第十六話:冒険に出よう!
前回のあらすじ:メイド「ご主人様と肉食系イケメンおじさん。男同士、密室、何も起きないはずがなく……!」
――公爵様からボンクレーの領地を正式にもらってから一週間。俺の人生は順風満帆だった。
まず領境を取っ払い、色々とややこしいからボンクレー領もベイバロン領に改名してみた。その際にジャイコフ・ボンクレーの親戚類から「無慈悲すぎるッ!」とか意味わからん抗議が飛んできたけど、なんかアリシアたち邪教徒集団が拉致していったので問題なかった。
数日後には「リゼ様万歳ッ!!! リゼ様が紡いでいく英雄譚に比べれば、我がボンクレー家の歴史や家名なんてゴミクズですッ!」って言ってきたしね。なぜかやつれてたのでお肉食べさせてあげたら泣きながら食ってた。よかったね。
うーん本当に順調な限りだ。
追放された者や奴隷や獣人も相変わらず集めまくってて領地はどんどん賑やかになってるし、食料だってパン粉をブチまけば三秒で更地を麦畑に出来るからな。俺の回復魔法も成長したもんだ。
税の管理なんかのほうも、ホーエンハイム公爵が頭のいい部下たちを回してくれるそうだからそいつらに任せとけば問題ないだろ。「我輩たちと同じ志を持つ者たちだ!」って言ってたから、きっと平和主義者な良い人たちが来てくれるんだろうなぁ。
「……さて、そうなると次はどうしようか……」
執務室で椅子をギコギコしながら考える。
そう、今や俺は貴族として満たされていた。かつては色々と大変だったけど、今の俺には時間の余裕があった。
ああ、こうなったら――男のロマンを求めてみるのもいいんじゃないか!? 若いのは今だけなんだから、ちょっとした冒険に出てみるのも一興なんじゃないかッ!
……たしかお隣の領地には、打ち捨てられた廃鉱山があったはずだ。
強力なモンスターの『ドラゴン』が住み着いたとかで、数十年ほど使われていないんだとか。
よっしゃ、だったらそいつを討伐しに行こうじゃないかッ!
他の領地の資源採掘場に潜り込むとなると色々と手続きが必要になるみたいだけど、ぶっちゃけ面倒くさいしまぁ数人程度だったら潜入しても問題ないだろう!!! よーしけってーい! 思いついたら即行動するところがリゼくんの良いところだよね!
「たしか俺が読んでた絵本に、こういう話があったなぁ。『勇気ある魔法使いが僧侶と戦士と剣士を引き連れ、ドラゴンを倒す』って話が」
ここはそれに準えていこうじゃないか。
となると、誘うメンバーは……、
「――えっ、ドラゴン退治のお誘いに!? 行きます行きますっ、ぜひこのアリシアも連れて行ってくださいッ! それではさっそくベッドにゴーッ!!」
「いや、今から行くのは廃鉱山だ」
「ちょっとリゼ様、わたしの鉱山は新品ですよッ!」
「お前は何を言ってるんだ?」
僧侶枠として、銀髪シスターのアリシアを誘ってみた。
道中とかで神の素晴らしさとか語ってきそうだから本当は遠慮したかったけど、今やほとんどの領民がデミウルゴス教の信者だからなぁ。反逆されるのも恐いので、その代表者であるコイツとはそこそこ仲良くしておこうか。
ちなみに今日が排卵日らしい。そんなステータス教えなくていいです。
さて、イチャイチャベロベロしてくるアリシアを適当に手でいじってやりながら、俺が二番目に誘いに行ったのは――
「――なぬっ、ドラゴン退治だと!? ぜひとも私を連れて行ってくれッ! 獣人族にとってドラゴンは最高の珍味なんだッ! あれを喰い殺すために、年間数百人の死者が出ていたほどのなッ!」
「そうか、何味なんだ?」
「高級な鶏肉に近いな!」
「高級な鶏肉を食えばいいのでは……?」
戦士枠として、金髪イヌ耳美女のイリーナを誘ってみた。
戦士かどうかはよくわからんけど、獣人族ってのは身体能力がすごいしきっと役立ってくれることだろう。
それにこいつとは、一緒に爆弾を作った爆友だからな。これからも仲良くしていこうぜッ!
そう思ってると、アリシアが『いいことを考えたッ!』って笑顔でイリーナへと言い放つ。
「思いつきましたッ! イリーナさんはリゼ様と女の子を作ってください! わたしは男の子を産むので、掛け合わせてリゼ様を作りましょう!」
「……おいリゼ殿、アリシア殿の頭に回復魔法をかけてやったほうがいいんじゃないか?」
「試してみたけど駄目だった。よし、次行くぞ」
おっぱいをムギュムギュと押し付けてくるアリシアと、顔を赤らめながら控えめ気味にくっ付いてくるイリーナを脇に、俺は三人目のメンバーを誘いに行った。
さて、最後の仲間は――、
「……いや、主様。なんでそこで自分なんすか……? どうせならメイド長のベルさんでも誘って、ハーレムパーティにでもしたらいいじゃないっすか」
「フッ、妬いているのかクラウス? ……俺にはお前が必要だ。どうかついてきてくれ」
「っ、主様――いいや、リゼさんッ!」
剣士枠として、爽やかイケメンな衛兵長のクラウスを誘ってみた。
女の子ばっかだと気疲れするしね~。ここは男同士、友情ってのを深めようじゃないかよ。
そう思いながら俺たちが強く握手していると――、
「ごごごごごご、ご主人様ーッ! お世話係としてわたくしもついていきます!!!」
なぜかメイド長のベルが、息を荒らげながら猛スピードで現れたのだった。
いや、うん、別にいいんだけど……なんでこの子、紙とペンなんて持ってるんだろう?
まぁいいや。これでメンバーは揃ったぜ!
――かくして、俺の大冒険が幕を開けるのだった!
・次回より感動の大巨編「ドラゴン討伐編」がスタートです!!! 一話くらいで終わります。
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