第7話 『男勝り』
どうも、昨日はちょっとした用事で更新できなかったゲーヒーセブンです。
更新できなくても、アクセス解析を見れば誰も見てないことくらい分かりますけどねorz
自分の中で大切に作り上げてきたものが音を立てて崩れていくときは、『何らかのきっかけで無意味なものだと気づき、自ら壊してしまう』か、『誰かが自分より大きな力で壊す』かのどちらか。そして最終的には『自分で作り直す』か『作るのを止める』かのどちらかに行き着く。
―――しかし、大切なのはそこではない。『一番最初にどんな思いがあって作り始めたのか』から、全ては始まる。
第7話 『男勝り』
ドリフト走行枠が締め切られ、1組目の走行が始まる。
もともとただの駐車場を借り切っただけ、と侮るなかれ。当然だが、ヘルメットもグローブも必要。結局はサーキット走行会となんら変わらない。
やはりドリフトだけに、シルビアやツアラー系の車種が目立つ。S13、14、15、JZX90、100。
この街の走り屋は競技で結果を残す者こそ少ないが、個々の走りのレベルは高い。
タイヤスモークや排ガスの臭いがする。エキゾーストやスキール音さえ心地よく響く。
「野村圭太さん、よね?」
「は、はい・・・・?」
真人と1組目の走りを見ていた圭太は、ある女性に声を掛けられた。
「お前は・・・」
「あら朝田君じゃない、奇遇ね」
そう、約5話ぶりの登場で波に乗っておきたい里原悠だ。あえてフルネームで書かせてもらおう。
誰?などと思っている人は1、2話を読み返してもらいたい。
「うるさい、ここで目立たなきゃ次出たときに忘れられちゃうでしょ」
「何言ってんだ?」
「なんでもないのよ、私なりに事情があってね。朝田君は走るの?」
「いや、野村が最後の走行枠で走るからそれを待つついでに見てたんだ」
「最後の枠?あたしも同じ枠よ」
「彼女は・・・・」
「あたしは里原悠。野村さんが抜けた後にOVER FLOWに入ったの」
「そ、そうですか・・・・・」
真人に聞いたはずが、本人からの返事に戸惑う圭太。
「今日はOVER FLOWは来てるのか?」
「みんな来てるわよ、呼んでくるわ」
「待て、呼ばなくても―――!!」
「朝田ぁ!!久しぶりだな!!」
翔太だ。彼も約5話ぶりの登場。司を呼ばなくて、正直ホッとしている真人。
「ああ」
「今日は走らないのか、残念だな」
「呼んでくれりゃいつでも一緒に走るさ。霧島は来てるのか?」
「ああ、あいつは車から降りてこないんだよ。理由は知らないけどな」
「あんなに性格悪いんだもの、友達も居ないだろうしね」 毒づく悠。
4つ目の枠、最終枠の2つ前の枠の走行が始まる。
「第4枠・・・鬼頭さんと野口さんの番だな」 翔太が呟く。
「ええ、鬼頭さん、今回は珍しいハチロク乗りよね」
「おまけにこの時代にキャブターボだもんな、珍しさの上塗りだな」
いつの間にか、随分と悠と翔太の距離は近づいたらしい。
目の前を走る青いハチロクトレノ。およそハチロクと思えないアベレージスピード。
ユラユラと不安定な挙動を見せていると思えば、次の瞬間にはコーナーに鋭く突っ込んでいく。
そしてまたユラユラとふらつきながら立ち上がっていく様は、まるで酔拳のようだ。
野口のS15とも互角に渡り合うその走りは、クルマと腕のレベルの高さを感じさせた。
走行を終えて、2台が戻ってくる。青いハチロクから降りてきたのは、なんと女性だった。
野口も鬼頭も見た目は40代前半、ベテランの風格が漂う。
「鬼頭君はやはり上手だね、こちらも合わせやすかった」
「それはどーも、あなたの追走の練習に付き合ってるなんて、私も随分と暇人なのね」 と鬼頭。
最終枠の走行が始まろうとしていた。
翔太の車と悠の車は色さえも同じで、エアロまで同じで正面から見ると瓜二つ。
ホイールが違うのが見分けるポイントだと翔太は自慢げに話していた。
「そういえば荒瀬は上手くなったのか?」
「上手よ、最初からかなりうまい方だったと思うわ。今日は後ろを走ってもらおうと思ってるの」
その横で、かなり自慢げな翔太の顔。
「里原、そろそろだ。野村さんも行った方がいいんじゃないか?」
「そ、そうですね、行きましょうか」
トランス(主にユーロ)、チューンドならではのエキゾースト、スキール音、そして大きなスピーカーを通したMCの声が駐車場いっぱいに響く。アンダーグラウンドな雰囲気が、真人には妙に心地よかった。
ゼッケン5番 荒瀬翔太を先頭に、8番 野村圭太、10番 里原悠の順でコントロールラインを抜けていった。
(まだまだ25分もあるんです、僕とのバトルは15分ほど待っていただけると嬉しいですね)
散々アオってくる悠に、アングルの浅いドリフトで答える圭太。
(やっと会えたのよ、この街で一番ドリフトが上手なのはあたしだって教えてやるわ!!)
およそ女性とは思えないギラギラした目つきで、スカイラインのテールを睨む悠。
(里原、妙にアツいな・・・)
少し不安を抱きながら、落ち着いてバックミラー越しに少し見えるワンエイティを見る翔太。
3台の差はほとんどなく、しめしを合わせた連ドリといっても違和感ないくらい。
ソレを眺めるベテラン2名は・・・・・
「野村君か、久しぶりだな」
「そうね、霧島君が入ってすぐだったかしら?」
「ああ、全国レベルの技術を持っていた彼が抜けたことは、大きな痛手だった」
「そうね、あの頃は本気で全国制覇を狙おうとしていたものね」
「腕はまったく衰えていないようだ、見ろ、完全に後ろの2台をコントロールしている。あの様子だと、悠さんはまったく気づいていない」
「あの娘は精神的にまだ弱いのよ。技術や瞬間の判断力だけじゃ、野村君には勝てないわ」
「この30分で少しは分かるようになるさ」
「翔太はあなたの見解ではどうなの?」
「そうだな、常に冷静に、車や車の外の状況や己のメンタル面を完全に理解している。車の作り方や観察力に優れているんだろう、走っていることで得られる情報を全て自分のものにしているんだ」
「だけど、とっさの判断が少し鈍いのよね。すべて想定内で動くと本能的に思い込んでるから、想定外の出来事が起こったときの判断が遅れる。結局、判断ミスで自滅」
「2人を足して2で割ることが出来れば、相当なセンスを持ったドライバーになれると?」
「フフ、そうかもしれないわね」
走行時間も半分が過ぎた。
まだまだ、この三つ巴の戦いは終わらない・・・・。
第8話 終




