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嘘の題目

 



 休日が終わり、地獄が始まろうとしていた。

 もちろん最後に学校に行った日、学校一美人な人(推測)と話していたためちょっとした噂になっているから、というのもある。しかし、今はそんなことを言ってる場合ではなかった。本当に。


(なんであんな事を聞いちまったんだよ、俺)


 最後に詩音と話したのは、金曜日の学校、ではなかった。何故か、この休日の一日を過ごしていたのだ。

 挙句の果てには、いつから俺を知っているかだって?なんてことを聞いたんだよ、本当に。


 しかし、そんなことを言ってもしょうがない、と思い一昨日のことは一旦忘れて、学校に行く準備を始めた。


「いってきます」


 ただ習慣になっているだけの言葉を吐き、怜は家を出た。声は響くことなく消え、返事はなかった。




 怜は、今日も最低限の会話だけになるように努めよう、と心に言い聞かせた。


「いやー、今日も暑いね〜怜」


 涼は、登校して教室に入ったタイミングで話しかけてきた。

 朝から元気に話しかけられると、こちらも気が狂う。


「まあ、わからなくもないが…先が思いやられるな」


 確かに、最近は四月とは思えない程に暑い。最近までは寒くて手が動かなかったのに。


「話したいのはわかるけど、先に座らせてあげたら?」


 煌夜と話すことは久しぶりだ、とも思ったが金曜日も話したから実質涼と変わらないか。

 いや、別に涼より煌夜の方が恋しかったから、なんて理由で久しいと感じた訳ではない…はず。決して。


 ただ、それだけ衝撃なことがその日、煌夜と話した後にあったから仕方がないか。

 怜は勝手に勘違いをして、勝手に納得する自分を少し笑った。


 怜は煌夜に言われた通り座ることにした。


「怜は休日何してたんだ?俺は怜がいなくて寂しくて寂しくて…もう」

「よしよし、大丈夫だよー(棒)」


 なんか、すすり泣いている涼を煌夜が慰めて(?)いる様子が窺える。

 もう、たまらんですな

 腐女子が喜ぶ。まあ、涼に関しては生理的に受け付けないけど


「まあ、俺は特にいつもと変わったことはない」


 涼は鼻をひくつかせて、俺の匂いを嗅いできた。

 気持ち悪い


「女の匂い?まさか私の知らないところで!許せない!」

「…」

「え?ガチ?」


 一瞬思考が止まった。なんでそんなことを言いだすんだこいつ


「いや、朝に会ってるなんてことは流石にね。え?ないよね?」


 すかさず、煌夜がフォローを…フォローをされる状況が作られていた。


「いや、あるわけないだろ。ていうか匂いなんてする訳ないだろ」

「じゃあ、さっきの硬直は何?」


 怜は終わったことを悟った。

 というか涼のは勘なのか?たまたまなのか?まあ冗談だとしても、どちらにしても怖すぎる。

 これはblacklistに載せなくては!

 ブラックリストって響きかっこいいよね


「実は…土曜日に色々あって―――一緒に話してた」


 俺は、周りの誰にも聞かれない声で話した。


「え?マジで?それって―――」


 涼が話そうとした瞬間に丁度話に出ていた人物が教室に入っていった。その人は、隣の席に座った。

 しかし、話しかけてはこなかった。恐らく、この二人がいるからだろう。


 話は一旦中断し、それぞれの席に着いたところでチャイムが鳴った。


 結局今日一日、詩音と話すことはなかった。




「なんでだ」


 怜は、帰るとベッドに倒れこみため息交じりに独りごちた。


 今日、詩音と一回も口を聞かなかった。理由はいくつか考えられるが、それが直接話さなかったことに関係するとは思えなかった。


 入学式の日も、金曜日も、特に何もなかった、という訳ではない。でも、次の日は何もなかったように話していた。では、何故今日は話されなかったのだろうか。


(もしかして本当に俺のこと昔から知っていて、そのことを俺にばれたから?)


 いや、そんなはずはない。もし俺が詩音と会ったことがあるなら、忘れるはずもない…はず。

 それに、一方的でも俺のことを知っていたのか、と聞いたのは正直に言ってなんの証拠もない。ただ、そんな気がしただけで…いや、でも確かに知っている風に見えたのは確かだ。それに、回答はもらっていない。


「どうすりゃいいんだよクソ」


 誰もいない部屋でまた、独り言を言った。


(ん?ちょっと待て、なんで俺はこんなに意識しているんだ?)


 そもそも、別に一日話さなかったぐらいで何も変わらない。俺は、何をずっと考えていたのだろう。そう思った。

 たった一日がこんなにも長く感じられた。でも、それが何になる訳でもない。考えても答えは出てこない、そもそも答えはない。こんなにくだらないことはあるだろうか?


 怜は、そこまで詩音に執着していないと感じていたが、もしかしたらそんなことはないのかもしれない。

 怜は、下心という名の嘘の題目ではなく、ただ近くにいるだけの少女として興味が湧いていたのだ。


 今回ばかりは、自分の気持ちに冗談を交えることはなかった。




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