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第12話 『謎謎』


どうも。

1~11話、お楽しみいただけたでしょうか?

・・・・と言っておきながら、あまり高評価は期待出来ないとわかってるゲーヒーセブンです。

今回は少し短めです。いえ、ネタが無いわけではなく、単純に次話へのつながりを考慮したものです。


では、第12話、アップします。



思い出や過去というのは、そのときへの憧れの気持ちだけを閉じ込めたカプセルというわけではない。

そこには本人だけの悪い歴史が眠っていたりもする。

人生最大級の失態を晒した時だったという歴史もあれば、それまで気が合うと思っていた人が嫌いになってしまったという思い出だってある。

良くも悪くも、人はそれを忘れることができるときもある。もちろん、できないときもある。



―――誰にでも、隠しておきたい汚点や誰にも言いたくない過去がある。




第12話  『謎謎』




「どうしたのかしら、ハチロクが離れてくわよ?」

「えっ?」


それに先に気づいたのは奈津美だった。ハチロクがぐんぐんと遠ざかって行く。

バックミラーに移るハチロクには、さっきまでのさっきにも似た威圧感はすっかり影を潜めていた。



スローダウンするスカイラインとハチロク。同時にトーンダウンするエキゾースト。

「終わった、のか・・・?」

そのつぶやきに答えるものは無く、真人はただ2台が目の前に現れるのを待った。




2台が帰ってきた。やはりスカイラインの後ろに居たのは、あのときの赤いハチロクだった。競技車両ばりのうるさいエキゾースト。

「はっは、兄ちゃん速いじゃねぇか」

ハチロクから降りてきたのは、中年のオッサン。野口と同年代か、それ以上。言葉の割に妙に大人しい口調だった。

「い、いえ・・・・」 それ以上口を開こうとしない圭太。

「やっぱり松平さんだったのね」 と奈津美。

「あんたが小高さんか、いつも世話になってるな」

「いつも当店をご利用いただき、誠に有難うございます、でいいかしら?」

「ははっ、それでいい。今日はただそのスカイラインの兄ちゃんを見に来ただけだったんだが、悪かったな、いきなりアオっちまって」

圭太は「は、はぁ・・・・」とだけ言うと、その後は何も言わなかった。


「それにしても」 奈津美が口を開いた。「『ハチロクチャンプ』ともあろう人が、随分と身の引きが早いじゃない?『ハチロク乗りは最後まで諦めない走りが信条』だって、誰の言葉だったかしら?」

ハチロクチャンプ?真人と圭太は何を言っているのかがよく分からなかった。

「そりゃまた古い、10年以上前の話じゃないか。もう体力的にかなりキてるんだ、こんなオジサンに無理はさせないでくれよ」

「15年前に、非公式とはいえ筑波2000のタイムが1分フラットなんて、並のドライバーじゃないわよね」

「若かっただけさ。それに、あんただって人の事は言えないだろ?随分有名なラリー屋だったじゃないか」

「「えぇっ!!?」」

真人と圭太の声が重なる。

「ずっと黙ってたかったのに・・・あたしはもう走らない。そう決めてるの」

「そうか、残念だな。ハってもらおうかとも思ったんだが・・・・」

「ハるって言っても、今日あたしはあの軽トラで来てるのよ?」

「もう隠す必要はないだろ、『軽トラだから』あんたと走りたかったんだ。オイルクーラー、いやラジエタ―か?むき出しにした軽トラが、あんたのトコ以外どこの店にあるってんだよ」

「全部知ってるわけね、でもあたしは走らない。どうしても追いかけっこしたいって言うなら、そこの朝田君に頼めば?彼も速いのよ?」

「それはまた、時期が来たらするさ。本当は今日はただ3人を見に来たかっただけなんだ、そろそろ帰るよ」

一息ため息をついてそう言うと、ハチロクに戻っていく松平。ものの数秒でハチロクは水越の山を下って行った。




響くエキゾーストを聞いていた真人は気づいた。

「あのオッサン、手ぇ抜いてたのか・・・・・」

「・・・・・そうなりますね」

「どういうこと?」

「ん、なんというか・・・・ドリフトって、はっきり言って遅い走り方だろ?」

そう、本来前に進むはずの車を横に向けて走らせているのだ。抵抗というのは、邪魔なのが当たり前。

「でもこの音って、ドリフトのそれじゃ無くて限界ぎりぎりのグリップ走りのそれじゃないか?」

「・・・・・・・・!!」 

言葉を失う奈津美。遠くから聞こえるスキール音とエキゾーストだけで、さっきとはまるで違う洗練された走りを感じさせる。





それから数分が経過しただろうか。それまで沈黙が流れていた待避所で、真人は口を開いた。

「さて、次は・・・・小高さん」


                                                 第12話  終わり


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