第8話 巣立ち……
食事にするとしよう。
狩り取った、蜘蛛と蛙のモンスターを母親ローパーとわけようと思う。
私は蜘蛛のモンスター2匹分をもらい、蛙のモンスターと蜘蛛のモンスター2匹は母親ローパーに譲る。
まぁ、妥当な配当でしょう。
育ててもらっているのだから、このくらいは親に出しても良いでしょうね。
蜘蛛のモンスターは結構硬い、腹持ちがいいので私は好んでいる。
母親ローパーは蛙のモンスターから食べているがおいしいのだろうか?
蛙のモンスターはまだ食べたことがないんだよね。
おいしいといえば、スライムが結構良い味をしている。
でもスライムを狩るのは、超危険で私は80センチ以上のスライムを絶対相手にしないと決めている。
一度、痛い目を見たのだ。
2メートル級のスライムを相手にして、死にかけてしまった。
スライムは魔核なるものがあって、弱点なのだがそれをつぶさないといつまでたっても死なないで生きている。
殴打とかでは体に阻まれ、ダメージを与えられず、魔核を破壊できない。
スキル、魔法は倒せるほどの強力なものは覚えてないので攻撃ができない。
それにスライムは全身でまとわりついてくる攻撃が多いのだ。
まとわりつかせると対処ができなくなる。
それをくらって一度死にかけた。
いくら暴れても、転げまわっても、逆に不利になり剥せなかったのだ。
触手まで完全に覆われ、なにも対処できずスライムの消化液で溶かされ続けた恐怖がいまでも脳裏に浮かぶ。
母親ローパーが触手をとがらせ、魔核を打ち抜いてくれなかったら溶かされ、食われていただろう。
魔核は小さくて当てずらいのだ、下手をすると外皮に弾かれることもある。
大きなスライムは強敵なのだ。
あんなの相手にするのは、二度とごめんだ、食べたらおいしかったけど好きで狩るものではない。
母親ローパーが警戒したのもよくわかる。
あれは大きかった、今の私ではまったく相手にならないだろう。
…… …… ……
そういえば、ヒュドラと戦かった時に、母親ローパーが逃走した原因の検討がついた。
あの戦ったヒュドラはどうやら子供だったようだ。
先日だが、10メートルはある、ヒュドラを見かけたのだ。
逃走した時のヒュドラかわからないが、子連れで同じ大きさのやつを連れていたのだ。
ローパーの子供たちを銜えたままで追ってこなかったのは、親から離れるのを警戒したのではないのかな?
親が近くにいて狩りの練習をさせていた可能性がたかい。
左の通路にはインプとスライムがいる。
右の通路には親のヒュドラが居たのかもしれない。
子供のヒュドラを狩ってしまえば、助かったのではないかと思ったが、近くに親ヒュドラがいたのならば報復で全滅は間違いなく考えられる。
選択肢がなく、危険覚悟で左通路に行くしかなかったのだな、親ヒュドラが入ってこれない小部屋だったからそちらの方がましだと思ったのかもしれない。
私もまさか巨大なヒュドラがダンジョン内で徘徊しているとは思わなかった。
この前に見かけて、こちらに気付かず通り過ぎた時は運がよかったと思ったよ。
もしかしてあの巨大なヒュドラは階層のボスだったりしてね。
…… …… ……
私は食べ終わった。
母親ローパーは蜘蛛のモンスター1匹まるごと残してしまった。
触手を出しているので、持って帰るつもりのようだ。
非常食用の隠し穴は、私が掘り起こして大きくしたので十分に入る。
今日の狩りはここまでのようだ、母親ローパーも満足しているような感じがする。
帰って休もう。
寝床に戻る事にする。
…… …… ……
起きはじめて、いつもどおり石片を集めはじめると、今日は母親ローパーの様子がおかしいのに気づく。
? 肌を赤くさせ、私を威嚇しているのだ。
なんなんだろう、なにか私がやったのだろうか?
…… …… ……
? ! ?
なんか私を威嚇して、部屋から出ていけと言っているみたいだ。
あぁ、そうかもしかして動物でいう巣立ちをさせようとしているのではないかな。
私も十分大きく育っている。
親と離なれても、大丈夫だと判断したのだろう。
あまりにも急で突然のことだった。
だが、寂しいがここでお別れということになるんだな。
私は部屋を出て歩き出した。
このまま去っていくとしよう。
母親ローパーを見ると体の色の変化をやめ心なしか寂しそうに見える。
去り際に、奇声をあげてみる。
心の中で、
『いままで育ててくれてありがとう、母さん』
と思いながら……
言葉は話せないが、思いをのせれば通じるような気がした。
ここから右奥の通路の隅のところに、上に昇る階段があるのを知っている。
新たな旅路だ上の階へ行って見よう。
住む場所もかわれば、敵も違ってくる。
それも一興かな……




