第38話 葛藤……
昨日は大変な事をしてしまった。
ローパーの生態の事で、たぶん自然な行為だからこれは仕方ないのだろう。
そうだ、そう考えるしかない。
今日は気持ちを切り替えて強くなる努力をしないといけない。
とりあえずいつもどおりに、石片を食べて狩りの準備をして出かけよう。
出かける前にまずはイメージトレーニングだ。
体の細胞が細かく圧縮し硬く、柔らかく、変幻自在に動けるイメージをする。
そして眼の奥にある魔核が、どんな物質よりも硬く、割れない、壊れない、超圧縮した宝玉のように思いを描く。
狩りに出かける前に、毎日の日課ではじめているのだ。
索敵の性能はだいぶ上がってきたと思う。
体から円を描くように念(魔法力)を発する感覚で索敵をすれば前よりも格段に良くなった。
どこぞの熱血戦闘漫画のように使用している。
気とか念とかチャクラとかあるかはわからないが、とりあえずうまくいっているので良いだろう。
肉体の強化については走り込みして、確実に身体能力は向上しているはずだ。
でもこれってある程度したら限界があるのではと思ってしまい、今は+αでなにか別の方法で体を強化する対策を考えている。
一応、頭の中で考えているが、これってちょっと違う方法ではと思って、あくまでイメージでとまっている。
できるかがわからないが、根本的に肉体強化と違っているので、まだ実行には移してはいないのだ。
今のところの考えではこれはどちらかというと、とある漫画で言う能力で変化形と言われる能力を身につけたいと思っているのだ。
気(魔法力)を具現化しまとわらせればできる可能性がある。
あとは魔法を漫画等のイメージで組みあわせて、私だけにできる技を生みださなければならない。
ローパーの体にあった必殺技を考えるのだ。
索敵で念を使うみたいにできているのだから、もしかしたら具現化能力とかできるのではないかと思いはじめている。
すでにイメージの具現化で魔法が使えるのだ。
物理の具現化もできてもいいだろう。
魔法を飛ばすことができ、肉体も強化と硬質化もできる。
瞬間移動魔法で移動できたのであとは、何だったかな念でできるようなことは、思い出し試してみたいのだ。
早めにオリジナルの技を完成させないといけない。
最終的には特殊系の能力を発動してみたいのだ。
できるかが不明なのだが……
今は確実にできる得意分野の雷撃系を伸ばした方がいいだろうか?
確か雷撃系だと雷をまとって素早く動けるとか定番の技があったな、雷の速さで動くと言うやつだ。
名前はなんていったかな、忘れてしまった。
イメージはできるので、あとで挑戦してみよう。
……と考えているが、昨日のことがどうしても頭から離れなくてどうにもならないんだよ。
余計なことを考えて昨日の事をまぎらわしている。
やばいよ、たぶん、できちゃったかもしれない。
どうすればいいんだよ。
うーん、やってしまったのはしょうがないのか?
…… …… ……
狩りにやって来たが、いつもどおり相棒の彼女は普通に後ろをついてきているだけで変化はない。
いつもどおり変わらないんだよね。
…… …… ……
ふと、思ったのだが、私が生まれた時は母親ローパー1匹だけだと思ったんだけど、つがいである雄ローパーはいなかったのだろうか?
どうしてしまったんだろう。
下の階は強いモンスターがいるから途中で狩られて死んでしまった可能性がたかいな。
母親ローパーだけで苦労していたからね。
相棒の彼女に子供ができて、育てるとなっても私がいるから少しは楽に育てられるかな?
ここの階層は下よりも敵が弱めだし。
同種族のローパーが少ないので守ってやらないといけないな。
私が生まれた時は、生まれてすぐに子供4匹が狩られてしまったから。
あんな思いするのはすごく嫌だな、あの時は母親ローパーもつらかっただろう。
今になってなぜかそんなことが思えてきた。
子供が大きくなったら、母親がどうしているか、下の階に見に行って見ようかな。
でも、冒険者の動向が気になるので上の階も行ってみたいしな。
などと、のんきな考えをしてしまっている。
まて、まだできたわけでもないし、考えるのは早すぎだろう。
昨日の事は、そういう行為ではなかった可能性もある。
考えるのは早まりすぎだ、落ち着けよ私……
とりあえず今は強くなることが優先だ。
後にも先にも強くならなくてはいけないのだからな。
…… …… ……
時が過ぎた……
…… …… ……
いつもどおり狩りが終わって帰ってきた。
このダンジョンやっぱおかしいよ。
ある程度モンスターを狩って食べているのだが、一向に減らないんだよ。
一定数を維持しているみたいにいつのまにかモンスターがいるんだ。
子供が生まれて育てている形跡もないし、ある方が珍しいのかもしれない。
今までの記憶であるのは、ヒュドラとアメフラシのモンスターが子ずれでいたことだけかな?
あと黒蜘蛛が珍しく共食いしないでいたことぐらいしか記憶にないな。
…… …… ……
今日も狩りを終え、寝床部屋に帰ってきたんだけど相棒の様子がおかしかった。
なぜか私がいる定位置に座っていて、一向に動かなくなってしまった。
もしかしてこれって、でも私の母親ローパーは常に移動していたみたいだと思ったけど、腹の中に居たからわからなかっただけなのかな。
おなかの中にいた時に動いていたような感覚があるが、勘違いだったのか? それとも時間がたつ感覚が違っていたから早く感じたのかもしれない。
下の階層は安心していられる場所がなくさまよっていたのかもしれないな。
そう思うと気の毒すぎるけど、モンスターの世界だから仕方がない。
とりあえず様子を見よう。
…… …… ……
私も休んで起きたのだが、一向に相棒の彼女は動く気配はない。
今日は狩りに出かけるのはやめておこう。
幸い非常食用の倉庫が満杯なので食べる物にはかかさない。
こういう場合は近くにいたほうがいいよね。
寝床部屋まわりにモンスターが入り込んでいないか見回りだけでもしておこうかな、なぜか私も落ち着きがなくなってしまっている。
とりあえず、非常食倉庫から食糧を持ってきた。
彼女に食べさせてあげる。
あとは私の索敵でこの部屋がわかる範囲だけを移動し見回りをしておこう。
…… …… ……
相棒の彼女が動かなくなってからかなりの時間がすぎた。
彼女の様子が変わってしまった。
色が濃い赤に変わってぐったりして調子が悪そうにしている。
あきらかに今までとは違う変化だ。
もしかしてもうそろそろ、生まれるのかなと思った。
! そんな中、異常事態が起こる。
そうか、そういうことか、あの野郎どもめ……
私はすぐにでも動けるように臨戦態勢をしておく。
こんな時になんて無粋な、いや、こういう時だからこそ、一番狙われやすいんだ。
やつらはこういうチャンスを待っていたんだな……




