エピローグ:リゼくんに媚びよう!!!
・前回生み出したブラックホール牛はデカくて邪魔だったので銀河の果てに追放されました。周囲の星々を無限に吸って宇宙の膨張よりちょっと速い速度で成長中のようです。やったぜ。
あと「性転換」「TS」タグを追加することになりました。
――ヤルダバートとの決戦から一か月、俺はめちゃくちゃ頑張って働きまくった!
まずは世界中の人々の治療だ。ヤルダバートが起こした地震のせいでみんな傷だらけになっていたから、ドラゴンに乗ってあっちこっちを治療回りだ。
あとなんか知らんけどみんなガンや白血病になって血を吐きまくってたからそれも治しておいた。まぁたぶんそれもヤルダバートのせいだろう。
なんとなく俺の『核分裂』魔法は健康に悪そうな感じがするなーって気がしてなくもないけど、正義の英雄であるリゼくんが使う核分裂は良い核分裂だから、やっぱりヤルダバートのせいだろう。おのれヤルダバート、みんなのことを苦しめやがって! プンスカッッッ!
そんな感じで星の裏から隅まで駆け回り、重症者も死病者も癒しまくってきた。
まぁ最終的にはもう面倒臭くなったから超全力の回復魔法で惑星を包み込んだら過去三万年以内の死者が全員蘇っちゃって、全大陸の人口密度が一瞬にしてオーバーしちゃったうっかりミスがあったり、それで過去の王族と貴族と罪人ども数億人が惑星皇帝のリゼくんに対して喧嘩売ってきたから全員血祭りにあげてアリシアに洗脳してもらったプチトラブルがあったりしたけど、今のところ世界は平和だ。
全人類に『疲労がポン』と抜ける魔法をかけて海の九割くらいを埋め立てたり、大樹になったスネイルくんを量産していっぱい団地を作ったら、どうにか人が住む場所は確保できたしな! ふふふ、リゼくんってば内政上手っ!
というわけで、ヤルダバートのせいで病気になった人たちを全員救い、死者さえも蘇らせてきた結果――、
「――『ベイバロン惑星』の王、リゼ・ベイバロン様のおなーーーーーーーーりーーーーーー!!!」
「「「きゃぁぁああああああああああ!!! リゼ様ぁぁぁああああああああ!!!」」」
はっはっはっはっ! 俺は全人類数兆億人から絶大な支持を受け、星の名前すら決められるほどの権力を得ていたッ!
いやー人気者はつらいわー! 今日も『王都・ベイバロン』の王城前に集まった数億人の民衆たちにご挨拶だ!
フッと笑って手をチョイと上げてやると、それだけでみんな熱狂の声をさらに高めた! 愉快じゃ愉快じゃ!
「現人神リゼ様ァッ! 子供がうっかり死んでしまったので治してくださいッ!」
「リゼ皇帝陛下ッ! どうか私を美人にしてくださいッ!」
あ、オッケオッケー!
ヤルダバートとの戦いで極めまくったことで微細な遺伝子操作さえも可能になった回復魔法ビームを打つと、死んだ子供は即座に生き返り、整形だって一瞬でポンだ。
ふっはっはっ、俺ってば本当に救世主すぎて困っちゃうね! まぁ人類のほとんどが美男美女になった上に人が簡単に生き返るようになったことで、美醜の概念が崩壊したり医療技術が衰退したり人口増加が止まらなかったりうっかり死ぬ人が多くなっちゃったりしたけど、みんな今のところハッピーなのできっと問題ないだろうッ! たとえ問題があったとしても認識しなければソレは問題じゃなくなるんだから大丈夫大丈夫! ポジティブに生きていこうぜ、ガハハハハハ!
ちなみに俺の両親も生き返ったけど、親父は今までの俺の英雄譚を知ったら「あぎゃああああああ!? 世界を壊したトンチキ息子の親としていつか絶対に殺されるぅううう!」とか意味不明なことを叫びながらヤケ酒しまくって急性アル中で死んで、お袋は普通に俺のことを褒めてくれたあと調子こいて祝い酒しまくって急性アル中で死んだ。
……はぁまったく、ネガティブ野郎と何も考えてない幼女みたいな頭の人間性マイナス夫婦の間に、よく俺みたいな超絶天才プラス人間が産まれたものだ。
まぁ、気が向いたらまた生き返らせてやるか。
さてと、いつもならこのままみんなに褒められまくって気持ち良くなるところなんだけど、今日はちょっとお城の中で用事があるんだよねー。
というわけでみんな、じゃ~な~!
「あぁっ、創造神リゼ様が行かれてしまうッ! 皆の者、土下座でお送りせよォオオオオオッ!!!」
「「「ははァァァァアアアアアアアアアッ!!!」」」
大陸中の人間が頭を下げる光景を背にしながら、俺は意気揚々と玉座の間に戻っていったのだった。
◆ ◇ ◆
「――あっ、リゼ様お待ちしてました~っ!」
「よぉアリシア、今日も元気だな」
惑星全土の宝を飾ったキンキンキンの玉座の間に入ると、教皇兼お妃様となったアリシアがギュっと抱き付いてきた。うーんやわらかい。
最初は宗教活動を優先しすぎて家庭を崩壊させるタイプのやべー美少女だと思っていたが、今は俺こそが『世界の神』になったのでまったく問題ないのである! この解決方法、全世界の宗教トラブルに悩んでるご家庭で実践して欲しいところですね。
「ところでアリシア、大事な話ってなんだ? 作る予定の子供の数か?」
「それは七十億人でお願いします! ……いえそうではなく、ちょっとこちらをご覧になってください」
そう言ってアリシアは、一冊の古びた本を差し出してきた。
……ってこれ、俺の家に昔からあった『ソフィア教』の聖書じゃないか。なつかしいなぁ~、こんなもん引っ張り出してきてどうしたんだよ。
「……実はですね、子供の頃のリゼ様のパンツを探してご実家を探検しているときに見つけたのですが、どうやらこれ……通常の聖書とは内容が少し違うみたいなんですよ」
「そうなのか? ……まぁずいぶんと大昔のモノだし、それにベイバロン領は貧乏だったからな。俺のご先祖様が写本に失敗した不良品を安く買い取ったんじゃないのか?」
「うーん、私も最初はそう思ったんですけど、どうにも気になる記述がありまして……」
珍しく難しい顔をしながら、アリシアはあるページを開いて俺に渡してきた。
読んでみると、『女神ソフィア』の来歴や伝説について書かれている箇所だった。このページがどうしたんだと首を捻る俺に、アリシアは語る。
「……世間一般の聖書では、“女神ソフィアはこの星を作り上げ、選ばれし王族たちに民衆を統べるよう魔法の力を与えていった”とだけされています。後の活躍なんかはほとんど書かれていません。
しかしこの聖書には民衆たちの視点から女神ソフィアのことが詳しく書かれていて、
“彼女は常に強き男を求めていた”
“時折見せる、遠くの恋人を想う乙女のような表情がとても可憐だった”
“身体を人間サイズに小さくも出来るらしい。でもおっぱいは小さくなっても大きかった”
“星と人類を生み出した創造神だから『ママ』って呼んだら怒られた”
“彼女は反逆者が現れると、牛の石像を出して投げつけていた。なぜそんな攻撃方法をするのかと問うと『……儂もなぜかは覚えていないが、これが最強な攻撃方法だと思うから』と本人も不思議そうな顔をするのだった。可愛い”――なんて聖書にはそぐわないことまで書かれていて……」
あー、そんなこと書かれてたなぁ! 小さい頃に親父の膝で読んで以来だったから忘れてたけど、そういえば俺が牛を投げつけるようになったのは女神さまの影響だったのかもしれないな。神が最強だって言うんなら最強なんだろうし、それに食べれるからな、牛。
実際、ヤルダバートの奴もブラックホール牛に食わせて倒すことに成功したけど……あれからアイツどうなっただろうなぁ。重力に潰されて死んだか、宇宙の果てに飛ばされて干からびたか、あるいは時空のひずみからスゴイ過去まで飛んじゃって寂しい思いをしてたりしてな!
まぁ核融合しながら爆乳美女になって女神のコスプレしながらブラックホールに飲まれていった意味不明のジジイのことは置いておいて、俺はアリシアに先を促すことにする。
「それで、そのオモシロ女神のソフィア様がどうしたって言うんだよ?」
「ええ……実はページの最後に、女神ソフィアが最期に残したとされる言葉が書かれていたんですよ。彼女曰く――、
“『――儂は全てを想い出したッ! 世界を支配するのはこの儂じゃぁああッ! 三万年後の未来で待っているがいいッ!』”と叫んで、次元の彼方へ消えていったそうです。
それで……まぁこの聖書がただのデタラメ本だと良いんですけど、今が創世からちょうど三万年とされているので気になってしまって……」
「なるほどなぁ」
……俺たちがそんなやり取りをしていた時だった。突如としてガラスが砕けるような音が響き渡り、膨大な量の白き光が城のガラスより差し込んできたのだ――!
ってなんだなんだなんだッ!? アリシアを配下の騎士たちに預け、事態を把握すべく城の外へと飛び出すと――!
「なっ……お前は……ッ!」
『ぬーーーーーーーーーはっはっはーーーーーーーーー! 帰ってきたぞ、我が宿敵よォオオオオッ! さぁ決着をつけようかーーーーーー!!!』
王都の空を見上げれば、そこには十二枚の光の翼を輝かせた無駄に絶世の女神・ヤルダバートのヤツが人間サイズで浮かんでいたのだった!
ってお前一か月前に倒したばっかじゃねーかッ! 帰ってくんな馬鹿!!!
うんざりとしながら空を見上げる俺を、ヤツはうっとりと頬に手を当てながら潤んだ瞳で見つめてきた。
『あぁ、リゼ・ベイバロンよ! 貴様によってブラックホール牛に食われ、反芻されながら四つのブラックホール胃袋を巡ること幾星霜。記憶すらも掠れてしまうような長き時の末、儂は気付けば過去の宇宙に飛ばされておった!
だが儂は記憶を取り戻して還ってきたぞッ! 次こそ貴様に勝つために、次元操作魔法を身に付けてなぁああああッ!!!』
そう言ってヤルダバートが手を広げると、ヤツの周囲の空間がガラスのように砕け散り、無数の太陽が出現を果たしたのである――ッ!
地表に降り注ぐ数百万℃の超熱光線ッ! 俺は咄嗟にブラックホール生成手順の応用で重力のバリアを生み出して王都だけには光が差さぬようにしたが、それ以外の大地と人類は溶解して宇宙から消え去ってしまったのだった。『ベイバロン惑星』終了である。
……まぁいっか、人間なんて簡単に生き返るし最近は大地も回復魔法で治せるからな。
それにしても、その無数の太陽は――、
『ぬははははは! どうだ驚いたか宿敵よッ! 過去に飛ばされた時の感覚から、儂は無数の平行世界に干渉する術式を覚えてなぁ! 挨拶代わりに、とりあえず三千個の宇宙から本物の太陽を召喚してみせたのよ! これが本場の核融合じゃー!』
「……それ、太陽がなくなった世界は終わるんじゃないか?」
『知らんわッ! だって他の世界のリゼ・ベイバロンは世界征服前に父親に殺されて死んでるんじゃもん!
ああ、お前がいない世界に価値などあるものかッ! 全ての記憶を失っても、儂はお前とグチャグチャに殺し合える日を願って世界と人類を作ったんじゃーッ!』
ってテメェが創造神のソフィアだったのかよッ!?
……いや待てよ。俺がヤルダバートを過去に送らなきゃ人類は生まれず、逆に人類がいなきゃ俺もコイツも生まれなかったとしたら、いったい世界はどこから始まったんだ!?
女神ソフィアの影響で俺が牛を投げ始めたのに、女神ソフィアが実はヤルダバートで、コイツも俺の影響で牛を投げ始めたんだとしたら、いったい誰が最初に牛を投げ始めたんだ!? わけがわからねえ! タイムパラドックス牛ッ!
『リゼー! 儂を殺せー!』
「うるせえ! 勝手に死ね!」
はぁ、やれやれだぜ……。俺は頭を掻きながら、朝っぱらから惑星が滅んだことに溜め息を吐いた。
だがそこで、俺はハッと思いついた。――コイツのことをボコボコにして下僕にすれば、全平行世界の王に俺はなれるんじゃないかと!
おっ、おおおおおおおおおおおナイスアイディアッ! ちょうど世界を征服しちゃって暇してた時だし、いーじゃんそれ!?
他の世界の人間たちも俺の力で平和にしてやろう! テンション上がるな~!
「……いいぜ、ヤルダバート。お前との決闘、受けてやるよ……!」
『おほぉっ、やる気になったか宿敵よッ! だが儚きかな、あれから何兆倍も強くなった儂に勝てるかの~!?』
そう言ってヤルダバートは七十億個もの太陽を召喚し、心から楽しげな表情で俺へと笑いかけてくる。
なるほど、どうやらコイツもそれなりに成長してきたらしい。
だがしかし――死という概念を打ち砕き、過去三万年の全人類から『信仰』を受けてきた俺にとっては、これくらいの敵が丁度いいといったレベルだ。
俺もまた両手を広げると、その背に『漆黒の翼』を展開する。
……無量大数匹のブラックホール牛が集まって構成された、銀河を飲み込む巨大さの翼をなァ――ッ!
『って、なんじゃそりゃぁあああああああああああッッッ!!? ンホォオオオオオオオオッ! 儂のリゼくんやっぱりスゴしゅぎぃいいいいいいいいいいッ!?』
「張り合えるヤツがいなくなって物足りなかったところなんだッ! お前の身体と全部を使って満足させてくれよクソ女神ィイイイイイイイイイッ!!!」
俺は拳を握り締め、宿敵に向かって羽ばたいていった!
ヤツもまた興奮に身をよがらせながら無量大数個の太陽を無理やり召喚し、純白の翼に変えて立ち向かってくる――!
「『滅びろ宿敵ッ! お前にだけは負けて堪るかァァァァアアアアアアッッッ!!!』」
空中にて拳をぶつけ合う俺とヤルダバート! 炸裂した黒と白の波動は銀河を跡形もなく粉砕し、無数の平行世界すらもがその衝撃により吹き飛んでいった!
だがこんなもんじゃ終わらねぇッ! 世界を平和にするために、俺はどこまでも戦い続けるッ!
「さぁいくぜぇ! 俺たちの戦いは、これからだァ――――ッ!!!」
ここまでのご愛読、ありがとうございましたああああああああ!!!
ずっとテーマにし続けてきた「命の大切さ」を最後まで書き切れた気がします!
この作品に感動してくださった方は、ぜひとも友達やツイッターや近所の子供たちに紹介してあげてください!
最期にご評価にご感想、お待ちしてます!!!
……あと番外編などもちょこちょこ投稿予定なので、まだブックマークは剥がさないでえええええええええ!!!(新作書き始めました!マイページからお願いします!)