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野蛮な太陽

妄想だけでイケしまう童貞の真ん中っ子の空士そらしは、なんて事ない日常でもHな妄想をしてしまう。

久々に叔父が空士の家を訪ねて来たが、叔父は若い女性を連れて来て...

 = レベル6 野蛮な太陽 =


風邪気味だと感じた時は少し鼻が詰まったり、喉が痛かったりして早く寝ようとシコシコするもんです。

どうも空士そらしです。

学校生活で最もいらないと思うのは、掃除でしょうか?参観日でしょうか?合唱でしょうか?

いいえ、全校集会です。

みんな、それは、それはダルそうに整列をし三割近くは三角座りで寝ている。

女子があぐらをかくと少し残念な気持ちになりますが、パンツが見えなくて残念と言った方が正しい。

俺はすぐに勃起する。凄まじい生命力だ。そんな事を思いながら喉の緊急事態がやってくる。

『喉イガイガ問題である』 〝今、咳したくねぇ〟 喉に手を強めに押し当て喉に全集中する、今少しでも咳を出せば止まらないと分かる程イガイガしてやがる。

限界を迎えた俺は丸くなり両手でしっかりと口を塞ぎ咳をした。顔が真っ赤になっているのが自分でも分かるほど咳つき、とうとう隣の女子が「大丈夫?」などと声をかけてきた。


優しくすんなよ、好きになっちゃうぞ!


「ゲホゲホッ、ダ、ダイジョウブ、ゲホゲホゲホ」 〝バホォ!〟 

俺はこの時、口とケツで返事をしたのだ。

咳と共に屁をかまし体育館という広範囲に放屁し全校生徒の前で目立ちながら屁をしたのだ。

チャーミングすぎてその場から消えてしまいたかった。


声がけしてくれた女子は目を丸くさせてた。あぁ、こういう時に笑ってくれないタイプか…恥っずぅ俺!

俺はこの時、自分の体を強く抱きしめ、一部のクラスメイトからは〝放屁マン〟と呼ばれた。

どうしてなのかな、この咳を最後に俺の風邪気味は放課後には健康男子になっていた。

俺は放屁をする為に風邪気味だったとしか思えない日だった。

いや、違う!放屁した事により、俺はケツから病原菌を外へ逃したのだ!俺を馬鹿にした奴ら、今に見てろ、明日お前らは見事に風邪気味だろう。

俺の中での小さな復讐感情が終結した。


「ただいまぁ、はぁ疲れたぁ〜」

重たい鞄を下ろすと家に着くなり、ソファに転がる。

この瞬間がくだらない一日で一番好きな瞬間だ。

「空士ちゃん、これ飲みなさい…」

ヒミコ(ひい婆ちゃん)が俺に謎の液体を湯呑みに入れて持ってくる

「何これ?」湯呑みから出る湯気からは、ほんのり甘い香りがする

「なぁんでしょ。」入れ歯をずらしながら問題を出題してくるヒミコは本当に可愛い

「カモミールかな?」 俺はわざと間違える

「ぶぅーおならぶーぅ」口を尖らせるヒミコは今日の俺の放屁事件を透視したかのようにイジってくる

「早く飲みんしゃい、風邪気味だったんろぉ。」ヒミコは数いる子孫の中で俺を極度に可愛がる

「ありがとう」 一口飲むと口いっぱいにハチミツと生姜の香りが広がって柚子の香りが優しく喉を癒した。

「美味しい…!何これ!」

「魔法のドリンクだぁよ。」ヒミコは満面の笑みでリモコン片手にマッサージチェアに座ると二時間ドラマを見出す。結局、何のドリンクかは教えてはくれない。これこそが道徳の授業なのかもしれない。


「ただいまぁ、」久々に聞く親父の声だ。何故だ、親父は単身赴任中だが…駅まで母が親父を迎えに行ったのであろう、仲良く一緒に帰宅だ。

両親の久々のツーショットにレアさを感じた。

何故だろう母はソワソワしている。

「空士、久しぶりだなぁ。」 ハゲ頭を光らせながら親父登場である。

まさか、あの親父がフラダンスにハマっている事をとうとう母に告白したのだろうか…。

「空士、明日の夕方に叔父さんが来るから家にいてね。」ゴジラな母は淡々と食事の準備に追われながら鼻息を漏らしていた。

「うん。」俺は素っ気ない返事の後に心でガッツポーズをした。

叔父さん、それは母の兄の事を意味していた。この叔父さんは必ずお小遣いをくれる顔濃いめのハゲである。

優しくてダンディで空手の講師をしている。

ただ、この時の俺はこれから起こる事件を何も想像はしていなかったのである。

俺の弟もお小遣いが貰えると思いウキウキしすぎて、居間で側転をして母に新聞紙で叩かれていた。


土曜日っていいよね、だって明日も休みなんですもの。俺は昼まで寝て珍しくシコシコせずに起きた。母はいつも以上に掃除をしている。実の兄が来るだけなのに気合い入りすぎだろ。と俺は気がつくとチンコを握っていた。習慣は恐ろしい、無意識に握る右手をそっと素早く離した。

「あんたも早く着替えてちゃんとしな!」

ゴジラな母はダイソン片手にバナナを食っていた。進化系ゴジラである。食事と掃除をいっぺんに済ませる主婦の巧みな技だ。

俺はサクッと着替えると、家のインターフォンが鳴り、玄関へ行く。

「久しぶりだなぁ、空士ぃ〜」

叔父さん登場背ある。

「久しぶり!」

その時だった、若々しく美しい女性の声が聞こえたのだ。


「初めまして、こんにちわ。細山佳代子です。」


叔父さんの横には、おそらく二十代前後の女性が笑顔で立っていた。この時の俺の顔はおそらく、史上最強にアホ面だったに違いない。

「誰?」と息を吐くように言っていた。


マジでコイツだーれだーれ?ま、まさか隠し子か?

いや、いくら叔父さんがダンディなハゲだからってそんな事はありえない。

じゃぁ…なーに、なーに?恋人と言ったら俺は実の叔父であれ、グーパンチをしてしまう。


「ワハハハハハ、奥さんだよ。」


俺は、どのくらい口を開けて立っていただろうか、前歯が乾いていた。

「あら、あら早いじゃない。いらっしゃい。」

母も何処かよそよそしい、親父に至ってはニヤニヤ顔が抑えられていない。

状況が飲み込めない俺は、幼き頃の叔父との記憶を走馬灯のように思い出した。


読者の諸君、ここからは読みながら心の中でオルゴールを流して欲しい。


〜 メモリアルストーリー 俺と叔父との追憶記 〜

◉幼少期

「叔父しゃん、ハーゲンダッツ買ってぇ、ハーゲ!ハーゲ!」

「ワハハ、いいぞぉ。空士ぃ〜。」

◉少年期

「叔父たん、叔父たん、アデランスってフランス語で、くっ付くって意味なんだって!」

「ワハハ、よく知ってるなぁ、空氏ぃ!」

◉思春期

「叔父さん、性欲が強いと禿げるみたいだよ?」

「ワハハ、叔父さんの事よく研究してくれてるな、空士ぃ、ありがとう!」


俺は、サッと思い出した叔父との記憶は頭皮の事ばかりだった。ただ、一つ言える事は叔父さんはいつだって、優しかった。

そして今、青年期の俺は、言葉を慎重に選ぶべきだと自分に集中した。

居間には両親、弟、ヒミコと叔父さんと、新キャラの激若の嫁。カオスという空気が充満する、アホの弟も今日ばかりは無言である。いや、きっっと状況を飲み込めていないのかもしれない。


「あんたぁ、よう禿げたねぇ。」

出ました!お年寄りの必殺技、ストレートにぶっ込む台詞を真顔で言う。周り空気なんぞ、お構いなしの死ぬ事すら怖くないラスボス、ヒミコ。

叔父さんが禿げたのは昨日今日の事ではない。

相当昔から禿げ散らかしている。いくら、髪がある時の記憶があるからって時空間の歪みの修正が追いつかないぜ。


母はちょっといいお菓子とメロンを切って出した。

アホの弟は一番先にとムシャムシャ食い出す。そんな弟の事をニコニコ見つめる叔父の嫁。俺は本当に思ってはいけない事を思ってしまった。

財産目当て、もしくは保険金欲しさの結婚…。だが叔父にそんな財力があるようにも見えない。


「この度、こちらの細山佳代子さんと結婚した事を報告しに来ました。」


叔父の畏まった態度にこちら側も背筋がピッとする。


「細山佳代子です、宜しくお願いします。」


俺はもう白目気味の瞬きを高速でしていた。ちょっと待った…そう言えばさ…奥さんいたよね?いつ別れたん?

俺は最重要項目、叔父さんの前の嫁、叔母さんどした?問題で心の中がいっぱいになった。

叔父さんは某有名クッキー店のステラ叔母さんに似た嫁がいたはずだ。

一人息子もいた。従兄弟のカズ君の歳は俺よりも一回り上だったが、カッコ良くて優しいお兄さんだった。

一番気になるけど聞けねぇし、新たな嫁がいる時点でそういう事なのは理解した、だけどさぁ!叔父さんて五十代だろ?えぇぇええええ…俺はドン引きしたのと同時に夜事情も気になってしまい不思議と股間がムズムズする自分に嫌気がした。くっそ、興奮するぜ!

会話の弾まない居間に流れるメロンをムシャムシャ食べる音とスプーンをテーブルに強めに置く音がこだました。突然親父が立ち上がり握り拳を握っている。こんな時、子供はドギマギする。


「みんなでカラオケにでも行かないか?」


何を言い出すかと思えば、親父の精一杯の提案は返答しずらいものだった。

どの家族も定番だとは思うが、親父の〝提案〟イコール〝実行〟というのは我が家だけではないと思う。

ゴジラな母は手を叩き、「行きましょう。」という。これは昼ドラなのか、マジで行きたくねぇ。

だがしかし、こんな時ほど大人は子供を使う。

「お前も行きたいよなぁ!カラオケ!」

親父のワントーン高い声に頷くしかないカオスな瞬間。


〝昼ドラはもう、はじまっている。〟


弟は「コーラ飲んでもいいの?ピザあったらと頼んでもいいの?」とアホを武器にポジティブに気持ちを方向転換させてやがる。

流石に今日の俺は弟のアホな部分に賛同するしかない。

カラオケに行ける事が嬉しい。という態度を子供が取る事でこの場が和むのだ。

ヒミコに至っては、この状況でも寝落ちするという離れ技に俺は震えた。

俺らはヒミコをそっと家においていく選択をした。


このおかしな団体で徒歩でカラオケ屋に到着。

徒歩の理由は酒を飲みたいからだであろう。

いや、飲んでないとこの場をやり過ごせないのかもしれない。

俺の同級生と遭遇しなかった事が唯一の救いだ。

ここで真ん中っ子の俺が動く、「飲み物何にしますか?」飲み物の点呼をとる。


「とりあえずビールで」と誰かが言うとゾロゾロ手を上げる大人たち。

ダチョウ倶楽部形式だ。俺はコーラ。弟はトロピカルマジカルフロートとか言う虹色の頭が悪そうな飲み物をジャンプしながら注文する。

俺は、飲み物が運ばれてから、歌を歌い出したいタイプだが、そうじゃないタイプもいる。

弟は一番に歌を入れる。そのメンタルに俺は感服する。

「歌っうぞ〜!!」弟はマイクを握りしめる。一曲目のタイトルが画面に表示されて皆は注目する。俺だったら耐えきれないシチュエーションだ。


映し出された曲目は〝君が代〟


一曲目から国歌をぶち込んでくる弟のバイタリティと思考に俺は奥歯を噛んだ。

「きぃ〜みぃがぁあ、よぉ〜はぁ〜」

確かに、ここにいるみんなが歌える素晴らしい曲だ。愛国心すら感じる。ただ、くっそ音痴じゃねぇか。

叔父さんの嫁さんは完全に笑いを堪えてるじゃねぇかよ。

両親は我が子の歌いっぷりを愛らしそうに見てやがる。

秒で終わる国歌に皆は謎に胸に手をあてる。心臓を捧げたのかよ。採点不能って初めて見たわ。

親父は立ち上がり、マイクで司会進行をしだす。

歩亜ふあ君の国歌最高だったなぁ。ありがとう!」

うぅ〜ん、もう俺はなんだか恥ずかしくなった。親父の司会進行は止まらない。

「えぇ〜、本日は、素敵な奥さんを紹介してくれて、ありがとう。こんな若い嫁をもらえるなんて幸せな事だと思います、さ、ささささぁて参りましょう!」


〝??!〟


親父が突如、謎にテンションを上げてきやがった。俺は初めてみる親父のテンションに弟のアホ遺伝子の正体を垣間見た瞬間であった。


「実は叔父さんとお父さんは、高校の同級生で、バンドを組んでいたんだ!こいつはボーカルだったんだぞぉ〜フォ!」

親父の〝フォ〜〟ほど聞きたくないフレーズはない。やめてくれ。俺マジ帰りたい。

でも親父の司会進行は止まる気配を見せない。

マイクで話す事でもない高校時代の思い出を話しだし、勘弁してくれ状態だが、意外にも、お嫁さんは目を輝かせていた。そっか…叔父さんの事、本当に好きなんだな、と思った。

「こいつは、歌がうっまいんだぞぉ〜ワハハハハ!さぁ一曲いってもらいましょう!」

この時の親父の顔は少年のようだった。

こんなフリにも動揺せずに曲を入れる叔父さんはダンディだ。

天井のミラーボールのライトが親父と叔父さんの禿げ頭を照らして眩しかった。

曲目が画面に映し出されると軽快な音が部屋に流れた。


「歌ってもらいますのは、郷ひろみで、ゴールドフィンガー99!」


狭い部屋に拍手が起きる


「失礼しまーす。」

こんな時に飲み物はやってくる。だが、しかし叔父さんは踊り出している。

俺は自分の事のように恥ずかしくなってしまう。

下向き加減に飲み物を受け取り、店員さんが一刻も早くこの部屋から出て行って欲しかった。

「すいません、ピザと山盛りポテト下さい!」

弟はこんな時でも注文しやがる。まぁいい。店員さんは笑顔で対応し、サッと部屋を出て行ってくれた。


その時だった、とてつもない声量で歌い出した叔父。

「不埒なリズムでチラつく胸は きみを欲しがる欲望のサイン〜」

歌詞が少しエッチな時、子供は困るんだよなぁ、ドラマのキスシーンくらい親の前では見たくないんだよなぁ。でも確かに歌は上手い、ただ、リズムがわずかにズレていた。早めの曲に対応できていない。だが、嫁の前で自慢の歌を頑張って踊りながら歌う叔父さんの姿に俺は涙が出そうになる。

「よこ、よこ、よこしま気持ちがダンシングインザサーン、このこのこの胸で暴れて、とまらーない野蛮太陽!カモーン!」


ズッレズレじゃねぇかよ!笑いたい、でも笑ったら失礼だ!俺は太ももを死ぬほどつねった。その時、俺の顔にマジカルトロピカルジュースを吹き出す弟は指をさして笑っている。俺は瞬時に大口開けて笑う弟の口に俺の拳を入れてやった。

「アチアチアチアチアチアッチィ!燃えてるんだろーか!もうアチアチアチアチ!」


アチが多い!!腹たつ!親父の前振りもあってか奥さんは完全に困惑して叔父さんの背中をポンポンしてリズムを合わせようとしている。もう介護じゃねぇかよ。

間奏になり親父は「最高だなぁ〜!」と感想をマイクで言う。もうやめてくれ。でもこの曲はまだ終わらない。


 〝プレイはもう、はじまっている。〟


「拒んでもバレてるダンシングインザサーン、そうきみの瞳の裏に野蛮な太陽!オーイエーイ」

俺はこの時間を一生忘れないと思った、少年のようにはしゃぐ親父に微笑む母、困り顔の新キャラの嫁、頑張って歌う叔父、バカ笑いする弟。このカオスな時間に俺は気がつくと泣いていた。

「オーアップサディインサイアウト、きみを泣かせてもアチアチアチアチアチアッチ!」



それは太陽がさせた事だよ、みんな太陽が。

そうか。今日の事、全部太陽のせいなんだ。

俺はこの気持ちを胸にしまい、誰よりも、よこしまで野蛮な太陽である叔父さんを少しだけ嫌いになった。

俺の心のメモリアルは綺麗に上書きされた。

幸せになってくれ、大好きな叔父さん。


次回、俺のカルピスの濃さ

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