第31話 闇討ち上等……
私は狩りを終えて寝床部屋に帰ってきた。
今日は散々な一日だった。
修行と称し、いざ狩りにでかけてみたら死んでもおかしくない苦戦をしいられるとは……
それもいままで弱いと思っていたモンスターに苦戦している。
自分の慢心差加減にあきれかえってしまったよ。
とりあえず先ほど狩ったユニコーン・ラビットを倉庫へ運ばないといけない。
私は倉庫の前に行き、ユニコーン・ラビットの死体を置いた。
私は相棒の彼女の近くによって、持ってきたユニコーン・ラビットを心の中で「置いてと」と思い声を出した。
私の言葉がなんとなくだが伝わったようで、彼女はユニコーン・ラビットを置いた。
思いをのせて話せば、言葉が通じあうような気がする。
神剣を倉庫の中に置いていたので、取り出してしまおう。
神剣を取り出し適当なところへ置く。
刀身がむき出しだと危ないんだよ、なんとかならないのか……
倉庫の中に入れる前に確認しとくか、倉庫は入り口が50センチで狭い。
中は私が少しずつ触手で堀ったものだ。
歪だがほぼ円形状に掘ってありそこそこ広くなっている。
50センチくらいのユニコーン・ラビットだったら詰め込めば100匹は余裕で入る大きさだ。
比喩が悪いが大きさが説明できないのでそのくらいと言っておこう。
入り口は狭くなっており床の材質のせいか淡い緑に光っているので、中まで明るく見える。
残念だが私の体の大きさでは寝ころんでも中までは見えずらい。
触手で堀り進めたので、中を弄れる程度なのだ。
倉庫には十分と思っているので特には気にしてはいない。
ないよりはいいだろう、そんな程度に思っている。
だけど今回は、この倉庫をよく観察しようと思う。
空間収納魔法のイメージを作るのに参考にするのだ。
まだ魔法が使えるかは不明だが、入り口が小さく中が広い状態の倉庫で思い描けるのは、ちょうど非常食用倉庫がイメージに最適なのだ。
中が無限に広がるのを想像しても良いが、どうもブラックホールとかさなってしまうのでイメージとしてそれが怖い。
こういう倉庫は他にはないので思い描きやすい。
不格好な倉庫だがイメージはしやすいので、これを参考に考えている。
私の大きさでは中が見ずらいのだが、寝ころびながらいろいろ角度を変えて見てまわる。
はたから見ればモンスターがなにを悶えているのかと変に思うだろう。
こちらとしては真面目に観察しているのだ。
中も明るく見えるので頭に記憶しておく。
あとは触手でできるだけ触ってみよう。
体の中からできるだけ多くの触手を出して中の大きさを感覚で確かめる。
これくらいでいいか。
あまり長く見ていると近くにいる相棒の彼女が不思議がるだろう。
それに今日は怒鳴ってしまったので、不信感を余計に与えるかもしれない。
よし、これで良いだろう。
あとでイメージをまとめ魔法が発動するか確認してみよう。
それでは倉庫にユニコーン・ラビットを入れてしまう。
まずは冷凍保存にしたいので空の状態で冷却魔法を中にかける。
倉庫の中に「氷結魔法」を唱えた、これでいいだろう。
あ、まずいな、私の魔力が残り少ない。
先ほどの戦いで使いすぎた。
特に新しく使った魔法の上位無属性状態異常打撃魔法がかなりの魔力を必要とした。
1回の魔法使用で私の全魔力の7分の1くらい持っていかれたのかな?
それくらい消費されたような感じがした。
それも半分失敗の状態でだ。
レベルがまだ足りなすぎる。
今後は気を付けて使わないといけない。
とりあえず魔力を回復するため、石片を食べながらやるか。
石片は食べると魔力が回復するのでとても役にたつ。
これからユニコーン・ラビットを1匹1匹冷却しなくてはならない。
倉庫に搬入する作業を行った。
1匹1匹冷やしながら倉庫へ入れていく。
数は25匹か結構ある。
作業をしていたら相棒の彼女がこちらに来て、冷えたユニコーン・ラビットを倉庫にいれる手伝いをしてくれた。
おお、やはり彼女は賢いな。
私がやっていることを理解してくれているのね。
これは嬉しいかぎりだ。
彼女のおかけで思った以上に作業が早く終わってしまった。
入れ終わったあと最後にまた倉庫の中へ冷却魔法をかける。
柱でふたをして終了だ。
倉庫の4分の1くらいは埋まったか、今回は1日でこれだけ入れられたのだから上出来だ。
さてと今日は疲れてしまった。
石片をもう少しだけ食べて休もう。
…… …… ……
今日は大変なことがあったが、いまからもおかしい事になってしまった。
なぜか相棒の彼女がいつもの定位置に行かず私の隣にいるのだ。
なぜだ今日は私が怒鳴ってしまった、なにが変わってしまったんだろう。
よくわからず困惑をしている。
どうしたらいいんだ、誰か教えてくれ。
なにかをするまでもなくこのままだからいいのか?
まあ、いいや、今日はゆっくり休むとしよう。
…… …… ……
起きはじめたが、昨日は特になにもなかった。
彼女はすでに起きていて石片を食べている。
なにか変なことがあるのかと思っていたが勘違いだったらしい。
私は生殖器官がなさそうなので、そんなことはありえないと思うのだが昨日の反応で驚いてしまったよ。
とりあえず、いつもどおり石片を食べ狩りに行く準備でもしよう。
そうだ時空魔法の空間収納魔法ができるか試さないといけない。
昨日だいぶイメージがまとまったので、魔法の兆候がでるか試してみよう。
私は心の中で空間倉庫があるようにイメージをし、物品が出し入れできるか思い描いた。
……魔法の兆候がある。
これは空間収納魔法ができるかもしれない。
空間収納魔法ってこの異世界に存在するんだ。
完全にイメージが固まるまではこの魔法は使わないでおこう。
もし空間から倉庫が開いても、触手を中に入れたらなくなっていたなんて怖いからね。
幸い触手は再生できるから良いけど、人間の手だったら怖いよな、さすがに再生はできない。
きちんと出し入れできるイメージが完成してから魔法を使ってみる。
…… …… ……
それでは今日の狩りのやり方についてだ。
昨日は、はっきり言って大失敗だった。
まさか正面から戦うとあれほど苦戦するとは思いもよらなかった。
モンスターの観察はしたいが命があってのものだ。
昨日の事で良く身に染みた。
方針をまったく逆に切り替えることにする。
透明化能力をマスターし、アサシン狩りのスタイルを身につける。
この方法でいきたい。
いつもどおりの気配を消し不意打ちをやる狩り方だが、見えない状態になるぶんさらに向上できると思う。
ゲーム時代に非難されたアサシン狩りのやり方だ。
しかし、段違いに狩りの仕方が安全で楽になる。
少しだが透明化ができるようになったので今日は試したいと思う。
だがここで問題が一つ発生してしまった。
私が透明化能力で消えるのは良いのだけどそうなると相棒の彼女が1人見えた状態になってしまう。
彼女は気配の消し方が私よりもうまい、だがさすがに彼女だけが見えるのはまずいだろう。
囮に使うのか? いやさずがにそんなことはできない。
今後、透明化能力が仲間にもかけられるか課題なのだが、一応可能性はあるのだ。
冒険者たちが来た時、全員が見えない状態だった。
だからできないってことはないと思う。
おそらく上位版の魔法であろう。
私は覚えたてで不完全だ。
仲間まで透明化のイメージの方向へもっていかなければいけない。
難しいところだ。
とりあえず今日は方針を変えて透明化能力の完全マスター優先で狩りをしようと思う。
透明化能力のタイミングが難しい、最初から消えていれば問題ないのだが、彼女がいるからハードルがあがってしまっている。
広範囲の索敵をして、敵を発見し透明化して狩り尽くす。
それをしないと相棒が危険にさらされる。
アサシンプレイだ。
闇討ち上等はゲームでは嫌われている。
あまりやり過ぎるとキャラ名を晒されるまで非難を受けるからな。
ここではオッケーということにする。
さてと、それでは狩りの準備といこうか、今日は神剣を持っていくことにする。
まだ不完全な透明化だが、神剣を使い能力を補助しあげる。
透明化能力して、神剣で後ろから「ズブリ」と刺す。
神剣は振れないが刺すことはできるのでオッケーだ。
私が持っている神剣の先が丸まっているので刺すのは難易度があがっている。
うまくやらないといけないな、剣を溶かしてしまったことが今になって悔やまれるとはな……
さてと、石片を食べて狩りに出かけるとする。
…… …… ……
狩りに出かけはじめた。
! ここから300メートル先の左通路に1匹、モンスターがいる。
それも強い反応だ。
気配をまったく消していない、どういうことだろう。
それにこの反応は、いままで一度も感じたことがない、気を付けて移動するか……
通路を曲がる直前、再確認で索敵をする。
モンスターがいるのは1匹だ。
ここで透明化能力を使い消えて近づく、アサシンプレイをやってみようと思う。
神剣を使い透明化能力能力を付加しあげる。
「透明化能力」
スキルを使いモンスターに近づく。
抜き足、差し足、忍び足と言ったところか。
? うそ、あれはミノタウロスだ。
はじめてこのダンジョンでみた。
ゲームでよく見る定番なモンスターだ。
だがそんなやつ下の階でもみた事がないぞ、どういうことだ?
わたしが今まで見たモンスターはどちらかというと動物か爬虫類のタイプが多くほとんど捕食できるタイプのモンスターだった。
魔法生物もいたが、ほぼ種類は同じで特色がないやつばかり。
かわったモンスターと言えば人型のインプが珍しいモンスターだと思っていたくらいだ。
2足歩行で歩きまわっているモンスターがいるのは、はじめてみた。
今までとは何かが違う。
もしかして、冒険者が来たせいなのか?
このダンジョン転移か生成かわからないが、モンスターが不自然にリポップすることがある。
いままではそれほど強いモンスターは現れなかった。
冒険者があらわれたせいでダンジョンの防衛反応で強いモンスターを生み出している可能性が高い。
なぜかそう思ってしまった。
あながち間違っていないような気がする。
これはまた厄介なことになった。
別の階層でも強いモンスターが現れている可能性がある。
ダンジョンの防衛反応で強いモンスターを生み出すとこちらも危険に晒されるのだ。
まったく困ったことをしてくれたもんだ。
ミノタウロスはゲームでも中ボスくらい強さ分類されることがある。
速攻で仕留めるしかない。
3メートルくらいの身長はあるか、私よりも小さいがかなりの筋肉質だ。
定番の巨大な斧を持っているよ、どこから武器を用意したんだ?
私は透明化能力で透明化して近づく。
気配を極限に消し、ミノタウロスの近くに寄ったのだが、まったく気づいてはいない。
ミノタウロスは手に強大な斧を持って前進しているだけだ。
ここは観察などしないで一気に仕留めてしまおう。
私は触手で神剣を持ち地面にすれすれの位置にかまえる。
狙いは背中胸まわり、下から突き刺す。
「スー」
神剣はあっさりミノタウロスの背中から胸をつらぬいた。
すぐさま神剣を引き抜き、大きい触手で頭上から連打を浴びせる。
「ドガ、ドガ、ドガ、ドガ、ドガ」
ミノタウロスをあっさり倒してしまった。
やったかなんだかいまいちぱっとしないな、倒したのはいいがまったく達成感がない。
これは卑怯すぎる。
モンスターのやることではないと思ってしまった。
神剣も刃先が丸まっているのにあっさり突き刺さってしまう。
切れすぎるだろう。
安全な狩り方なのでオッケーとしよう。
さてとそれでは相棒の彼女の近くまで運ぶとしようかな。
重いそれにかなりの筋肉質だ。
体格もいいし3メートルちかくあるからこれ1匹で2人分の食糧はしばらくまにあってしまう。
ミノタウロスを見てなにか使える部分がないかと調べてみる。
確かゲームでは角が材料で売れるという。
アイテムになるはずだったけど、どう見ても使いどころがない。
大きい斧を持っていたけど、どこから手に入れてきたんだろう?
不明な点が多すぎる、どのみち食べてしまうからいいか、牛なのでおいしいかもしれない。
重そうなので別の部屋には移動ができない。
索敵をかけて他のモンスターがいないか調べてからここで捕食といこうかな。
いつもどおり広範囲索敵をかけ、敵がいないか確認する。
敵がいないことが確認できた。
それでは半分に切るか、でもどうしようかな切るとき問題だ。
上半身と下半身にわけたいんだけど、私は下半身は食べたくないんだよ。
でも腹あたりで切断すると下半身のほうが小さいよね。
大きい方を彼女にあげたいので上部で切り裂くか、神剣があるので切れ味はいいから添えるだけで切れそうなのでうまく調整できそうだ。
うん、ここら辺がいいか、私は神剣を使ってミノタウロスを半分に切り裂いた。
「スウー」
切れ味が良すぎるだろう。
上に置いてちょっと力を入れただけで切れてしまった。
アレスと戦った時よく無事で済んだものだ。
半分にした下半身のほうを彼女の方に持っていく。
さてとそれでは食べてしまおうか、私が食べはじめたら彼女も食べはじめた。
なんか今日は気のせいか食べてる時に嬉しそうに見える?
ミノタウロスはかなり食いでがある、筋肉質で硬くそれに思った以上に量がある。
これを食べれば当分持つぞ。
…… …… ……
「ゲップ」
食べ終わったのがいいがおなかがいっぱいになってしまった。
今日はこれで狩りはいいくらいだ。
でも私の寝床部屋近くでミノタウロスを発見した。
寝床部屋周辺を調査しとこうか、冒険者たちがきてから何かが変わってしまったんだ。
今日は寝床部屋の周辺調査に力を入れる。
…… …… ……
やはりおかしかった。
今まで見たことのないモンスターや近くをあれだけ狩ったのに複数のモンスターがいるのだ。
ちょうど倉庫が空いてるからアサシンプレイで狩って持って帰るか、でも今度は神剣は使えない。
なるべくきれいな状態で倒さないと、そうなると今度は雷の魔法で気絶させるべきだ。
透明化能力でやるとほんとに危ない人だよ。
スタンガンを持って近づいてくる危ない人になる。
今日は寝床部屋の周辺にいるモンスターの駆除をおこなうことにしよう……




