マッシュルームが食えなくて 翻訳機が暴走した。
空士は、幼馴染の切ない恋を知り、B L漫画片手に優しい涙を流すのであった。
=レベル4 マッシュルーが食えなくて 翻訳機が暴走した=
秋の夜長を鳴き通す ちんぽこ ちんぽこ ちーんちん。
俺は猛烈に興奮している、この歌詞のエロさは尋常じゃない事に気が付いたのだ。
初めは小学生の時に友達がふざけて替え歌をして、ちんぽこ、ちんぽこ、ちーんちん。と口ずさむ度に爆笑し、あまりの笑いように先生に叱られた記憶が残っている。
だが、俺は高校生になって、こちらの歌詞に注目している、〝秋の夜長を鳴き通す〟酷過ぎるエロさに俺のちんこは、凄まじくなるのだ。
秋の夜長を鳴き通す程のバイタリティが俺にはあるのだろうか?
勿論、答えはイエスである。
童貞の妄想力を舐めないで欲しい、朝までシコれる夜があるのだ。
全力でこの歌の作者に謝りたいと同時に感謝をしたい。
残暑なんて言葉があるが、朝まで生搾りした俺は、残りの精子、残子が全く無い日を迎えた。
グッとモーニング、俺!
みなさんお元気ですか?
どうも真ん中っ子、空士です。
平日なのにお休みなのは、開校記念日という素晴らしいイベントのおかげであります。
秋の夜長を泣き通した俺は、朝眠る事にした。
布団にくるまり瞳を閉じて、息を吸う。吸って吐いて、吸って吐いて、吸って吐いて。
あれ?眠れねぇ。
時々思います、十代の無駄な体力を老後にとっておけたら良いのにと。
まだ薄暗い明け方、俺は何となく走りたい気持ちになってせっかくの休みなのに学校のジャージに着替えてこの有り余った体力を消耗することにした。
母のゴジラのような鼾が居間まで響き、マッサージチェアに座ったまま眠るヒミコ(ひぃ婆ちゃん)は生きてるのか死んでるのか、たまにわからなくなる。アホの弟は言うまでもなく寝腐っているであろう。
俺はヒミコの呼吸を確認すると静かに靴を履いて外に出た。
「さむっ」
人けのない道路に薄紫の空と静かな空気は何処か不気味で神秘的で、吸い込む空気が俺を試してるように感じた。
歩いて数分して河川敷のサイクリングロードに着くと俺は靴紐を固く結び直した。
夕暮れとは違う薄紫の景色に朝日が昇り、あっという間に一面を母のような色に染めていく。
走っているせか、太陽のせいか、体がホカホカしてきて朝露に群れた草木が綺麗だった。
三十分走ったところで、折り返す事にした。
真っ直ぐ来た道を、真っ直ぐに戻る、途中で犬の散歩をしているお爺さんが前方に見え、すれ違うタイミングで「おはようございます。」と挨拶をする。
「朝から、偉いぞ!」と声をかけられ俺は何だかテンションが上がる。
どうしてだろう、このお爺さんと違う場所ですれ違っても挨拶なんかしないのに、場所がそうさせたのか、俺の気分がそうさせたのかはわからないが、気持ちが良かった。
そしてまた前方から犬の散歩オバサンが見え、すれ違うタイミングで挨拶をする。
「あらぁ、可愛いっ。おはよう。」
オバサンから見た男子高校生は、どれも磯野カツオに見えるのかもしれない。つまりは珍しき若者はフレッシュなのであろう。オバサンが連れていた犬が死ぬほど吠えまくっていた。
大丈夫だぜ!お前のほうが可愛いから!
そして前方からまた犬の散歩をしている人が見える、今度はオジサンがオバサンかわからない性別不明者と可愛い柴犬だ。
前方の性別不明者はこちらをガッツリ見ているのが遠目でもわかったので、すれ違いざまに「おはようございます。」と挨拶をした。
オジサンかオバサンか、オジサンか、オバサンか。オジサンか、オバサンか。
俺の心はこの言葉を繰り返していた。返事をしてくれ。声を聴かせてくれ!
「ワンっ!」
犬の声にかき消された、オジサンかオバサンの声は俺に届くことはなかった。
オジサンだったのか? オバサンだったのか。
そして前方から犬の散歩の人が目に入る
「もう、いいだろー。」
俺はすれ違う挨拶にそろそろ飽き初めていた。
自分のクソさに笑けてくるが俺は走りながら笑っていた。
ここは朝イチ、わんちゃんロードである事を知った。
今度はしっかりしたオジサンである。「おはようございます」
俺はこの時、爽やかな笑顔というより、どんだけ犬の散歩させてる人いるん?と笑っていた笑顔だったのであろう
「おはよう!朝から楽しそうで良いのぉ!」
しっかりめのオジサンに抱かれたチワワとオジサンの手提げ袋が、ハローキティだったので心がほっこりした。
きっと、昔娘が使っていた物なのか、孫が使わなくなった物なのかは知らんが、しっかりめのオジサンには可愛いチワワと可愛い娘さんがいるのであろう。
そろそろ走り始めた場所に戻る頃、後方から何やら声がするではないか。
「おにぃちゃん!おにぃちゃん!」
俺は速度を下げ、振り向くとさっきすれ違った、犬の散歩マンたちが一斉に俺めがけて走ってくるではないか。
怖ぇよ!犬も吠えまくって共鳴している。
「えっ、えっ。なに?」
俺は振り向きながら走る足を止めれずにいた。
「ちょっと、待ちんしゃい!」
そう叫んだのは、オジサンかオバサンかわからないオバサンだった。
「あ、はい。」
俺が足を止めると、三人の散歩マンと三匹の犬が、ハァハァ息を吐きながら俺を追いかけてやってきた。
「あんた、足早いのぉ!若いっていいのぉ!」
「あ、はい。」
「あんた、きのこ食べる?」
「きのこっすか…まぁはい。」
「これ食べんしゃい!」
そう言って渡してくれたのは白い小さな、きのこであった。
明らかに新品ではないスーパー袋に明らかに店で購入してないであろう、きのこが入っていた。
「あ、ありがとうございます。」
「これ、私が育てたんよ!マッシュルーム!みんなで山分けね!」
「あ、ありがとうございます。ひぃ婆ちゃんが喜びます」
「あらっ、お婆さん幸せねぇ、一緒に暮らしているの?」
「あ、はい。」
「おにぃちゃん、いくつなの?」
「えーっと…十六です。」
「あらぁぁ!!元気もらったわ!ありがとう!」
「あ、こちらこそありがとうございます」
「そしたらまたね!」
「あっ…また。」
早起きは三文の徳という言葉があるが、俺は、きのこが苦手だ。
だけど、何でか温かい気持ちになれた。
「ただいまぁ」
「あんた、朝からどこ行ってたんだい!」
世の中の母親は、子供への事情聴取が大好きな生き物だ。
「走ってきた。」
「元気なこと!!」
「あ、これもらった。知らないオバサンから。」
母は袋を開けると、きのこを鷲塚みし匂いを嗅ぐ
「マッシュムームだね。早起きは三文の徳だね!」
きのこが苦手だとわかっている母はイタズラ顔で笑った。
朝食には、もらったばかりのマッシュルームがバター醤油炒めで出てきた。
俺はこの時、マッシュルームの裏側の色が黒い事を初めて知り、ますます食べれないと心で悟る。
きのこの裏側のヒラヒラが何とも気持ち悪くて、感触もぷにぷにしていて、菌の塊だと思うと益々食べられない気持ちにさせる。
そして何より知らない人が育てた、きのこに怖さを感じてしまうのは俺だけだろうか。
ヒミコ(ひぃ婆ちゃん)と母と弟は、パクパク食べている。
パワーアップきのこだ。
俺は味噌汁を啜りながら、ぼーっと天気予報を見て急激な睡魔に襲われる。
俺は秋の夜長を鳴き通し寝ていなかった事を思い出す。
うとうとしていると母が弁当を渡してくる。
「俺、今日休みだけど」
「そんなの知ってるよ!お前、補習テストなんだろ?」
「へっ、やっべ!」
俺は完全にやらかしたのである。
早起きは三文の徳とか言った奴に激しく怒りたい!
俺!きのこ嫌い!
俺は自分で自分を呪った。
俺は英語が壊滅的に苦手だ。赤点に赤点を重ね、このままだともう一年、一年生だぞ!と先生が開校記念日にも関わらずに補習をしてくれる事になっていたのを、性に支配された俺はすっかり忘れていたのであった。
俺の体力はヘナヘナ状態である。
パワーアップきのこ、くれよ!!
こんな時の為に、俺は兄が昔使っていた翻訳機をポケットに忍ばせた。
スマホやタブレットの翻訳機の方が遥かに使いやすいが、先生の前で使用できないのだ。辞書を引くのは良しとするという。英語教師なのに古典的な事を言うのである。
「行ってきます」
「生きて帰ってこいよ!」
母よ、俺は戦地に行く訳では無いが、今日ばかりは死ぬ気で行くぜ!!
学校へ着くと教室には、数名の英語苦手な仲間達が分厚い辞書片手にアホそうな顔で席に座っている。
俺は軽く桃香(元カノ)と目が合った。
気まずさこそ無いものの、微妙な空気は拭いきれない。
「ドレミファ、空士!」
俺をそう呼ぶのはクラスで全教科赤点のレッドマン石川くんだ。
石川くんは何を隠そう年上だが、見事にダブられて晴れてもう一年やり直しを志す強メンタルの持ち主だ。
「空士くーん、勉強したかね?」
「実は…何もやって無いっす」
俺は夜中シコっていたとは流石に言えなかった。
「なーにー!!君もこちら側の人間になりたいのかね?」
「なりたくはなっす…」
「君は今、遠回しに僕を馬鹿にしたのかね?」
「してないっす」
レッドマン石川くんはクセが強い。重曹でもかけてアクを抜いてやりたい。
英語の補習といってもプリントに書いてある英文を翻訳し提出するだけなのだが、英語が苦手な我々には凄く面倒で嫌な作業だ。単に英単語を暗記しスペルを書くだけの作業の方がある意味、楽である。
「空士くん、君は辞書を持って来ていないようだが…」
「…シンプルに忘れてました。」
でも大丈夫。俺には翻訳機があるのだ。今この教室にいる奴はスマホを玄関で没収されている為、アイテムは辞書のみだが、俺のアイテムは乾電池式だが辞書とは比べ物にならないくらいの速さで翻訳してくれるのだ。尚且つ、正確さは言うまでもない。
補習の間、先生は教室にはいない。二時間もずっと教室にいるのは先生側もゲロゲロゲロっぴなのだろう。今頃、職員室のインスタントコーヒーをがぶ飲みしているに違いない。
俺はここぞとばかりに翻訳機を出し、スラスラと翻訳していく
「空士くん、君の持っているアイテムは何かね?」
レッド石川くんの熱い眼差しに負けて、あと三問を残して俺は翻訳機をレッド石川くんに渡した。
「うーむ。これはタブレッドが支給される前の先陣の生徒達が使用していた遺物だね?」
「兄さんのなんだ」
「マーベラス、素晴らしい」
レッド石川くんは何やらポチポチ翻訳機をいじり出す
「む・ね」とゆっくり言いながら入力する石川くん。
『バスト!』 発音良く答える翻訳機。
翻訳機の音量を微量に出し、クスクス笑いだすレッド石川。
一つ上とはいえ、こいつもお年頃なのである。
「お・し・り」小さな声で笑いに堪えながら入力するレッド石川の指は止まらない
『ヒップ!』 抜群の発音である。
「発音の良さに痺れますなぁ」
おそらくコイツは超絶に勃起している
「セックスすすすすす」 もはや小声ではない声で笑ってセックスと言ってしまっているレッド石川をもう誰にも止める事はできなきのだ。
『セックス』 翻訳機は入力されるがまま言葉を発する
「素晴らしい!」
レッド石川のお気に召したらしい、真っ赤な顔で笑っている。
「これは、イタリア語モードもあるではないか!」
それから顔面レッド石川は、各国のモードでエッチな言葉を入力させては翻訳機に読ませ自分の性を満たしていた。
クラスの女子は汚物を見るかのように俺らを見てる、もちろん男子の波動は上がっている。
その時、桃香が何やら目で何かを訴えてくる
別れてからまともに話した事もなかったのに激しめのアイコンタクトに俺は勃起してしまった。
と同時に自分の精子の生産の速さに驚いてしまった。
桃香は強い目で俺を見て首を振っている。
ドMな俺の股間はドンドン熱くなる
〝そんな下品な事、翻訳しないで空士くん!〟
そう言っているのかい?元カノよ!
俺の妄想に火をつける桃香の顔は真剣かつ困った顔でダメ!ダメ!と首を横に振りまくってくる
ご褒美タイムっすか!これは!
〝嫌、もう限界!桃香のアソコは湿り気湿地〟と言わんばかりの眼差しだ。
「空士くん、もう、やめて!」
桃香が久しぶりに俺の名前を呼び、懇願してくるではないか!
〝 プレイはもう、はじまっている 〟
俺は、桃香にあいづちを打つと桃香はホッとし顔の力が抜けて微笑んだ。と同時に俺はイってしまった。
一緒にイけたね! 我ながら自分の気持ち悪さに股間を押さえた。
その時、先生が職員室から戻ってきた。
廊下側にいた桃香は先生が来るのが見えていたのであろう。このしょうもない俺らを救う為に、あんなにも必死で訴えてくれたのだ。
もしかしたら桃香はまだ、俺の事を好きなのかもしれない。
その時事件は起こったのである。
慌てたレッド石川が翻訳機を強く閉じたが、乾電池式の翻訳機はスイッチをオフにしない限り、機能し続けるのだ。
そして教室中に、イタリア語モードの『フェラァッチーオ』がこだました。
発音が良すぎな上に、電池が切れかかっていた為に、スローモーションで何度も繰り返し
フェラチオを連発する翻訳機は、もはやホラー映画の音声で『フェ…ラ…ティ〜ォ』と最後の力を振り絞り力尽きたのであった。
先生の視線は剣山のようにこちらを向いている。
俺は深く目を瞑り、叱責を覚悟した。
その時レッド石川が大声で笑いながら立ち上がると、
「先生!僕の翻訳機が乗っ取られました!!」とバカ丸出しの言い訳をし、レッド石川は2回目の補習が確定した。
「いやぁ、最高に笑わせてもらったよ!ドレミファ空士くん!」
俺はこの日を境にレッド石川に気に入られてしまった。
そして、俺は先生に呼ばれ、どうして最後の三問を解かなかったのか聞かれ
「三問の不解くでしょか?」と落語家風にかましたが、今日あった出来事を知らない先生は、眉間にシワを寄せて
「明日、早起きして三問解いてこい!」とおキレになっていた。
俺は明日も三文の徳を得ようと思う。
おあとがよろしい様で。
次回、収まるか、収まらないのか。