第30話 慢心……
強敵だった。
この階層では今まで見たことのないモンスターだ。
ダンジョンからわいたのか、それとも下の階からやってきたのかは不明だが、今後も気を付けなければいけない。
それでは、巨大な芋虫モンスターを食べてしまおう。
茸のモンスターが乗っていたが、差し引いても大きさがある。
動かすのにも重く、適当な部屋に持っていくのは無理そうだ。
ここで食べてしまうしかないか、広範囲索敵をかけ、モンスターがいないことを確認し安全を確保する。
この大きさだと2人で食べても食い切れるかわからない量だ。
とりあえず半分に切断する。
私は大きい触手を大剣状に変え先端を硬質化する。
大剣に変えた触手を振りかざし半分にわける。
先ほど威嚇してからは、彼女が近づいてこないので半分に切った巨大芋虫を持っていってやることにする。
彼女のほうへ持って行ったが、すぐには食べないようだ。
私が食べはじめたら彼女も触手をだして食べはじめた。
よかった、いつもどおり食べている。
私が食べはじめてから食べるようになったのでこれは良い事だ。
…… …… ……
ふぅ、あれだけの大きさだったが、何とか全部食べてしまった。
体全体が膨れてしまったと。
彼女も食べ終わったようだがいつもどおり平然としている。
? 特に体が膨れた感じがしないのだがどういうことだろう。
私より大きいのを渡した。
それに体が一回り彼女のほうが小さいんだ。
どうしてなんだろう? ……深くは考えないようにしよう。
おなかがいっぱいになったので、当分は大丈夫だろう。
あとは倉庫の備蓄をどうするかだ。
狩りをしたモンスターを倉庫ように入れられるのを限られた種類しかいれていない。
持ち運びの事とかもあるし、なるべくつぶれたようなものは遠慮したい。
腐りかけると言うのは問題はない。
このダンジョンのモンスターが腐りはするのだが、虫がわかない。
蛆とか寄生虫がわくはずなんだけど、腐るだけでなぜかわかないんだ。
そのために腐敗する時間も遅くなっている。
このダンジョン内の特色なのか、それとも生態系そのものが違う環境だから腐敗が遅いのか、わかていない。
腐ったモンスターを食べても問題はないので、別に良いのだけどなるべく倉庫にはきれいな状態で保管したい。
なるべく傷をつけず考えて狩ると難しい事だ、今までは狩りで余った分を持ち帰っていただけだった。
考えて狩りをするのも手間がかかる。
…… …… ……
今は結構、おなかがいっぱいなのと強敵と遭遇で、疲れてしまっいる。
精神的にもまいっている。
今日の狩りはこれくらいにして寝床部屋に帰ろう。
彼女もおなかがいっぱいになったみたいだから大丈夫だろう。
寝床部屋に戻ろうとする。
…… …… ……
もうすぐで寝床部屋にたどりつく。
? 複数のモンスターの反応があるな、これは知っている感覚だ。
前にあったことがあるユニコーン・ラビットの群れだ。
よし、いいチャンスだこれらを狩って非常食としよう。
あとはユニコーン・ラビットの攻撃手段の観察だ。
今日の仕事はこれで終わりだ。
私の魔法力はまだ半分以上使えるので弱い兎には余裕だろう。
ユニコーン・ラビットの群れに向かうとする。
…… …… ……
ユニコーン・ラビットの群れの近くにいった。
と言うか、ユニコンー・ラビットは私たちに気付いていたようで全員で突進してきたのだ。
おぉ、やはり突進してきたか、なんて好戦的な兎さんだ。
私は大きい触手で軽く薙ぎ払うようにユニコーン・ラビットたちを払いのけた。
軽く払いのけたせいで全員が無事みたいだ。
払いのけ落ちる時に体をうまくひねり着地をしていた。
身体能力の高さをうかがえる。
さてどうしようかなと思っていたら素早い、いつの間にか全員に囲まれてしまっている。
私は360度見えるので、ユニコーン・ラビットの数を正確に数えてみた。
全部で27匹いる。
結構な数だ、この後はどうするんだろう。
観察していたら前側に囲んでいたユニコーン・ラビットの角が赤い雷をまとったように「バチバチ」と光りだした。
これはいかん、何らかの魔法兆候がある。
私はとっさに上位魔法防御盾魔法を使う。
ユニコーン・ラビットの角の先端が光、赤い小さな玉のような魔法の塊ができた。
私にむけて赤い球体を発射してきた。
発射してきた数は前方のウサギ12匹、野球ボール玉くらいの大きさの赤い魔球が私を一斉に襲う。
上位魔法防御盾魔法をかけて防いでいるのに貫通して体に命中してきた。
あの赤い球体はどうやら魔法バリアには干渉を受けずらい球体らしい。
それに触手で払いのけようとするが、数が多く早くて対応がうまくできない。
くぅ、威力はそれほどでもないが、貫通して連続で攻撃してくる。
威力はそれほどでもなくても直撃弾はきつい。
後方で待機しているユニコーン・ラビットの角が激しく赤い色に光っている。
ユニコーン・ラビットの数匹が私にむけ突進してきた。
かわしたいが赤い魔球の連続攻撃を触手で払いのけるのがやっとで、対応が遅れてしまう。
1匹のユニコ-ン・ラビットが私の防御を抜け突進し、体に角が刺ってしまう。
刺さった角は外れ、体に突き刺さった状態だ。
角がとれたユニコーン・ラビットは、その場から離れ後方へ下がる。
少し間が開いてから刺さった角が爆発した。
私の体に20センチくらいの穴が開く。
「くぅ」
さらにユニコーン・ラビットは赤い魔球の連続攻撃を続け、隙間をぬって、突進し私の体に角を突き刺す攻撃を繰り返す。
刺さった角は爆発し私はかなりのダメージを負いはじめた。
角のなくなったユニコーン・ラビットは後方に下がり『ピョンピヨン』と跳ね出す。
同時に「カチカチ」と歯を鳴らしはじめ、不快な音が鳴り響く。
何かの音波攻撃か? 意味がわからないが不快な音が響く。
バカなこれは殺やらる。
赤い魔球の魔法バリアを貫通する連続魔法攻撃と角の突進爆撃、意味が不明な不快な音波で、私はなすすべがなくなってしまった。
慢心した、あきらかにユニコーン・ラビットを弱いと決めつけていた。
油断したのか? こいつら連携攻撃だととんでもなく強い。
突撃ばかりで能がなく、指揮個体もいないので連携攻撃ができないと思っていた。
私はどうしようもなくなってしまったので、狂戦士化を使う。
体の全能力をあげ、雷神の怒り(ライジン)を使い全身に雷をまとわせる。
これはよほどではないと使わないスキルだ。
狂戦士化は一定時間の身体能力を上げるが効果が切れるとそのぶん能力が低下する諸刃のスキルだ。
石片を食べながら戦闘を続ければ、長く狂戦士化状態をたもてるのはわかっている。
狂戦士化を兎相手に使うとは、到底思いもよらなかった。
兎強し。
私は新しく覚えた魔法を全方位に定め、上位状態異常打撃魔法を唱える。
まさかボスが使った魔法を兎相手に使うとは考えても寄らなかった。
「上位無属性状態異常打撃魔法」
私の体が一瞬虹色に光、衝撃破が全方位に放たれる。
「バシュン」
すべてのユニコーン・ラビットに虹色に光った衝撃破があたり硬直し動けなくなった。
しかし、効果が弱く感じられた。
あきらかに私のレベルが低い、硬直だけしかさせられなかったのだ。
これは追い打ち必至だ。
「中位範囲雷撃魔法」
唱える。動けなくなっていたユニコーン・ラビットに中位範囲雷撃魔法を放った。
「バシュン、バリバリンバリ」
大きな雷撃の音が響いた、辺りは一瞬に静まり返る。
ユニコーン・ラビットはまったく動かなくなり全員が絶命した。
まさか上位クラスの魔法を連発するとは思わなかった。
ユニコーン・ラビットを完全に舐めていた。
狂戦士化状態を解く。
魔力が残り少ないが回復魔法だけは使用しておく。
苦戦した、今日はなんて日だ。
先制攻撃をおこなわず正面から戦うとこうなるのか。
ユニコーン・ラビットがあんな攻撃をしてくるとはまったくの想定外だった。
このダンジョンのモンスターは身体能力、魔法能力、すべてが高い。
ただモンスターの能力は高いが知能が追いついていないだけだ。
もし私がユニコーン・ラビットだったら他のラビットを指揮して、私と同じローパーのモンスターだったら狩れるかもしれない。
人間の知能、知識があったのはこのダンジョンで良かったと痛感させられる。
…… …… ……
全滅しているな、幸いユニコーン・ラビットはきれいな状態で死んでいる。
何匹かは捕食してあとは持って帰るとしよう。
数は多いが寝床は近いし問題ないだろう。
相棒の彼女の前に崩れてしまったユニコーン・ラビットを1匹ほど置いていく。
私も状態が悪い1匹のユニコーン・ラビットを前に置き食べはじめる。
彼女も食べはじめた。
お腹はいっぱいだったけど勿体ないので食べてしまったのだ。
それに立て続けに上位クラスのスキル魔法を使うと、極端に腹が減る。
燃費の問題があるのだろう。
…… …… ……
食べ終わる。
残りの兎は全部持っていきたいが、この数では私一人では持ちきれない。
とりあえず触手を出して持てるだけ運ぼう。
! おぉ、私のまねをして相棒の彼女も触手を出し持ちはじめたよ。
これで全部運べそうか。
広範囲索敵をかけモンスターがいないか調べてみる。
とりあえず敵がいないのを確認する。
ここら辺は私の縄張りに近い、モンスターは少ないはずだ。
寝床部屋に戻ろう。
索敵と警戒は慎重におこなっていく。
修行と思って狩りに出かけてきたが、生き残ることが精いっぱいでなにもできていない。
今日は散々な一日だった……




