幼馴染の恋
真ん中っ子で童貞の空士は、単身赴任先の父の所へ行き、父の究極のダンスを見て失恋から立ち直るのであった。
= レベル 3 = 幼馴染の恋
緩めのトランクスを履き軽くジャンプし続けると少しだけ擦れて気持ちいい。
この事に気がついたのは中学一年の終わり頃だった。
履き古しのトランクスで体育の授業を受けていた時だった。
簡単に言えば、この日の俺は、締め付けが無くチンポコ開放日だった。
これは、とある体育での出来事だ。
クラス対抗長縄跳び大会の練習をしていた、男女別に並びリズムに合わせて飛ぶ、この行為が俺を変えてしまったのだ。
と言っても俺は長縄を回す係だったが、結構キツイ。
両手の自由が効かず、縄を腕に巻きつけ強度を上げる、エグザイルのように上半身ごと思いっきり動き縄を回す、正直腕も結構痛いのが本音だ。
俺はエグザイルをしながらふと、股間の気持ち良さに気がついてしまう。
何だ!これは!お願いだ、誰か早く引っかかってくれ!!!目の前では少し顔を苦しそうに歪めながら女子がジャンプをしている、息すら辛そうにして。そして成長煌びやかな、おっぱいが豪快に揺れているではないか!!
「あぁぁぁぁぁ!」
俺は声を出してイってしまった。公衆の面前で豪快にイッた男なのである。
俺の雄叫びの甲斐あってか、この日は俺のクラスが圧倒的な記録を叩き出したのである。
クラスのみんなには「お前の雄叫びでテンション上がったわ!」「空士くんて男らしいとこあるんだね!」などと男女問わず称賛されたのだ。
ただ、イっただけなのである。
高校生になった俺は、そんな事を思い出しながら朝から自分を愛でていた。
「空士!!お友達が来てるぞ!コラァ!早く起きやがれ!!」
こちらは毎度お馴染み、ゴジラボイスの母が今日も朝から口からキャノン砲の放つように俺をお呼びになっている。
「今、いく!!」
俺は色々な意味で行く。
「おはよー。」
「おはよーじゃないよ!お友達が来てるって言ってんだよ!」
「誰?」
「北原さんって言ってたけど。」
「花音?」
朝食をむさぼり食う弟が「だれ?だれ?だれ!だれ!だれ!だれ!!女のこ?だれだれだれ」と同じ言葉をインコのように連呼する
「黙って、早く食いな!!」
ゴジラママは今日も通常営業である。
玄関の扉を開けると花音が立っていた。
「花音、どうした?」
「おはよう!空士くん、朝早くから本当にごめん!」
「いや、どうした?」
「チャリ貸して欲しい!!」
朝から強気な女子が俺を頼ってきた、勃起しそうだ。
「いいけど。うん、いいよ!」
「本当にありがとう!チャリ調子悪くて、今日朝一で検定あるんだけど、いつもの時間のバスじゃ間に合わなくて、本当にごめん! 借りるね! 」
チリリン!
花音は自転車のベルを数回ならすと立ち漕ぎ全開ですっ飛んで行った。
自分の自転車なのに他人が鳴らすと違って聞こえて何だか良いなって思うのは、自分の物が他人の物になって初めて気が付くのと似てる。
彼女が元彼女になって、新しい彼氏ができるみたいに。
俺は朝食を食べながら、少しだけ桃香(元カノ)の事を考えていた。
「空士ちゃんは本当に寛吉さんに似てるねぇ。」
ヒミコ(ひぃ婆ちゃん)は切ない顔で俺を見ては亡くなった、ひぃ爺ちゃんを思い出している。
恋とは、とけない魔法なのかもしれない。
あぁあ。オブリビエイト。
「行ってきまーす」
今日俺はホグワーツに行けそうな気がした朝だった。
バスの中で幼馴染で金持ちんこの京とハリーポッターについて話し合い、なぜか俺は京の通う塾の講習を受ける事になった。
京はハーマイオニーだ。
塾の講習会に友達を誘うと図書券が貰えるらしい。無料お試し講習会なので、親も渋らずにむしろ晴れやかなに講習会へ行く事を承諾してくれた。
俺は思った、何でハリーポッターの話から講習会に行く事になったのかを思い出せずにいた。
放課後、河川敷のベンチに座りながら講習会までの時間、携帯の麻雀ゲームをしながら時間を潰していると、〝チリリン〟とベルが鳴った。
「空士くーん!」
「あぁ、間に合ったの?今日」
「バチクソ間に合った!!本当にチャリありがとう、助かったぁ!」
そう言いながら花音は俺が座るベンチに腰を下ろした。
「何やってるの?」
「麻雀」
「ガチ!? 私これから麻雀大会に行くんだ!」
「へぇ。」 女子高生にしては珍しい趣味だな。
「空士くんも来る?あおば公民館のサークルで平均年齢75歳で、花音が一番の若手なの」
「だろうな。」
「ほら、私ってお爺ちゃん二人と暮らしてるから」
「お爺ちゃんと二人暮らしなの?」
「うーんと、お爺ちゃんが二人と花音とで三人暮らし!」
「へぇ」 特殊環境だな。
「俺さ、これから京の通う塾の講習会なんだ」
「あー、花音も行った事ある! 京ちゃん図書券欲しさに空士くん誘ったんだねー」
「そうみたいだな」
「あっ、そうだ!これ京ちゃんに借りてた漫画なんだけど、今日返しそびれちゃって、明日から連休出し、これ渡しておいて欲しい。」
「うん。」
花音から受け取った漫画はゴリゴリのホモ漫画であった。
「えっ…」 俺は思わず声を出してしまった。
「あぁ、BL漫画! 結構面白かったよー」
「へー。BLって言うだ…」
「ほら、私の家ってお爺ちゃん二人じゃん、お爺ちゃんとお爺ちゃんは愛し合ってるの」
「おぉー」 特殊環境。普通を装うのが得意な真ん中っ子な俺も少し動揺してしまった。
「同性同士でも人を好きになる気持ちは変わらないんだなぁて勉強になったよ。それに京ちゃんはこれを読む必要があったんじゃないかなぁ。将来のために。」
「えっ、京ってこんなの読むんだ?」
「レズビアンの漫画も面白かったよー」
「へ、へー。」 俺はこの時、幼馴染の京は同性愛者なのだと気付かされた瞬間だったと共に
花音の口から〝レズ〟という言葉が出てきた事に興奮をしてしまったのだ、どうせならレズの漫画を手にしたかった俺がいた。
「空士くんが考えているようなエッチな作品じゃないよー。性の美しさみたな物を学べたし、同性同士の正しい性行為の仕方も学べたよー」
花音、もうやめてくれ、花音がレズの話をするたびに、おっぱいが四つ俺の頭の中を支配し続けている
オブリビエイト!オブリビエイト!俺の頭はおっぱいが渋滞していた
「…パイ」 やば、思わず俺は頭の中を支配している 〝おっぱい〟という言葉を口にしてしまったのだ
おわタングステン状態である。
「パイ? あぁカバンの中の見えちゃった? パイの実食べる?」
そう言うと花音はチャックが少し空いたカバンからパイの実を出した。
偶然の出来事に感謝した俺は、アホみたない顔で頷いていたのだろう、ただレズって言葉がどうしても頭から離れない…
「空士くん何個食べる?」
「四つ…」
俺は頭の中の乳房の数を無意識に口走っていた。
「もー欲張りさんだなー。あぁーん?」
「えっ」 まさかの食べさせてあげるよパターンである。
〝 プレイはもう はじまっている 〟
頭の中の乳房と、まさかのあぁーん、に俺は激しく勃起し同時にロッテに感謝した。
「ほら、早く口開けて?」
エ、エロ過ぎます! 俺は言いなりです! もっと指図して下さい!!
「ほら、もっと開けないと入らないよ? あぁぁん。」
俺は大きく口を開けると同時に四つのパイを雑に入れられた瞬間
「あぅぅぅっ」
イッてしまったのだ。
「あははは!パイの実って口の中の水分奪う旨さだよね!」
花音はハテてしまった俺を笑うと水筒の水をコップに入れて渡してくれた。俺は飲むフリをしてわざとらしくも自然に股間にこぼす事に成功したのだ。
「空士くん、何やってるのー」
花音は無邪気に笑いながら俺の股間あたりに染みついた水分をポケットティッシュで拭いてくれた。
このまま中のも拭いて欲しいと思う俺は変態なのかもしれない。
その時、スマホが鳴り京からの着信で慌てて電話に出る俺
「シーちゃん何やってるの?講習会もう始まるよー」
「ご、ごめん、今から行く、少し遅れる!」
慌てた俺を見た花音は自転車を俺に渡してくれた
「今日は自転車ありがとう。」
花音の笑顔は夕暮れに染まり無邪気で。…キスしたかった。
「またね。」
「うん、あと、京ちゃんの好きな人は和真先生だと思う、塾の先生、男気があって頼りになる素敵な人だよ、空士くん講習会、大変だけど頑張ってね!」
「ほーい。」
俺は夕陽に追いかけられながら塾に着いた。
「すいません、今日講習会に参加する近藤です。」
「オーケー。シッダウン!」
こちらが日本語で話してるのに英語で返してくる英語教師が苦手だ。俺は足早に京の隣に座る。
「シーちゃん、何してたのー?」
オッパイプレイしてた。とは言えず、俺は股間の湿り気が気になり講習会の話は全く入ってこないまま二時間が過ぎたのだった。
「和真先生!ここの翻訳あってますか?」
京があの、和真と言う言葉を口にして俺はハッとなった。
幼馴染の好きな人の顔を恐る恐る見る俺は、和真先生が女性だとしたら、一目散に幼馴染の好きな人はどんな顔をしているかを見ていたであろう。
「さすが!あってる、あってる!」
そう笑いながら京の頭を撫でるのは、三十代半ばくらいの女性であった。
「えっ?」
俺は先生の名札に目をやると 〝和真 しほ〟と書いてあった。
先生は確かに男まさりな感じで。品のある綺麗なお姉さんといった感じであった。
「ありがとうございましたー」
塾の帰り夜道を歩きながら、京は図書券を貰ってご機嫌である。
「あ、そういえば今日、花音に会って漫画預かったわ、これ。」
俺は少し気まずそうにBL漫画を差し出した。
「あぁ、これ結構面白いし、勉強になるよー。シーちゃんも読む?」
「俺は…いいかなぁ」
俺は京の恋バナをした事がなかったな。としみじみと思い、親友で幼馴染なのに…少しだけ寂しく感じた。
「京ってさ、和真先生だっけ? 好きなの?」
「ハハハハッ。やっぱりバレちゃったか。さすが幼馴染で親友だねぇ」
「一回り以上は上に見えるけど…」
「…うん、結婚もしてる。お子さんもいる。」
「そっか。」
「叶わない恋だって分かってても、僕は彼女に恋をしてる」
「うん。」
「先生は、美容医療外科の専門医で、性の不一致に悩む沢山の人を見てきて、若者と触れ合う機会を作ることで早い段階で相談できる窓口を作れないかと塾講師をやりつつ、〝性の心ネット〟を開設していたりするんだ。」
「ふうーん。」
「だから、僕の通ってる塾生はそういった悩みを抱えてたりする子も多くて」
「うん…」
「僕は先生みたいになりたいんだ。少しでも近づきたくて同性愛の本を読んで、性別に関係なく人を愛して生活する、生きていく。その事の自然さや葛藤を学びたくて。 キスした事もデートした事もない僕なんかは先生の足元にも及ばない。でも先生が大好き。きっと僕の初恋は先生」
俺はBL漫画を手にしただけで、京の事を同性愛者だと決めつけて、勝手に戸惑って、自分の凡人さに少し情けない気持ちになった。
「やっぱ、この本読んでみる!」
俺は妄想が過ぎる思春期で。
三兄弟の真ん中っ子で、
どうしようもない童貞で、
BL漫画片手に、満天の星空の下 親友で幼馴染の恋の話は性別を超えた綺麗な物を感じた。
俺らの頭の上の星みたいに綺麗だ。
見えるのに触りたいのに届かない。
キラキラ光って憧れて。
京はそんな恋をしている。
俺の股間のパリパリになったパンツは夜風に吹かれてよく乾いていた。
頬を流れる涙が俺のシャツを濡らした。
次回 マッシュルームが食えなくて 翻訳機が暴走した