表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

《 なろうラジオ大賞 》

おふだを剥がしてほしいと願う依頼人

作者: 新 星緒

「おふだを剥がしてほしい?」 


 俺はおもわず依頼人の言葉を繰り返した。 


「はい」とうなずく依頼人の女。「こちらは心霊関係の問題解決率が100%だと聞いてます」

「まあね」


 一気に気分が良くなる。俺が開いている霊障相談所は所長しかいない零細事務所だが、女が言ったとおりに持ち込まれた問題はすべて解決している。業界イチの業績といっていい。……まあ、俺調べだし、依頼は月に一件くらいしかないけど。


「ならば」と依頼人。「可能ですよね? おふだ剥がし」

「うぅむ」

 可能ではあるが……。


「だいぶ古いことのようで、誰がなんのために貼ったのか、まったく分からないんです」

「普通に考えれば、悪いものの封印だな。というか普通以外に考えても封印一択」

「そうとは思えません。なにかの間違いだったのです。悪いところはありませんから」

「そりゃ封じ込めているからだよ。おふだの力で。だから悪く見えないの」


「いいえ、悪くありません!」依頼人は強い口調で前のめりになる。本気でそう信じているらしい。「だからおふだをはがしてほしいのです! 邪魔で本当に困っていて! 生活に支障をきたしているほどなんですよ?」

「……まあ、それは不便だろうけどね」

「ええ!」激しく首を振る依頼人。「あなた、そういうもののプロなのでしょう? 他の人たちはみんな怖がって尻込みしてしまって。もうあなたしか頼る人はいないんです」


「でもね、おふだを剥がしたあとに悪いことが起きたら、どうするんだ?」

「そんなことは起きません!」


 ため息をつきそうになり、すんでで飲み込む。依頼人はかたくなだ。向こうの要求をのむしか道はなさそうだ。


「分かった。剥がそう」

「ありがとうございます!」

 飛び上がって喜ぶ依頼人。

「ただし、なにが起きても文句は言わないでくれよ」

「言いませんとも!」


 依頼人は感極まったのか、両手を体の前で祈るように組んでいる。

 いったい、どんな思考になっているんだか。


 不憫な気もするが、なにしろこちとら持ち込まれた依頼は100%解決が自慢なんだ。

 どうしてもと依頼人が言うなら、おふだは剥がす。それで問題が起きたら、そっちもきっちり解決。でないと100%が伊達になっちまうからな。


 俺は立ち上がり、依頼人に近づいた。

「んじゃ、剥がすぞ」

 体中にびっしりとおふだが貼られた依頼人。相当な力を持った悪霊だろう。


 まさか霊本人が依頼しにくるとは。最終的に除霊されちまうって、分からないものなのかね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ