第十四話:爆弾を作ろう!
ベイバロン豆知識:アリシアちゃんは可愛くておっぱい大きくてぶっちゃけリゼくんの好みのようですが、子供が出来たら嬉々として宗教に入れるタイプの母親になりそうなのであんまり関わらないようにしているようです。
「リゼ殿よ、とんでもないものが出来てしまったな……!」
「ああ、これは大発明だぞ……!」
――ベイバロン領の森の中にある獣人族の集落にて。俺は金髪イヌ耳お姉様のイリーナと共に、『手のひらサイズの木箱』をまじまじと見つめていた。
今から数日前のことだ。いつの間にやら三千人ほどに膨れ上がった獣人族グループの様子を見に行くと、何やらみんなで白い石ころを囲んで考え事をしていた。
イリーナ曰く、「これからもジャイコフのような貴族たちと戦っていくとなると、こちらの魔法使いがリゼ殿一人では大変だろう。そこで、『魔石』が何かに利用できたらいいと思ってるのだが――」とのこと。
いや、俺平和主義者だからあんまり戦う気ないんですけど……。
でもまぁ、ジャイコフみたいな頭おかしい奴に冤罪ふっかけられて戦争を仕掛けられることもまたあるかもしれないからね。俺も戦力アップの策を考えておきますか。
ちなみに『魔石』とは、獣人族の間でモンスターの体内にある小石のことを指す単語らしい。
古来より獣人族たちは、「モンスター共が強靭な再生力を持っているのは、空気中の魔力をこの石へと集めることで、一部の『人間族』が使える回復魔法のような効果を自身に使用しているのではないか」と推測しているそうだ。
うーん、学会で発表したら速攻で殺されそうな理論だなぁ。
貴族社会では、魔力のことを神が降り注がせてくれている神聖なエネルギーだと思ってるからね。“魔を滅する法力”と書いて魔力って呼んでるのに、モンスター共もスパスパ吸って利用してますよーなんて言われたらみんな激おこだよ。まっ、リゼくんは心が広いから滅多なことじゃキレないけどさ。
ともかく、人間たちの間では“モンスター特有の尿路結石かなんかだろ”と思われてた小石がそんな性質を持っているとしたら、たしかに何かに利用できそうだ。
じゃあ実際に魔力を吸うのかどうか、俺がミョミョミョミョ~と魔力を送ってみたところ――なんと赤黒く変色して、爆発したのであるッ!
ってわひゃぁ!? ビックリしたッ! つか破片当たってクソいてぇ死ねッ!
思わず俺がブチキレて床に落ちた破片を踏み付けてみると、そいつも小爆発を起こしやがった!? わひゃー!
……表情筋が死んでなかったら泣いちゃうくらいにビックリした俺だが、獣人族のほうはさらにやばいことになっていた。
聴覚や視力に優れているせいで、一度目の爆音や発光にビビりまくって床に蹲っている。イリーナなんてイヌ耳を震えさせながら俺にギュッと抱き付いてきてるくらいだ。
「大丈夫か、イリーナ」
「う、うぅ……リゼ殿は平気なのか、流石だな。私なんて思わず泣きそうになってしまったぞ……」
「フッ、それよりもいつまでも抱き付いていていいのか? まぁ俺は役得なんだが」
「ってはわぁっ!? す、すまないリゼ殿っ!!!」
顔を真っ赤にしながら飛び退いていくイリーナさん。うむ、かわゆいかわゆい……って思っている余裕なんてねぇんだけどぶっちゃけッ! 足とかめちゃくちゃ痛いんですけどッ!
……まぁ、俺の貴重なブチキレシーンが見られなかったから良しとするか。
ってそれはともかく、問題なのは魔石に起きた異変についてだ。
どうやら魔石が魔力を吸うというのは本当のことだったらしい。イリーナもそう思ったらしく、黒焦げた爆発跡をジっと見ていた。
「……なるほどな~。魔力を急激に吸い過ぎると、このように爆発するわけか。これは大発見だなっ!」
「ああ、そもそも汚らわしい存在として扱われている魔物の一部に魔力を送ってやったのなんて俺が初めてだろうからな。他の貴族連中は知らないだろう。
……それとうっかり破片を踏んでしまってわかったことだが、どうやら衝撃を受けても爆ぜる性質があるらしい」
「なにっ、それは本当かリゼ殿!? ……これを利用したら、とんでもないものが出来るかもしれないぞ!」
――かくして、俺と獣人族たちの間で秘密のアイテム作りが始まった。
まず魔石を砕いて粉末状にし、そのあと魔力を少しだけ注ぐようにしたら、よほどの衝撃を受けない限りは爆発しない比較的安全なものになった。これを俺たちは『爆薬』と呼んだ。
それから数日。『爆薬』を水に漬けたり湿気らせたりすると魔力が抜けるということに気付いた俺たちは、木箱に密閉して投げつけるという利用法を考案。
ついでに破片が刺さってめちゃ痛かった時の経験から、鉄の破片を混ぜることで――平民でも使える疑似攻撃魔法アイテム『爆弾』が完成したのである……ッ!
「やったな、リゼ殿……ッ!」
「ああ、俺とイリーナたち獣人族の成果だ……!」
イリーナと強く手を取り合いながら、俺は一緒に研究してくれた獣人族たちと視線を交わし合った。
この爆弾というアイテム――モンスターのことを毛嫌いしている人間族だけでは、一生かかっても完成しなかっただろう。
昔からゲロマズモンスターどもを嬉々として食べているこいつらの知識があったから、これを造り上げることが出来たのだ。まさに友情の証である。
「やりましたねリゼ様っ!」
「これは世界を変える発明ですな! 開発方法がバレないようにしなくては!」
「って姫様、いつまでリゼ様の手を握ってるんですか? オレたちにも握手させてくださいよ!」
またもや顔を赤くして離れていくイリーナを他所に、他の獣人族たちとも手を取り合っていく。
うんうん……俺、ここしばらくこいつらと一緒にいてよくわかったよ。
貴族社会では「獣人族は好戦的な人間モドキだ。血肉に飢えたケダモノだ」なんて言われて差別されてるけど、そんなことはないっ! こいつらは俺たちと同じ『人間』だ! 分かり合うことが出来る存在なんだッ!
熱い友情の想いを胸に、俺はイリーナと見つめ合う。
「イリーナ……これからもベイバロン領のみんなと仲良くしてやってくれ。そしてこの地を中心に、獣人族を迫害する者がいなくなる世界を作り上げていこうッ!」
「ああ、そうだなリゼ殿……ッ! 我らの力で、獣人族を迫害する者を全て消し去ってやろうッ!!!」
う、うん? なんか言葉に違和感があったような……まぁ気のせいか!!!
俺と獣人族たちは心が通じ合ってるんだもん! というわけで平民でも頭のおかしい貴族を撃退できる兵器を開発したことだし、今日もベイバロン領は平和に向かって爆進中だねーっ!!! はっはっはっはっはー!
転生モノなどを書かれている「砂礫零」さまよりレビューをいただきました!
この調子で、友情と努力と勝利に溢れたこの小説がたくさんの子供たちの目に留まって、健全な育成の助けになったら嬉しいです!
みなさまからのご評価にご感想、お待ちしています!