第13話 『型破り』
やっぱり短め?もっと書いたほうがいいのかな?
よくわからないので、このままの調子で行きます。
では、第13話、アップしますwww
何でも無さ過ぎるのは良くないし、ありすぎるのも良くない。
力同士のぶつかり合いも、強すぎたり大きすぎる力は制御が難しいし、小さすぎる力では競り合いには勝てない。
『柔よく剛を制す』
―――クルマは何も、力の大きさを競うものではない。力の使い方を大切にするほうが優れている。
第13話 『型破り』
「そうねぇ、話すのも面倒臭いから、まずは一緒に走らない?」
思いもよらぬ提案に、真人は驚く。
「だけどあんた、車は・・・・」
ムスッとした顔で奈津美は答える。
「何よ、軽トラじゃ不満だって言うの?あたしのアクティ、ナメてかかると痛い目見るわよ」
・・・・と言われてもなぁ、と言うのが真人の本音だった。
結局、「いろいろ疑問はあるだろうけどさ、とにかく走ろうよ。言いたいことはその後に聞くから」と言いくるめられてしまう。その一言を奈津実が言い放った時点で、互いに引き返す気はなくなっていた。
ゆっくりと2台は待避所を後にする。それを遠い目で眺める圭太。
(なんとなくそんな気はしていました、小高さんが只者じゃないってことを。あの目は本気です、彼女は軽トラだからって手を抜いたってわけじゃありません)
およそ走りとは遠くかけ離れたようなフォルムのアクティのエキゾーストは、チューニングカーのそれとなんら変わらなかった。
(手加減ナシだからね、って言ってもあたしもブランクは相当あるけど)
3回ハザードが点滅すると、アクティは商用車らしからぬ加速を見せ付けた。
「おいおい嘘だろ・・・・・」
とはいえ、その加速にロードスターで追いつけないはずもなく。
下りの1コーナー、最初のヘアピン。そこで真人は驚愕する。
進入速度で勝負する真人がブレーキングを開始しても、アクティのブレーキランプは光らない。
(待て!!オーバースピードじゃ―――!!?)
真人が、アウト側のガードレールに突っ込むと思ったその瞬間。アクティはその場でクルッと方向転換、勢いよくコーナーを立ち上がっていく。人が乗っている部分だけが何かに押さえつけられているかのようにピタリと動かず、テールを流すだけで進行方向を向いたのだ。
「ちょっと刺激が強かったかな?」
そんなことを呟きながら、奈津美は3速にギアを入れる。後ろにはまだ、赤いロードスターが虎視眈々とアクティの前を狙っているようだった。
「その程度じゃ折れない・・・・強いのね」
(本で読んだことがある、V字ターンってヤツか)
理論的にはこうだ。
アウト・イン・アウトが一般的な走行ラインだが、奈津美はその真逆。イン・アウト・インで鋭角的にコーナーを抜け、アクセル全開で立ち上がるためのストレートを少しでも長く取る。車の十分な加速力と、スピンスレスレの状態で車を走らせるだけの技術がなければ出来ない芸当だ。
(本当に、これは腕だけでここまで速く走らせてるのか?)
そんな疑問が、真人の頭をよぎる。
速い。下手をすればシルビアや180SXと互角か、あるいはそれ以上の走りをしている。
奈津美のアクティは約100ps、これでも軽のチューンドとしてはかなりのパワーが出ている。
車重は790kgと軽としては重たい方だが、ポイントはそこではない。
軽トラはあくまで商用車。その強度の高さは、速く走ることを目的としたもろいスポーツカーとは比べ物にならないくらい強い。ちょっとやそっとのスポーツ走行で歪むことはまずないので、補強パーツは荷台に装着するだけで十分。
何よりアクティのエンジンは車両の中心から少し後方、いわゆるミッドシップエンジンなのだ。リアが踏ん張り、フロントで車を曲げる。その理論は、理想のスポーツカーの形。
コーナリング速度はロードスターと互角かそれ以上。アクセルの扱い方は豪快なようで繊細。奈津美はメリハリのあるドライブで、真人を圧倒する。
(手なんて抜けない、相手は車も腕も超一流って事か)
知らぬ間に、下りが1本終わる。
集中力を最大まで引き出していると、周りが見えなくなるアレだ。
今までに無い不思議な感覚に包まれ、我を忘れていた真人。
(何だったんだ・・・・・・)
「もういっそ、上まで行きましょうよ?今度は順番入れ替えて、ね?」
表情に興奮の色濃い奈津美。
「ああ」
ロードスターが前で、アクティが後ろ。いろいろな想いの入り混じる2本目が始まる。
第13話 終わり