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Mono mondon regas ~金が世界を支配する~  作者: あまつか飛燕
《ロレンス編》自由への闘争
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二つの出会い

 大統領府の門の前でオトポールと警備兵の睨み合いが膠着状態に陥っていた時、オールム達は信じられない光景を目にした。

「お、おい!あそこ!」

 兵士の1人が指さした先を見ると、大統領府の最上階から突如大量の水が湧きだしそれがこちらに向かって流れだしてきていた。

「離れろ!建物の影に身を隠せ!」

 ペイルの鋭い指示が飛び、味方の兵士達が辛うじて恐慌状態に陥らずにあちこちに逃げていく。

 その瞬間、先程まで陣を構えていた目抜き通りに大量の水が押し寄せた。自らの足も膝下ぐらいまで水が来ており、流されまいと必死に体勢を保持しながら大統領府の方向を覗き見れば、正門は破壊され敵陣も圧倒的な水の暴力によって流されているのが見えた。


「いた!オールムさん!」

 この異常事態の前にどう動くべきか考えていた頃、突如後方から女性の声が聞こえてきた。驚いて振り返ると、リルケーや数人の味方の兵士が何やら奇妙な銃を持ってこちらに駆けて来るのが見えた。

「リルケー、どうしたんだ!平民街はどうなってる!」

「かなり危ないです!敵の増援がすごく強力な武器を使って、もう街中を滅茶苦茶に…」

 報告を聞いてオールムは愕然とした。自分達がここでぐずぐずしている間に、平民街は危機的状況に陥っているらしい。

「リルケーはナレス隊だっただろ、ナレスはなんと言ってる」

「今は貴族街でオールム隊と一緒にいた方が安全だろうって、向こうも人手を欲しがってるだろうから手伝ってやれって…」

 そう言うなりナレスは涙をこぼし始めた。直接言わずともその場にいた誰もが理解した、リルケーに託した言葉はナレス自身の遺言なのだと。


「リルケー、その銃は何だ」

 ペイルはあくまで冷静にそう尋ねた。

「は、はい。敵が持っていた銃です。威力が物凄くて、とても盾なんかで防げるものじゃないんです」

「わかった。貸してくれ」

 ペイルがその銃を手に取るとおもむろに建物の影から飛び出し、破壊された門に向けて数発発砲した。それは破壊された門の鉄扉に穴を開け、木製の橋を穿ち、偶然射線にいた不幸な敵兵の左足を吹き飛ばした。

「ペイルさん。それ…竜の魔法の力が使われてます」

 ラグナがそう言うとペイルも頷く。

「だろうな。竜のかどうかは分からんが、確かにこれは魔法で強化が入ってる」

「魔法ですって!?」


 一番驚いたのはリルケーや一緒に来た兵士達だ。ペイルやラグナの存在は知っていても、ラグナが魔法を使えるという事は知らせていない。

「…味方にまだ敵の間諜が要るかもしれなかったから隠していたが、ラグナは魔法を使える。"矛盾の壁"の秘密を解いたのもラグナだ」

 オールムがそう言うと皆が納得の表情を浮かべた。だがリルケーだけは眼をキラキラさせてラグナの手を取っていた。

「すごい!本当にあなた、青イ目ノ民みたいに魔法が使えるのね!」

「リルケー、興奮するのは分かるが後にしてくれ」

「そうだったわね、ごめんなさい」

 他の兵士にそう諫められるとリルケーは引き下がる。次に口を開いたのはペイルだった。


「敵は混乱している。今のうちに一気に大統領府の中に侵入してしまおう」

「よし、みんな準備は良いか?」

 近くにいた兵士達は一斉に頷き、声の届いていない筈の他の建物の影にいた兵士達ですら今や遅しと突撃命令を待っているかのように見えた。

「行くぞ、突撃ー!」

 オールムの命令が混乱した戦場に飛ぶと、様々な場所から一気に沢山のオトポールの兵士達が飛び出し大統領府に殺到した。


 *


 怒涛の勢いで雪崩れ込むオトポールを、もはや党や軍は止める事が出来なかった。リンゼンの最後に生み出した大量の水により門の前の陣は壊滅し、立て直すよりも早く攻め込まれてはろくな迎撃も出来ない。

 しかし乗り込んだオールム達が最初に見つけたのは、もはや見慣れた軍服や党の制服を着ていない、ある意味周囲から浮いている人の倒れている姿だった。

 無論今はそんな人にかまけている余裕は無かったが、ラグナの声でペイルは足を止めざるを得なかった。


「リンゼンさん!」

「リンゼンだと?」

 思わず足を止めた2人をオールムは振り返るが、ペイルは構わず行けと手を振った。

「う…お前…は?お前は、ラグナか。何故ここに…」

「リンゼンさんこそ何でこんな場所に!」

「自由…が、欲しかった」

「自由って…」

 咳き込むと口元から血がこぼれ出て来る。誰が見ても死ぬ一歩手前だ。


「あんな閉鎖的な村ではじきに滅びる。いつまでもイグナスを敵として見ているようでは…」

 リンゼンは息も絶え絶えになりながらそう語る。村を出たのは皇位簒奪事件が解決を見る少し前なので、事件が村とイグナス連邦に及ぼした影響を知らない。

「今は、今はそんな事はありません。私達とイグナスの人達は、もう以前のような不当な関係じゃないんです!」

 ラグナの悲痛な叫びにそれが真実であると悟ったリンゼンは、信じられないとでも言うように表情を変えた。

「…嘘だ」

「嘘ではない。イグナスの第二皇子であるモロスが失脚した後は、その妃であったミラム皇太子妃がユラフタスとの関係修復にあたっている。現にユラフタスとの交易は以前よりも多くなっているし、交易品もイグナスの市場では公正な価格で取引されている」

 ペイルが付け加えると、リンゼンは表情を弛緩させて呟いた。

「そうか…我が村の戦争は、終わったのだな」


 僅かな間の沈黙の後、再びリンゼンが口を開いた。

「そうだ、最後に面白い事を教えてやろう」

「面白い事…?」

 喋ろうとして咳き込み血を吐きながら、それでもなお弱々しく口を開くリンゼンは哀れでさえあった。

「お前らは、この党を倒そうとしているのだろう…?大統領のユールスという男、あれは…」

 その場にいた全員に緊張が走る。プラセン共和国大統領、ユールス・カダルには謎が多い。その正体の一端でも掴めれば、労働者頭打倒の何かの役に立つのではないかと期待できる。

「あれは嘘だ。ユールスという人物は存在しない、党が権力を…ゴホッ、権力を得る為に作り上げた偶像だ」

 リンゼンは最後の力を振り絞ってそう言い、そしてゆっくりと瞼を閉じる。故郷を裏切り、故郷の人々を裏切り、そして自らの人生すら呪った男の末路であった。


「いくぞラグナ、今は哀しんでいる余裕は無い」

「…はい、そうですね」

 ラグナは何となく後ろ髪を引かれる思いで立ち上がると、最後にリンゼンを一瞥し大統領府の建物へと向かった。見ればオールム達は既に建物の中に入ったようで姿は無く、リルケーや他の味方達が自分達を守るように盾を並べたり弾幕を張っていた。

「皆さん…ありがとうございます!」

 ラグナは何かを振り払うようにそう言うと、防御魔法を展開し殺到する銃弾を完璧に防ぐ。周囲の見方から感嘆の声が漏れた。

「すげぇ…」

「これが魔法ってやつか…」


「ぼさっとするな、今を逃すと大統領府に入れなくなるぞ!」

 ペイルが檄を飛ばし皆が慌てて建物に向かって走る。だがその瞬間最後尾を走るリルケーが転倒し、同時に先頭を走っていたペイルの元に火の壁としか形容出来ない程の攻撃が襲い掛かってきた。

「魔法攻撃!」

 ラグナが叫び、咄嗟に防御魔法を展開し受け止める。

「何者か!」

「何者とは私が聞きたい…!我らが神聖なる都市を土足で踏み荒らす侵入者は貴様らか!」

 誰何に対して誰何で返してきた男を、ペイルは一目で只者では無いと見抜いた。眠っていたイグナス軍時代の勘が蘇ったかのように。


「そうだとも!俺はペイル=サルーン、貴様らの愚かな砂上の楼閣を潰しに来た者だ!」

 接近戦になった場合はそうして敵を煽る事で、口を滑らせて有用な情報を喋る事がある。勿論相手が冷静であれば全く意味の無いものなのだが、この時の敵には効果覿面だった。

「黙れ!党に仇なすものは全て、魔法戦闘隊の小隊長の名に賭けて殺してやる!」

 厄介な敵だと思ったのも束の間、敵はすぐに攻撃の矛先をペイルからその後ろへと変えた。


「貴様は後だ、まずはその雑兵からだ」

 敵はペイルの脇をすり抜け、手当たり次第に火を矢の形にして乱射していく。先ほどの魔法をペイルが展開したものと誤認したのか、先に魔法の使えない筈のオトポール兵から始末しようという肚だ。

「ラグナ!」

「わかってます!」

 すぐにラグナが防御に入るが、何人かは矢をまともに喰らい地に伏した。

「貴様もだ女ァ!」

 先ほど転倒したリルケーにも敵は矢を放つ。士気を挫くのであれば雑兵よりペイルのような強者を倒した方が良いのだが、その敵はまるで取りつかれたかのように魔法の使えない味方を狙っていく。


 敵の発動する火の矢の魔法はかなり高速で、ラグナも一瞬対応が遅れた。矢はすさまじい勢いでリルケーに迫り、観念したように目を閉じたその瞬間、防御魔法が展開され敵の攻撃は音を立てて破れた。

「誰だ!」

「オリャスク!貴様の愛国精神は見上げたものだが、この女殺そうとするならば俺を殺してからにしろ!」

「お前は…」

 突如その場に現れた人物はペイル達にも見覚えがある人物だった。ヤンビャン郊外の教化所で出会った、暗隊第2小隊の隊長だ。


「クルセ…クルセ・ニガルス!貴様、第2小隊の分際で!ここに来てまだ私の邪魔をするか!」

「寡黙な貴様がこうも激高するとは珍しいな。だが二度とその名で呼んでくれるな、暗隊も第2小隊ももう捨てた。プラセン軍や労働者党ですら、俺にはもう関係の無い話だ」

「大恩ある労働者党を裏切るつもりか!党が我々の才能を育ててくれなければ、貴様は今でも貧しい農民(マルカラーノ)だったのだぞ!?」

「知った事ではない!俺は…俺はエリュー村で生まれたクルセ・メルズ、それ以上でもそれ以下でも無い!」

 刹那、激しい魔法の打ち合いが始まったが、リルケーはその場に座り込んでクルセの背中を見て涙を零した。そしてクルセがペイル達に先を急ぐように促し味方が全員大統領府に入って行った後も、ずっと立派に成長した幼馴染の背中を、体を、顔を追っていた。


 *


 オリャスクは焦っていた。自らの才能を買い伸ばしてくれた労働者党が、そしてその象徴たるヤンビャンが燃えている。気が付けば山の上から、同じく竜狩りから生き残った他の味方の兵を置き去りにして走っていた。

 我が神聖なる都市を踏み荒らすのは誰だ。大いなる正義たる、労働者党を蔑ろにする愚か者は誰だ。

 決まっている。プラセン自由同盟(オトポール)しか有り得ない。

 奴らを排除しなければならない。奴らを殺せ、全員根こそぎにして、一族もろとも我が火で焼かなければならない。


 そう決意しヤンビャンの開け放たれた第一防壁から中に入ると、すぐに我先にとヤンビャンから逃げ出す平民達とすれ違った。

「何たる事だ、このような騒乱がヤンビャンで起こるとは…」

 多弁ではないオリャスクも、思わずそんな声を漏らす。ヤンビャンこそ世界で唯一の永遠都市であり人類の理想であり、世界で最も裕福な都市だと思っていた。

 しかしいざ街の中に足を踏み入れると、まず火薬の匂いと脂の臭いが鼻に付く。聞こえてくるのは悲鳴、嗚咽、そして砲弾が炸裂する音、銃撃。オリャスクの知らない戦争がそこにあった。


 他の何もかもに目もくれず、ひたすらに大統領府に走った。我らが大統領にして現人神と言っても良い、偉大なるユールス様は無事なのか。もし危機的状況に立たされているのであればすぐにでも助け出し、安全な場所に避難させなければ…

 流石の敵も第二防壁の門全てを陥落させている訳では無いのか、西側から貴族街に入る門は健在であった。軍の認識票を見せるがてら門兵に中の様子を尋ねたが一向に容量を得ず、それがオリャスクの焦りを加速させる。


 街の西側から入ると、丁度大統領府の正門と反対側に出る事が出来る。幸いにして建物から煙があがっていたりはしてなかったが、入口の門を見てすぐに異常に気付いた。門の兵士が最低人数しかいないのだ。

「暗隊第1小隊、オリャスクだ。他の者はどうした」

「それが…」

「なんだ、答えろ」

「突如屋上から大量の水が出てきて、正門の方が壊滅的…」

 そこまで聞くなりオリャスクは兵士を突き飛ばして建物へと駆けていく。屋上と言えばユールス様の部屋、そして不自然な大量の水と言うのは誰かが魔法を使ったのに違いない。


 建物の前の広場に来ると、水浸しの中に明らかに軍服とも党服とも違う一団を発見した。この状況下で大統領府に陳情でも無い筈、であれば答えは明快。あいつらは(オトポール)だ。

 反射的に魔法で強力な火の波を起こし、敵へと殺到させる。ある程度の人数の魔法の使えない連中を相手にする時、この技は便利だ。魔力消費量に対して上がる効果が大きい。

 だが意に反して攻撃は完全に防がれた。それも防御魔法によってだ。

 暗隊の教えの中に万が一魔法を使える敵と遭遇した場合は、まず魔法を使えない者から排除するという教えがある。魔法で戦っている最中に他の敵を野放しにしていては、銃なりなんなりで攻撃される恐れがあるからだ。使える者同士での一騎打ちに追い込めば、後は普段から魔力の底上げや戦闘訓練に余念の無い自分達に勝機があるという事だ。


 だがその後の攻撃も魔法で全て防がれる。見るにまだ20にもならない小娘が魔法を使えるようだが、今は関係無い。後でじっくりいたぶれば良いのだから。

 丁度敵の一段の後ろの方で転倒した女が見えた。丁度いい、とオリャスクは思った。神聖なる大統領府に土足で踏み入れた罪は重い。その血で罪を償うべきである。他の敵の雑兵に向けた炎の矢を女に向けた。


 しかしそこで目の前に現れたのは、事もあろうに第2小隊の小隊長クルセだった。

 2つある小隊では第1小隊の方が力では勝るとは言え小隊長の発言力は重く、これまで何度か自らの出世の為と作戦行動を進言したオリャスクを、クルセは作戦自体にケチを付けたりあるいはその意味を問うたりして妨害してきたのだ。

 実際にはクルセはオトポールに対する攻撃を止めさせようとしただけなのだが、オリャスクの目にはそれが、自らの行動を頭ごなしに否定しているように見えていた。


「貴様、第2小隊の分際で!ここに来てまだ私の邪魔をするか!」

 思わず叫んだ。だがクルセはいつも通り冷静に反撃してくる。敵の女を庇っているような事も言っていたが、それなら話は早い。クルセも敵だ。


 *


 やがて2人の壮絶な戦いが終わる。

 どちらもプラセン共和国軍の秘匿部隊、暗隊の小隊長。実力は拮抗していた。だが騒乱が始まってからと言うもの、出動要請が出なかったのでずっとヤンビャン郊外の軍の駐屯地の一角で待機していたクルセと違い、オリャスクは竜狩りで追い詰められその後は自らの足で白露山脈を再び横断してきているのだ。疲労の差が勝敗の差となった。

 濡れる地面に斃れたオリャスクはもはや息をしていない。周りの兵士が一切手を出せない程の壮絶な魔法の打ち合いをしておきながら、最後はオリャスクの身体をクルセが戦いの途中で拾い咄嗟に突き出した銃剣が、拍子抜けするほど厭にあっさり貫いた。今もその身体には墓標の様に銃剣が突き刺さり、魔法の力を過信し依存した者の最期としてはあまりに皮肉としか映らない光景となっている。


 クルセは両肩で息をしながら、ゆっくりと座り込むリルケーに近付いた。戦っている最中に危害を加えられないよう、延々と防御魔法をリルケーの周りに展開しながら戦っていたのだ。その技量や精神力は尋常ではない。あるいは、守らねばならないのがリルケーであるが故に出来た所業か。それはクルセ自身にも分からない事であったが。

「リルケー、あんまり来るのが遅いから迎えに来た」

 はにかむように笑ったクルセに、リルケーは一気に幼少時代にまで記憶が引き摺り戻される。それは貧しいながらも今も心の中で輝いている、2人で泥だらけになって遊んだかけがえのない記憶。誰にも侵される事の無い、2人だけの記憶。


「メルズ…メルズ…!本当に貴方なの…!?」

「本当だ」

「だって貴方は党に連れ去られて!」

 湧き上がってくる激情と涙を堪えられずにいながら、しかし尚リルケーの中のオトポールとしての理性が未だに信じられないと言っていた。

「ペイルという男からの伝言は聞いたか」

「ええ…」

 リルケーが頷くと、クルセは懐からあるものを取り出す。

「それって…」

「覚えてるか。小さい頃、村のはずれの花畑で作った花飾りだ。ここは物だけはあるからな、街の職人に頼んでちゃんとした髪飾りにしてもらった」

 ぎこちない動作でリルケーの髪にそれを付ける、リルケーはその間微動だにしなかった。戦場に似つかわしくない、2人だけの世界だ。


「名をニガルスと変え、労働者党に与するフリをして、密かに党の支配体制の変革を狙っていた。本当に、本当に長かった…」

「メルズ、これからはずっと一緒?」

「ああ、ずっと一緒だ。あのペイルやオールムと言ったか、実にいい目をしていた。きっとこの戦争もじき終わる。だから、一緒に帰ろう」

 その言葉に力強く頷くと、リルケーは頬に伝う涙を拭おうともせずメルズの胸に飛び込んだ。メルズも溢れ出るそれを止める事が出来ず、2人とも周りの喧騒などまるで聞こえていない風に少しの間抱擁を交わすと、メルズは手を引いて大統領府の敷地から出ようとした。


「待って!私は残らなきゃ」

「…ああ、中に行った味方がいるんだったな」

「ええ。それにメルズもまだ労働者党の人間だもの、私と一緒にいたらダメよ」

 メルズはその言葉を聞き目線を落とすと、労働者党の襟章をもぎ取り投げ捨てた。そして着ていた暗隊の戦闘服も脱ぐ。

「これで俺も平民と変わらないな。聞けばオトポールに感化された平民も平民街で戦ってるみたいだし、俺もそんな一員って事でいいかな」

 突然のその行動に驚きつつも、リルケーはまた少し泣き、そして笑いながら言った。

「魔法の使える平民なんていないわよ。それに、中はどんな危険があるか分からないのよ」

「分かってるさ。だが、お前と一緒ならどこまでも行けそうな気がする」

 メルズはそう言ってリルケーの手を取った。それに少し驚きつつもしっかり握り返すと、今度は満面の笑みを浮かべた。

「そうね。メルズと一緒なら、どこまでも行けそうな気がする」


 既に大統領府前の広場にいた敵兵は、時を同じくして反旗を翻した暗隊第1小隊の仲間によって制圧されている。2人はすぐに表情を引き締めると、建物の中へと足を踏み入れた。

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