俺のカルピスの濃さ
真ん中っ子の空士には、お金持ちで過保護に育った幼馴染の京に自分の性の満たし方を相談され一冊の本に出会うのだが...
「もう、我慢ならんぞ。」
〝俺は禁欲生活をしている。何故かって? どうでもいいだろ、この知りたがり屋さん。そんなに知りたいなら僕とセックスして下さいよ!!〟
どうも。空士です。
グラビア雑誌やエッチな動画を見ている事は少しだけ女の子に言いずらいけど、どうしてだろう。
官能小説を拝読してる。って言われると、〝コイツ、本気型のエロじゃん〟と心で思いつつ、
「へぇ…」とだけ言ってしまう。間違っても「俺にも読ませて!」とはならん。
だってチンコの事をわざわざ、〝立派なお茄子〟とか表現する文学ヤローは至って真剣で真面目である為、「何言ってん!」などと間違っても言えないのだ。めんどくせぇ。そんな時に限って晩飯にお茄子なんかが出てくる…俺はどんな気持ちで食べればいいの? 食べ物をチンコに例えるのが美しい文学なら、ソフトクリームをウンコって例えるのと何が変わらないんだよ。
俺がどうしてこんなに愚痴をこぼしているかだって?教えてやるよ!これだけは言っておく。
俺は、美しい童貞だ!
= 五日前 =
幼馴染で金持ちんこ京は一人っ子で、それはそれは大切に育てられてきた。親が塾というエゴイズムに課金し京は見事な頭脳と純粋さのまま十六歳になった。
だが、どんな頭脳明晰な奴だって、年頃になれば性欲が湧く。そして京は夢精を経験し、自慰行為をしたいと俺に相談してきたのだ、きゃわいい奴め!お任せあれ!俺はお勧め作品をしっかりと伝える為、空を仰いだ。
その時俺の中で、幼馴染に自分の性癖がバレるのが凄まじく恥ずかしくなったのだ。
だって、俺はドMなのだ。こんなにカッコ良くクールを装い一緒に過ごしてきたのに、まさかのM男だなんて、言えない。 俺は、ぶっちゃけるのか、このままクールを装うのか歯軋りをしながら考えた。
= 四日前 =
俺と京は互いの高校の中間地点である中央図書館で待ち合わせた。俺は基本、本は読まない。
漫画コーナーで美味しんぼを読みながら、腹が減ったぜ!と三大欲と隣合わせの日々にあくびが出た。何故か勃起している俺は、三大欲の王様なのかもしれない。
「シーちゃん、お待たせ」
京が背後から耳元で囁く、マジやめろよ、感じちゃうだろ!と言いたいところだが、ここは図書館だ、京は正しい行動をしただけである。間違っても馬鹿でかい声で「シーちゃんお待たせ!」などと言えば、剣山のような冷たい視線を浴びる事になるからだ。
「おう。」
俺は普通を装うのが得意だ。京は両手いっぱいに本を持っている。
「何それ、借りるの?」
俺の言葉に頬を赤らめる京が少し可愛く見えた。
「…どれがいいかな?」
京は自分が両手いっぱいに持った本を俺に気恥ずかしそうに差し出してくる。
「何これ?」
「…もう、わかってるくせに…」
本のタイトルを見ても全くわからない。
〝お前の門〟 〝片耳ゼリー〟 〝アクロバティックベジタブル〟
「何これ?俺、本読まないよ?」
「シーちゃん、これ全部、大人の本だよ…」
「えっ、」
ここまでくると、大切に育てすぎた結果、こっちの方向に進んでいく息子を両親はどう感じるのだろう。 だが、これも立派なエロ本だ。一冊も読んだ事ないけど、純粋な京はここからスタートの方が刺激が少なめだと思うし、何よりも想像豊かにエロへの妄想の幅が広がる可能性を感じた俺は、手を顎に当てながら真剣にどのエロ小説が良いのか考えた。
「この、片耳ゼリーってどう?」
「え、でもママにバレたらどうしよう…僕はアクロバティックベジタブルが一番安全だと思う」
「よくわかんないけど、良いんじゃない。」
「さ、先にシーちゃん呼んでよ。刺激が強めだったら僕、きっと心が追いつかないから」
俺は今日エロ動画を一緒に見ようとしていたのに、親友に官能小説を勧められた。正直俺は少しばかり興味があった。小説でヌケるなら俺自身の可能性が広がるからだ。
「別に良いけど、俺読むの遅いよきっと」
「大丈夫!二週間も借りられるから!」
この時のキラキラした京の瞳を俺は一生忘れないと思った。
= 三日前 =
俺はエロ動画でヌイた後に、ベッドに寝そべりながら〝アクロバティックベジタブル〟を手に取りページをめくる。
〝 第一章 セントバーナードは野菜がお好き 〟
全くそそられないタイトルに本を閉じそうになるが、これはエロ本だと自分を震い立たせた。
セントバーナードのような肉体を持つ女が自分の体を武器にどんな童貞でも、筆おろしさせるというサクセスストーリーだ。
まず、セントバーナードのような肉体ってなんだよ、文学はここから想像に妄想し、一人の人格や見た目、性格を読み取っていかなければならない。
そして、俺はこのセントバーナードに恋をしてゆく。
セントバーナードは肉食女子であり、野菜とは童貞を意味していた。
本を読み進めていくうちに、童貞の初体験を様々な手法で筆おろししていき、セントバーナードに抱かれたい気持ちになる。
第二章を読む頃には二回目の射精を心みるほど、興奮している自分がいた。
この本、すっげ。こんなにも俺を勃起させるだなんて!
俺は京の事などすっかり忘れて、最終章まで一気見してしまった。
俺は初めて涙を流しながら自慰行為をした。
まじで、官能小説家の凄さを改めて感じた。
あとがきには、こう記されていた。
〝 最後まで読んでくれた童貞のみんな、セントバーナードから最後のお願い 〟
〝 早く、私なんか忘れて禁欲して…また綺麗なお茄子を食べさせて 〟
〝 さようなら セントバーナード 〟
俺は、あとがきを嗚咽しながら読んだ。
「死ぬなんて想像もしてなかったよ、セントバーナードぉおおおおおおお!」
俺は禁欲を決め、京にこの本を読むのはまだ、早すぎると諭そうと決めた。
= 二日前 =
俺は京と中央図書館でまた待ち合わせた。
「俺の女、セントバーナードはもう、いない。
忘れようとするたびに、頭をよぎるセントバーナード。やめてくれ、俺は現実世界に戻ってきたんだ。あぁ、セントバーナードは濃い味が好きって言ってたっけ。泣かせるぜ。」
俺は京にまだ読むべき作品でない事を伝え、一方でこんな素晴らしい作品はない事も伝えた。
「何の話?」
京は全く理解できていない様子だ。
「セントバーナードだよ。」
「シーちゃん…何の話か…わかんないよ。」
〝だまれよ!童貞!〟と心で叫んだ俺は、〝片耳ゼリー〟を手に取り官能小説の虜になっていた。
= 一日前 =
俺は公園のベンチで〝片耳ゼリー〟を読み始めた。
広場では少年たちが泥だらけになってサッカーをしていた。
〝いつまでも、純粋無垢だと思うなよ、お前らもあと数年したら公園で官能小説を読むんだからな〟
その時、大型犬が颯爽と少年たちと走り回り、少年たちは皆、笑顔を溢しながら球を転がす。
「この犬、でっけぇ!」
少年の何気ない一言で俺は察知してしまう。たった一冊本を読んだだけなのに、俺の感受性と直感が冴えまくる
「大きいでしょ、セントバーナードって種類なのよ。」
犬の飼い主の言葉に、立ち上がる俺がいた。
〝 プレイはもう、はじまっている 〟
俺は、一目散に大型犬とサッカー少年たちの元へと駆け寄った。
「お前、生きてたんだな…」
俺が小声で泣きながら犬を撫でると飼い主も少年たちも突然現れた男子高校生に呆気に囚われている。
俺は人んちの犬をギュっと抱きしめて離さなかった、犬も俺の気持ちに答えるように腰をふる
「?オスかよ!」
この犬はセントバーナードであるが俺のセントバーナードではなかった。
この日を境に俺は本を読むのをやめた。
現実と妄想の世界の同化を止めるべきだと判断した。
= 禁欲生活開始 五日目 =
俺は自分が犬アレルギーだという事実を忘れていたため、体中が腫れ、痒みと戦っていた。
セントバーナードが嫌いになり始めた頃、俺は晩御飯の茄子を頬ばり複雑な気持ちだ、チンコも痒いし、かきむしれば勃起する。
〝今夜は盛大に出してやる!! 濃いのが好きなんだろ!〟
こうして俺は、今日も童貞を守りヌクのだ。
次回、脱、童貞!
次回、脱、童貞!




