全てのはじまり
一度はムーンライトノベルズにて展開する予定でしたが、表現自体はR15レベルになると思われるため「小説家になろう」にて展開し直しております。
しんしん、と降り続ける雪。
今の季節はたぶん冬なのだろう。
俺がいるこの一室は、暖房器具があるので特に寒くはない。
でもこの部屋から出た記憶がない。
正体不明の病に身体が侵食され続けて、外に出られないのだ。
それでも、少しだけ外が見たい。そう思って、襖を開けるとすぐ近くに小さな白い毛玉がいた。
「みぃー……みぃ……」
「あれ……?子猫?親猫はいないのかな……」
ぷるぷると震えていて寒そうだ。
そっと手のひらに乗せて、室内へと入る。さっきまで布団にいたので、膝に居させれば震えは止まるはずだ。
小さい子猫はだんだんと震えがとまり、ぱっと俺に視線を向けた。
白い猫で、右が緑で左が青のオッドアイだ。珍しい。
「みぃ、みぃ、みー」
「ふふ、頑張って何かを伝えてくれているのかな?あぁ、お腹減ったとか?」
「みっみっ!みー!」
「そうか、子猫用のご飯が何かあったかな……あぁ、確か本殿の台所に猫用のものがあったはず……」
自分からはあまり動かないが、しっかりと上着を着てから台所へと向かう。
本来なら家政婦さんを呼ぶのだが、これは自分がしてあげたい。
棚を見て悩んでいると、家政婦さんから驚かれてしまった。
「ぼ、坊ちゃん!なにかお探しですか?というか、寝ていなくて大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ、今日は調子がいいから。それよりも、子猫って何を食べるか知っていますか?」
「子猫ちゃん、ですか……?あぁ、それなら子猫用のウエットフードがありますので……」
結局は家政婦さんに用意してもらったご飯ではあるけれど、一緒に部屋へと向かっていく。
そこで顔を合わせた子猫を見て、家政婦さんもメロメロになっていた。
とても可愛い子だからね。
「ほら、鈴。ゆっくり食べなさい」
「あらあら、坊ちゃん。もうこの子猫のお名前を決められたのですか?」
「うん、なんだか鈴みたいな声だから、鈴って。ね、鈴?」
「みっ、みっ、みぃー!」
食べ方は汚いけど、子猫だから仕方がない。口の周りを拭いてあげて、器を下げてもらった。
お腹いっぱいになって満足したのか、また俺のお膝で丸くなって眠っている。
本当に可愛い猫だ。
そんな鈴と出会い、冬が終わり春の季節がやってきた。
春は別れの季節というけど、そうなのかもしれない。
俺も布団から起き上がることができなくなっていた。
横で眠る子猫を撫でながら、小さく呟く。
「生まれ変わったら、元気な身体でお外に行きたいな……」
そう呟いた直後、深い深い眠りへと落ちていく。
鈴が鳴いている。私を置いて逝かないで、と鳴いている。
言葉にならないけれど、ごめん、と言って意識を手放した。




