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友達はメンヘラ少女の人形です

 



 怜は何事もなかったかのように、実際に何があったのか覚えていないかのように部屋を出ようとした。


 流石に素性も何も知らない少女。それも動かない少女に永遠と話しかける人間にはなりたくない。


(もう遅いか)


 それに、さっきまで自分が何を話していたのかすらまともに覚えていない。

 あー、そういえば…

 学校帰りに美少女と喫茶店で勉強会兼デート(独断)してたことを話していたのか。

 動かない少女に。


 男子高校生が。華の男子高校生(?)がする行動が謎過ぎて鳥肌が立ってきた。

 無論、当てはまる人物は自分しかいないのだが。


「あれ?」


 なんかやけに物が落ちている、そんな気がしたが、怜は特に気に留める様子もなく部屋を出た。

 全てを忘れたかのように。


「勉強するかー」


 自分の口から出た言葉が信じられなかったが、まあそう気分なんだろうと思う。自分が。


(どういうこと?)


 まあ、勉強をし始めるのは難しいよねって話。

 勉強を始めようとしたが、目が乾いているのか凄く痛い。


 このままだと始まらないので、洗面所で顔を洗おうとした。


「は?」


 洗面所の鏡に映る自分の顔は、いつにも増して気持ち悪い顔をしていた。瞼は赤く腫れ、酷く沈んだ顔がそこにはあった。

 まるで、さっきまで泣いていたような、そんな顔だった。


 しかし、泣く要素が見つからない。

 高校生にもなって、という表記をするにはまだ幼い年頃かもしれないが、自分がこんなにも顔を崩しているのは珍しい。


 ここで、お前の顔はいつも崩れているだろ、という考えは捨てさせてもらうことにする。


 そして、怜はあることに気が付いた。

 さっきまで消えていた、と勝手に思い込んでいた心の穴は、また同じような形で空いていた。もしくは、消えていたのが勘違いだったのかもしれない。

 考えれば考える程に穴は深くなっていった。


 まるで世界一大切なものを失ったような、それも今回が初めてではない。


 といっても考えてわかるなら苦労はない訳で、今は諦めよう。




 このときの怜には、水沢凛の存在も、消えた理由も、知る由はなかった。

 こうして、怜の哲学は崩壊していった。









「…あれ、私」


 水沢凛は、また同じように意識が繋がったことを確認した。

 今の時間を確認しようとしたが、その必要はないようだった。あまり時間が経っているようには思えない。


 眠っていたのか、それとも意識のせいなのか。

 それはわからないが、やけに瞼が重かった。そして、とても周りが明るくて…いや、暗くなった。


 しょうがないので、周りを確認するために重い瞼を上げようと思う。


 目の前には、涙を流す兄の姿があった。


 何故、自分の兄が泣いているのか。これについては大体の見当は付いていた。

 しかし、そんなことを考えている余裕はなかった。


 凛は、黙って怜の話を聞いていた。勿論、質問には答えたが。極力話さないようにした。

 そこで、いくつかの仮説が頭の中に浮かんできた。


 一つ目は、自分が死んでいたこと

 これについては怜から直接言われた通りなので、わざわざ言う意味はないのだが…


 二つ目は、死んでいた間誰も自分のことを憶えていないこと

 自分も含め誰も憶えていないことと、それに周りの人間も憶えていないことも言われた通りのことではある。


 三つ目は、何故か怜から女の匂いがすること

 これについては、特に深く言うつもりはないが…

 そもそも、この一年と何か月だっけ?私が眠っていたからかどうかは知らないけど、他の女の匂いがする?この兄は何をもって私が目覚めたことに涙しているのかが分からない。理解が出来ない。私は眠っているのにデート(推測)ですか。いい御身分ですね。といっても兄は兄なので許してはあげますけど?まあ、私とのデートを強制で作ってあげましょうか。お兄ちゃんは私の全てだから。


 なんてことは勿論思っていなくて、お兄ちゃん大好きです(ハート)。

 うわ、なんか自分でも辛いかも…


 一応、今日誰と何をしていたのかは聞いておきます。


 四つ目は…四つ目は、私はこの匂いを知っているということ

 懐かしいような、それでいて似ている。微かな違和感がそこにはあった。まるで、私のような…


 最後に、私は―――




 ―――目の前にいる兄に深く怒りを覚えているということ


 ふざけてはいない。私のことを忘れる兄に対しての怒りがある。ただ、それだけ。

 そのことに理由は関係ない。


 兄の話す言葉は頭に入ってきてはいない。自分が何を話しているのかなんて気にしてはいない。ただ、怒りだけがあった。




 そして、凛は自分のことを認識できなくなったのと同時に、意識が途切れた。




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