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第三話:宗教に媚びよう!



 平民たちに媚を売り始めてから二か月。『ベイバロン』領は急速に発展していった。

 まずは身体を治してやったチンピラ共の手を借りて、全ての田畑に水が行き渡るよう水路なんて作ってやったな。


 本来ならば何か月もかかる重労働なんだが、そこで俺の回復魔法の出番だ。

 傷を治すだけじゃなくて疲労を吹っ飛ばすことも出来るため、わずか数日で作業を終えることが出来た。


 ちなみに疲労がポンと抜ける魔法を使うと気分がめちゃくちゃアガる上に、疲労からの超回復でベースの筋肉も成長するらしく、チンピラ共も張り切って仕事に努めてくれてたよ。

 最終的には超回復を繰り返し過ぎて、騎士も真っ青の筋肉ゴリゴリモンスター集団になっちまってたけど、『ありがとうなリゼ様ッ! これで野獣に襲われても負けないぜッ!』とか喜んでたから良しとしよう。

 

 実際に超進化したチンピラ共に田畑を荒らす害獣の駆除を任せたら、領内から絶滅させやがったしな。アイツら怖いんだけど、マジで。



 ま、とにかく農耕関係の問題ごとは片付いたな。農民たちもやる気満々で仕事してくれてるし、収穫の時が楽しみだ。

 となれば、後の問題は……、



「――あの、領主様。わたしの話を聞いていますか? それでですね、今この国で崇められている『女神ソフィア』は偽物の神であり、実際には『デミウルゴス』様という神がこの世界を創ったわけでして――!」


「ああ、聞いてる聞いてる」


 考えごとをやめ、先ほどからやたらと熱心に語っている銀髪シスター服の少女に向き直った。


 なんとこの少女、若くして『デミウルゴス教』という宗教の指導者様を務めているらしい。

 それなりの数の教徒がいるらしいが――残念なことに、この国は『ソフィア教』以外の宗教を認めていない。

 よって、処刑すべき邪教徒として信者と一緒に追いかけ回され、この脱走者まみれの領地に逃げ込んできたというわけだ。

 うん、可愛いのに色々と残念な子だな。『ベイバロン』領の領民にピッタリだぜ。


 そんなことを思っていると、彼女のトークが最高潮に達した。


「『ソフィア教』は歪んでいますッ! “魔法は神が与えし力。よって、下劣な平民たちのために使うなど言語道断”という間違った教えを広めているッ!

 間違いなく、大昔の王族や貴族たちが、自分たちを『神に選ばれた上位存在』だと特別視させるために造った、都合のいい偽物の宗教ですッ!」


「なるほどなるほど」


「それに比べて『デミウルゴス教』は違いますッ! 魔法は神が与えたモノという考えだけは同じですが、我々は“平民たちを救い、導くために貴族に与えられた力”だと認識していますッ!」


「なるほどなぁ」


 ああ……うん。そりゃ邪教扱いされて追い回されるわ。『ソフィア教』に真っ向から逆らっちゃってる上に、貴族たちに何の利益ももたらさない思想だもん。

 誰だってラクしたいよ。魔法を使えばそれなりに疲れるしさー。

 

 つーかこの子、朝から屋敷に突撃してきて、おめめキラッキラさせながらずっと喋ってるんだけど何なわけ?

 

「――というわけで、リゼ様ッ! 魔法の力を平民たちのために使っている貴方こそ、まさに理想の貴族の姿というわけですよッ!

 ぜひとも『デミウルゴス教』に入信をッッッ!!!」


 あ、あー……そういうことね。魔法を使いまくって平民たちに媚を売る俺の姿が、まさにコイツの理想図だったってわけか。それで勧誘に来たと。


 どうしよう、すっごく断りたいんだけど……でもこの残念銀髪美少女シスター、百人近くの教徒を持ってるんだよなぁ。

 ヘタに断って暴動とか起こされると怖いし……よし、しょうがない。


「いいぞ、シスター。俺も『デミウルゴス教』の教義に感銘を受けた。ぜひとも俺を教徒の末席に加えてくれ」


「おっ、おおおッ!? ナイスご判断ですよリゼ様ッ!!! アナタほどの人であれば、末席どころか大幹部の席だってプレゼントしちゃいますよぉ~!」


 まさに小躍りせんばかりの喜びっぷりで、俺の手を取って上機嫌に笑う銀髪シスター。

 うむ、ピョンピョンと跳ねるたびに無駄に発育した胸も弾んでいい感じだ。ベッドの中でも神の偉大さとか語ってきそうなので、親密な関係になるのは遠慮したいが。

 

 まぁよくわからない宗教に入ることになっちまったが、これで他の教徒連中も俺に懐いてくれることだろう。

 ナイス判断だったな、俺!


「ああ、そういえば町はずれに古い集会所があったな。あそこを手直しして教会として使うといい」


「おっ、おおおおおおおおおおおおおお……っ!!! 貴族たちから害虫を見る目で虐げられてきたわたしたちに、教会を用意してくださるなんてッ!

 噂の通り、なんと優しい方なのでしょうかッ! まさかアナタがデミウルゴス様に選ばれし『救世主』様なのでは!? いえ、そうに違いありませんッ! このアリシア、一生アナタに尽くさせていただきますッ!」


 何やらよくわからないことを言いつつ、銀髪シスターことアリシアは深々と頭を下げてくるのだった。

 よし、勧誘問題も一件落着っと! やっぱり平和で静かなのが一番だぜ! はっはっはっはっは!

 



1:チンピラたちを魔法で癒して篭絡。

2:農民たちも心酔させ、食糧生産力を急ピッチで上げ始める。

3:国教に真っ向から逆らう宗教を保護し、指導者に教会を与える。


うーん、これは平和に向かってますねー()

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― 新着の感想 ―
[一言] 国教に真っ向から逆らう宗教を保護 保護するだけじゃなく自分自身が入信しちゃう・・・ これは国と戦争になるだろうな・・・(;^ω^)
[一言] 直ぐに疲労が治って超回復する魔法が羨ましい(´ρ`) 異世界でそんな能力があれば奴隷買ってその奴隷を超強化して働かせれば理想のヒモ生活が…(自分を強化して働く?知らない子ですね)
[一言] 馬路まんじしてるなぁ...祭り上げの2話、インフレの3話と濃度が上がっている...
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