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出会ってから三日目の会話がこれです

 



 何故怜は休日に制服で出歩いているのか、というとそれは勿論、学校に行こうとしていたからである。

 何故休日に学校に行こうとしていたか、というとそれは勿論、勿論勤勉だからである。

 では何故今、目の前に詩音がいて、それが水沢怜を終わらせる要因になるのか、


「水沢さん…なんで制服なんですか?」


 というとそれは勿論、


(え?めっちゃ恥ずかしいんですけど、これ)


 まず事実、

 怜は今日学校があると思い込み、制服を着たまま外に出た。

 これ自体は、まあ許される。しかし、生憎自分はネタキャラではない。おそらく

 つまり、何をどう考えても結局は恥ずかしいことをしている、という判定になる。詰んだ


 怜は、この状況で言い訳をするのは愚策だと思った。なのでここは、


「着る服がないし、図書館に行くだけだから」


 根本をずらしてみる。正直、言い訳と同レベルの回答ではある。

 そのせいで理由にならない理由を口にしてしまった。


「そうなんですね」

「ああ」

「…」

「…」


 え?気まずい、気まずい、気まずい。なんか喋れよ

 まあ、気まずい理由の一つは、怜が詩音と目を合わせようとしないからなんだけど


「…あの、このあと暇ですか?」

「だから、図書館に―――いや、暇と言えば暇だ」


 図書館はあくまで設定であるが、設定は維持しないといけない。

 まあ、暇なことには違いないけど…


「よかったら、今から一緒にお茶しませんか?」

「あー、うん」


 なんか、それっぽく興味がなさそうに返事をしてみた。


(あれ?)


 適当に相槌を打ったら、隣の席の美少女と喫茶店に行くことになりました。




 怜には最近、ずっと思っていることがあった。


 まず、状況説明


 ・初対面は二日前、展開があまりにも早すぎる

 正直に言うと都合が良すぎる気がするが、まるで水沢怜が主人公で、黒瀬詩音がヒロイン。みたいな感覚になる。主人公補正掛かってんのか!ってぐらいには初期値が高い。そんな感じ。

 ・何故、謎の美少女転校生は俺に関わってくるのか

 これについては、まあ俺が無害そうで疲れなさそうだからだろう。納得は、まあ―――いや、こんなこと考えてたら切りが無い。

 ・黒瀬詩音の表情が、掴めない

 たまに自分に向けられる、何を考えているのか全く分からない表情をする。


 それに、


「じゃあ、私はカフェラテで。水沢さん、どうかしましたか?」


(こんなんほぼデートじゃん)


「いや、なんでもない。コーヒーで」

「かしこまりました」


 お昼前の喫茶店の店内は、静かで落ち着いていた。

 目の前にいる少女は、こちらと目が合うと少し微笑んだ。


「なあ、詩音」

「はい。なんですか」


 怜は、これはいい機会だ。と考えて、聞きたいことを聞くことにした。


「なんで、今日は俺を誘った?」

「…その、ご一緒できればと思いまして…」


(答えになってねー)


 だから、その理由が知りたいんだよ、と思ったが別のことを聞く。


「じゃあ、なんで俺と友達になりたいだなんて言ったんだ?」

「それは、水沢さん、私に興味ないでしょ?こんなことは言いたくないんですけど、もっと気軽に話せる人が欲しいな、と」


 詩音は、頬を赤らめ少し気まずそうに言った。

 可愛すぎんだろ。


「まあ、確かに大変そうだったな」

「はい」


「じゃあ、最後に…俺のことをいつから知ってる?」

「え?」


 入学式の時のあの表情。

 いつも俺を見るあの目。

 俺と友達になろうと言ったあの言葉。

 そして、この状況。


 どうしても、彼女が自分と初めて話しているようには思えなかった。

 そして、何よりも怖い。


 詩音の眼は大きく見開かれ、驚いたように声が上がった。


「いや、なんでもない」


「ずっと前からだよ」

「何か言ったか?」

「ううん。何も」


 何かを言っていたような気がしたが、最早聞かせることすら目的じゃないように思えてきた。


「ついでに、俺と喫茶店で何を話す予定なんだ?」


 あまり聞きすぎるのは良くないと思ったので、話題を振ってみる。


「実は、私も図書室に行く途中だったんです。でも、たまたま水沢さんを見つけて誘っただけなので、何も予定は立ててません」

「そうか」


 俺は、目も合わせずに頷いた。


「でも、話したい事があります。なんで、私と友達になるのを了承してくれたんですか?なんで、今こうして話に付き合ってくれてるんですか?なんで…」

「だから」

「悪くないは理由になりません」


 詩音は、さっきとは打って変わって問い詰めるように聞いてきた。


「君と話すのは楽しい。それに…何か懐かしさを感じるんだ」


 関われば、何かが分かるような気がした。

 関われば、何かが変わるような気がした。

 それだけかもしれない。でも、嘘は言っていない。


「そうですか」


 この後は適当に話をし、適当に解散した。


 結局、詩音が何を言いたかったのかはわからないままだった。




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