蜂起と弾圧〈中編〉
地上で陽動を担うカラン隊は、作戦を決まってからと言うものペイルからひたすら戦術と戦い方を叩き込まれていた。それはペイルが軍に奉職していた頃に派遣されて戦った戦地で培った戦法であり、従来のような平原で魔法や機械化兵による撃ち合いなどとは異なる戦い方であった。
その戦闘自体はリハルトなどが周辺国を飲み込む際に行っている。しかしペイルをはじめイグナス軍が考え実践し、ペイル自身が従軍した戦争にて、ユラントス王国のある島都市を守る上で圧倒的な力を見せた戦法をカラン隊に教えていた。
「しかし狙撃ってのは本当に効果があるのかね」
作戦開始数分前、矛盾の壁からそこそこ離れた場所に陣取り台座付きの銃を構えたカラン隊の兵士がそうこぼした。
「さぁな。だがお前が趣味で磨いていた遠距離射撃、狙撃か?それが役に立つって、あのペイルさんが言うんだ。それを信じてやってやろうじゃん」
その兵士の隣で双眼鏡を構えて壁の方を見ている兵士がそう応える。
2人はペイルの考案した作戦の要である、狙撃手と観測手だった。
戦場における精度の高い遠距離攻撃はまだ一般的ではなく、せいぜい魔法戦闘華やかなりし頃に放った矢に魔法を載せて誘導していた程度だ。しかしこれも矢自体を強化しない限り殺傷能力は低く、矢を強化しかつ誘導まで行うというのは出来る人が少なかったり、あるいは矢自体が耐えられなかったりして一般的ではなかった。
しかし銃による遠距離攻撃、つまり狙撃は訓練さえすれば誰でもある程度は可能だ。オトポールの兵士の中から狩猟をやっている兵士を集め遠距離射撃を行わせて、成績の良かった者5名と観測手を合わせて10名の狙撃担当がカラン隊には加わっていた。
「しかしこの暗闇で遠距離狙撃をしろって言ってもなぁ…」
「そこは地上の部隊がどうにかするんだとさ。それにペイルさんが言ってたぞ、"もしかしたら敵自ら場所を教えてくれるかもしれない"ってな」
「なんだそりゃ」
そんな他愛もない話をしていると、唐突に光の玉がすぐ近くに上がった。開戦の狼煙だ。
2人は銃と双眼鏡に取り付く。与えられた役目を全うできたなら、上手くいけば損害は最小限で済ます事が出来るかもしれない。
*
地上では残りの90名の部隊が6名1組となり計15個の小隊となって壁の近くに散開していた。各々の小隊は手製の爆弾や火炎瓶やらをこれでもかと詰め込んだ背嚢を2つ程持っており、その他にも小銃やら何やら様々な武器で武装している。その代わりに陣を据えて使う、投石機などの武器は一切持ってきていない。これもまたペイルの作戦だ。
多数の小隊は同時多発的に壁の近くで騒ぎを起こす。これまではなりきの武装で一箇所に固まって抗議活動をしていただけに戦力を分散させる事にカランは難色を示していたが、ペイルの「戦力の分散もやり方次第」との言葉とその作戦。そして作戦概要を聞くうちに、生きて帰還出来る可能性の高さに折れた。
自由の為なら死す事も厭わず、と言えば聞こえは良いが、カラン達とて生きて還りたいと言うわけだ。
騒ぎを起こして軍や公務官が集まって来た頃に、すぐさま撤退して他の場所で騒ぎを起こして敵を撹乱する。
戦闘場所は市街地、こうした市街戦の良いところは身を隠す場所が豊富にあり、敵の思いもよらない所から攻撃が出来る事だ。壁の上からの攻撃ばかりの軍や公務官が万が一市街地に降りてきても、いつどこから攻撃されるかわからない緊張感を敵に与える事が出来る。
だがそれはこちらも同じで、いつどこから攻撃されるかわからない。そこで狙撃手が活躍する。
地上の部隊は可能な限り火炎瓶を撒いたり燃やせるものを燃やしたりして、地上に光源を作り出す。
ペイルの見立てでは党は市街戦には慣れておらず、そういった火があれば確認の為、或いは地図など見る為という様々な理由から近寄ると踏んでいた。
正規軍や公務官の服は勿論オトポールのそれとは違い立派なものだ。いくら双眼鏡越しでも見間違える事はまず無い。
あとは光源にノコノコ近付いてきた敵を狙撃すれば、敵は迂闊に地上を歩けなくなる。どこの物陰から襲撃されるとも、突然撃たれるともわからない。それは計り知れない恐怖となり、戦意喪失へと繋げる事が出来る。
白兵戦こそ戦争の真髄であり、遠距離攻撃などその道に悖るなどと言われた時代もあったと言うが、そんな事は知ったことでは無い。時代は進むのだ。
そうしてひたすらに敵を撹乱し続け圧倒的有利な状況を作りつつ、地下のオールム隊が壁を突破する糸口を掴むまで粘り続ける。
これがペイルが立てた作戦だった。
*
作戦開始の為に各々の小隊が配置について間もなく、カランの元に報告が入った。
「報告します!"矛盾の壁"付近に敵の大規模な陣地があり、壁への肉薄が出来ません!」
「陣地?どの程度だ」
「は、大砲が複数門と機銃もありました!」
「わかった。全隊に伝えよ、作戦は第二に変更だ」
カランがそう言うと報告に来た兵士は小さく礼をし、他の小隊に伝えるべく暗闇に溶けていった。
ー知っていたな?俺達が来る事を…
そうでなければ、こんな深夜に道に陣地など置く筈がない。
ペイルは作戦に当たって2種類の行動予定を用意していた。第一が本当に自分達の襲撃が露見していない場合、第二が露見していたと考えられる場合だ。敵のこの動きを鑑みるに、取るべき作戦はどう考えても第二だろう。
作戦が変更になり、小隊はまずそれらの防衛陣地を急襲する所から始まる。敵はこちらが大軍で攻め入ってくると思い込んでいる筈、こちらの総勢と戦術に気付かれる前にいかに潰せるかが勝負だ。
「アム・グラシム(2時)、時間だ」
カランはそう呟くと、信号弾を空に打ち上げる。カランにはその信号弾の甲高い音に紛れて、自らの部下達が密やかに動き出したのが分かった気がした。
作戦を開始するとすぐに、矛盾の壁の近くの2箇所で炎が上がった。小隊が敵陣に向かって火炎瓶や手榴弾を投げているのだ。
軍も反撃しようとするが攻撃に気付いた頃には既にオトポールの姿は無く、燃え出した武器の鎮火に追われてすぐにそれどころでは無くなっていた。
小隊は数を活かして敵の陣地に小規模攻撃を繰り返し仕掛け、反撃に移る前にその場を離脱し身を隠す戦法を繰り返していた。その一方で散発的に矛盾の壁にも火炎瓶を投げたりして、プラセン軍はあちこちで上がる火の手に慌てているうちにジリジリと損害を増やしていく。
カラン隊の目的はあくまでも時間稼ぎ、敵を壊滅させたいわけではない。これまでより多少は気が楽な事とペイルの考案した作戦が予想以上に効果を上げている事に、皆の士気は高まっていた。中にはより大規模の攻撃を仕掛けようという声もあったが、それだけは止めろとペイルに厳命されているカランは決して許可しない。
こういった遊撃戦でもっと効果を上げるのであれば、より大規模な編成で攻め入るしかない。
だがこの作戦は着実に、プラセン軍を混乱に陥れていった。
*
「報告しろ!一体何がどうなっている!」
第2防壁の平民街側のすぐ下に設えられた司令部では、そんな怒号が飛び交っていた。その司令部はオトポールの内通者からの情報で攻め入って来ると分かっていたプラセン軍のもので、高火力の物量作戦で叩きのめすつもりで設営されたものだ。
数刻前に上がった信号弾は恐らくオトポールの打ち上げたものだろうとされたが、その意図からして把握出来ていなかった。これまでのオトポールの攻め方と言えば集団での小火力の攻撃ばかりで、当然その程度で傷がつくような壁ではない。
軍はそれを壁の上から面白おかしく眺めつつ、大砲なりなんなりで追い立てる。どうせ生産性の無いオトポールが何人死のうが関係無い、オトポールの侵攻に対する迎撃は軍の一種の娯楽とさえ言えた。
しかし今回は最初からして、とても楽しめる気分では無い。アム・グラシム(2時)を回ったと同時に上がった信号弾を境に、オトポールを蹂躙するはずだった陣地が破壊され続けている。
当然そんな事をするのはオトポールなのだろうとは推測できるが、なにぶんこれまでとは違い攻撃と離脱が異様に早かった。
目標に爆弾なり火炎瓶を投擲すれば、当然その結果が見たくなるもの。しかし今回は投げるだけ投げてすぐにどこかに身を隠してしまう。
何人かの兵士が逃げた後を追うが半数弱がそのまま帰って来ず、帰ってきた兵士も次に追うのを躊躇ってしまい命令しなければ追いもしない状況にさえなっている。
「奴ら…何処から襲ってくるか分からないのです」
「何を言っている!所詮奴らは頭の足りないマルカラーノだ、圧倒的な火力で攻めれば良いだろう!」
弱気な事を言う者に檄を飛ばすのは上官の仕事だが、この時ばかりは部下も必死だ。
「しかし奴ら、ほとんど我々の前に姿を現さず建物の影から武器を投擲するだけしてすぐに逃げてしまうのです。これでは軽微とは言え損傷した機械を治すのに人が割かれてしまい、とても深追いできません」
「…分かった、下がって良い」
実際に迎撃陣地で攻撃を受けオトポールを追って生きて帰ってきた兵士は、仲間の叫び声を聞いたり自らも軽傷を負ったりして次に襲撃されても出て行こうとはしなかった。
5人飛び出したら2人帰って来ない。何処から撃たれるともわからず、次は自分が死ぬかもしれないという恐怖に足が動かなかったのだ。
しかし報告を受けた上官はそれで尚、どこかこの事態を楽観視していた。しかしオトポールに軽微とはいえ損傷を受け、兵士達の士気も落ちている。これはなんとかしなければならない。
そのまま壁の内側に作られたこの迎撃を指揮する司令所に向かうと、オトポール達を掃討する隊を作る事を進言し、それは即座に実行された。
「さて、ネズミ駆除の時間だ」
上官は小さくほくそ笑み、そう呟いた。
*
プラセン軍が慌てて態勢を立て直している間に、オトポールの各小隊は至る所にボヤを発生させたり罠を仕掛けていた。罠と言っても大層なものではなく、石やら汚水が降ってくるとか狩りに使う獣を捕まえる罠を人間用にしたものとかその程度だ。罠と言うより陰湿な嫌がらせとも言える。
これらを準備し、一旦身を隠す。そして敵の動きを伺った上で次の行動に移る。あくまで役割は時間稼ぎ、決定打を与える必要は無い。
だが確実にプラセン軍や駆り出された公務官達は焦りはじめていた。
オトポール達が潜む平民街に送られた軍や公務官からなる掃討隊は仕掛けられた罠に苦戦し、徐々に隊としての統率を失って来ている。嫌がらせも度が過ぎれば感情に任せて怒りたくなるのは誰でも同じだ。
「痛てぇ!まただ!」
そう言いながら掃討隊の兵士の1人は足にガッチリ喰らい付いた罠を外しにかかる。
「またか、気を付けろ!」
他の1人がそう言うがその兵士も先程頭から派手に汚水を浴び、臭いことこの上ない。
「うるせぇ!テメェだって引っかかてるじゃねぇか!」
「なんだと!?」
「やめろ2人とも!恨むならその罠を仕掛けて連中を恨め!」
他の人に言われて口喧嘩を止めるが、"オトポールに押されている"というこれまでに無い状況は確実にその心を追い立てていった。
「いたぞ!あそこだ!」
オトポールと思しき影が燃えている廃材の脇を通り過ぎたのを発見した兵士がそう叫ぶ。それを聞くやいなや、一気に5人がその燃えている廃材の前に殺到する。自ら明るい所に入れば目が明るさに慣れてしまい、帰って暗い所の捜索が難しくなるのだがそんな事を考えている余裕は無い。ましてやそれは狙ってくれと言っているようなものだが、それすら失念する程焦っていた。
そしてその焦りは、致命的な失敗へと繋がる。
銃声と共に1人の兵士が呻き声を上げた。見れば左肩から血が噴き出しており、左手は力が入らないようでぶらぶらとさせている。
「またか!奴らどこから…」
そう言った兵士もまた、銃声と共に今度は胴を撃ち抜かれる。そのままゆっくりと地に伏せ、僅かに身体を痙攣させるとすぐに動かなくなった。
4人になった一団は咄嗟に物陰に飛び込むが、その中の1人は飛び込むやいなや背後から襲われ異変を知らせる間も無くその場に倒れる。
何とか本隊に戻ったのは3人、僅か数分の戦闘…いやそれが戦闘と呼べるのか分からないほど一方的な展開で2人がやられ1人が負傷した事で、捜索隊は総じて恐慌に陥った。オトポールによって燃えている所に闇雲に突っ込んでは小銃を乱射し、他の兵に羽交い締めまでされて止められる者までいる始末だ。
それと同じ事が掃討隊の各地で起こっていた。全体の死傷率は跳ね上がり、異変に気付いた上官が数十分で掃討隊を引き揚げさせるまでに相当の兵士や公務官がオトポールの手にかけられた。
全員が地上に配備していた武器を一部放棄してまで壁の上や内側に避難した後も、壁の上から見下ろしていた兵士が何人か撃たれた。流石に軍もこの期に及んでは長距離攻撃によるものと理解はしたが、だからと言って有効な方法と言えば明かりを消して闇に身を潜める"逃げ"の戦法しか無い。
実際、壁の上にいた兵士達は「自分達は負けた」という事実を受け入れず明かりを照らしたままにして、オトポールの狙撃者の格好の的となっていた。明かりを消せとの命令が出るまでに、"オトポールに負ける筈が無い"という安い誇りの為に何人もの兵士が撃たれていき、その都度プラセン軍側の戦意は下がる一方だった。
ペイルが体験し考案した作戦はこれ以上無いぐらい正常に機能し、アム・レプイム(3時)を回る頃にはプラセン軍は完全に沈黙していた。壁の近くに放棄した大小の武器をオトポールの兵士が鹵獲しているのでさえ、誰もどこから次の見えざる銃弾が飛んでくるかわからない状況ではただ黙って見ている事しかできなかった。
戦いは膠着状態に陥り、迂闊に明かりも付けられなければ街にも降りれないプラセン軍と公務官、そして敵が皆壁の上や内側に籠ってしまったために攻撃できないオトポールという構図となった。
だがその奇妙な均衡はすぐに崩れることになる。
*
アム・レプイムを回って少しした頃、壁の上には密かにプラセン軍の兵器局が開発した新型の大砲が運び込まれていた。そして壁にある、今はぴったりと閉じられた門の内側では、軽機関銃や噴進砲で重武装した兵士達が並び始めていた。それらの武器も全て兵器局がリンゼンから得た竜の情報にあった、独特の高威力魔法を解析し応用した新型である。
そしてそれらの砲門は全て、"矛盾の壁"の外側にある平民街に向いていた。何があっても党が守ってくれると信じて疑わない、そんな忠良なる労働者党員たちの住む街に、党が今、砲門を向けている。
「全く、オトポールの連中にも兵士どもにも困ったものだ。何故この美しい白い街並みを破壊してまで、殺さねばならぬ」
そうクナイは、大統領府から戦場と化している方角を見ながらつぶやいた。就寝していたクナイは部下によって起こされ、この軍にとっての歴史的大惨敗を知った。しかし慌てることなく言い放ったのだ。
「ならば街を破壊してでも殺し尽くせ。全て連中の仕業という事にしておけば問題無かろう」と。
その狂気の命令は、しかし狂う事無くつつがなく現場や兵器局へと伝達され、そして今に至る。兵器局がオレウム侵攻用に作っていた新兵器の一部が緊急で運び出され、オトポールの潜む街の近くに壁付近にまで運び込まれた。
そして命令が下る。
「砲撃開始!」「撃てぇ!」
轟音と共にヤンビャンの平民街に炎が上がった。壁の上から放たれた大砲は近くの集合住宅に直撃し、魔法によって強化された砲弾は壁などいとも容易く貫通して建物を一発で半壊させる。それが続けて2発、3発と撃ち込まれ、せいぜいオトポールが攪乱の為に廃材などに火を付けていた程度の平民街が、本当の意味での戦場になり果てていった。
オトポールと軍や公務官との対立は平民街に住む人々も知るところであり、深夜に行われるのも珍しくない事から市民は沈黙を決め込んでいたが、流石に轟音に異変を感じ取ったのか家の窓から外の様子を伺ったり道に出てくる者もいた。
そして数十発にも及ぶ大砲による砲撃が鳴りを潜めると、次に壁の門が開け放たれ重武装の軍の兵士達が町へと散開した。先行してオトポールの秘密隧道を押さえる部隊が出動し、隧道の入り口となっている家の前に防衛陣地を敷いていく。そしてオトポールを掃討する役目の兵士達に課せられた命令は"動くものには撃て"という唯一つのみ。相打ちを避けるために門から放射状に広がった兵士達は、先の戦闘の恐怖心も相まってその命令を病的なまでに忠実に実行していった。
「やたら強い機関銃だな、大砲もばかすか撃ってくるし…小隊は全て防戦に入り交戦は避けるようにしろ」
カランはそう指示しつつ、自らも安全な場所を探す。
「遂に敵も本気を出してきたって所でしょうか」
同じ小隊の部下がそう言った。
「そんな所だろうな。だが殆ど無差別攻撃じゃないか、これが奴らの"正義"か?」
その言葉に込められた憤怒に一瞬部下はたじろいだが、やがてその部下も怒りを湛えて破壊された住宅を見た。
燃えている炎の明かりに照らされているのは、寝間着のまま瓦礫の下敷きになった人を引っ張り出そうとするその家の住人達。あれはヤンビャン市民、つまりは党の支持者でありオトポールにとっては"敵"と認識してもいい人達。
しかしこの時はオトポールの誰も、市民の事を恨もうとも敵だとも思わなかった。偶然カランの近くにいた他の小隊などは崩れた家から人を引っ張り出すのを手伝ったりしているし、安全と思われる路地裏まで市民を誘導している者までいた。
刹那、微かに機関銃の音が聞こえてくる。その音のした方を見やれば、遠目に誰かが身体を震わせ倒れるのが見えた。あれは仲間か?それとも…
「来たぞ!安全な物陰へ行け、早く!」
そう叫びながらも、カランはオールム隊からの引き上げの信号弾を今か今かと待っていた。その信号弾こそ成功でも失敗でも作戦終了の合図であり、それまで敵を地上に釘付けにするのがカラン隊の役目なのだから。
だがプラセン軍が火力にモノを言わせた戦法に出てくると非常にマズい。そもそも火力で劣るから戦術で利を得ていたオトポールにとっては、これに対抗する手段が無い。
「…来た!」
部下の兵士がそう言った。その瞬間空に光の玉が浮かぶ。
「合図だ!所定の場所へ行け、撤退だ!」
カランはそう叫ぶと、敵から身を隠しつつ全力で打ち合わせしていた隧道へと走り出した。それに呼応して他の兵士達も一斉に走り出す。信号弾を見て他の小隊もそうしている事だろう。
何人かのヤンビャン市民も付いて来るのが見えたが、今はそれに構ってはいられない。隧道まで来ればそれが外への道と気付いて引き返す事を祈るしか無い。
そうして路地を駆使しながら隧道の入口となる家の近くまで来ると、前を走っていた部下が急に止まった。
「どうした…」
そう言い終わるか終わらないかうちに、銃弾が近くの家の壁に穴を穿った。
「奴ら、隧道の入口の家を包囲しています!」
「やはり俺らの情報は筒抜けって事か…」
しかしここで悔しがってもいられない。これを突破しなければ、どのみちヤンビャンからは出られないのだ。
そうして突撃の命令を下そうとした瞬間、突如鮮烈な光が目の前に現れた。
ベトコンのゲリラ戦法にしてやられたアメリカ軍的な感じです。あっちでは打開策として、枯葉剤を撒いたりクラスター爆弾やナパーム弾で応戦しましたけどね。こちらでは身を隠すのは森ではなく町、ならば町ごとぶっ壊せとなるわけです。
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