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フルダイブ技術研究所  作者: 白雲糸
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13、クエスト~責任の所在~

「普通はな、死ぬのを恐がるんだよ、どいつも、こいつも。そんで本来の目的を忘れて見失う。そうなったら、俺様は面倒だからやらねーが、色んな罰を与えるGMは珍しくねぇ…… 」


キラクの話の間に対して、息を吸うのがやっとの俺は何も聞ける分けも無く、勝手に物思いにふけって話を続けていく。


「この世界はな、死んで得るモノがあるんだ、それを俺様は貴様に与えたかった。何も無いと、流石に他のGMに愛されてる奴らについて行けねぇからな。それにしてもだ! 」


やっと息が整って来た所を無理矢理に立ち上がらせて、もう一度あえて同じ場所を殴られた。


「……! 何をす…… 」


それ以上は本気で話す事が出来ない。

心臓が止まるのでは無いかと、実際に止まったかもしれないと錯覚する程の苦しみが次から次に襲ってくる。

話など聞ける状態では無い。


「俺様が与えた最上級の防具を売りやがって! もう少し考えて行動しやがれ!! 」


好き放題やられて、好き放題言われて黙ってられる位だったら、街の外にも出なかったし、イグリスに挑む事もせずに、逃げる背後を襲われて終わっていただろう。

《絶対にこいつだけは許さない。》

その強い思いだけで、不格好ながら尻を持ち上げて膝を着き、片手をついて無理矢理に立ち上がった。


「……こ、これ以上、俺に何かしてみろ! ログアウト出来るようになったとしても…… 絶対にお前だけはこの世界から出さ無い、からな! 」


直後に鬼の形相でキラクが近づいて来たのが分かった。

そこから先の記憶は無い。

何が起きたのかは、意識が戻った後にキラクから聞いた。

同じ場所をさらにもう一度殴ったらしい。

空の上で、太陽の暖かい光に包まれて目が覚めた。


「良く言うぜ…… 貴様に恐いモンはねぇのかよ? 」

「……一つだけあるかな? 」

「なんだよ」

「教えない。 痛って! 」


頭を叩かれた。

それでも、キラクの表情は優しく、遠くの空を眺めていた。


「まぁ、精々頑張れや」

「おう! 」

「それから、貴様に外の世界で干渉するのはこれが最初で最後だ。それは、俺様が決めたルールだから絶対だ。だから、他のGMに管理されてる奴らに負けんなよ! 良いな! 分かったな!? 絶対だからな! 」

「あぁ、任せろよ! 」


キラクが付き出した拳に拳を重ねる。

直後にキラクの背後に、木造の扉が現れた。

キラクはそれ以上に何も言わずに扉を親指で指すと俺に早く出て行けと言わんばかりに首を降った。

結局何か役に立つような話も、俺が納得出来るような話も無かったが、キラクの表情見てると何だか色んな事が分かった気がした。

太陽の暖かさを感じていると、気持ちも晴れた気がした。

これで良いのか? 

良いんだよな。

自分自身を納得させ、ドアノブに手をかけて勢い良く開いた。

俺もキラクに声をかける事はしなかった。

死ねばまた会えるだろうし、向こうが何も言わないのであれば、俺も何も言いたくないという意地もあった。


扉を開くと、今にも号泣しそうな程に顔を歪めたエアが待っていた。

その奥には激怒している様子のノンとキョウが腕を胸の前で組んで立っている。

トンはどこに行ったのか見当たらない。


「待って、たんですよ。ずっと、ここで…… 」


エアはそう言うと、溜まっていたものが決壊するように大粒の涙を流して俺に飛び付いて来た。


「説明して貰うからな! 」

「当然だな! 」

「あぁ、悪かったよ。それで? 俺はどれくらい離れてたんだ? 」

「もぅ…… あの日から10日になります」

「10日もか…… 悪かったよ、本当に…… 」


外は今日も雨が降っている。

エアに手を引かれ、新たに4人が購入したという部屋へと向かった。


「あ、お帰りっす! 心配したんすよ! 」


そう言って俺を迎え入れてくれたトンは、皿に入った何かを持って、右手にはスプーンを持ってそれらを食べながら足で扉を支えている。

こいつだけは俺の心配をしては無かっただろうとハッキリと理解出来る。

言葉も軽い。

何より、こいつに対しては罪悪感を覚えない。

そんな事を考えていると、エアに睨まれた。

ごめん……


暖かい部屋で暖かいシチューのような味の飲み物を飲み干し落ち着くと、事の経緯について説明した。

キラクがこんなに関与して来たと言う話を始めて聞いたと言われた。

そして全てを話終えると、再びエアに号泣された。


「二度とこんな事はしないで下さい! 」


普段、常に怯えたように話をするエアが始めて怒った表情を見せた。

それでも素直に返事をする事は出来ない。


「だったら、今度は私もついて行きます! 絶対一人で行かせません! 」


それを聞いてキョウも同行する事を申し出た。

ノンは街の管理があるから残ると言うと、キョウは俺に申し訳無さそうに申し出を取り下げた。

それから三日かけてエアの説得を皆で行ったが、結局俺について来ると言う考えを曲げる事が出来なかった。

明日からどうしようかと考えていると、事件が起きた。


俺が拐われたのだ。

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