第三十三話:リゼくんの家を壊そう!
ジジイをアヘらせたら一晩で80人くらいから評価をいただけてビックリしました(ランキング入りに必要な評価数の約8倍)
「――ふはははは! 超有能領主リゼくん、華麗に起床!!!」
IQ99999を誇る俺の朝は早い! ニワトリが鳴くよりも早く起きると、身支度をとっとと済ませて郵便物をチェックだ!
すると……ふへへへへ、今日も来てるぞ来てるぞ! 俺が教育してあげた貴族キッズたちから感謝のお手紙が!!!
えーとなになに~?
『我が主君リゼ様! 貴方様にいただいた力で、父や兄たちから当主の座を勝ち取ることが出来ました!』
『神の使徒リゼ様! “傲慢なる貴族の絶滅”を謳う素晴らしい宗教に入れてくれたおかげで、毎日が充実しています!』
『救世主リゼ様! 民衆たちもデミウルゴス教に入信してくれて、笑顔の絶えないアットホームな領地になりました! これからも貴方様のような人格者になるべく修行します!』
ふーむなるほどなるほど! 今日も俺の教え子たちは立派にやってるみたいだぜ! みんなめちゃくちゃ俺のことを褒めまくってくれて照れちゃうね!
いやぁーやっぱり無垢な子供っていうのはイイモンだわ。最初はヘニョヘニョしてたみんなだけど、ちょっと拉致って縛り付けてクスリ打ってメンタルレッスンしたら真人間の完成ですよ! リゼくんの人間性を見習った奴らがどんどん当主になってくれて、この国の未来は明るいね! ふえへへへ!
そうして俺が、国を平和にしまくってるから王様きっと喜んでくれるだろうなーと内心ニヤけていた時だ。
「――クンクンクンクンクンッ! リゼ様の、リゼ様の匂いがするッ! あぁリゼ様ぁ~~~!」
「おっ?」
突如として地面がバコっと弾けて、スコップを手に持ったアリシアが飛び出してきやがった! わぁびっくりしたー。
「お前モグラだったのか……頑張って人間に進化したんだな」
「うふふ、リゼ様ってばご冗談を~! 実は敵襲に備えて、地下礼拝堂に続く隠し通路をいくつか作っているところなんですよ!
この場所以外にも、教会や街中やわたしの家やリゼ様の寝室にまで掘る予定で……!」
「俺の寝室は三階だが?」
「はわッ!?」
スコップを落とし、地に膝をつく銀髪シスター(元モグラ)。
うーん今日もアリシアのやつは騒がしくて面白いなぁ。こいつがいるおかげで、「あぁ、俺は常識人なんだな~」って自覚できるからいいよね。
死んだ俺の親父なんかはあれだぜ? 常識的で優しくて人格者だったリゼくんに対して、『もうお前のプラス思考すぎて気持ち悪いメンタルや何も考えてない幼児並みの状況把握能力は諦めたから、せめて態度や言葉遣いくらいは賢そうに見せかけてくれ……!』とかふざけたこと言ってやがったんだよなぁ。失礼しちゃうぜまったく!
「そうだアリシア。貴族の少年たちからまた手紙が届いていたぞ? デミウルゴス教を布教してくれてありがとうとな」
「あっ、そうなんですか!? ……うふふふふ、どうやら順調にデミウルゴス教の支配地域が増えていってるみたいですねぇ。
これは国王様の耳に入るのも時間の問題ですね、ふふふふ……!」
「そうだな」
ああ、もしも邪教のデミウルゴス教が広まっていってることを王様が知ったら――きっと俺のことを褒めてくれるだろうなぁ!
だってリゼくん、指導者のアリシアから『現人神』だとかいう地位を与えられて、実質デミウルゴス教を支配しちゃってるんだぜぇ!?
俺わかっちゃったんだよね……温厚でかしこくて謙虚なリゼくんが支配している宗教が民衆たちを取り込んでると知ったら、王様は怒るどころか喜んでくれるはずだって! 『うむ、超有能領主のリゼ殿がやることだったら平和に向かってまっしぐらだな! その愛国心に敬意を表して次期国王にしてやろう!』って言うに決まってるって絶対!
だって俺、これまで平和を願った行動で失敗したこと一度もないし! たとえ失敗したことがあったとしてもIQ999999の俺が失敗として認識してないってことはそれは失敗じゃないってことだし! なんか知らない内に遺恨を買ってたとしても、ジャイコフやスネイルみたいにこの世から消し去れば平和だし!
そう――俺は底辺領主として誠実に働いている内に気付いたんだ。愛すべき民衆たちの笑顔が気付かせてくれたんだッ! 俺、リゼ・ベイバロンは、『王の器を持つ男』なんだってッ! この国を引っ張っていくのに相応しい男なんだって!!!
「――ありがとう、アリシア。それにこの土地のみんなもだ。みんなが俺を慕ってくれたからこそ、俺は進むべき道を見出すことが出来た」
「っ、リゼ様……ついにやるのですね……!」
「ああ――俺はこの国の王になるッ!」
そして、グノーシア王国の全ての人々を笑顔にしてみせるんだ! うおおおおおお燃えてきたぜぇぇぇええ!!!
……というわけで、王様に気に入られて国王の座を譲ってもらえるように、今のうちに媚び媚びプランを考えておきますか!
うーんそうだなぁ。かしこい俺の予想だと、教育してやったヨハンが親子喧嘩の末に王様と仲良くなって、そんで王様が「おぉ、我がクソ息子をここまで立派にするとは、リゼ殿はなんと素晴らしい男なのだろうか! これは直接お礼に行かねば!」って来てくれる可能性がかなり高い!
じゃあとりあえず、お城をピカピカに磨くことにしますかね! こういう細かな気遣いが大事なんだよねー!
「さぁアリシア、民衆たちに通達だ。ヤルダバート王を盛大に出迎える準備をしろとな。パーティーの日は迫っているぞ……!」
「ふふっ、大丈夫ですよリゼ様。その日のために、みんな技術を磨いてきましたから……!」
あっ、そうなの!? 王様の前で一発芸でもやるつもり!? はえーっ、みんな意識高いねー!
そういえば、俺が食料を無限生産してからは暇になった農民とかはみんな剣を振り回して遊んでたもんね。ありゃ剣舞の練習だったのかー。
よしよし、ベイバロン民たちもみんなやる気たっぷりだし、王様に会える日が楽しみだね!
そんで王様から王位をもらって、俺の漆黒のお城が本物の王城になるんだッ! たっのしみー!
そんな想いを胸に、俺が自分の城を眺めていた時だった。
突如として風を切る音が天から響き――どっかから飛んできたヨハンの奴が、俺の城を粉砕しやがった!!!
「ヨ、ヨハンーーーッ!?」
いやお前なにしてくれてんのォォォォ!?
編集さまより「書籍版の発売まで連載をもたせて欲しい」とのことですが、リゼくん(無自覚ドS)もラスボスジジイ(サイコドM)もやる気マックスで明らかに無理なので、終了後も番外編をたくさんやっていく予定です!
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