第6話 今後の展開……
先ほどの戦闘から、どのくらいの時間がたったのだろう。
傷ついた母親ローパーは私を連れ、寝床にしている部屋に戻る途中だ。
何度かモンスターに襲われたが、すべて逃走した。
弱そうなモンスターでも逃げに徹している。
寝床にしている部屋に戻ってきた。
モンスターがいないか確認して、定位置に戻るようだ。
今日は石片しか食べていない、空腹感がでてきている。
母親ローパーは今日の戦闘のせいで、体力を相当消耗しているはずだ。
おなかが減っているらしく、大量に石片を口に運んでいる。
少しでも体力回復をはかるのだろう。
石片は主食ではなくあくまで間にあわせの非常食でしかないだろうな。
食べ終わると今度はいつもどおり触手で石片を細かく砕き私のほうにも持ってくる。
私も食べはじめる。
石片を食べたので力は回復してきたが、あまり満腹感がでてこない。
やはり主食ではないからだろうな。
石片ではモンスターの肉と違って、血肉を作ることはできない。
モンスターを狩って食べなければ回復はできなさそうだ。
そういえばローパーというモンスターは排泄機関がない。
消化できないものは、口から吐いて出しているみたいだ。
出さないので栄養分のエネルギー吸収がおえたら、余剰分は食べた分だけ大きくなるのだろうか?
石片は吐き出していないので、消化されてしまっているらしいのだがどうなっているのだろう。
特殊なモンスターなのかな。
…… …… ……
あれからかなりの時間がすぎた。
母親ローパーは動き出し、いつもどおり石片を拾いはじめている。
石片を食べ、私にも与え終わってから、なぜか今日は触手で私の事を触りまくる。
子供が1匹になってしまったので、愛着が大きくなってしまったのだろうか。
見た目は醜悪なモンスターでも、わが子を大切にするのはどの生き物でも同じだろう。
母親ローパーの愛願がとても嬉しく思えてくる。
彼女のために大きくなって強くなろうと思えてくる。
…… …… ……
前回の戦いから帰ってきて、いつもの日課の石片を食べる
今日で38回目だ。
その間、食べて休んでの繰り返しで今に至る。
やたら触手で母親モンスターが触るようになったのが気になっている。
私も大きくなったが、石片ばかり食べていては成長しないのだろうか、思っている以上に成長速度が遅いのだ。
母親ローパーは戦闘で失った、大きい触手が再生を始めたのがわかった。
少しずつ盛りあがって治る様子が見えたのだ。
完全に回復するには時間がかかるのだろう。
失っても完全欠損にならずに、再生できることは喜ばしいことだ。
今日は狩りに行くつもりのようだ。
触手を私に伸ばし絡めていく。
前回より私を絡める触手の本数が多く、ちょっときつくて苦しいが、声とか動きとかで表せないので、どう対応すればいいか困ってしまう。
安全のため、わが子を守るように触手を多めに絡めているのはわかるがこちらとしては問題だ。
我慢するしかないようだ。
母親ローパーは狩りに出かけていく。
狩りに出はじめてから数時間たった。
獲物らしいモンスターの群れに出くわした。
観察してみると長い角が1本頭にはえたピンク色の体長50センチくらいの兎の集団である。
20匹くらいはいるな、長く尖った赤い角が印象的だ。
ゲームでは確か似たようなモンスターがいて、ユニコーン・ラビットと言う名前だったか、序盤で出てくる弱いモンスターだ。
しかし、なんでこんなダンジョンにいるのだろう。
兎は草食動物ではなかったのか?
こちらにきづいて逃げるのかなと思ったら、集団で突進してきた。
なにそれ、ずいぶん好戦的な兎さんだ。
頭についている角で刺すつもりか、一斉に突撃してくる。
母親ローパーはとっさに迎撃準備して立ち向かう。
突撃してきたユニコーン・ラビットを大きい触手で薙ぎ払う。
いとも簡単に倒してしまった。
立ち上がって逃げる兎はそのまま逃がしてしまう。
16匹ほど、ユニコーン・ラビットが倒れている。
痙攣しているユニコーン・ラビットに、触手でとどめを刺している。
死んだふりとかしていることもあるのだから、当然止めはするのだろう。
兎って草食動物だと思ったがこのダンジョンでは違うのか?
草、木が生えてないから、当然食糧はモンスターなどの肉だよな、そうなると自然に好戦的になるのだろう。
逃げようともしなかった。
腹が空いていたのだろうか、空腹で飢えていると相手がつわものでも関係なく襲ってくる可能性もあるな。
怖い話だな、いや自分でも同じことをするかもしれない。
あの兎さんたちは、好戦的だから、共食いとかしそうだな……
母親ローパーは、久しぶりに食べものにありつけたせいか、次々にあなかの口のところに兎を放り込む。
すごい速さで「バリボリ」と食べてしまっている。
食べ終えたみたいで今度は私を床に置いて、つぶれた兎を前に置く。
母親ローパーの触手で内臓などを取って食べさせてくれる。
兎さんはやわらかくて食べやすい。
味も結構いいような気がする。
私も大きくなって体長が50センチほどになったが、兎1匹全部食べてしまった。
自分と同じ体積のものを食べてしまうとはどうなっているのだろう。
3匹ほどわりと奇麗に死んでいる兎が残っていた。
これは食べずに残しておくのだろうか? 私と同様に触手を絡めて持ちはじめる。
保存食用に持って帰るのだろうか、野生の生物としては珍しい発想をするんだな、頭はいいと思えて来たよ。
狩りは終わりにして、寝床にかえるらしい。
今回のようにうまく獲物にありつけるのは少なそうに思える。
寝床部屋に戻ってきた。
持ち帰った兎をくぼみのある穴のところへ置いた。
折れた柱を転がし隠す。
非常食の倉庫の代わりにするのか、やはり賢い。
帰ってきてからまた石片を集め、砕いて食べはじめさせた。
おはらは満腹なのだが、食べさせようとしている。
石片を食べさせるのは食糧というより、薬みたいなものかと私は思えてきた。
今日はなんとか生き永らえた。
早く大きくなって彼女の負担にならないよう成長したいと思う……