第2話 『霧島司という男』
『D'live』第1話 ただ単に車が好きで、小説なんて大それたものだとも思えないし、ノリで初めて書いたのですがいかがでしたでしょうか??好きな人にしか分からない内容ですよね・・・・・・
さて、第2話、アップしますwww
見た目から気に入らない奴に、いきなりけなされたり罵られたらどうする?
意地になって言い返す?それともクールに聞き流す?
奴は自分を見下すことを止めようとはしない。むしろ、その暴言はエスカレートしていく。俺はお前とは違う。俺はお前より優れている。お前はどの面下げてこんなところに居るんだ?
―――人は、誰かと比べていないと不安で仕方ないようにできている。自分の方が優れていると思い込まなければ、何もできなくなるほどに脆い。
第2話 『霧島司という男』
真人の昼間の顔は仕事関係以外ではあまり喋らないただの公務員である。
一人黙々と作業をこなし、定刻に帰途に着く。
自宅アパートに帰り、適当に夕食を済ませる。
「ふぅ・・・・・・」
なぜか落ち着かない。割と気分や感情は表に出さない方なので、いつ見ても同じような顔をしているのだが、今日だけは緊張の色が見える。
妙な胸騒ぎがするのだ。期待ではない、なにかが起こりそうな予感。
夜9時を回った。
その緊張は落ち着かないまま、こないだの●ーソンへ。
いつも通り、翔太は先に来ていた。
「来たか朝田」
「ああ、今日は津木だな」
「いよいよって感じだ。行こうぜ」
津木峠。山頂のパーキングエリアに到着した。
土曜日だと言うのに、走る方もギャラリーも少なかった。
「ようこそ、津木峠へ」
笑顔で野口が迎えてくれた。
「こんばんは、よろしくお願いします」
翔太が丁寧に挨拶した。
「まぁ、そう固くならないで。誰も不愉快には思わないよ」
「はぁ・・・・・・」
「こないだはごめんなさい、私の勘違いで・・・・・・」
悠がこちらに向かって歩いてきた。
「いえ、気にしてませんから」
「そう、なら良かったわ」
「さて、自己紹介でもしてもらおうか」
「荒瀬翔太です。そこの黒いワンエイティが愛車です。よろしくお願いします」
「朝田真人。クルマは赤いNBロードスター、よろしく」
「じゃあ我々の番だね、『OVER FLOW』は構成員5名、この津木峠を拠点に活動中で、私は野口 正和、車はそこのS15シルビア。一応リーダーということになっている」
「私は里原 悠、クルマは荒瀬クンと同じワンエイティよ」
「あと今日来てるのは・・・・・ああ、司君」
「・・・・何だ?」
身長が高くきりっとした顔立ちにスタイリッシュな細いチタンフレームのメガネをかけた、いかにも切れ者そうなヤツ。真人から見た霧島 司の第一印象は、そんな感じだった。
「彼らに自己紹介を」
「霧島司だ」
「俺は朝田真人」
「荒瀬翔太です」
えらく無愛想な態度に戸惑いながら、2人も挨拶を返した。
「今から、彼ら2人をこの『OVER FLOW』のメンバーに迎える」
野口は2人をチームに入れるつもりだった。
「俺は反対だ」
食い下がってきたのは司だった。
「司君、いい加減にしなさい。君のその態度でこないだも勧誘が出来なかった」
『こないだも』。同じことは前にもあったようだ。
「お前ら、どのツラ下げてこの津木に来ているんだ?お前らみたいな下手糞が走れるほど、ここは甘くは無い。下手なメンバーが増えたところでチームの意味は無い」
「そんな言い方ないんじゃないの!!」悠が叫んだ。
「女は黙ってろ」
「なんですって!!」
「野口さん」
その言い合いに割って入ったのは真人だった。
「朝田君、どうしました?」
「俺はコイツが気に入らないし、ハナっから下手糞と決め付けられて同じチームで走れるほど俺も優しくない。コイツと走らせてください」
「朝田、正気か!?」 慌てて翔太が問う。
「もちろんだ。俺だって今まで少なからず走ってきたんだ、俺はここまで言われて黙ってられるほどお人好しじゃない」
「司君、君が言っているのはこういうことだね?彼らの技量が少ないのではないかと」
「そうだ」
「なら話は早い、朝田君と司君に2人で走ってもらおう」
「お手並み拝見ってとこね、朝田クン」
翔太はあることを思い出していた。
「『OVER FLOW』の霧島・・・・・まさか」
司がクルマを出してくる。乾いた、パワフルな6気筒の音。
翔太は気の抜けたような声で、真人に向かって呟いた。
「朝田、アイツのクルマは・・・・・・GT―Rだ」
そのエキゾーストとともに現れたクルマは、ブルーメタリックのR32、スカイラインGT―R。おそらくオールペン済み。
ほとんどノーマルと外観は変わらないが、一応ホイールだけは交換されている。
「・・・・・・・・・」
真人は何も言わず司のGT―Rを睨みつけて、ロードスターに潜り込んだ。
「朝田、お前大丈夫なのか?」
心配そうな翔太の顔をよそに、真人は笑っていた。
「知ってるか?俺たちが走ってた水越は、事故の多さで誰も寄り付かなくなったんだってよ、つまり、難しすぎたってことだ」
「それがどうだってんだよ・・・・」
「それなりに自信はあるんだ、あのGT―Rに噛み付いてやるさ」
2台が並ぶ。
「よろしくな、霧島さんよぉ」
「フン、まぁいい」
お互いに吐き捨てるように言葉を交わし、カウントは始まる。
野口が前に立ち、両手を上げた。
「・・・・―――GO!!」
1コーナーまでの加速で、すでにR32が1車身リード。
そしてブレーキング。
カネでは勝てない、腕のみの勝負どころ。
R32と完全に同タイミングでロードスターのランプが光る。互角。
クリッピングポイントを過ぎると、マシンの差は如実に現れる。
付いていけない。古い車とはいえ、GT―Rはいつの時代も偉大だ。
頂上では、翔太が野口と話していた。
「野口さん、あのGT―Rって何馬力くらい出してるんですか?」
「そうだな・・・詳しくは教えてくれないが、400馬力くらいは出ているだろう。ストレートは私のシルビアより速いんだから」
「そうですか・・・・・・」
翔太はため息をついた。
「彼はああ見えて努力家でセンスがある。ここで彼に勝てる走り屋はそうはいないだろう。今はただ、朝田君が無事に下りきることだけを祈るしかない」
「そうですね、頼むぞ朝田ぁ・・・・」
目をコースに向ける。ロードスターとR32の差が縮まることはない。
決してクルマが速いだけではない。徹底的に走りこみ、クルマとコースについて研究を重ね、アクセルオンのタイミングや立ち上がりのラインを徹底的に調べてある司の努力も、この走りを生み出す1つの理由。
ロードスターがR32より300kg以上軽くても、ステージが峠でも、アンダーパワーなのは否めない。さらに、技術的にも司は真人を上回っている・・・・・現時点では。
(クソ・・・・だからGT―Rってクルマは・・・・)
真人も意地になり、懸命に追う。その差は縮まることなく、広がることも無くなる。
結局、6秒という大差をつけられて、下り1本勝負は終わった。真人の苦~い初バトルの思い出。
第2話 終わり




