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Mono mondon regas ~金が世界を支配する~  作者: あまつか飛燕
《アネクドート編》権謀術数
22/87

観閲式

 いついかなる状況でも、偉い人が自分の職場を見に来るというのは緊張するものだ。

 メルにとってのそれは魔法学園の実技演出を学校長やオルトゥス魔法師団の人が見に来ることであったし、ウィルにとってのそれは視察と称してハーグ鉄道公団の重役たちが見に来ることであった。

 そしてここ、シナーク現地司令部のコルセアにとっては…


「観閲式?」

「はい。モロス第一皇子を含めた軍上層部の観閲式を、カスタナイム(9月)の中頃にやるから準備されたし。とのサルタンからの通達であります」

 部下からの報告にコルセアは内心で深くため息をついた。


 季節はアジロム(8月)の終わり頃、準備する期間はおよそ半月だ。ましてつい最近、新たに"セス"と呼ばれる6頭目の竜が来たのでそこそこ忙しいのだ。それでいて最近になってソトール海がにわかに騒がしくなって来ている。リハルトが本格的に動き始めたようで、洋上艦隊が展開しているのだ。そうなればそちらの動きを注視し、命令あらばいつでも出兵できる準備を整えておかねばならない。その折にこれだ。


「もう少し時期を考えてもらいたいものだな。いつか来るとは思っていたが…」

 報告に来た部下が退室すると、コルセアはそう呟いた。

 だが出兵にしても観閲式にしても、命令されれば一も二もなくやるのが軍人というものだ。そもそもがモロス皇子の肝いりの計画、お膳立てはしっかりやらねば不敬になる。

 移動中の警護は近衛の領分だが、ここに到着してからの警護はこちらの領分だ。宿泊、現地視察、滞在中の食事と思いつくだけでも様々ある。


 そして通達のあった日から半月、シナーク現地司令部では観閲式の準備に追われることになる。


 *


「カスタナイムにシナークで観閲式?私も付いて行けるかしら」

 ミラムは自室で茶を飲みながら、目を輝かせて向かい合っている軍人に聞いた。

「そう言うと思ってもう手配しておきましたよ」

 そう言いながらその軍人、カナン=ミカルス少将は答える。皇太子妃の手前、直立不動で相対しているが、その顔はまるで娘を見る父親の顔であった。

「ありがとう、流石だわ。お堅い行事は嫌いだけど、こればかりはこの身分に感謝ね」

 そう言いつつミラムも顔をほころばせている。


 嫌々とはいえミラムも皇室の人間だ、それなりの伝手はできる。

 ミラムの好奇心ゆえだが竜の存在を知ってからと言うもの、色々と竜に関する情報を集めていたのだ。

 勿論その情報の中には、トバル家の家を接収しようとした際に起こった"鳥のような影"の騒動や、最近のシナーク現地司令部での戦闘訓練の評価も含まれる。


「観閲式はカスタナイムの20日、向こうで1泊だって。案外短いのねぇ」

「まぁここからシナーク自体が汽車で4時間あれば着くって聞いたし、そんなものなんじゃない?」

 カナン少将が退室した後、ミラムと女中のルフィアは観閲式について話し込んでいた。

「しかし到着して早々、訓示に視察、訓練訓練、自分から言っておいて言うのも悪いけど嫌になるような内容だわ」

「まぁ観閲式って言うぐらいだしね、軍の関係の行事だし仕方ないんじゃない」

「そうね。私は竜が見たいだけだし、あの人と一緒にいれば見る機会ぐらいあるでしょう」

 そう言ってミラムは、カナン少将から貰った観閲式の日程表をもう一度見た。


「はぁ…帰りにちょっとだけでいいから、カグルに寄らせてもらえないものかしらね」

 ため息をつきながらミラムが呟いた。

「そうねぇ。どうせ汽車と言っても皇族が乗るんだから直行で行くんだろうし、どうにかならないかしら」

 ルフィアも同意する。

 カグルは2人にとって、特にミラムにとっては半ば引き剥がされるようにして離れた故郷だ。皇都サルタンから汽車でシナークに行く時には途中でそのカグルを通るので、ならば少しでもいいから寄りたいというのは共通の願いでもあった。


 *


 月日は流れ、いよいよ観閲式の日となった。

 もう北方ワクリオン山脈の高地は木々が赤く色付き、山から吹き下ろす風も涼しく心地の良いものとなっていた。


 宮殿を出たモロス皇子を始めとした一行は周囲を馬に乗った近衛に守られて、サルタンのやや郊外の方にある駅まで向かった。

 モロス皇子やミラム皇太子妃、それに一緒に随行する軍の重臣達は各々の馬車に乗っており、駅に向かうまでの沿道にはイグナスの国旗を振った民衆が押し寄せていた。

 特に目立ったことも無く駅に着くと、この観閲式の為に専用に仕立てられた特別列車にぞろぞろと乗っていく。

 その中でもミラムは皇太子妃と言うことで、モロス皇子と同じ車両の同じ部屋であった。


「しかしミラムよ、お前が付いてきたいと言ったのは意外だったぞ。こういう軍の行事には興味が無いと思ったのだがな」

 モロスがさも無理やり話題を作ろうとした口ぶりで言うので、ミラムは逆に驚いてしまった。もうちょっと演技でもいいから夫らしい雰囲気で言えないものなのか。

「ええ、夫の公務に付き随うのも妻の役目かと思いまして」

 そう言ってミラムは、出来る限りの作り笑顔をモロスに返す。

「そうかそうか。お前もそういうことを言うようになったのだな」

 見る人が見ればミラムが無理しているのがよくわかるような光景だったが、それでもモロスは気付いているのかいないのか、満足気な表情だ。

 或いは本当に馬鹿なのかもしれないとミラムは内心で思っていた。


 ミラムとしては、せめてカグルの街ぐらいは見たいと思っていた。しかしその前に車内で現地に着いてからの打ち合わせが始まってしまい、車窓から故郷を拝むことはできなかった。モロス皇子を皇帝に推す保守派の家臣達が、ミラムに里心が付いての離縁を恐れて、わざとその時間に設定したことなど知る由も無い。


 *


 迎え入れるシナークの街はと言うと、こちらも厳戒態勢だった。

 皇位継承権が無いとは言え、皇族が来るのだから大騒ぎだ。ましてや戦時中、敵の間諜に情報が漏れていたりすると襲撃を受ける可能性もある。


 本来であればシナークの街や港を管理するボルサ氏族領の領主などが出てきて迎えるのだが、その領主は開戦間も無く皇都に呼ばれたと言ったっきり不在のままだ。

 だが領主が留守になって時を同じくして発令された非常戒厳措置により、シナークの街は軍の管理下に置かれている。その事を不審に思っても、時勢だから仕方ないという言葉で片付けられていた。


「いよいよ観閲式だ、間違っても粗相の無いように。此度の観閲式は長きに渡るイグナス軍の歴史の中でも初の試みとなる、ロヴェルとオルトゥスの合同隊である我々の成果をモロス皇子にお見せするものである。そもそもこの竜騎兵隊とはーー」

 いつも通りのコルセアの長い演説をよそに、第三聯隊輜重隊による最終の確認はつつがなく行われていた。


 モロス皇子とその妻であるミラム皇太子妃、そして5名ほどの軍や枢密院の重臣は全てトバル家の邸宅に宿泊することになっている。しかしその近衛の者や側近、女中などは一部を除いて外の天幕でと言うことになっていた。

 そして現地司令部の周りには、その天幕が竜騎隊の兵士の天幕と並んでずらりと並んでいる。


 演説が終わってややすると、シナークの街の方から騎馬兵に守られた一団が見えてきた。見るからに勇壮な騎馬兵と絢爛な装飾が施された馬車。一際目立つ煌びやかで豪華な馬車に、この一見無謀とも思える計画を立案したモロス皇子は乗っているのだろう。

「いよいよ来ましたな」

 コルセアの側近であるカイルが誰に言うわけでも無く呟いた。

「戦時中だと言うのに景気の良いことだ。国威発揚だと言っても無理があるな」

 コルセアも同じく、誰に聞かせるでも無く呟いた。


 モロス一行が到着すると、軍楽隊により歓迎の意を表した軍歌が演奏され始めた。その中をゆっくりと今回の観閲式のお客様であるモロス皇子や軍、枢密院の重臣達が降りてくる。

 コルセアは直立してそれを迎えた。今回の観閲式ではこの戦争の勝敗もあるが、自分の保身もかかっている。上手くいけば昇進も期待できるので、色々な意味で緊張していた。


「お前がここの責任者、ラティール=コルセアだな?」

 馬車から降りた1人がコルセアに話しかけた。

「は、シナーク現地司令部を任されております。ロヴェル機甲師団第二聯隊竜騎隊、ラティール=コルセア大尉であります」

 コルセアは敬礼をしながら返す。

「ラティール?あぁ、ラティール家の次男か。確か兄はリメルァール駐屯地の副司令だったか?」

「は、そうであります」

「そうか、なら楽しみだな。よろしく頼むぞ」

 そこまで言ってその馬車から降りた人はやっと返礼をした。目下の者が目上の者に敬礼をする時は、目上の者が返礼を返すまで目下の者は敬礼を維持する。

 普通ならば目上の者はすぐに返礼をするのだがこの男はすぐには返さなかった。肩の階級章を見れば大将であること、軍服を見ればオルトゥス魔法師団の人間であることはわかる。そうなれば…


 ーこの人は有名な保守派のアルメス大将か。そうなればこの重臣達は全員モロス皇子の支持者と見るべきだろうな。


 これは機嫌を損ねると後始末が大変だなとコルセアは内心で思った。


 その後は式始めの挨拶でモロス皇子が演説をしたのだが、これがまた慇懃無礼を体現するような演説でコルセアを始め竜騎隊の士気は下がりこそすれ上がるような事は無かった。

 具体的には、言葉の節々で下士官を、一兵卒を、平民を小馬鹿にするような事ばかり言っていた。

 兵士とて平民から入隊して竜騎隊に所属になった者も多い。その中でやれ「平民の及ばない」だの「偉くなればわかる」だの言うのは下策極まりないのだが、それをモロス本人も気付かなければ一緒に来た重臣も満足そうな顔で聞いているあたり、全員が馬鹿な傀儡である事は明らかだった。


 その後はモロス一行を竜舎へ案内して生態を説明したり、ここまでの研究成果の発表などでその日は暮れていった。


「はぁ、疲れるな。あぁいう()()()()()の応対ってやつは」

「全くです。仕えるのであればあぁいう()()()()()より、ラティール大尉のような人の方が余程いいですよ」

「馬鹿にされてる気もするが、あの面々と一緒にされるよりはいいな。褒め言葉と受け取っておこう」

 贅を尽くした夕餉を終えてモロス一行が各々に充てがわれた部屋に戻った後、コルセアとカイルは観閲式の1日目を終えて執務室でぐったりしていた。

 2人が殊更に"高貴な方々"を強調したのは皮肉以外の何者でもないが、そういう愚痴の一つでも言いたくなるぐらい無茶苦茶だったのだ。


「しかし大将ともなると皆があぁなるのかね。それは出来ないと言ったら皇子の御前で無礼だと詰られ、少しでも失敗があると嘲笑されだ。全くやってられない」

「本当ですね。私はいつラティール大尉が爆発するんじゃないかと心配でしたよ」

「はは、流石に皇子の目の前で怒鳴ったりしないさ。どちらかと言えば怒るより呆れていたしな」

「しかしラティール大尉、モロス皇子の事なのですが…」

 愚痴を言うような顔から一転、カイルは真剣な表情でコルセアを見た。

「どうした?」

 その顔に思わずコルセアも声を潜める。


「軍や枢密院の重臣の方達は皆、竜を見たり生態について知ると何かしら驚いたり感心したりしていました。ですがモロス皇子だけはほとんど表情を変えなかったのです」

「それで?いくら機密とは言え、ここの研究結果はサルタンには上がるはずだ。モロス皇子はそもそも発案者なのだし、それを読んでいるだけだろう」

 カイルの疑問にはにべもなく答えるコルセアだが、実は同じ事を考えていたので内心どきりとした。

「確かにそうかもしれませんが、研究結果の報告書を読んでいるのは他の人達も同じはずです。ですがモロス皇子を除いた他の人はやはり実際に見ると驚いていました。本物は違うなぁと呟いてる人もいました」

「それぐらいで驚いていては皇族の器には収まらないのだろう。大体そうならどうした、モロス皇子が個人的に竜を見たことがあって調べているとでも言うのか」

「そうです」

 カイルははっきりと、自分がモロス皇子を疑っていることを認めた。


 竜は確かに強い、圧倒的に強い。

 今は戦時中と言うことで戦力拡充の一途だが、一度戦争で使ってしまえばその強さに目をつけた諸外国がこぞって手に入れようとするだろう。そのこともあってコルセアとカイルは、最近はよく竜騎兵の扱いの難しさについて話し合っていたのだ。

 そしてその強力な竜騎兵を、それをあの皇子が私兵として持っているとすれば…


 ー自らの権力の象徴…いや、或いは皇位簒奪…


「否」

 悪い想像を断ち切るようにコルセアは言った。

「考えすぎだカイル、神経質になりすぎて疲れているのだろう。明日もあるんだから今日はもう休め」

「は…わかりました」

 そう言うとカイルは一礼して退室した。

 それだけの所作からそれだけの事を想像できるのは才能だが、仮に事実だとしても証拠が無い。

 ただ勘の鋭いカイルの言葉だけに、無視できるものでもなかった。


 *


 翌日は朝から模擬戦闘訓練の見学であった。

 昨日のカイルの話が頭に残っているからか、説明しながらもふとした瞬間にモロス皇子を含めた全体の反応を意識してしまう。


 訓練自体はコルセアにとっては普段通りのものであった。と言ってもそれは見慣れてしまっただけで、ある程度の規模の武装した騎馬兵の集団を数頭の竜騎兵のみで制圧する様は、初めて見る者の心を掴むには十分だった。

 そして皆がその圧倒的な力に見惚れている隙に、コルセアは素早く重臣達の表情を窺った。

 成る程、カイルの言ったことも頷ける。モロス皇子を除いた人達は確かに驚いたような顔でその訓練を見入っているが、モロス皇子だけは顔を一切変えずに見ている。

 ただそれは興味がないと言うより、試験官のような何かを見定めているかのような表情だった。


 戦闘訓練が終わると、枢密院の重臣の一人がコルセアに話しかけた。

「いや素晴らしかった。モロス皇子の発案なだけあるが、ここまで鍛え上げた君、えーとコルセアと言ったか。コルセア君も素晴らしいな」

「お褒め頂き光栄でございます。部下達の献身的な働きもあってこのような部隊を作り上げることができました」

「流石はハルーマン顧問官の息子だ、この調子で拡充を頼むよ。最初は半信半疑だったが、竜がこれだけの強さを持つのなら此度の戦争は勝ったも同然だ」

 そう言ってその重臣は満足気に現地司令部の建物へと戻って行った。


 昼過ぎに観閲式の終了式を行なっていると、カイルがまたも難しい顔をしてコルセアのもとへやって来た。

「今度はどうした。あの皇子がここの竜を寄越せとでも言ってきたか」

「いえ、実はそのモロス皇子の奥方様であるミラム皇太子妃なのですが、どうも身体の調子が優れないのでもう1日だけ滞在させてほしいとのことで…」

 そう言われてコルセアは皇太子妃の顔を思い浮かべた。すごい美人だということで有名ではあったし、確かに見目麗しい妃であったのはよく覚えている。だがそれゆえに、モロス皇子に強引に結婚を迫られたと聞くので少し同情もしていたのだ。

「まぁいいだろう、体調を崩した時に無理に動くのも良くない。シナークの街から腕の良い医者を呼んでおけ」

「かしこまりました」

 そう言ってカイルはその場を去ると式と離れた場所で指示を出す。そう言えばミラム皇太子妃も確かに来ていたが、訓練中などはほとんど姿を見せなかった。あれは体調が悪かったからなのだろうか。


 *


「ではミラムを頼むぞ」

 そう言ってモロス皇子は他の者と一緒に、行きと同じように絢爛な馬車でシナークの街へと降りて行った。

 仮にも妻なら一緒に泊っていくなり少しは案ずるなり無いのかと憤ったりもしたが、所詮一軍人である俺が出過ぎた真似は出来ぬと自分で自分に言い聞かせた。それに皇子までもう1日滞在などと言われたら正直やっていられない。

 嵐が過ぎ去って色々と滅茶苦茶になったかのようなシナーク現地司令部の中で、コルセアは重大な使命を終えたと1人また溜息を吐くのであった。


 *


「結局竜は見せてもらえなかったわねぇ」

 シナーク現地司令部に到着したその日の夜、そう言ってミラムは不満そうに寝床に転がった。

「せっかくシナークまで来たのに、到着して早々街の初等舎巡りになるとは思わなかったわ」

 ミカルス少将の口添えもあって観閲式に半ば強引に随行してきたミラムだが、着いてからは観閲式には参加させてもらえず専ら街の学校への表敬訪問に追われていたのだ。

「明日もそんな感じなのよね、朝から街に行って昼に戻って終了式だけ立ち会ってサルタンに戻るみたい」

 女中のルフィアが予定表を見ながら呟く。


「仮病でも使おうかしら」

 ミラムがぽつりと呟いた。

「なんで?」

「ほら、そう言って1日長くここに居て、その間にちょっと見せて貰えばいいのよ。一応皇太子妃なんだし断られないと思うわ」

 成る程とルフィアは思った。あの見栄だけでミラムを娶った皇子だ、その程度なら不審に思われないかもしれない。

「わかった、それで行こう。とりあえず明日のうちに竜舎の兵士の誰かに話を付けておくから、ミラムは明日は朝から調子悪そうな感じで頼むね」

「了解!」

 ミラムは兵士の真似をして、可愛らしく小さな敬礼で答えた。


 そして翌朝、ミラムは朝からいかにも体調が悪そうな風に装い、それをルフィアが甲斐甲斐しくお世話するといった光景が見られた。

 本気で心配してくれている側近やシナーク現地司令部の人に申し訳ないとは思ったが、恐らくまともに"竜が見たい"と言ったら断られそうなので、もう1泊する事も強引に押し通してしまった。


 *


 観閲式に参加した一団がサルタンに帰った後もミラムとルフィア、それと数人の側近はもう1泊シナーク現地司令部に厄介になることとなった。勿論表向きは「療養の為」である。

 帰った後も竜の訓練は続いており、本当はそれを見に行きたかったがあくまで療養なので外に出るのも躊躇われる。なので夜にこっそりと竜舎へ見に行くことにした。


 そして夜、ミラムとルフィアはこっそりと現地司令部の建物を抜け出して竜舎を目指した。もう遅い時間なので現地司令部の人も寝静まっており、誰に見つかる事も無い。


「やっと見れるのね!」

 息を殺しながらも、竜舎へ向かう道中のミラムはどこか楽し気だった。

 この手筈を整えたミラムも、仕える身ではあるが竜を見れるのを楽しみにしていた。生き物が嫌いなわけではないし、まして伝説の生き物が見れると言うのだから、楽しみじゃないわけがない。


 やがて黒い建物のシルエットが見えてきて、その前に灯りを持って立つ兵士の姿が見えた。

 もう少しで竜が見れるのだと思うと、ミラムの心は知らずのうちに高鳴っていった。

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