話したらどうなるんだ?
そんな不安が浮かび上がったところでもう一度教室のドアが開いた。
「おぉ……」
今度は元気のいい挨拶じゃなくて周りのどよめきで気づいた。
二人目のマドンナ水瀬鈴香が入室したのだ。
木南とは対照的に清楚でクールなタイプ。一つに縛ったポニーテールに整った顔立ち。ほんの少し笑うだけで男子が息をのむ。
クール系マドンナ。言うなれば清らかな雪と真夏の太陽。木南と二人そろえばそりゃ学校中が騒ぐわけだ。
水瀬が教室を見渡していると、木南が声を上げた。
「鈴香〜!」
大きな声と手を振るその姿のおかげですぐに見つかった。水瀬は一瞬、嬉しそうな顔をしてからこちらへ早足でやってくる。
「おはよ。二人とも」
すぐ近くまでやってくると、水瀬は微笑みながら挨拶をした。
「おはよ〜」「おはよ!」
莉子ちゃんと木南もそれに返す。
完成してしまった。この三人の布陣が完成してしまえばもうおしまい。男子の目線はこの三人に向いてもう付け入る隙なんてあるわけない。
「莉子、前髪ちょっと曲がってる」
水瀬がさらっと手を伸ばして、莉子ちゃんの前髪を整える。
莉子ちゃんは少し照れたように笑って「ありがとう、鈴香」と小さく言った。
羨ましい……!俺も女子だったら……と思うが、多分女子でもこの三人には近寄り難いだろうな。
俺は完全に諦めて本を読む。もうこうなったらチャンスもないからな。
男子は遠くでコソコソしているが俺はそれには混ざらない。なぜならそれは大体、木南か水瀬の話をしているから。
一年の頃、その会話に混じって最初に聞かれた質問は「お前はどっち派?」だった。それに「莉子ちゃん」と答えたら"逆張り人間"というレッテルを貼られ、今でもバカにされる。
そこから俺はその会話に入るのをやめた。逆張りでも何でもない。
俺は莉子ちゃんが好きなんだ。囃し立てられるマドンナたちが霞むくらいに俺は莉子ちゃんしか見えていない。
気づけば三人の笑い声が教室に響いていた。
構図はいつもと同じ。木南が明るく天然をかまして、水瀬が冷静にツッコむ。そして莉子ちゃんはその間で小さく肩を揺らして笑う。
結局、今日もダメか。まだ一日は始まったばかりなのにもう諦めモードだ。
時間だけがゆっくりと過ぎていく。三人はずっと楽しそうで、俺はページをめくるふりをしながら心の中で何度も同じセリフを繰り返していた。
次こそは。俺はそう思うことしかできなかった。
――何分経っただろうか。始業の時間が近づき、教室のざわめきもだんだんと落ち着いてきた。チャイムが鳴るまで残り一分になった時、少し遠くの席の水瀬が三人組から外れた。木南も席につき、お互いの席に着いたまま二人で会話をしていた。
そしてチャイムが鳴った。先生は遅れているのか、まだ来ていない。だが教室には沈黙が訪れた。流石の木南も喋るのを中断し、姿勢を正し始めた。
ギリギリまで木南の話を聞いていた莉子ちゃんはチャイムが鳴ってから教卓の方を向き直る前に、なぜか俺の方を向いた。
そして一言、俺に向かって呟いた。
「その本、おもしろいよね。私も読んだことある」
小さな声だった。
けどその一言はやけに鮮明で、まるで耳のすぐ横で囁かれたみたいに響いた。
何が起きたのか理解が追いつかなかった。
俺が顔を上げると、莉子ちゃんはもう前を向いていて、ボブの髪がさらっと揺れただけだった。
え?今……莉子ちゃん……
「……っ」
小さく息を吐いて、自分の太ももを左手でつまむ。ちゃんと痛い、これは現実だ。
たった一言話しかけられただけなのに、心臓の音がうるさすぎる。
チャイムが鳴り終わっても先生はまだ来なかった。でも来ないでよかった。今、来られたら顔が赤すぎて熱だと勘違いされるかもしれないから。
ありがとうございました!
反省を生かしてこのくらいの文字数で行こうと思ってます!
評価、感想ぜひください!




