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第11話 『その差、約220ps』


漫画や小説の作者にとって、『締め切りが無い』と言うのはさぞかし気楽なんでしょうねぇ・・・・

こういうHPで書くと、人気投票も締め切りも無いので緊張感も無い文章になってしまうんでしょうか??

・・・・なんだかこう言うともともと自分が連載を持っていたみたいな言い方ですね。もちろんド素人ですwww


そういえば、また実話を元にした高校生モノ(??)のお話も書いてみようかなと思っています。まだ1文字も書いていないので、公開するかどうかは未定です。


では、第11話、アップしますwww



『度胸』という言葉を、人は勘違いしていないだろうか?

頭が真っ白になりながら、普段の自分からは想像できないようなことが出来るようになるのが『度胸』と考えている人が多いのではないだろうか?それはただ単に『ヤケクソになっているだけ』である。

目上の人間に言いたいことを言うときや、大勢の人前での演説や発表のとき、人は緊張し、それがミスの誘発などにつながるのを恐れる。


―――あくまで冷静に、自身の『恐れ』を乗り越えること。それが『度胸』のはず。




第11話  『その差、約220ps』




「俺は何やってんだ、もう走り屋に喧嘩は売らないって決めてたのにな・・・・」

前の白いスカイラインのテールを遠い目で眺めながら、松平はふと呟く。

しかし意に反して、その右足はアクセルを戻そうとしない。それがもどかしくて仕方が無かった。

(俺は結局、何にも変わってねぇって事なんだろうな)

自嘲的にふっ、と笑うと、気を引きしめるべくステアリングを握りなおす。ぼやけて見えていた視界が一気に冴えて、鮮明になる。

ローパワーなハチロクのドリフトのきっかけは、サイドブレーキでもクラッチ蹴りでもない。慣性。

完全にアクセル操作のみでテールを振り出し、流れ出したテールはアクセル全開のまま維持する。技術の無い奴ならガードレールとお友達、D1でもマ●ピーが「馬鹿です!!」と叫んでしまう走り方だ。

パワーの差で開く車間距離に焦りを感じることもなく、ただひたすらアクセル全開でハチロクを走らせる。




一瞬エキゾーストが消えたかと思うと、次の瞬間にはもう全開の音が響く。いったいどんな走り方をさせているのかと考えると、真人は恐ろしくて仕方がなかった。車種は分からないし、誰が走っているのかも分からないが、とんでもなく危ない走り方であることには間違い無かった。

「まさか・・・・・」

1つだけ心当たりがあった。これほど危ない走り方をする走り屋。

甲高いNAエンジン特有のエキゾーストを響かせて、圭太を追うことのできる走り屋。

間違いない、DAの時の赤いハチロク。他に誰が彼と互角に走れるだろう?いや、誰も居ない。

「一体、何しに来たんだ・・・・・」




(待っていました。いつかここに来るとは思っていましたが、こんなに早く来てくれるとは)

一瞬バックミラーをチラ見して、そこからは全開。

余裕などなかった。隙を見せれば、松平は絶対に突いてくる。ハチロク乗りは基本的にそのような走り方をする。危ないくらいに攻めた走り方をするのは、恐らく某漫画の2人のハチロク乗りとロータリーやSRエンジンに換装したD1マシンだけだ。

アングルを抑え、タイヤのグリップ力を加速時の縦方向に生かす。勝っている要素を徹底的に生かす走り。

(ハチロク乗りのあなたには申し訳ありませんが、進入速度では勝ち目がありませんからね。パワー差を生かすことでしか勝機は見出せません)

立ち上がりで開く差は、落ち着いて進入する際に見事に詰めてくる。流石の一言だった。

こう着状態を維持したまま、2台は水越の急勾配を駆け上がっていく。




その横で何も言わず、奈津美はただ圭太の走りに感銘さえ受けていた。

動作こそ荒っぽいが、クルマにはギクシャクした動きが微塵も無い。何か大切なものを労って走っているようで。

無駄がそぎ落とされた、洗練された走り。自分がセットアップした足回りをここまでものにできるドライバーが居るという事実に、ただただ驚くしかなかった。

その差は開いたと思うとまた縮まり、また開く。そんな一進一退の攻防が続く。

ただ分かっているのは、圭太がこのスカイラインを上手に扱いきれていることと、後ろを走る松平もそれと互角あるいはそれ以上の腕を持っていることである。

(この人達は――・・・・)




勝負は動く。コースも半分を過ぎ、後半のテクニカルセクションへと突入する。

水越の上りルートは前半にはストレートこそないものの、高速コーナーの続くハイスピードエリア。

ところが後半になると、ヘアピンやS字が増えて一気にアクセルが踏めなくなる。おまけに、道幅も少し狭くなる。

このセクションが、水越から走り屋を消した原因とも言える。

スカイラインほどの重量級となると、その走りにくさは安易に想像できるはず。それに比べてハチロクは1tを切る車重に180psのエンジン。作者の友人が言うに、『峠で走るならテンロク(1600cc)で十分』。

(ここまで来れば、僕の不利はあまりにも大きすぎます・・・・・恐らくここから来るでしょうね)




(そうか、ここからは俺の方が速いのか)

そんなことを考えながら、松平はハチロクを走らせていた。さっきよりも精神的にも目に見える差にも余裕があることに、少し安心していた。

(そろそろ、揺さぶれるかな)

車間をさらにつめるハチロク。スカイラインの懐に潜り込むように、その車体をぴったりと寄せる。

コーナーでインを突いたかと思えば、あっさりと身を引くハチロク。次のコーナーでは、逆にアウトからかぶせて行ったが、ここでもすぐに後ろに下がった。

(まずいですね、このままでは加速競争に入らせてもらえません・・・・もう一か八かになりますが・・・・・)

コーナーが迫る。圭太はアクセルを少し抜くと、そのままサイドブレーキに手をかける。

「・・・え?きゃあっ!!」 急激なGの変化に悲鳴を上げる奈津美。

圭太はその声にひるむ事無く。一気にスカイラインの車体はヨコを向き、車線をふさぎきった。

(これなら寄せてくるだけで抜くことはできないでしょう。前半で抑えていたおかげでタイヤにはまだ余力があります、恐らく上りきれるでしょう)

少々長すぎるくらい滑らせるのがいい。突っ込みで刺される可能性があるのなら、相手が立ち上がるまでラインをふさいでやればいい。要は、今まで以上にアングルを深く、かつ速く滑らせて行けばいいのだ。




この先には少しの全開区間、それを抜けるとヘアピンがあり、頂上に着く。

「もう、いいだろ・・・・」



松平はそう呟くと、静かにアクセルを抜いた。

                                                          

第11話  終わり





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