書籍発売&コミカライズ記念の番外編:時空を壊そう!
お久しぶりの方はお久しぶりです、馬路まんじです!!!
えーこのたび、ついに書籍版『底辺領主の勘違い英雄譚』が発売となりましたー!イエイッッッ!!!!
イラストレーターは『ファルまろ先生』で、帯には『乙一先生』がコメントを寄せてくれました!!!ぜひぜひチェックしてくださいませ~!!!
さらにこのたび、本作品のコミカライズ化も決定!
というわけで宣伝ついでに番外編突入です!!!
『うおおおお! 死ぬがいいわリゼーッ!』
「お前が死にやがれヤルダバートッ!」
太陽を圧縮させた翼とブラックホールを凝縮させた翼を広げ、絶世の女神と男は殺し合う。
女神になったヤルダバートとの決闘から数か月後。
リゼ・ベイバロンは、今日も朝から元気に彼女(???)と殺し合っていた。
ぶつかり合うたびに衝撃で地球が砕けたりするが、もはやこの世界では日常茶判事だ。
空前絶後の大激突も、彼らにとってはもはや朝ごはんの後の腹ごなしでしかない。
さらに全人類も回復魔法を極めたリゼにより無重力空間や数百億度の熱でも死なないように改造されており、『おぉ、今日も宇宙皇帝リゼ様と女神様が殺し合ってるぞ~』『今日はどっちの勝利に賭けようかね~』と崩壊していく次元の中でのんきに会話するくらいまで慣れきっていた。狂気である。
かくして数分後。リゼが投げつけた無量大数のブラックホール牛にヤルダバートが吹き飛ばされたところで、勝負は決着となった。
敗北したヤルダバートは悔しそうな表情を浮かべながらも、なぜかちょっぴり頬を赤らめながらリゼに叫ぶ。
『ぐぬぬぬ……今日も儂の負けか……!
ああ、流石は我が永遠のライバル! 気合で百三十年生きて来てようやく見つけた最高の男、リゼ・ベイバロンよ!
さぁトドメを刺すがいい! 勝者の権利として儂の命と身体を好きにしろーーーーっ!』
「嫌だよ、お前殺しても気合で生き返ってくるし……。
よーし、朝の体操も終わったところで宇宙直すぞー。回復魔法ほいっと」
リゼが軽く腕を振るうと、それだけで崩壊した次元が元に戻っていき、宇宙の塵となった地球も建造物も全てが修復されたのだった。
これが今のリゼの力である。ヤルダバートとの戦いの中で回復魔法を極めに究めた結果、もはや彼には不可能などなかった。
ステータスにするなら魔力999999999999999999999999999999999999999999999999999999999といったところか。ちなみにIQは1か2である。強大な力を手にした結果、その知能指数はヒヨコの未熟児並みの『3』からさらに下落していた。
さて、いつものように勝利したリゼが地面に寝そべって腹を見せていたヤルダバートを引っ張り起こした時だ。ふいに彼女が(※元ジジイのくせに)可愛らしく小首をひねって聞いてきた。
『そういえばリゼよ。定期的に蘇らされてはヤケ酒で死にまくる貴様の父親いわく、貴様はなにやらある日突然、ものすごい量の魔力を手に入れたそうじゃのぉ。
それこそ回復魔法一つで、世界最強の魔法使いだった儂と戦えたくらいに』
「ああ。生まれたときはまぁそこそこだったらしいが、急に魔力が増えやがったチクショウってこのまえ親父が死ぬとき言ってたな。他の魔法使いと絡みがなかったから、当時は実感がなかったが」
その件についてヤルダバートは(※元ジジイのくせに)やわらかな爆乳の下で腕を組み、『ふぅ~む?』と難しそうに唸った。
そう、魔力の上昇方法に気付いた彼女にとっては、それはとてもおかしな話であった。
『不思議じゃのぉ……魔力とは信仰されることで増えるものじゃ。自分は優れていると信じるなり、他者から畏敬だのを受けることで上昇するとされておる。
ゆえに歳を取ることで自分を知っている民衆が増えていく結果、徐々に伸びるのが普通のことじゃが……』
「むっ……考えてみれば謎だな」
ヤルダバートの指摘にリゼも珍しく頭を捻った。
まず、当時の自分に信者なんてこれっぽっちもいなかった。今でこそ数兆億人から(※半ば洗脳で)狂信されている彼であるが、困窮していた昔のベイバロン領の領主の息子の地位なんてジャガイモ以下だ。焼けば食えるだけカエルのほうがマシだろう。
つまり自分のことを信じてくれる者が急増したという可能性はゼロ。それに加えて自分のことを優れていると信じきって伸びた可能性も薄い。
「回復魔法の才能しかないってのは物心つくときには言われてたからな。それに自分が底辺領地の底辺領主の子供なんだってことはなんとなくわかっていたし、領主を引き継いだ時には未来に絶望しかけてたくらいだしなぁ。じゃあ、なんで急に魔力が……」
『う~ん、命よりも大事な貴様なことじゃ。儂としても気になるのぉ。
――よし決めた。リゼよ、ちょっくら過去に飛んでみないか!? 貴様が幼少期だったころのベイバロン領に行って、謎を確かめてこよう!』
「なに?」
過去に飛ぶなど馬鹿なことを……と言いかけたリゼだが、実際ヤルダバートは、リゼに会うために三万年の次元を超えてきた存在なのだ。逆に時をさかのぼることも可能なのかもしれない。
またリゼもリゼで、回復魔法を応用すればタイムワープも出来そうなことに今気づいた。
「いいなぁそれ……昔の自分に会いに行ってみるか! よしそれじゃあ、回復魔法ほいっと!」
興が乗ったリゼは、さっそく莫大な量の魔力を使って回復魔法を『時間そのもの』にかけたのだった――!
その瞬間、リゼとヤルダバートの周囲の空間はゴゴゴゴゴゴゴゴゴッと音を立てて歪み始める。元より次元が定期的に壊れまくっていることで時空の壁はガバガバになっており、時間を構成しているというタキオン粒子が過去に向かって逆行を開始。二人の周囲を淡い光が包み込み、まるで落下していくかのように時のトンネルを突き抜けていくのだった。
『小さい頃の貴様に会ったらなんと挨拶しようかのぉ。いつか貴様と殺し合う仲じゃといったらビックリさせそうだし、いつか知り合うおじいちゃんと名乗ろうにももうおじいちゃんじゃないし……ふむ、未来の妻だとでも詐称しておくか』
「お前そんなんだからアリシアに嫌われるんだよ」
のほほんと会話しつつ、前人未到の時間旅行に旅立つトンチキ野郎とトンチキ女神。
かくして世界の常識を破壊した最低最強の二人は、まだ惑星と人類がまともだったころに向かっていったのだった。最悪である。
・まさかの後半あり――!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『毎秒更新しろ!』
と思って頂けた方は、最後に『ブックマーク登録』をして、このページの下にある評価欄から評価ポイントを入れて頂けると、「出版社からの待遇」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!
↓みんなのやる気を分けてくれ!!!